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マスツーリズムがもたらす経済効果と受け入れ側の負荷

【SciDev.Net=ランジット・デブラジ】  昨年8月、絵のように美しいヒマラヤ山脈に位置するブータン王国は、外国人観光客に課している「Sustainable Development Fee」(SDF = 持続可能な開発費用)と呼ばれる一人一泊あたりの観光税を半額の100米ドルに引き下げた。 この税金は、「雇用創出、外貨獲得、経済成長の促進における観光産業の重要な役割」を果たすもので、2022年9月には、観光によるカーボン・オフセットのため、SDFを約30年間続いた65ドルから200ドルに引き上げた。 しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて制限してきた国外からの観光客の受け入れを再開後も、ブータン王国への旅行者数は期待通りに回復することはなかった。 この状況は、ブータン王国に限らず、アジア太平洋地域の多くの国々が抱える共通の課題である。環境負荷が大きいオーバーツーリズムへの対応と、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンや自然災害で打撃を受けた経済を回復させるために不可欠な外貨獲得を両立させるという難しい課題に直面している。 国連世界観光機関(UNWTO)によると、観光産業は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で最も大きな打撃を受けた産業である。 アジア地域の人気観光地では、新型コロナウイルス感染症の世界的流行以前から、オーバーツーリズムによる環境破壊や地域社会への負の影響が深刻化し、入域制限 や施設閉鎖といった対策が講じられてきた。 2018年には、タイのピピ・レイ島のマヤ湾が、映画 『ザ・ビーチ』のロケ地として知られるようになったことを契機に、観光客の急増による海洋生態系の破壊が深刻化し、一時閉鎖に追い込まれた。同年、フィリピンのボラカイ島も同様の問題を抱え、環境修復のために6ヶ月間閉鎖措置が実施された。また、インドネシアのバリ島においても、環境整備保全や生活文化の保全·維持など持続可能な観光づくりのための観光税を今年導入した。 しかし、これらの国々は、観光収入に大きく依存しているため、大幅な規制を課すことは難しい。アジア地域では、インフラ、所得水準、政治体制が国ごとに大きく異なるため、それぞれの国に合った持続的な観光モデルを導入しなければならない。 日本やシンガポールは、インドネシアやフィリピンとは異なる経済構造を有しており、観光産業における成長戦略も変わってくる。各国が直面する課題は、観光産業がGDPに占める割合をどのように設定し、外国人観光客の誘致拡大に伴う潜在的なリスクをいかに評価をするかにある。 ブータン王国は、収益を炭素貯蔵林の保全やクリーンエネルギープロジェクトを通じた持続可能な開発に投資する「高付加価値で少人数」の観光モデルを導入しており、南アジアで唯一の「カーボン・マイナス国家」(年間の温室効果ガスの吸収量が排出量を上回る国)となった。しかし、ブータンの人口密度は1平方キロメートルあたりわずか20人である。 これに対し、隣国のバングラデシュでは1平方キロメートルあたり1329人が暮らしている。両国は気候変動に対して脆弱であるが、その様相は大きく異なる。ブータンが氷河の縮小を懸念している一方で、バングラデシュは海岸線が海面上昇の影響を非常に受けやすいデルタ地帯である。 気候変動による異常気象は、アジア太平洋地域の沿岸部を中心に甚大な被害をもたらし、観光インフラへの直接的な打撃となっている。2004年のインド洋大津波が示すように、自然災害は観光地を壊滅させ、地域経済に深刻な影響を与える。 また、同地域は、新型コロナウイルス感染症だけでなく、SARSやMERSといった感染症の脅威にも晒されてきた。これら保健衛生上の緊急事態は、医療体制の逼迫や旅行制限、国境封鎖などを招き、観光産業は大きな打撃を受けた。企業の倒産、 雇用喪失、景気後退など、世界的な観光業界では十分に考慮されていない影響が、地域経済に広範囲に及んでいる。 