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35年後も響くセミパラチンスクの教訓―カザフスタンとCTBTO、核実験禁止へ国際社会に行動呼びかけ
【東京/アスタナ/ウィーンINPS Japan=浅霧勝浩】
カザフスタンが旧ソ連のセミパラチンスク核実験場を閉鎖してから35年。世界で核兵器の役割が再び拡大し、核軍縮・不拡散体制が厳しい試練に直面するなか、カザフスタンと包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)は8月29日、核実験の恒久的な禁止に向け、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を国際社会に強く呼びかけた。|英語版|
カザフスタンのイェルメク・コシェルバエフ外相とCTBTOのロバート・フロイド事務局長は、「核実験に反対する国際デー」に合わせて共同声明を発表。「核実験のない世界」の実現への決意を改めて表明するとともに、CTBTを発効させるための取り組みを強化すると宣言した。
声明は、2026年が核軍縮と核不拡散にとって複数の歴史的節目が重なる年であることを強調している。
その中心にあるのが、セミパラチンスク核実験場閉鎖35周年である。
450回を超える核実験の記憶
現在のカザフスタン北東部に位置するセミパラチンスク核実験場では、旧ソ連が40年以上にわたり450回を超える核実験を実施した。
広大な草原には今も実験施設の遺構が残り、核実験が人間と環境にもたらした被害の記憶を伝えている。
共同声明は、この場所を核実験による「危険な結果、人間のトラウマ、環境破壊」を示す厳しい実例と位置づけた。
カザフスタンはソ連崩壊直前の1991年8月29日、セミパラチンスク核実験場を閉鎖した。
声明によれば、この決断は単に一つの核実験場を閉じるだけにとどまらず、国際社会に「強力な政治的メッセージ」を送り、その後のCTBT採択につながる世界的な動きを後押しする重要な役割を果たした。
その8年後の2009年12月、国連総会はカザフスタンの提唱を受け、8月29日を「核実験に反対する国際デー」と定めた。
CTBT採択から30年
今年は、CTBTそのものにとっても大きな節目である。
CTBTは1996年9月10日に国連総会で採択され、同月24日に署名開放された。初日には71カ国が署名した。
共同声明によると、現在までに188カ国が署名し、179カ国が批准している。声明は、最近署名・批准したトンガ王国を歓迎し、一つ一つの新たな参加が核実験を許容しないという国際規範をさらに強化すると指摘した。
しかし、採択から30年を迎えても、CTBTはいまだ発効していない。
条約の発効には、条約附属書2(Annex 2)に指定された特定国すべての批准が必要だからだ。
コシェルバエフ外相とフロイド事務局長は、未署名・未批准国に速やかな参加を求め、とりわけ発効の鍵を握る残る附属書2諸国に対し、「核不拡散と軍縮へのコミットメントを示す」よう訴えた。
同時に、すべての国に既存の核実験モラトリアムを維持し、改めて確認するよう求めた。
中央アジアの「核兵器を持たない」という選択
2026年にはもう一つ、カザフスタンに深く関わる重要な周年がある。
2006年9月8日に署名された「セミパラチンスク条約」から20年を迎える。
同条約によって中央アジア非核兵器地帯が創設された。共同声明はこれを「歴史的成果」と評価し、中央アジア地域が核不拡散と核軍縮に寄せる決意の証しだと強調した。
セミパラチンスクには、核兵器時代の二つの対照的な歴史が刻まれている。
一つは、数百回に及ぶ核実験とその被害の歴史。そしてもう一つは、その実験場を閉鎖し、核兵器に依存しない安全保障を模索してきた歴史である。
世界308施設が核実験を監視
共同声明は、核実験を探知するCTBT検証体制の整備についても成果を強調した。
現在、世界では293カ所の監視施設と15カ所の放射性核種実験施設、計308施設が認証され、国際監視制度(IMS)のネットワークは90%以上が完成しているという。
IMSは、地震波、放射性核種、水中音波、微気圧振動などを利用し、地球規模で核爆発の兆候を監視する仕組みだ。
声明はこれを、平和と安全保障に貢献するだけでなく、民生・科学分野にも恩恵をもたらす「独自の世界的資産」と評価した。
カザフスタン自身も、国立核センター(NNC)が5カ所のIMS観測施設を運用し、検証体制を支えている。
また、CTBTOの現地査察(OSI)の発展にもカザフスタンは重要な役割を果たしてきた。1999年、2002年、2005年、2008年には、セミパラチンスク核実験場を含むカザフスタン国内で4回の現地査察フィールド実験が実施された。
とりわけ1999年の実験はCTBTO史上初であり、2008年の演習は当時最大規模となった。
次の大規模統合現地査察演習「IFE26」は今年10月、ナミビアで開催される予定で、アフリカでは初めてとなる。
「これまでの成果を守り、再び前進を」
