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アジアにおける女性器切除は、依然として無視されている問題である

【クアラルンプールIPS=ナウミ・ナズ・チョードリー】        アフリカでは、女性器切除(FGM/C)の廃止に向けて大きな前進があった。残念ながら、アジアでは同じことは言えず、少なくとも10カ国でFGM/Cが行われているが、この地域の各国政府は効果的な行動を起こしていない。女性の権利団体は、各国に対し、FGMを犯罪化するために必要な法律を導入すること、この慣習の範囲と性質に関する国内データを提供すること、そしてこの地域で無視されているこの問題に取り組む努力に十分な資金を提供することを求めている。 アジア各国政府にFGM/Cの犯罪化を求める声 FGM/Cは主にアフリカで起こるという誤解が広く残っており、アジアにおけるFGM/Cの認知度の低さが不作為の一因となっている。 近年、国連は国際人権条約機関やその他の人権メカニズムを通じて、インド、スリランカ、シンガポール、モルディブなどのアジア諸国に対し、FGM/Cに対処し、禁止するための具体的な法律を制定するよう勧告を行っている。しかし、アジアのどこにもFGM/Cを禁止する法律はない。 第7回アジア太平洋人口会議(APPC)では、7つの女性権利団体が、FGM/Cに対するゼロ・トレランス・アプローチの導入について、地域政府に共同提言を行った。 APPCは、アジア太平洋地域の人口と開発に関する重要な問題を議論するため、10年ごとに開催される地域レビュー・メカニズムである。2023年11月15~17日にタイの国連会議センターで開催され、女性の権利活動家たちは、サイドイベント「アジア太平洋地域における公正で持続可能な開発を達成するための基盤としての権利に基づくアプローチ」を招集し、参加者はFGM/Cを含む女性と女児に影響を与える有害な慣行について議論した。 議員たちは、確固とした法的・政策的措置を講じるよう助言され、提言は「市民社会の行動呼びかけ」と「若者の行動呼びかけ」の中で取り上げられた。 FGM/Cは世界的な問題である FGM/Cは、医学的な理由以外で女性器の一部または全部を切除したり、女性器を傷つけたりする有害な行為である。 国際的に女性と女児の人権に対する重大な侵害と認識されているFGM/Cは、女性と女児の性欲をコントロールし、抑制する目的で行われる。感染症や激しい痛み、精神的トラウマ、性的機能障害、生殖に関する健康問題、出産合併症、場合によっては死亡など、生涯にわたってさまざまな身体的・心理的問題を引き起こす可能性がある。 世界保健機関(WHO)の対話型データツールによると、27カ国においてFGM/Cによって引き起こされた問題を抱える女性の医療にかかる経済的コストは、年間14億米ドルに上ることが明らかになった。WHOはまた、もしFGM/Cが廃止されれば、2050年までに医療費の60%以上が節約できると推定している。 FGM/Cは世界的な問題である。世界中でFGM/Cを受けている女性と女児の数は、公式には2億人以上と推定されている。しかし、実際の規模ははるかに大きい。学会やメディアの報告、市民社会団体が収集した非公式データ、生存者へのインタビューに基づく逸話的研究によると、FGM/Cは南極大陸を除くすべての大陸で見られることが明らかになっている。 アジア各国政府はFGM/Cに関するデータ提供を アジアで国レベルのFGM/C関連のデータを共有しているのはインドネシアとモルディブだけで、他のアジア諸国からは公式データは提供されていない。しかし、学術研究と生存者の証言は、ブルネイ、インド、マレーシア、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイでFGMが行われていることを強く示している。 正確で包括的な国内FGM/Cデータ収集は、女性と女児がどのように直接影響を受け、危険にさらされているかを理解するために不可欠である。