新型コロナウイルス感染症の世界流行は、グロー バルな観光産業の相互依存関係と、国境を越えた健康危機に対する国際的な連携の重要性を如実に示した。 一方、観光客の急増は、地域社会に深刻な影響をもたらしている。家賃や不動産価格の高騰といった経済的な影響に加え、長蛇の列や騒音といった生活環境への直接的な影響や、歴史的建築物の損傷や宗教施設への冒涜といった文化的な側面への悪影響も無視できない。さらに、地域住民の生活基盤を支える資源にも大きな負担をかけ、食料価格の上昇や供給不安定化といった問題を引き起こす。 観光は、宿泊施設、航空便、現地の交通機関に関連して、世界の二酸化炭素排出量の約8パーセントを占めている。高所得国の訪問者がこれらの排出量のほとんどを占めており、旅行が増加するにつれて、観光による環境への影響も大きくなる。 世界観光機関(UNWTO)と国際交通フォーラム(ITF)が発表した2019年の報告書では、2030年までに国際観光による交通関連の排出量は2016年の水準と比較して25%増加し、国内観光による排出量は同期間で21%増加すると予測している。 また、オーバーツーリズムは観光地としての評判にも悪影響を及ぼす可能性がある。記念建造物に並んで入場したり、ホテルやホームステイの料金が値上がりしたり、食事代が法外な額になったりすることを喜ぶ観光客はほとんどいないだろう。 衛星データなどを活用した観光アナリティクスプラットフォーム「Murmuration」も調査によれば、世界中の旅行客の80%が、わずか10%の観光地に集中していると推定している。各国は、少数の観光地に集中するのではなく、観光地の代替地を開発することで負荷を分散する必要がある。 UNWTOの予測によると、2030年までに世界全体の観光客数が18億人に達する見込みであり、すでに人気の観光地への圧力がさらに高まる可能性が高い。 観光客の過度な集中による負の側面を緩和するためには、送り出し国と受け入れ国間の国際協力が不可欠である。両国が協力し、友好的なビザ制度の構築、観光客による破壊行為の防止、地域住民との共生に向けた取り組み、そして自然環境や文化遺産の保護のための資金やノウハウの共有を図ることで、持続可能な観光を実現することが可能となる。 また、新たな観光地や代替地の共同開発は、観光客の分散化を促進するうえで有効な手段である。...

|視点|暴走列車に閉じ込められて:2024年を振り返って(ファルハナ・ハクラーマンIPS北米事務総長・国連総局長)

【トロントIPS—ファルハナ・ハク・ラーマン】 時に、自分が回し車の上で走り続けるハムスターのように感じたり、あるいは深淵に向かって突進する暴走列車に閉じ込められているように感じたりしたことはないだろうか。2024年を振り返ると、どの比喩を選んでも、虹が簡単に思い浮かぶことはない。 1年前から既に進行していた戦争や紛争はさらに悪化し、民間人、特に女性や子どもたちに恐ろしい暴力が振るわれ、何百万人もの人々が避難を余儀なくされた。パレスチナのガザ地区、スーダン、ウクライナ、ミャンマー、コンゴ民主共和国、サヘル地域、ハイチ…リストはますます長くなっている。 アゼルバイジャンのバクーで開催された第29回気候変動枠組条約締約国会議(COP29)は、地球規模の気候危機に対処するための合意を模索することを目的としていた。国際通信社インタープレスサービス(IPS)が詳細に報じた2週間にわたる交渉は崩壊寸前まで追い込まれ、最終的には完全な失敗を免れたに過ぎなかった。 2024年が史上最も暑い年として記録される勢いの中、貧困国向けの気候資金に関する意味のあるバクー合意は、再び強大な国々とその地政学的な対立によって阻まれた。これらの国々は、既に増加している債務を背景に責任追及を巡り争っていた。気候とエネルギーに関するシンクタンク「パワーシフト・アフリカ」のモハメド・アドウ氏は次のように述べている。 「バクーでは、豊かな国々が本当の資金を出さず、漠然として責任のない資金調達の約束だけを掲げる‘大脱走’を演じた。」 また、強力な影響力と富を誇りながらも「豊かな国」として定義されることを拒む主要排出国である中国やインドも、バクーではほとんど責任を逃れたと言えるだろいう。 新しい基金の資金に関する争いは、コロンビアのカリで開催された生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)でも同様に進展を妨げ、疲弊した代表団は合意に達することができなかった。 