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|視点|核の破壊の時代は81年前、嘘とともに始まった―そして同じように終わるかもしれない(ミッチェル・ジマーマン弁護士・社会運動家)
広島・長崎への原爆投下は、本土侵攻なしに戦争を終わらせるために必要ではなかった
【INPS Japan/The Other News=ミッチェル・ジマーマン】
核の時代は、ひとつの嘘とともに始まった。
1945年8月6日、ほとんど気づかれることなく日本のある都市の上空を飛んでいた1機の米軍機が、1発の爆弾を投下し、広島を破壊した。3日後、別の米軍機が2つ目の都市長崎を破壊した。両都市に投下された原子爆弾は、10万人を即死させた。その年の末までに、さらに10万人が放射線障害や火傷、爆風による負傷で命を落とした(広島市・長崎市の推計では、1945年末までの死者は広島で約14万人、長崎で約7万4000人とされる。)犠牲者の90%以上は民間人だった。
これほど多くの人々を殺したことの公式の理由は、嘘だった。日本本土への侵攻で米兵が被るはずだった甚大な損失を避けるために原爆を投下する必要があったという主張は誤りであり、しかも米国の政策決定者たちは、原爆投下を決めた時点でそれを承知していた。
米国は日本軍の暗号を解読していたため、米情報機関は1945年7月、日本政府がすでに、第二次世界大戦における米国の同盟国であったソ連に接触し、和平の仲介を依頼していたことを把握していた。日本側が何よりも望んでいたのは、連合国が求める無条件降伏が天皇の退位を伴わないことの保証であった。この条件は、最終的に米国があっさり受け入れたものである。
ガー・アルペロビッツがその著書『原爆外交―広島とポツダム』で説得力をもって論じているように、2つの日本の都市の破壊は、日本本土侵攻の回避ではなく、台頭しつつあった冷戦の政治と関係していた。
決定を下した者たちは、日本が戦争終結を模索していることを知っており、欧州での連合国の勝利後にソ連が対日参戦すれば、それだけで日本の降伏を早めるのに十分だろうと考えていた。
長く秘匿されていた1946年の米国の極秘情報調査は、戦争を終わらせたのは原爆ではなく、1945年8月8日のソ連による対日宣戦布告とソ連軍の進攻であったことを裏付けている。〔注3〕
ソ連はナチス・ドイツとの生死をかけた戦いに忙殺されていたため、それまで対日戦には参加していなかった。だが1945年7月、占領下のドイツ・ポツダムで開かれた会談で、ハリー・トルーマン大統領はスターリンから(先のヤルタ会談での)対日参戦の約束を再確認した。
「そうなればジャップはおしまいだ」―トルーマンは1945年7月、戦時中の手書きの日記にこう記した。「これで戦争は1年早く終わる」と、トルーマンは同じ頃の手紙に書いている。「殺されずに済む若者たちのことを思ってごらん」
米国の戦争指導者たちも、原爆投下が必要なかったことを認めている。連合国軍最高司令官ドワイト・D・アイゼンハワー将軍(のちの大統領)は、「日本はすでに敗北しており、原爆の投下はまったく不要だった……米国人の命を救う手段として、もはや必須ではなかった。」との結論に達していた。
当時トルーマンの参謀長を務めていたウィリアム・リーヒ元帥も同意見だった。「日本はすでに敗北し、降伏する用意ができていた……この野蛮な兵器の使用は……対日戦争において実質的に何の助けにもならなかった。」
それでもトルーマンは、ためらうことなく原爆を投下した。「原爆は『重大な決断』などではなかった」と、彼は15年後に語っている。
第二次世界大戦の時代は、残虐行為の時代だった。日中戦争―1937年から1945年にかけての日本による中国への侵略戦争――では、推定1000万~2000万人が死亡した。ナチス・ドイツは欧州のユダヤ人600万人を殺害した。ドイツはまた、捕虜としたソ連兵200万人を餓死によって殺害した。さらに南京での虐殺、ドレスデンの破壊、1943年のベンガル飢饉、そして東京をはじめ60以上の日本の都市への焼夷弾爆撃があった。
こうした言語に絶する惨禍のなかにあっても、20万人の日本の民間人が原爆によって命を奪われたことは際立っている。彼らは世界で最初の核戦争の犠牲者であり、一連の嘘によって正当化された彼らの不必要な死は、全人類を危険にさらす時代の幕開けとなったからだ。
嘘と危険は、第二次世界大戦の終結とともに止んだわけではなかった。私たちが学ぶべきだったように、核兵器には嘘を生み出す性質がある。