また、どのようなコミュニティが関与しているのか、どのようなFGM/Cが行われているのか、健康、人権、身体の自律性にどのような影響があるのか、といった重要な洞察も得られる。 FGM/Cに関するデータは、適切な支援を計画し、その効果を測定するために利用することができる。さらに、信頼できる統計は、資金を集め、政府やその他の義務者に説明責任を果たさせるための鍵となる。 データの欠如は、政府が不作為の根拠を主張する機会を与えることになる。例えばインドでは、2023年の国会でのFGM/Cに関する質問に対し、女性・児童開発省は、国内にはFGM/Cの事例がいくつかあるかもしれないが、「その一般的な存在を立証する信頼できるデータはない 。」と指摘した。 FGM/Cをなくすためのコミュニティ活動への投資 他の地域とは異なり、アジアのほとんどの地域では、FGM/Cに関する地域社会の教育や啓発のための大規模な政府プログラムはほとんどない。予防や草の根活動の支援に向けられる資源はほとんどなく、地元の団体が資金を確保するのも難しい。 FGM/Cをなくすためのアジア・ネットワークが主導するような集団行動は、必要なスポットライトを当て、女性と女児を支援し、国内および国境を越えた協力体制を活性化する上で、非常に貴重な役割を果たしている。 FGM/Cの根絶は、加害者を罰し、生存者のニーズを満たす法律と政策に支えられた、FGM/Cの有害な影響に関する地域社会の積極的な関与によってのみ可能となる。これを達成するために、アジアの各国政府は、市民社会組織、影響を受ける地域社会、生存者と連携して、FGM/Cをよりよく理解し、効果的な政策を策定し、実施し、社会的、法的、教育的、保健的サービスの提供に投資する必要がある。 FGM/C撤廃に向けた世界的コミットメント 国連は2月6日を「女性器切除を許さない国際デー」と定めた。私たちがFGM/Cをなくすためにどこまで進んでいるかは、FGM/Cをなくすために各国が交わした国際的な約束がどの程度履行されているかによって測られる。 各国がしっかりとした措置をとるために、さまざまな国際人権メカニズムが整備されてきた。持続可能な開発目標5.3や、女性差別撤廃条約(CEDAW)や子どもの権利条約(CRC)といった女性と女児の権利に関する国際人権条約は、FGM/Cを明確に禁止し、対策を講じるよう各国に求めている。 国際人口開発会議(ICPD PoA)の行動計画などの国際文書は、各国にFGM/Cの根絶を促し、そのための措置を盛り込んでいる。推奨事項には、「......村や宗教の指導者を含む強力な地域社会への働きかけプログラム、少女や女性の健康への影響に関する教育とカウンセリング、切断を受けた少女や女性の適切な治療とリハビリテーション」(ICPD PoA 7.40)が含まれる。 アジアにおけるFGM/Cの終結は優先されなければならない。 1994年に国際人口開発会議(ICPD)が初めて開催されてから、2024年で30年を迎える。この記念すべき年は、女性と女児のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康と権利)を世界的に推進するという分野において、重要な節目となる。FGM/Cの終結はその重要な要素であり、そのための世界的な公約を効果的に実施するためには、世界的な取り組みがアジアを優先的に重視しなければならない。 アジア諸国が現在の課題を解決するために立ち上がらない限り、アジアにおけるFGM/Cを最終的に終わらせるための立法措置の導入と効果的な実施を提唱する上で、行動を促し、政策を立案・実施し、政府やその他の義務者に責任を負わせることは困難だろう。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau 関連記事: 「アフリカの角」地域で未曽有の干ばつ |視点|全ての少女に学籍を認めることが児童婚に歯止めをかける一つの方法(アグネス・オジャンボ『人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ』研究員) |カメルーン|娘を「守る」ために胸にアイロンをかける?