大量絶滅を防ごうとする人々にとって痛手となったのは、各国が生物多様性の喪失に対処する進捗を監視する新たな枠組みに合意できなかったことだ。 生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の新たな画期的な報告書は、人々が自然界をどう見ているか、そしてどのように関わっているかについての深い根本的な変化が、生物多様性の喪失を止め、逆転させ、地球上の生命を守るために緊急に必要であると警告している。 IPBESの生物多様性喪失の根本原因と変革的変化の決定要因、および2050年ビジョン達成のための選択肢に関する評価報告書(通称「変革的変化報告書」)は、2019年のIPBESグローバル評価報告書に基づいている。この報告書では、世界的な開発目標を達成する唯一の方法は「変革的変化」であると結論づけている。また、2022年のIPBES価値評価報告書も基盤となっている。 これらの問題において人類への貢献は極めて重要であるものの、大国が主導する舞台の脇役として追いやられているのが、国連人道問題調整事務所(OCHA)、国際移住機関(IOM)、世界保健機関(WHO)といった組織だ。これらの組織は、破滅の予兆を示しつつ、残骸の中で必要不可欠な修復・維持作業を遂行しようとしている。 国連人道問題調整事務所(OCHA)の気候チーム責任者であるグレッグ・プーリー氏は、COP29で野心的で公平なグローバル気候資金目標を求める強い警鐘を鳴らした。 「今年だけでも、サヘルでの壊滅的な洪水、アジアとラテンアメリカでの極端な熱波、南部アフリカでの干ばつを目の当たりにしました。」と彼はIPSの取材に対して語った。 また、11月にイスラエルに対してガザ北部への攻撃を停止するよう求めた訴えも無視された。15の国連およびその他の人道支援組織は、そこでの危機を「黙示録的」と表現した。この文脈で、世界保健機関(WHO)は、ガザ地区でのポリオ予防接種の第2回目が部分的に成功したと報告している。 国連人権高等弁務官事務所の分析によれば、ガザ戦争で死亡した人々の約70%が女性と子どもだったことが明らかになっている。 アントニオ・グテーレス国連事務総長は11月6日、「ガザは子どもたちの墓場になりつつあります。」と指摘したうえで、「報道によると、少なくとも過去30年間のどの紛争よりも多くのジャーナリストがわずか4週間の間に殺害されています。また、国連の援助活動家がこれほど多くの犠牲を出した期間は、我々の組織の歴史上比較対象がありません。」と語った。 スーダンでは、紛争によって国内で1,000万人以上が避難を余儀なくされ、さらに220万人が国外に逃れている。交戦する勢力は定期的に民間人を攻撃し、女性に対して恐ろしい暴力を振るっている。スーダンを逃れざるを得なかった活動家でジャーナリストのマディハ・アブダラ氏は、IPSに寄稿し、女性の人権擁護者がどのように標的にされているかを記述した。 スーダンの苦境がこれほど深刻であるにもかかわらず、国際社会の関心は薄れつつあり、援助も妨げられている。ロシアは国連安全保障理事会の停戦決議を拒否した。11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」を世界が迎える中、UN Womenのデータによると、世界中で女性の3人に1人が人生で少なくとも一度、身体的および/または性的暴力を受けたことがあるとされています。 アブダラ氏のような個々の活動家は、紛争時にほとんど支援を受けられず、特に脆弱な立場に置かれている。しかし2024年は、組織全体が撤退を余儀なくされる事例も見られた。ハイチがその一例である。ギャングによる暴力が激化し、特に資金不足の多国籍安全保障支援ミッションの展開以降、70万人以上が避難を余儀なくされている。 30年以上にわたりハイチで活動してきた「国境なき医師団」は、地元の法執行機関からスタッフや患者に対する繰り返しの脅迫を受けたことを受け、首都ポルトープランスでの重要な医療提供を停止すると発表した。また、国連も「ポルトープランスにおける存在感の一時的な縮小」と表現しつつ、首都から職員を避難させる命令を出した。国際連合児童基金(ユニセフ)は、前例のない数の子どもたちがギャングに徴用されていると報告している。 