9・11同時多発テロを受け、2003年、ジョージ・W・ブッシュ政権はイラクが核兵器を保有しているという虚構をつくり上げ、石油資源の豊富な同国への侵攻と占領の口実とした。しかし、イラクは核兵器も、その他の大量破壊兵器も保有していなかった。イラク侵攻を推進した(そしてブッシュにイランへの侵攻も迫った)ネオコンたちは、疑わしい情報を操作して、架空の脅威への恐怖をあおったのである。
その嘘の代償は大きかった。結局、米国によるイラク占領は、米国に数兆ドルの費用と数千人の米兵の命をもたらし、数十万人のイラク民間人の死を招いた。
そして今年、ドナルド・トランプ大統領はイラン政府の打倒という右派の夢に回帰し、またしても核兵器について嘘をつき、まったく不必要な戦争を正当化しようとした。トランプ大統領と側近らは、イランが核爆弾の製造寸前にあり、間もなく米国を攻撃できる長距離ミサイルを開発中だと主張した。米情報機関は、これらの主張がいずれも虚偽であることを確認していた。
架空の核の脅威をめぐる大統領たちの嘘が繰り返されているからといって、核拡散というあまりにも現実的な危険から目をそらしてはならない。
地球上での人類の存続に対する脅威を憂慮する市民は、当然ながら気候変動に注目してきた。しかし、気候変動とその影響――極端な気温、海面上昇、巨大な暴風、制御不能な火災、農作物の壊滅、干ばつ、飢饉、難民の流入、排外主義的な政治――にますますさらされる世界とは、追い詰められた支配者や誇大妄想的な支配者が、熱核兵器の使用に誘惑されかねない世界でもある。そして核の時代は、始まったときと同じように、嘘とともに終わるかもしれない。
弁護士、長年にわたる社会運動家。反人種差別スリラー小説『Mississippi Reckoning』(2019年)の著者。
INPS Japan
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エネルギー輸出国カザフスタン、次に目指すのは「知能」の輸出
NVIDIAのジェンスン・フアン氏がアスタナを訪問。資源と産業の経験を、AI時代の仕事や事業へと変える取り組みが進んでいる。
【東京/アスタナINPS Japan=浅霧勝浩】
カザフスタンは長年、地下から採掘した資源を世界へ供給してきた。10月23日に首都アスタナを訪れた米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、そのエネルギーの一部を、新たな輸出品へと変える可能性を語った。
「将来はエネルギーを輸出するだけでなく、それを知能へと変換し、知能を輸出することができる」|英語版|
舞台となったのは、球体の旧万博施設を活用した国際人工知能センター「alem.ai」だ。フアン氏はここで、ジャスラン・マディエフ副首相兼AI・デジタル開発相と公開対談を行った。子どもたちが新しい技術に触れ、学生が学び、起業家や研究者が活動するこの施設で、同氏は、電力、産業の知識、技術人材を組み合わせることで、カザフスタンがAI経済の一翼を担えると論じた。
対談では、その構想を国際資本と具体的に結びつける発表もあった。マディエフ氏は、NVIDIAがAI動画生成企業Higgsfieldに投資したと明らかにした。
カザフスタンと米国に拠点を持つ同社について、フアン氏は、創業者らの構想と技術力、豊富な資金を持つ世界の競合企業に挑む姿勢を評価した。
「投資するのは企業ではなく、人だ」と述べた。
主催者によると、Higgsfieldではカザフスタン国内で600人超が働いている。フアン氏は、2つの国の文化と専門知識を結びつけ、国際市場で競争するチームの能力を強調した。対談では投資額や出資比率は明らかにされなかったが、この発表はカザフスタンが育てようとしている企業像を示した。国内の人材を生かし、世界に向けて製品を開発する企業である。
フアン氏の訪問は、9月23日に始まった一連の催し「AI月間」を締めくくるものだった。10月初旬の「AI & Digital Bridge 2026」では、政府当局者や経営者らが、計算基盤、投資、通信、教育を結びつける計画を示していた。10月23日には、世界のAI産業の多くを技術面で支える企業のトップが、その方向性への支持を表明した。
NVIDIA自身も、この市場の拡大から利益を得る立場にある。カザフスタンが計画する計算施設では同社の半導体の利用が想定され、現地の通信会社も同社の技術を使った基盤整備を進めている。