ヤンゴン、分裂するミャンマーにおける軍政バブル

【ヤンゴンIPS=ウィリアム・ウェブ】 約100年前、ラングーンに降り立った若きチリの詩人は、この街を「血と夢と金の街」「澱んだ通り」と描写した。当時大英帝国が統治していたビルマの首都とその主要港は、アジア旅行の中継地点として必見の場所だった。 1927年にパブロ・ネルーダが詠んだこの詩は、今日でも真実味を帯びている。現在はヤンゴンと呼ばれる500万を超えるこの都市には、快楽主義的な部分とディストピア的な部分、そして、3年前に権力を掌握した軍事政権の煽動と息苦しさの両方が混在している。 現実には、ミャンマーはもはや地図上以外にはまとまった国として存在していない。軍事政権を支持する勢力と反政府勢力が複雑に入り乱れる極めて残忍な紛争が3年間続いているが、ヤンゴンは依然として重要な商業の中心地であり、全国的な分断が止まらない中で比較的平穏ではあるが、深い悩みを抱えたバブルを経験している。 2021年2月にそれまでに2度選挙で選出されたアウン・サン・スー・チー政権をクーデターで打倒した国軍は、ミャンマーの大部分に対する支配力を失いつつある。主に中国とロシアによって武装された軍事政権側は、ミャンマーの中心地で、史上初めて圧倒的多数で国軍の将軍らに反旗を翻した国民を恐怖に陥れるために、航空優勢と大砲を駆使した弾圧を行っている。 しかし、戦闘はまだヤンゴンにまで及んでいない。ここでは軍が外貨を獲得しようと、外国人に観光ビザや商用ビザを発行している。 ヤンゴンのもう一つの 「現実」は、世界最貧国の一つにランクされているにもかかわらず、実際には100年前に詩人ネルーダが描いた血と金に溢れているということだ。特にメタンフェタミン、ケタミン、アヘン/ヘロインといった麻薬の生産と取引が拡大し、中国やタイとの国境沿いには人身売買の犠牲者が集まる広大なカジノ、売春宿、詐欺拠点があり、そこから数十億ドルが流れている。 軍事政権がこれらすべてを直接支配しているわけではないが、民兵、犯罪組織、一部の民族武装グループと同様、大きなシェアを占めている。 ヤンゴンに新たにオープンしたナイトクラブの外には、きらびやかな白いベントレーが停まっている。ここに足しげく通っている顧客は、西側諸国による制裁にもかかわらず、あるいは制裁のおかげで商売が繁盛しているヤンゴンのエリート「取り巻き」たちだ。豪華なバーの店内では、スマートな服装、なかには派手な服装をした若者たちが、高価な洋酒やトリュフ風味のフライドポテトを注文している。 ある慈善団体の職員は、「ここは狂気が支配しています。近くを歩くとロールスロイスやフェラーリ、ブガッティといった高級車が駐車しています。そのような仰々しい富が溢れている一方で、看護師一人を探すのにも苦労しています。」と語った。 別の場所では、ビルマのテクノロックのブーンブーンという音と、ナイトクラブ「レビテート」のストロボライトが、踊り狂う大衆の間の会話をかき消している。ある常連が言うように、ここでは「エクスタシー、ケタミン、コカインの選択肢」がある。壁には、「FUCK THEM WE SLAY(やつらをやっつけろ)」というネオンサインがぼんやりと光っていた。 さらに視線を移すと、ヤンゴンでおなじみの野外の「ビアステーション」も繁盛している。抵抗勢力の支持者たちは、国軍の地場複合企業(コングロマリット)が所有するかつての人気ブランド、ミャンマー・ビールのボイコットという立場をとっているが、より高価な代替品も存在する。 そして、物乞いの数も増えている。特に子どもたちは、渋滞をすり抜けて、開いた車の窓から手を突っ込んだり、陸橋の日陰で母親と身を寄せ合ったりしている。 国軍によるクーデターから3周年となる2月1日、抵抗勢力は「沈黙のストライキ」を呼びかけ、平和的な抗議のために路上から離れるよう促した。ヤンゴンでは、昨年よりも参加者は減少している。 