ハイチからの難民は、ドナルド・トランプ氏の米大統領選挙キャンペーンにおいても一種の「武器」として利用された。トランプ氏は、ハイチ移民がオハイオ州スプリングフィールドの住民の犬や猫を食べていると非難しました。この虚偽の主張は広く否定されたが、最終的に成功を収めたトランプ氏の選挙キャンペーンを妨げることはなかった。トランプ氏は、大統領に選出された場合、不法移民の大量追放を行う意向を繰り返し宣言している。 皮肉なことに、トランプ氏の追放計画は、国際移住機関(IOM)が発表した2024年版「世界移住報告書」によってさらに加速する可能性がある。同報告書では、世界の国際移民数が史上最多の2億8,100万人に達したとされています。これにより、移民たちが母国に送金する金額も急増し、数千億ドル規模に達しており、これが発展途上国のGDPの「重要な」部分を占めるようになっている。 トランプ氏が国際機関やその加盟による拘束力のある協定を軽視する姿勢を取っていることから、彼が2016~21年の任期中に行った極端な行動、例えば米国をパリ気候協定から脱退させたり、WHOへの拠出金を凍結したりしたことが、再び繰り返される可能性が高いと見られている。 2024年が終わりに近づき、シリアで戦争が再び広がる不安定な状況の中、トランプ氏の孤立主義的な米国の姿勢は、普段あまり注目されない組織の重要性を改めて思い起こさせる。例えば、ハンセン病とその汚名を終わらせるために活動する笹川財団、アフリカの小規模農家と食料システムの変革に取り組むIITA/CGIAR、新しいマラリア免疫ワクチンを開発する科学者たちなどである。…今回は長くポジティブなリストである。 気候問題においても、遅すぎるとはいえ、進展を認識し育てるべきだ。例えば、2024年に年間温室効果ガス排出量がピークを迎える可能性があるという期待がある。これは、太陽光や風力発電能力の飛躍的な向上が一因となっています。 https://www.youtube.com/watch?v=chBp2zE9EFg 2024年が示したように、人々には変化をもたらす力がある。トランプ氏を選ぶにしても、腐敗した独裁者を排除するにしても、それは私たち次第なのだ。 バングラデシュの暫定政府の最高顧問であり、ノーベル平和賞受賞者でもある84歳のムハマド・ユヌス博士は、国連での初演説で「普通の人々」、特に若者たちの力について語り、大規模な抗議運動による政府の腐敗や暴力への反発が、8月に当時の首相シェイク・ハシナを退陣させた後、「新しいバングラデシュ」を築く可能性に言及した。 私たちは深淵に向かう列車に乗っているかもしれないが、ブレーキをかけるための知識と道具を持っている。ただ、その教訓を学び取ることができればの話だが。(原文へ) INPS Japan/ IPS UN Bureau 関連記事: 報道の自由と気候ジャーナリズム、危機の中の連帯(ファルハナ・ハクラーマンIPS北米事務総長・国連総局長) 第29回気候変動枠組条約締約国会議(COP29)特集 共感から始まる平和:SGIが目指す核軍縮と社会変革への道(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビュー)

2024年は、観測史上最も暑い年となる見込み

【国連IPS=オリトロ・カリム】 世界気象機関(WMO)は、2024年が観測史上最も暑い年となる見込みであると警告しており、2023年を上回る記録的な暑さが予想されている。この原因として、化石燃料への依存が強まり、世界中の産業がグリーンエネルギーへの転換に消極的であることが挙げられる。地球温暖化の急速な進行に科学者たちは警鐘を鳴らしており、環境、経済、社会への影響に対する懸念が高まっている。 この事実を受け、COP29(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)がアゼルバイジャンのバクーで開催されるのを前に、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「人類は地球を焼き尽くし、その代償を払っている。」と述べた。 さらに2024年は、産業革命前の平均気温を1.5℃以上上回る初の年となった。欧州連合(EU)の気候変動サービス機関「コペルニクス(C3S)」のデータによれば、2024年の平均気温は1.60℃に達すると予想され、昨年の1.48℃から大幅に上昇している。 