カザフスタンの目的は、天然資源に依存する経済の多角化だ。資源産業を支える電力や、そこで培われた知識を、新たな技術、仕事、輸出収入へとつなげようとしている。
マディエフ氏は、2035年までに発電設備容量をほぼ倍増させ、40ギガワットを超える水準へ引き上げる計画を説明した。政府はAI戦略を、エネルギー、半導体、クラウド基盤、AIモデル、応用サービスという5つの層で捉えている。
フアン氏の説明も、電力から始まった。AIは利用者の求めに応じて出力を生成するため、継続的な計算処理を必要とする。その処理を担う施設を、同氏は「AI工場」と呼ぶ。電力とデータを使い、経済活動を支える価値を生み出す場所という意味だ。
エキバストゥズで計画されている「データセンター・バレー」は、その構想を実現するための取り組みである。最新の公式発表では、初期容量を250メガワットとし、1ギガワットまで拡張できるとしている。フアン氏は、通信網の改善によって、カザフスタンが欧州のAI経済につながる計算拠点になりうると述べた。
基盤を整えるだけでは、新たな産業は生まれない。研究者や企業が計算能力を利用し、顧客の課題を解決する製品やサービスを開発することで、投資の効果は経済全体へと広がる。
INPS Japanが10月初旬にアスタナで行った取材でも、当局者らは、計算資源へのアクセス、教育、スタートアップ支援を一体的な取り組みとして説明していた。今回の対談は、そのつながりを、同国が蓄積してきた産業の専門知識へと広げた。
フアン氏は、現実の物理的な環境を理解し、その中で動作するシステムを支える「フィジカルAI」について論じた。その応用はロボットにとどまらず、鉱山や油井の地図化、地質の分析、鉱物加工、新素材の開発にも及ぶ。
鉱業、農業、エネルギー、物流は、カザフスタンが長年にわたり知識を蓄積してきた分野だ。これらの産業を理解する人々とAI開発者が協力すれば、その経験を新たな製品へと変える道が開ける。
主催者の発表では、国内の産業現場を、技術の開発、訓練、実証に向けた国際協力の場として開く構想が示された。目標には、生産性の向上とともに、職場の安全性の改善も含まれる。
フアン氏は、フィジカルAIはまだ発展の初期段階にあり、カザフスタンにもその将来を形づくる機会があると述べた。訪問中に見たロボット関連企業にも触れ、現地の開発者との協力に期待を示した。
対談では、自国の言語と文化を反映するAIも焦点となった。
マディエフ氏は、公開されている基盤モデルをカザフ語やその文化的背景に適応させる取り組みを説明し、独自の基盤モデルをゼロから開発する意義について尋ねた。
フアン氏は、国のデータには歴史、文化、価値観が含まれていると強調した。それを管理し、国内でAIサービスを提供する能力は、電力網や通信網に匹敵する基盤になると論じた。
そのうえで、公開された技術を自国の言語や文化に適応させ、国内で運用する道を支持した。カザフスタンの科学、数学、ソフトウエア開発の専門知識が、その能力を育てる土台になるという。
学校や公共サービスでAIの利用を広げるには、人々が使う言語で機能し、その暮らしの実情に応えるシステムが必要だ。それぞれの地域の言語に対応することは、AIの恩恵を広く行き渡らせるうえで欠かせない。
そうした道具を使う人々をどう育てるかも、対談を通じて繰り返し取り上げられた。
フアン氏は、AIが農業者の事業拡大、科学者によるより多くの問いの探究、技術者によるより優れた設計の検討を助けると論じた。その際に何度も用いたのが、意欲や志を意味する「ambition」という言葉だった。
マディエフ氏は、子どもがAIに頼りすぎず、考える力を育てるにはどうすればよいかと尋ねた。フアン氏は、もっと学びたいと願う子どもにとってAIは助けになると答え、好奇心や向上心を育む親や教育者の役割を強調した。
同様の問題意識は、10月初旬のINPS Japanの取材でも聞かれた。アティラウから来た18歳の学生ダスタンさんは、翻訳アプリを介したやり取りで、自分自身で理解を深める代わりにAIへ頼ることへの懸念を示した。
alem.aiでは、12~18歳を対象とするTUMOや、成人向けのTomorrow Schoolなどが、実践的な学習機会を広げている。フアン氏は、訪問先で若者がすでにAIを使い、開発に取り組んでいたことを評価した。
教育を担う機関の国際協力も進む。公式発表によると、12の技術系大学の代表者が、NVIDIAのDeep...