「人々は疲れて果てていて、ただ自分たちの生活を続けたいだけなのです。」と、ある長年のオブザーバーはコメントした。 これが核心だ。日常は続いているが、それはビルマ人の軍事政権への反発が弱まったことを意味しない。2021年に軍が街頭デモを大量逮捕と実弾で鎮圧したときのように、アウン・サン・スー・チー女史は獄中から抜け出せず、来年80歳を迎えるが、依然として人気は高い。 しかし、あるビジネスマンが言ったように、「今、事態は崩壊しつつあり、軍政権は行き詰まっているという強い感覚がある」としても、人々は軍の崩壊が間近に迫っているという野党の宣言に対する信頼を失いつつあるようだ。 ヤンゴンの住民の中には、遠く離れた地方で若いレジスタンスらが戦死し、紛争地域の一般市民が村や学校、寺院で爆撃を受けている一方で、自分たちは比較的裕福に暮らしているという罪悪感に嫌気がさしている者もいる。 多くの人々が国外に脱出しようとしている。合法的にパスポートを取得したり、危険を冒してジャングルを抜けてタイに向かったり、少数民族として迫害されているイスラム教徒のロヒンギャのように海路で密航したりしている。ヤンゴンでは日本語を勉強するのが突然流行りだした。 昼間のヤンゴンの街は、ほとんどの場所に軍隊が駐留することもなく、ごく普通に見えるが、夜になると一変する。私服警察が身分証明書の提示を要求し、携帯電話を調べる。不審な銀行への支払いは、おそらく野党へのものだろうが、逮捕や賄賂要求の対象となる。 クーデター後のパンデミック封鎖で経営が破綻したイェさんは、多くの人がそうであったように、しばらく休学させていた子供たちを公立学校に戻した。しかし子供たちは母親とは長い間会えないだろう。なぜなら母親は介護福祉士として海外に出稼ぎに出ているからだ。 多くの家族と同様、イェさん一家は生活費、特に食費の高騰に頭を悩ませている。毎日の停電は、予定されていることもあるが、そうでないことも多く、モンスーン前の猛暑のなかでの生活はほとんど耐え難い。人々は巨大なディーゼル発電機で動くショッピングモールの冷房の効いた涼しさに引き寄せられる。 それでもヤンゴンの活気は抑えがたい。アーティストたちは再び展覧会を開催している(物議を醸すようなテーマは避けている)。チャイナタウンは旧正月を前に買い物客で賑わい、幸運と繁栄、そして権力の象徴であるドラゴンが街を彩っている。(原文へ) ウィリアム・ウェッブは、50年前からアジアに魅せられた旅行作家である。 INPS Japan/IPS UN Bureau 関連記事: |ミャンマー|「都市部の貧困率が3倍に」とUNDPが警告 ミャンマー、「保護する責任」の履行を世界に訴える |ロヒンギャ難民|危機のさなかの危機

BRICS+は多面体、フランシスコ法王のお気に入りのイメージ

【Agenzia Fides/INPS Japanバチカン=ヴィクトル・ガエタン】 第二次世界大戦後、数多くの多国間機関が誕生したが、その中心には米国の存在があった。世界銀行と国際通貨基金は、戦後の世界経済を安定させるために1944年に設立された。国連はその1年後、世界の平和と安全を確保するために高邁な理想の下に創設された。(スペイン語版)(ドイツ語版)(イタリア語版)(フランス語版)(英語版)(中国語) 北大西洋条約機構(NATO)は、ソ連のブロックに対抗するため1949年に結成された西側の軍事同盟である。1961年、経済協力開発機構(OECD)が、自由貿易体制を目指す38カ国を束ねた。G7は1975年のオイルショックに対する組織的対応であり、G20はアジア金融危機後の1999年に登場した。 この75年間、第二次世界大戦後の米国を中心とする国際秩序に挑戦した多国間組織はなかった。…BRICS+が誕生するまでは。 ブラジル、ロシア、インド、中国が2006年に結成し、2010年に南アフリカが加わり、BRICSとして知られる地政学的・経済的同盟が拡大している。