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|軍縮|核抑止理論に挑む市民社会 

【国連IPS=タリフ・ディーン】

世界の核兵器保有国が集団で足を引きずり核軍縮へのあらゆる動きを押しとどめようとする中、平和活動家や市民団体は、長らく信じられてきた核抑止の神話に果敢に挑んでいる。 

彼らは先週、カリフォルニア州サンタバーバラに集まり、「核抑止とは、核兵器保有国とその同盟国が自らの核兵器保有と、その使用及び威嚇する行為を正当化するために使っている政策である。」と宣言した。 

会議の参加者の一人であり、「西部諸州法律財団(WSLF)」の事務局長であるジャクリーン・カバッソ氏は、「長く保持されてきた核抑止のドクトリンはこれ以上信じるべきでなく、世界的な核軍縮を達成すべく緊急の取り組みを開始すべきだと市民連合のメンバーは考えています。」とIPSの取材に応じて語った。

 「核兵器が再び使用されてしまう前に、核抑止を、人間的、合法的、かつ常識的な安全保障戦略に転換しなければなりません。」とカバッソ氏はいう。 

市民連合が採択した宣言には、「我々は、核抑止を拒否し、段階的、検証可能、不可逆、透明な形での核兵器の廃絶に向けた核兵器禁止条約(NWC)の交渉をすみやかに開始することを核兵器保有国とその同盟国に要求していくべく、我々に合流するようにあらゆる人々に対して呼びかけていく。」と記されている。 

会議の参加者は、「核政策に関する法律家委員会(LCNP)」や「核時代平和財団」から、「社会的責任を求める医師の会(PSR)」、「軍縮・安全保障センター」まで幅広い。 

核兵器を保有していると公的に認められている5ヶ国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)は、国連安全保障理事会において拒否権を持つ常任理事国でもある。 

これに加えて、核兵器保有国と公式に認められていないインド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルがある(これらの国々は、あえて「聞かざる、言わざる」核政策をとっている)。 

対人地雷問題に関してそうであったように、NGOによる核軍縮の世界的キャンペーンは成功するか、という問いに対して、LCNPのピーター・ワイス会長は、「対人地雷やクラスター弾禁止の国際キャンペーンとの比較については、慎重であるべきだと思います。対人地雷やクラスター弾の場合は、核兵器と違い、たとえ使用されなかったとしても、隣国、ないしは世界に対して自国の戦力を誇示する手段とは見られていなかったのです。」と語った。 

ワイス会長によれば、核兵器保有国が核を廃絶する難しさについて、ミゲル・マリン・ボッシュ氏が何年も前に語った至言があるという。 

当時メキシコの軍縮大使であったボッシュ氏が、外交官にしては珍しく率直な表現で、「だだっ子たち(=核兵器保有国)は、おもちゃを取り上げられると思って、怯えているのだ。」と述べたことをワイス氏は覚えている(ワイス氏は国際反核法律家協会IALANAの副会長でもある)。 

ニュージーランド「平和財団」のアラン・ウェア氏は、「この40年間で国際社会は、対人地雷やクラスター弾、生物・化学兵器などの非人道的な兵器を禁止・廃絶する条約を実現してきました。しかし、最も非人道的かつ破壊的な核兵器の禁止・廃絶は、依然として困難であり続けています。」と語った。 

ウェア氏は、対人地雷とクラスター弾を禁止する条約の策定において市民社会が果たした重要な役割を指摘した上で、「これらの成功要因は、『兵器使用が人間に与える効果に焦点をあてたこと』と、『国際人道法を適用したこと』にあります。」と語った。 

ウェア氏はまた、「市民社会の行動は、核兵器に対する市民の意見、とりわけ、核兵器保有国や拡大核抑止(=核の傘による安全保障)を享受している国々における世論を変える上で効果を発揮しています。」と語った 

「1980年代の世論調査では、世論の多数が核兵器を容認してきましたが、最近の調査では、多数が核兵器の禁止・廃絶を支持するようになってきています。」 

しかし、世論のこうした変化は、政府の政策にほとんど影響を及ぼしていないように見える。 

この点についてウェア氏は、「『核兵器なき世界』を達成するというビジョンと責任をほとんどの政府が受け入れるようになった点で、わずかながらも変化が見られます。しかし、ほとんどの核兵器保有国とその同盟国は、核軍縮に向けたきわめて微温的な措置をとるだけで、核抑止を放棄し、核兵器の使用(あるいはその威嚇)を禁止し、交渉を始める気はないようです。」と語った。 

ウェア氏は、「核兵器政策における変化を生み出す市民社会の真の力は、おそらく、2つの極端な見通しの中間にあるのだろう。」と語った。すなわち、世論の圧力は現実主義的な政治世界には影響を与えないわけではないが、核廃絶をそれ自体で導けるような魔法の杖ではというものである。 

核戦争防止国際医師会議」のメアリ-ワイン・アシュフォード医師は、ICANなど、核軍縮の問題に取り組んでいるNGOはたくさんあると指摘した上で、「そう、NGOによるキャンペーンは、実践的であり、実行可能なものです。」「市民社会からの絶え間ない圧力が核兵器保有国を核ゼロへと動かす動機を与える上で、肝要なのです。」と語った。 

カナダ・ビクトリア大学の助教授も務めているアシュフォード医師は、「医師たちは、ウラン採掘から兵器生産にいたる核サイクル全体における健康上の問題について世に問い続けているのです。」と語った。 

核戦争防止国際医師会議」(PGS)のデイル・デューアー事務局長は、同団体は核兵器なき世界を求めるキャンペーンを続ける医師たちに30年間支えられてきた点を指摘した上で、「支援者たちの支援が続く限り、活動は続けるつもりです。」と語った。 

同じくPGSのナンシー・コビントン氏も「市民社会を動かす以外には方法はないと個人的には思います。もし(核軍縮に関する)公共教育が十分に行われたならば、市民社会は、耳を傾けてもらえるような強い意見を出すことができるでしょう。」と語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

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