中国の対日輸出規制――「サラミ・スライシング戦術」か、それとも戦略的な牽制か?
この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています
【Global Outlook=和田 大樹】
今日の国際政治経済においては、国家間の対立や外交的摩擦と、経済的な相互依存関係がますます複雑に絡み合うようになっている。特に、サプライチェーンが少数の国々に大きく依存している場合、貿易制限や輸出管理は、政府が戦略的な影響力を行使するための強力な手段となり得る。中国による日本向け輸出規制の強化は、こうした国際環境の変化を象徴する事例といえる。|英語版|
その一つの解釈として、中国政府が、全面的な禁輸措置を直ちに発動するのではなく、規制を段階的に拡大する「サラミ・スライシング戦術」を用いている可能性が考えられる。この手法を取れば、さらなる規制強化の余地を残しながら、相手国に継続的な圧力をかけることができる。ただし、政治的な報復や戦略的なシグナルの発信など、別の解釈についても検討する必要がある。
中国が日本に対する輸出規制を強化している背景には、日中関係の悪化、とりわけ台湾問題と日本の安全保障政策の変化が密接に関わっている。
2025年11月、高市早苗首相は台湾有事の可能性に関する発言を行い、中国政府はこれを強く批判した。その後、中国は貿易・輸出規制の強化を、日本による台湾問題への干渉と結びつけて説明するようになった。
2026年1月6日、中国は日本向けの軍民両用(デュアルユース)品目に対する輸出管理の強化を発表した。その理由の一つとして、台湾海峡における武力介入の可能性に言及した日本の指導者の発言を明示的に挙げた。
このことから、一連の措置は政治的なシグナルの発信、あるいは報復として理解することもできる。中国政府は、単に日本に経済的損害を与えようとしているのではなく、自国が安全保障上の重大な一線を越えたとみなす行動には、具体的な経済的代償が伴うことを示そうとしている可能性がある。
したがって、輸出規制には二つの目的が同時に存在すると考えられる。一つは日本の政策に対する対抗措置であり、もう一つは、台湾有事への日本の関与がさらに深まれば、追加的な経済的負担が生じ得るという警告を発することである。
もう一つの解釈として、中国のことわざである「殺鶏儆猴(鶏を殺して猿を脅す)」に通じる戦略が考えられる。これは、特定の相手に不利益を与えることで、より広い範囲に警告を発するという考え方である。
中国は、日本との貿易全体を直ちに制限するのではなく、特定の日本企業や団体を規制対象とすることで、全面的な禁輸措置に伴う混乱を避けながら、経済的な圧力を行使する能力を示すことができる。この解釈は、最近の規制対象に日本の防衛・安全保障分野に関係する企業や団体が複数含まれていることからも、特に重要である。
中国は、こうした措置を段階的に拡大してきた。
2026年2月24日、中国政府は日本の企業・団体20件を輸出管理リストに、さらに20件を監視対象リストに追加した。対象には、航空宇宙、防衛、海洋システム、先端技術などの分野に関わる企業や団体が含まれていた。
続く6月29日には、日本の企業・団体20件を輸出管理リストに、さらに20件を監視対象リストに追加した。中国政府は、これらの措置について、国家安全保障を守り、日本の軍事能力の強化につながり得る活動を防止するために必要だと説明している。
こうした規制強化の進め方には、「サラミ・スライシング戦術」に共通する特徴が見られる。
中国は、一度に全面的な禁輸措置を発動するのではなく、規制を段階的に導入し、その対象を拡大してきた。この手法によって、中国政府は日中関係の動向に応じて圧力の強さを調整しながら、将来さらに規制を強化する選択肢を確保できる。