今年は新たに4カ国が加盟した: エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)だ。(ロイター通信によると、サウジアラビアはまだ招待を検討中。) BRICS+と脱ドルで誰が得をするのか? BRICS+は、地球上の全人口の45%にあたる約35億人の人口を擁する強力な同盟である。世界の石油の30%を支配している(アメリカは2.1%)。 BBCは、この拡大したグループが世界経済の約28%を占めていると推定している。しかし、加盟国は伝統的な多国間組織を支配する西側諸国から疎外されていると感じている。 BRICSの南アフリカ大使であるアニル・スークラル氏はアルジャジーラの取材に対して、、「グローバル・サウスは世界的な意思決定において周縁にあり、はみ出し者扱いされている。」と解説している。 スークラル氏は、BRICSの目標は 「より包括的で多極的な世界共同体」だと語った。 昨年8月にヨハネスブルグで開催された年次サミットでは、新規加盟希望国(約40カ国)について議論する以外に、BRICSがいかにして世界のドル依存度を引き下げるかが議題となった。 すでに加盟国は、ドルではなく自国通貨での貿易交渉を増やしている。ロシアはインドとルピー建てで取引しており、ロシアと中国の貿易の大半はルーブルか人民元建てである。昨年夏、アラブ首長国連邦(UAE)は貿易取引でインドからルピーを受け入れることに合意した。この変更は、ドル換算にかかるコストを省くことで、インドのコスト削減につながる。エジプトはこのグループに加わったばかりだが、外務省はすでに加盟国に自国通貨建てでの取引を促している。イランもすぐにこのテーマを取り上げた。 ブラジル出身の国際アナリスト、ロベルト・アルベレス氏はフィデス通信とのインタビューで、「アフリカの輸出入銀行にいた友人が、52カ国が自国通貨で取引できるようなプラットフォームを立ち上げました。その銀行の試算では、年間50億ドルが節約されています!つまり、脱ドルには非常に現実的な側面があるのです。現金が不足している国では、お金を節約するためならあらゆる手段を講じます。」と語り、脱ドルは経済的、政治的な動機によるものであることを認めた。 ブラジル経済はドルとの結びつきが強い(外貨準備高の80%以上が米国通貨で保有されている)。しかし、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は昨年、初めて中国を公式訪問した際、こう公言した。「なぜ自国通貨をベースにした貿易ができないのか?」と。 新開発銀行、気候変動と持続可能な開発 ルーラ大統領は上海を拠点とする新開発銀行(NDB)を訪問していた。NDBは2015年に設立され、加盟国および非加盟国のプロジェクト、特にインフラと持続可能な開発に関連するプロジェクトに資金を提供している。 インド最大の州であるラジャスタン州は極度に乾燥した気候で、頻繁な干ばつと灌漑システムの老朽化に悩まされている。NDBは3億4500万米ドルを投資し、1950年代後半に建設された重要な運河システムを復旧させた。このプロジェクトは、水の保全と作物の多様化も支援するように設計された。ラジャスタン州のプロジェクトは、NDBの優先事項の良い例である。 ルーラ大統領の盟友であるディルマ・ルセフ前ブラジル大統領は、昨年春にNDBの総裁に就任し、2025年7月まで務めることになっている。ルセフ総裁は最初の演説で、「NDBは途上国によって、途上国のために設立された銀行であり、すべての加盟国の声を等しく聞くことができる。」と述べた。 ルセフ大統領はまた、「私たちは、低炭素成長を目指し、再生可能エネルギー、グリーンで強靭なインフラに融資することで、温室効果ガス排出量を削減するための世銀加盟国の国家戦略を支援します。」