パリ協定は、196カ国が署名した国際条約で、2030年までに炭素排出量を43%削減し、気候危機を緩和することを目的としている。C3Sのサマンサ・バージェス副所長は、「気温上昇がパリ協定を実現不可能にするわけではないが、気候危機を一層緊急の課題にしている。」と述べた。 オックスフォード大学が主催する研究プラットフォーム「オックスフォード・ネットゼロ」によると、地球の平均気温を1.5℃に戻すには、化石燃料による排出量を43%削減する必要がある。世界中の主要企業や政府は、これらの目標を達成するために炭素排出量削減計画を発表している。 世界の産業界が化石燃料の消費削減や代替エネルギーの採用を徐々に進めている一方で、過去30で石炭の世界消費量はほぼ2倍に増加しています。国際エネルギー機関(IEA)は12月18日に「Coal2024」という包括的な報告書を発表し、2020年代の石炭消費を分析するとともに、今後3年間の予測を提供した。 報告書によると、2023年の世界の石炭需要は過去最高の8,687百万トンに達し、前年比で2.5%増加した。2024年にはさらに1%増加すると予想されている。この需要増加は、水力発電の供給不足が主な要因とされている。 中国は世界最大の石炭消費国であり、2023年の世界石炭消費量の56%を占め、4,833百万トンに相当します。2024年には中国の石炭消費量がさらに1.1%増加し、56百万トンが追加で消費されると見積もられている。 中国の石炭消費量の約63%は、国内の電力部門に使用されている。再生可能エネルギーの利用が世界的に増加しているにもかかわらず、中国の発電量は近年減少している。 IEAのエネルギー市場・安全保障部門の笹守圭介ディレクターは、「石炭需要を抑えるには、中国の役割が極めて重要だ。」と指摘し、「気象条件、特に世界最大の石炭消費国である中国の気候が短期的な石炭需要の傾向に大きな影響を与える」と述べている。 科学者や経済学者は、気候危機の加速が環境と経済に深刻な影響を及ぼすと予測している。ポツダム気候影響研究所によれば、気温の上昇による経済的損失は約38兆ドルに達すると推定されており、その多くは農業生産性の低下、労働生産性の低下、気候に敏感なインフラの損傷に起因するとされている。 2024年には、気候変動が原因で多くの自然災害が発生し、コミュニティに壊滅的な影響を及ぼした。サイクロン、モンスーン、山火事、熱波、ハリケーン、海面上昇などの極端な気象現象が、世界中で何百万人もの人々の生活を脅かしている。国連の推定によると、自然災害の悪化により、世界で約3億500万人が人道支援を必要とする状況に追い込まれるとされている。 その他の環境的影響として、森林破壊、生物多様性の喪失、海洋酸性化、水循環の混乱、農業生産への影響などが挙げられ、地球上の生命に壊滅的な結果をもたらしている。2030年までに世界の気温と炭素排出量が削減されない場合、これらの影響はさらに深刻化すると予想されている。 科学者たちは、世界の気温が2℃を超えないようにすることが重要だと警告している。それを超えると、魚や多くの植物種を含む人間の生活に必要不可欠な生物が広範囲で失われる可能性がある。外交問題評議会(CFR)のエネルギー・環境シニアフェローであるアリス・C・ヒル氏は、「温暖化を抑制できなければ、私たちは災害に向かって進んでおり、それを迅速に実行する必要があります。」と語った。 ポツダムの気候研究者アンダース・レーバーマン氏は、経済的・環境的影響が発展途上国にとって主要な商業大国である米国や中国よりもはるかに深刻であると予測している。 「私たちはほぼすべての場所で被害を確認していますが、熱帯地域の国々はすでに気温が高いため、最も多くの被害を受けるでしょう」と述べている。さらに、気候変動に最も責任がない国(発展途上国)が、適応のための資源が最も少ないため、最も大きな経済的・環境的影響を受けると予測されている。(原文へ) INPS Japan/ IPS UN BUREAU Report 関連記事: |COP29|参加者は、人々の安全を真に確保するものについての洞察を気候サミットに求める。 最新の報告書が地球を脅かす「ホットハウス(温室化)」現象について警告 中国における市民社会と気候行動、そして国家 INPS Japan/ IPS UN...