ただし、規制が段階的に強化されているという事実だけで、その背後にサラミ・スライシング戦術が存在すると断定することはできない。こうした動きは、日中関係で相次いで生じた出来事に対する、中国政府の個別の対応を反映しているにすぎない可能性もある。
この違いを見極めることは重要である。経済的な規制措置は、直接の対象となる製品や企業の範囲を超えて、広範な影響を及ぼし得るからだ。
日本は、レアアース(希土類)、重要鉱物、機械、電子機器、その他の産業用資材をめぐる製造・供給網を通じて、中国と密接に結びついている。
中国によるレアアースの輸出規制は、すでに日本の産業界に不確実性をもたらしている。ロイター通信は2026年6月、日中間の外交的対立が続くなか、複数の重希土類について、日本向けの輸出が引き続き厳しく制限されていると報じた。
こうした規制は、中国からの供給に大きく依存する産業に対して、経済的な措置がいかに影響を及ぼし得るかを示している。
したがって、戦略的に重要なのは、個々の規制が直ちにもたらす経済的影響だけではない。規制によって生じる不確実性そのものも重要なのである。
企業が、今後の輸出許可の判断は外交関係の動向によって左右される可能性があると考えれば、中国の供給業者への依存に一層慎重慎重になるだろう。
たとえ輸出が正式に禁止されていなくても、審査の厳格化、許可の遅延、さらなる規制強化の可能性が存在するだけで、企業はサプライチェーンの多角化を進める動機を持つことになる。
つまり、経済的圧力は、正式な規制措置を通じてだけでなく、重要な資材を将来にわたって安定的に調達できるかどうかという企業の見通しが変化することによっても生じ得るのである。
このため、日本が直面する課題は、中国の個々の規制措置に対応することだけにとどまらない。
日本政府は、それぞれの規制が一時的な外交的対抗措置なのか、日本の安全保障政策に影響を与えようとする試みなのか、あるいは経済的依存関係を利用した長期的な戦略の一環なのかを見極める必要がある。
しかも、これらの解釈は必ずしも相互に排他的ではない。
政治的な報復は、戦略的なシグナルの発信と同時に行われ得る。また、規制を段階的に実施することは、それ自体がサラミ・スライシング戦術に共通する特徴を生み出すことにもなる。
したがって、中国による対日輸出規制を、単一の戦略概念だけで説明するべきではない。
「サラミ・スライシング戦術」は、経済的圧力が段階的に強化される過程を理解するうえで有用な分析の枠組みの一つである。しかし、台湾問題に関する日本側の発言への報復、戦略的なシグナルの発信、そして国家安全保障を重視する中国の輸出管理政策全体の方向性も、別の説明として、あるいは相互に補完し合う要因として考慮する必要がある。
一連の措置は、単一の固定された戦略に基づくものではなく、複数の目的が重なり合って生じている可能性がある。
日本にとって中心的な課題は、外交、国家安全保障、そして経済的相互依存が交差する状況に、いかに対応するかということである。
そのためには、サプライチェーンの強靱性を高め、重要資材の調達先を多角化し、リスクを早期に察知する能力を強化するとともに、中国との対話の経路を維持することが、ますます重要になるだろう。
経済的相互依存が国家間の戦略的競争と一層深く結びつくなか、日本の経済安全保障を確保するためには、目に見える輸出規制の内容だけでなく、その背後に込められた政治的なシグナルを正確に読み解くことが不可欠である。
Original URL:China’s Export Controls on Japan: Salami-Slicing...