と述べ、NDBの気候変動目標へのコミットメントを明らかにした。 ルセフ氏は2011年から16年までブラジルの大統領を務め、NDBの創設に貢献した。彼女は複雑な汚職容疑で弾劾され、強迫された状態で大統領職を去ったが、フランシスコ法王は昨年、彼女を擁護し、「きれいな手の女性、優れた女性」と呼んだ。教皇は、ルセフとルーラの両者が、メディアや法的手続きを利用して政敵を標的にする「法戦」の犠牲者であることを示唆した。 より多面体に近い? NDB総裁を高く評価するだけでなく、同銀行は企業としてローマ法王にアピールする特徴を備えている。環境に有益なプロジェクト、有益であるがゆえに自立できるプロジェクトに果敢に取り組んでいる。 また、BRICS+は地域や文化の境界を越えている。多くの地域(ラテンアメリカ、欧州、アジア、アフリカ、中東)から、また多様な文化的・宗教的背景を持つ国々、すなわちカトリック(ブラジル)、正教会(エチオピア、ロシア)、ヒンドゥー教(インド)、儒教(中国)、イスラム教(エジプト、イラン、アラブ首長国連邦)の国々が集まっている。 経済制裁が政治戦争の武器として展開され、非常に懲罰的となった国際システムに対する協調的な対応である。 アルバレス氏は、BRICS+によって、例えばブラジルは構造的な方法でアフリカ諸国を支援することができ、それによってカトリック的な衝動と、ブラジルの富を築いたアフリカ人奴隷に対する歴史的な負い目を満たすことができると指摘した。(奴隷はサトウキビ農園で働くためにアフリカからブラジルに連れてこられた。ブラジルの富のほとんどは奴隷制度に基づくものだった)。 アルバレス氏は、ブラジルは1970年代には食料の純輸入国だったが、現在は世界最大の農業純輸出国であると説明した。主に2000年以降の劇的な逆転は、収量を増加させた農業研究、生産技術への大規模な投資、耕地基盤の拡大によって説明される。 「ブラジル企業は新興環境での事業に精通しており、具体的で関連性の高い技術ノウハウを移転することができる。アフリカとの関わりは人間的価値観を満足させ、双方が共に儲けることを可能にする。 「私たちは、常に視野を広げ、私たちすべてに益となる、より大きな善に目を向けるようにせねばなりません。」と、ローマ法王は教皇職のプログラムを示した『エヴァンゲリイ・ガウディウム』の中で書いている。この使徒的勧告には、各文化が自律性を維持しながら全体に貢献するという、世界的な一致の驚くべきイメージが含まれている。 ここで、私たちのモデルは球体ではない。球体はその部分より大きくはなく、すべての点が中心から等距離にあり、それらの間に違いはない。その代わり、私たちのモデルは多面体である。多面体とは、すべての部分の収束を反映し、それぞれが独自性を保つものである。司牧活動も政治活動も、それぞれの長所をこの多面体に収束しようとしている。貧しい人々やその文化、彼らの願望や可能性を受け入れる場所がある。過ちを犯しているとみなされかねない人々でさえ、見過ごしてはならない何かを持っている。普遍的な秩序の中で、それぞれの個性を維持する民族の集まりであり、共通善を追求する社会における人々の総体であり、真にすべての人のための場所を持つものである。 BRICS+は、国の違いが結束を高める多極化世界を体現している、注目すべき実験である。次回のBRICS+年次首脳会議は、10月にロシアのカザンで開催される。フランスのエコノミスト、ジャック・サピール氏は、急成長するこの同盟に、アルジェリア、タンザニア、インドネシアが新たに加わるだろうと予想している。(原文へ) *ヴィクトル・ガエタンは、ナショナル・カトリック・レジスターのシニア特派員で、国際問題を担当している。フォーリン・アフェアーズ誌にも寄稿し、カトリック・ニュース・サービスにも寄稿している。著書に『God's Diplomats』がある: Pope Francis, Vatican...