アゼルバイジャン大統領、墜落した飛行機がロシアからの攻撃を受けたと発言

【ロンドンLondon Post】 アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は12月29日、先週墜落し38人が死亡した旅客機がロシア領内からの地上からの攻撃を受けたと述べ、ロシア側がこの惨事の原因について虚偽の説明をしていると非難した。 28日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はアリエフ大統領に対し、ウクライナの攻撃用ドローンに対抗する中でロシアの防空システムが関与したロシア空域での「悲劇的な事件」に謝罪した。しかしクレムリンの声明では、ロシアが飛行機を撃墜したとは明記されておらず、刑事事件が開始されたことのみが言及された。 「我々の飛行機は誤って撃墜された。」とアリエフ大統領は29日に国営テレビで語り、飛行機が何らかの電子妨害を受け、その後ロシア南部の都市グロズヌイに接近中に攻撃を受けたと述べた。 「残念ながら、最初の3日間、ロシアからは鳥が原因だとか、何らかのガスボンベが爆発したというような馬鹿げた説明しか聞かされなかった。」とアリエフ大統領は述べ、問題を隠蔽しようとする明らかな試みがあったと指摘した。 モスクワの名門大学で教育を受け、ロシアと密接な関係を持つアゼルバイジャンの指導者であるアリエフ大統領は、ロシアが飛行機を撃墜した責任を認め、関与した者たちを処罰することを求めた。 クレムリンは29日、プーチン大統領とアリエフ大統領が再び電話会談を行ったと発表したが、詳細は明らかにされなかった。ただし、28日には民間および軍事の専門家が事件について事情を聴取されていると述べていた。 アゼルバイジャン航空のJ2-8243便は水曜日、カザフスタンのアクタウ市付近で火の玉となり墜落した。この飛行機はウクライナのドローンがいくつかの都市を攻撃していたロシア南部の空域を迂回していた。 28日にプーチン大統領が発した非常に稀な公式謝罪は、この惨事についてロシア政府がある程度の責任を認める最も近い表現とされている。 アゼルバイジャンの調査の予備結果に詳しい4つの情報筋は26日、ロシアの防空システムが誤って飛行機を撃墜したとロイターに語った。 埋葬 アリエフ大統領の発言は、アゼルバイジャンが飛行機の乗客と乗員に敬意を表する中で行われた。 機長のイゴール・クシュニャキン、副操縦士のアレクサンドル・カリャニノフ(いずれもアゼルバイジャン国籍を持つロシア系国民)および客室乗務員のホクマ・アリエバは、バクー中心部のアレー・オブ・オナーで行われた式典で正式な栄誉が授与された。この式典にはアリエフ大統領とメフリバン夫人も出席した。 パイロットたちは、自身の命を犠牲にして29人の生存者を救ったとしてアゼルバイジャンで称賛されている。 「パイロットたちは経験豊富で、この不時着で自分たちが生き残れないことを分かっていました。」とアリエフ大統領は述べ、機首を最初に地面に向けることで一部の乗客を救うことを試み、自身を犠牲にした行動を賞賛した。 「乗客を救うため、彼らは非常に英雄的に行動し、その結果、生存者が出たのです。」とアリエフ大統領は語った。 エンブラエル(EMBR3.SA)製旅客機は、アゼルバイジャンの首都バクーからロシア南部のチェチェン地域にあるグロズヌイに飛行した後、カスピ海を横断して数百マイル離れた場所にそれた。 アゼルバイジャン大統領府によれば、パイロットたちは飛行機を制御しようと必死に努力し、着陸場所を探し続けた。 胴体に穴が空き、乗員の一部が負傷し、乗客が気圧の抜けた客室で必死に助かることを願い、飛行機が制御不能に陥る中、パイロットたちはカスピ海を越え、最終的には墜落に至る航路を選んだ。 アレー・オブ・オナーはアゼルバイジャンで最も神聖視される埋葬地であり、著名な政治家や詩人、科学者たちが眠る場所で、現大統領の父親ヘイダル・アリエフも埋葬されている。 機長クシュニャキンの娘、アナスタシア・クシュニャキナさんは、父親が乗客の命に対して深い責任感を持つ献身的なパイロットだったと語った。 「父はいつも言っていました。『離陸した瞬間、私は自分の命だけでなく、乗客全員と乗員全員の命に責任を負っている。』と」とクシュニャキナさんは語り、「最後の飛行で、父は真の英雄がどうあるべきかを証明しました。」と述べた。(原文へ) INPS Japan/London Post 関連記事: イラン航空IR655便とマレーシア航空MH17便、2つの航空会社の物語とダブルスタンダード アクタウ、2025年にテュルク世界の文化首都に アゼルバイジャンはウクライナへの支援を一貫して続けている ニュース政治・紛争・平和地域