|視点|本か、爆弾か?―教育予算を求めるフランスの高校生たちとNATOの軍事費増額圧力(メディア・ベンジャミンCODEPINK共同創設者)
【ニューヨークINPS Japan/The Other News=メディア・ベンジャミン】
フランス全土で、高校生たちが教育への投資拡大を求め、3週連続で街頭に繰り出している。彼らが求めているのは、教員の増員、少人数学級の実現、適切な校舎設備の整備、そして貧困層や労働者階級の子どもたちにも十分な教育機会を保障する公教育制度だ。
しかし、この抗議運動は、フランス政府が公共支出の削減を迫られる一方、軍事予算の大幅な増額を求められている時期に起きている。
この運動が突きつけている問いは、教育問題にとどまらない。フランスは若者の未来に投資するのか。それとも、ミサイルや兵器、戦争に資金を注ぎ込むのか。
本か、それとも爆弾か。
9月中旬にパリ郊外で始まった抗議運動は全国に拡大し、これまでに累計1000校以上の高校で授業の中断や封鎖が発生した。
10月6日には、高校生たちを支持する全国規模のデモが行われ、内務省によれば25万6000人が参加した。主催者側は参加者数を45万人と発表している。
政府の対応は、学生たちの怒りをさらに増幅させている。当局は彼らの要求に耳を傾ける代わりに、機動隊を投入し、催涙ガスやグレネード弾を使用して、多数の若者の身柄を拘束してきた。
法務省が10月9日に公表した集計によれば、8日時点で6877人が警察での留置措置を受け、そのうち5890人が未成年者だった。ただし、留置された全員が訴追されたわけではない。
一部の若者は深刻な負傷を負っている。10月5日には、フランス北部ランス(Lens)の高校付近で、警察が使用したグレネード弾の爆発により15歳の少年が片手を失った。
少年がグレネード弾を拾ったかどうかなど、爆発に至る詳しい経緯については証言が食い違っており、警察監察総監室(IGPN)が調査を進めている。この事件を受け、内相は高校生の抗議活動における閃光音響弾の使用を停止した。
アムネスティ・インターナショナルは、教育を受ける権利を訴える若者たちに対して警察が「不均衡な」武力を行使していると非難し、平和的な集会の権利を保障するよう当局に求めている。
その対照は鮮明だ。
生徒たちが求めているのは、教員の増員とまともな学校教育である。ところが政府は、彼らに機動隊を差し向ける一方で、軍事費にはさらに数十億ユーロを上積みしようとしている。
こうした学生運動が広がっているのは、北大西洋条約機構(NATO)が欧州各国に対し、防衛・安全保障関連支出の大幅な増額を求めているさなかのことだ。
2025年、ワシントンからの強い圧力を受け、NATO加盟国の首脳たちは、2035年までに各国の国内総生産(GDP)の5%を防衛・安全保障関連支出に充てるという、驚くべき新たな目標に合意した。
そのうち少なくとも3.5%を直接的な軍事支出に、残り最大1.5%を防衛関連インフラ、サイバーセキュリティー、危機への対応力を意味する「レジリエンス」などに充てるというものだ。
これは、従来のGDP比2%という目標からの大幅な引き上げを意味する。しかも、従来の目標ですら、達成に苦労してきた加盟国は少なくなかった。
財政赤字の拡大、多額の政府債務、公共サービスの劣化に直面する国々にとって、これほどの軍事費増額は極めて大きな代償を伴う。
フランスは、その典型的な事例である。
同国の公的債務は約4兆ドルに達し、2026年末にはGDP比119.3%、2027年には121.7%に上昇すると予測されている。これは欧州でも特に高い水準だ。
財政赤字を削減するため、政府は2027年度に総額540億ユーロ規模の財政改善を目指しており、歳出抑制や税制措置を通じて、すでに厳しい状況に置かれている公共サービスにもさらなる負担を求めようとしている。
ところが、国民に緊縮財政への協力を求める一方、政府が提案する2027年度予算では、国防費を前年比約64億ユーロ増額する計画だ。これに対し、教育予算の増額は12億ユーロにとどまる。