宇宙への核兵器配備は現実か、それともこけおどしか

【国連IDN=タリフ・ディーン】 宇宙空間における核兵器に対する恐怖の高まりは、国連が「宇宙空間の平和的利用に関する委員会」を常設機関として立ち上げた65年前の1959年には想像もつかないことだっただろう。 国連における臨時委員会としては最大の102参加国を擁した同委員会は、「平和、安全、開発のために」を標語に、人類全体の利益のための宇宙の探査・利用を規制するために設置された。 しかし、ロシアが宇宙を基盤とした兵器の打ち上げを提案したとの観測が広まり、それが米国をさらなる開発に向かわせている。 『ニューヨーク・タイムズ』は2月19日の記事で、米国のアントニー・ブリンケン国務長官が宇宙空間で核爆発が起これば、米国だけではなく中国やインドの衛星も破壊されることになろうと発言したと報じている。 米国は他方で、自らの(核兵器)は人類に真の脅威を与えていない、としている。 米国家安全保障会議の戦略的コミュニケーション問題担当ジョン・カービー氏は2月19日、「人間を攻撃したり地表を物理的に攻撃したりするようなタイプの兵器については議論していない」と記者団に答えた。 国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)で検証・安全保障政策の責任者をかつて務めていたタリク・ラウフ氏は、「少しの知識は危険である」という格言は、バイデン政権に対し、ロシアによる対衛星核兵器の宇宙配備計画とされる「重大な国家安全保障上の脅威」に関する情報の機密指定を解除するよう要求した米下院情報委員会のマイク・ターナー委員長にも当てはまると語った。 幸いなことに冷静さが上回っており、下院のマイク・ジョンソン議長は、パニックに陥ったり警告を発したりする必要はないと述べている。 ラウフ氏によれば、宇宙空間で核爆発が起これば、軌道上にある衛星が破壊され、軍事活動も民生活動も阻害されることになるという。 「軍事部門では、偵察、軍備管理の検証、ミサイル発射の早期警戒、戦闘管理のための衛星が破損あるいは破壊することになれば、米ロ両国ともに被害を受け、『目』を奪われた状態になる。だから宇宙に兵器を配備することにはあまり意味がない。」 ラウフ氏によれば、現在のところ対衛星兵器(ASAT)を禁止する国際体制は存在しないといい、そうした兵器には必ずしも核爆発装置を要するわけではない。弾道ミサイルに搭載された核兵器は、地表上の標的に向かって発射された場合、宇宙空間を飛ぶことになるが、これは、核爆発装置の宇宙での実験や配備を禁じた宇宙条約違反にはあたらないという。 1963年の部分的核実験禁止条約は宇宙における核爆発を禁じている。 国連宇宙問題局の元局長で国際宇宙法・政策研究所のナンダシリ・ジャセントゥリヤナ名誉教授は、法的な観点から言えば、宇宙法は抑止を基盤としたものだと語った。 「ロシアが1967年宇宙条約に違反したことは、自らを傷つける行為であり逆効果だ。報復的な打ち上げを今すぐにでも行おうと手ぐすねを引いている国もいくらかある。」とジャセントゥリヤナ名誉教授は話した。 「軍事力の通信手段を破壊することは、その軍事機構が制御能力を失うということだ。戦時においてすら、交戦当事国は他国の通信ケーブルや主要な通信システムの破壊には及ばないものだ」。 「そんなことをすれば、戦勝国は被征服国の国民やその軍隊との連絡手段を失ってしまう。私の意見では、ロシアは、宇宙条約の違反のみならず宇宙に核を配備することで、失うものが多いことと比較して得るものはほとんどない。」 そうした行為によって短期的には戦術的優位がもたらされるかもしれない。しかし、私の意見では、避けがたい長期的マイナスの方が上回ってしまう。 戦略的なレベルで言えば、「私が理解する限り、詳しいところは――明らかな理由で――隠されており、『核』に言及することで、実際にどのような事態が進行しているのかよく理解しないままに多くの国が軍備に走る結果に陥るのではないか。」 あらゆる種類の噂を引き起こして人々を不安な状態に陥らせるのはロシアの常套手段と言えるかもしれないが、宇宙空間で使用される核兵器の実現性と軍事的有用性には疑問符が付されている。というのも、宇宙空間には大気がなく、何かを爆発させた場合にロシア自身の宇宙施設と他国のそれを区別することができないからだ(米国自身も1960年代にスターフィッシュ・プライムによってそれを経験した)。 かつて国連事務次長も務めていたジャセントゥリヤナは「宇宙空間での(攻撃的な)軍事的任務を帯びた原子力衛星を宇宙上に置くような事態が進行している可能性も否定できない。それが宇宙条約に抵触しないかどうかには議論の余地がある。しかし、重大な脅威であることは間違いない」と述べる。 国連のステファン・ドジャリッチ広報官は、そうした報道がメディア上で出ていることは認めた上で、「具体的な情報は入ってきていない」と語った。 明らかに、原則の問題として言えば、国連事務総長は、法的拘束力のある措置も政治的な措置も含めて、宇宙空間における軍拡競争を回避するようすべての加盟国に呼びかけ続けるだろう。 「そして、核兵器に関して言えば、加盟国は条約上の義務に従い、壊滅的な帰結をもたらす計算違いやエスカレーションにつながりかねないいかなる行為をも回避せねばならない。」とドジャリッチは語った。 ラウフはさらにこう付け加える。「1958年に、月の表面で水爆を爆発させる『プロジェクトA-119』を米国が一時期追求したことを思い出した人もあるかもしれない。地球からでもはっきり見えるきわめて巨大な放射能雲と激しい光によってソ連に米国の力を見せつけることが目的だった。幸いなことにプロジェクトは実行されず月はそのままの形で保たれた。その後、1979年の月条約で月やその他の天体で核実験を行うことが全面禁止された。」 1962年7月、広島型原爆の500倍の威力を持つ爆発力1.4メガトンの米国の核爆発装置「スターフィッシュ・プライム」によって電磁パルスが発生し、いくつかの衛星が使用不能になった。地球上の磁場が爆発から発生した放射線を捉え、その後10年にわたって放射線帯(スターフィッシュ帯)が残った。 米ソともに1960年代初頭に宇宙で核爆発実験を行っている。ソ連の「プロジェクトK」核爆発は1961年から62年にかけて行われ、米国は宇宙で11回の核爆発実験を行っている。 ラウフ氏によれば、対衛星兵器や宇宙空間におけるその他の兵器を禁止するなど、宇宙における軍拡競争の予防(PAROS)に関する取り組みは、ジュネーブ軍縮会議でもニューヨーク国連本部での国連総会第一委員会でも停滞してきたという。 ラウフ氏はまた、国連総会が1959年に設置した「宇宙空間の平和的利用に関する委員会」(ジュネーブ)は、宇宙空間の平和的利用に関する国際協力の促進と、平和・安全・開発のために全人類に利益をもたらす宇宙の探査・利用の規制を任務としていると指摘した。 一般的には、米国とEU諸国は宇宙での活動に関して自主的な行動規範(一例として「宇宙活動に関する国際行動規範」[ICoC])と透明性を求める傾向にあり、中国やロシアなどは宇宙への兵器非配備を規定した法的拘束力のある措置(一例として「宇宙空間における兵器配備及び宇宙空間の対象に対する戦力使用を防止する条約」[PPWT])を求める傾向にあるとラウフ氏は説明する。 ジャセントゥリヤナ氏は、宇宙空間への核兵器の配備は宇宙条約の第2・3・4・6条、及び、部分的核実験禁止条約と国連憲章に抵触する可能性があるとする。 「国連憲章はいまや慣習国際法となっており、宇宙条約の第2・3・4条も同様に国際慣習法とみなされるべきだ。したがってロシアはこれらの条約を否定することはできなくなる。」(原文へ) INPS Japan 関連記事: 宇宙の利益と平和と人類へ―国連宇宙部長が近く任命へ 宇宙は本当に平和目的にだけ使われているのか 核兵器がわれわれを滅ぼす前にわれわれが核兵器を廃絶しよう。