教育予算自体は増額されるものの、教員の定数は常勤換算で差し引き1588人分削減される見通しだ。ただし政府は、研修中の教員や生徒の支援に携わる職員などを含めれば、教育省全体の雇用枠は3257人分増加すると説明している。
想像してみてほしい。
雨漏りする教室で、大勢の同級生と肩を寄せ合いながら授業を受ける16歳の生徒がいる。常勤の教員すら確保されていない。
その生徒は、政府から「学校を改善するための予算はない」と聞かされる一方で、兵器の購入には何十億ユーロもの追加予算が確保されるという現実を目の当たりにしているのだ。
フランスの独立した財政監視機関である高等財政評議会(HCFP)も、2027年度の中央政府支出の増加が、主として国債の利払い、欧州連合(EU)への拠出金、軍事費の増加によって生じていると指摘している。
NATO当局者は、こうした大規模な軍備増強は、ロシアをはじめとする脅威から欧州を守るために必要だと主張する。
しかし、ロシアが今にもフランスへ侵攻しようとしているかのような見方は、ばかげている。
そして、軍事費の際限ない増額を求める動きは、根本的な疑問を投げかける。
学校や病院をはじめとする公共サービスが荒廃するまま放置されているとすれば、フランス政府はいったい何を守ろうとしているのだろうか。
こうした状況は、フランスだけの問題ではない。
ベルギー、スペイン、ポルトガルでも、教育予算や労働条件の改善を求めて、学生や教員が街頭で抗議活動を展開している。
その背景には、基本的な公共サービスを維持する予算がないと繰り返す欧州各国政府に対する、不満の高まりがある。
欧州が冷戦終結以来、最大規模ともいえる軍備増強に乗り出す一方で、若い世代全体が緊縮財政を受け入れるよう求められているのだ。
政治指導者たちは、教育予算と軍事費は別々の問題だと主張するかもしれない。
しかし、両者が限られた公的資源を奪い合っていることに変わりはない。
そして、フランスの高校生たちの中には、すでにこの問題のつながりを明確に認識している者もいる。
抗議デモでは、「戦争ではなく学校に予算を」「ジェノサイドではなく高校教育に資金を」と書かれたプラカードが掲げられている。
彼らは、教育環境の改善という身近な要求を、政府が何に、そして誰のために公的資金を使うのかという、より大きな問題と結びつけているのである。
こうした若者たちは、「安全保障」とは何かという、その定義そのものに異議を唱えている。
NATOは、安全保障を戦車、ミサイル、ドローン、弾薬などの軍事力によって測ろうとする。
これに対し、学生たちが求めているのは、まったく別の安全保障だ。
それは、十分な教育を受けられる学校、平等な機会、そして終わりの見えない軍備増強のために若者の未来を犠牲にするのではなく、その未来に投資する社会である。
彼らの訴えは、米国を含むNATO加盟国全体に響き渡るべきものだ。
米国でも、公共サービスが削減の圧力にさられる一方、トランプ政権は2027会計年度の国防関連予算を前年度比44%増の総額1兆5000億ドルに引き上げるよう求めている。
だからこそ、私たちCODEPINKと連携団体は、11月10日から12日にかけて、ワシントンD.C.で「納税者の決起行動(Taxpayer Uprising)」を組織している。
市民が連邦議会に足を運び、国家の優先課題を根本から見直すよう議員たちに求める取り組みだ。
戦争や兵器製造企業に、際限なく税金を注ぎ込むのではなく、医療、教育、手頃な価格の住宅、再生可能エネルギー、そして持続可能な未来にこそ投資すべきである。
フランスの教室から米国連邦議会の議場まで、問われていることは同じだ。
私たちの政府は、人々の命と暮らしに投資するのか。それとも戦争に投資するのか。
本か、それとも爆弾か。
メディア・ベンジャミン(Medea Benjamin)は、米国の平和運動団体CODEPINKおよび人権団体グローバル・エクスチェンジ(Global Exchange)の共同創設者。
INPS Japan
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