共同声明は、CTBTを核不拡散条約(NPT)と並ぶ世界の核軍縮・不拡散体制の「重要な柱」と位置づけた。
そして8月31日にニューヨークの国連本部で開催予定の「核実験に反対する国際デー」を記念する国連総会ハイレベル本会合への各国の参加を呼びかけた。
外交官だけでなく、研究者、メディア、非政府組織(NGO)などにも、核実験がもたらす壊滅的な危険について社会の認識を高めるよう求めている。
声明の結びには、CTBT採択から30年を迎えた国際社会が置かれている状況への強い危機感がにじむ。
この30周年を、これまで達成してきたことを振り返るだけの記念日ではなく、「行動への呼びかけ」としなければならない、と両氏は訴えた。
「苦闘の末に勝ち取った成果を守ること。核兵器のない世界に向けた勢いを再び生み出すこと。包括的核実験禁止条約を発効させ、核実験に恒久的かつ法的拘束力のある終止符を打つこと。」
35年前、セミパラチンスクで下された核実験場閉鎖という決断は、核実験を止めることは政治的意思によって可能だという前例を世界に示した。
CTBTが署名開放から30年を経てもなお発効していない今、そのセミパラチンスクの教訓は、過去の歴史ではなく、国際社会が現在直面している選択として改めて問いかけられている。
INPS Japan
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|視点|人生ががらりと変わる経験だった(イリヤ・クルシェンコCTBTO青年グループメンバー)
ネパール中部の洪水、その翌日
衛星画像が示す「ランタン北壁の氷河崩壊」はネパール国内で発生
【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=クンダ・ディクシット】
首都カトマンズの真北約45キロに位置し、標高7245メートルを誇る雄大なランタン・リルン峰には、悲劇の歴史がある。
2015年4月、ネパール中部を襲ったマグニチュード7.8の大地震によって、同峰南壁で巨大な雪崩が発生した。雪崩は眼下の氷河へ崩れ落ち、ランタン村を埋め尽くした。少なくとも300人が死亡した。
そして8月26日、ネパール時間午前8時37分ちょうどに、中国との国境付近でマグニチュード4.4の地震が発生した。今回は、それとほぼ同時にランタン峰北壁で巨大な雪崩が起きた。
ランタン・リルン峰は全体がネパール領内にある。雪崩による大量の土砂と氷は、中国との国境をなすレンデ・コラ川をせき止めた。同川はモンスーンの雨で増水していた。
せき止められてできた湖は間もなく決壊し、泥と巨石が壁のようになってトリスリ川を猛スピードで流れ下り、ネパール国内を襲った。
少なくとも、プラネット・ラボの衛星画像を確認した専門家たちは、そのように分析している。
ただし科学者の間では、地震が北壁の斜面崩壊を引き起こしたのか、それとも雪崩そのものがあまりに巨大だったために地震波として観測される揺れを引き起こしたのかについて、なお見解が分かれている。
仮に地震が引き金だったとしても、崩壊した山では地球温暖化の影響によって雪と氷がすでに不安定な状態にあった。
さらに発生時期はモンスーン終盤で、山の斜面には大量の雪が積もっていた。氷河の後退によって取り残されたモレーン(氷河堆積物)は、かつて永久凍土によって固く固定されていたが、すでに大量の水を含んだ状態になっていた。
今回の災害自体はネパール国内の氷河に起因したとみられている。しかしそれでも、チベット高原を起点として国境を越える災害につながり得る、氷河湖決壊洪水(GLOF)、永久凍土の融解、モレーン崩壊という長期的な脅威が増大していることを浮き彫りにしている。
地震が引き金にならなくても、近年のヒマラヤでは、同じような複数の要因が重なって発生する「ヒマラヤの津波」ともいうべき大規模災害が相次いでいる。
2021年のチャモリ、同年のメラムチ、2023年のシッキム、2024年のタメ、2025年のボテ・コシ、そして2026年の今回の災害である。そのほぼすべてがモンスーン期に発生している。
昨年7月8日の洪水(下図参照)では18人が死亡した。ネパールと中国の貿易・観光にとって最も重要な国境検問所が押し流され、ネパール国内の幹線道路、水力発電所、送電線も破壊された。これらは最近になってようやく復旧工事が始まったばかりだった。
科学者たちは昨年の洪水について、氷河表面に形成された複数の池が拡大して一体化し、やがて決壊したことで、大量の土砂や岩石が壁のようになって下流へ押し寄せたと分析している。
昨年は、中国側からネパールの地方当局に危険が警告されていたと報じられている。しかし今年は、事前の警告はまったくなかった。
しかも今回は、雪崩と洪水の発生地点が国境に非常に近かった。このため、土石流がラスワの国境検問所に到達するまでには、わずか数分しかなかったとみられる。
木曜日の朝までに、公式の死者数は160人を超え、その後さらに増加して数百人に達する可能性がある。
夜の間には、200キロ下流のナワルパラシ郡を流れるナラヤニ川で、人の遺体や家畜の死骸、さまざまな瓦礫が流れていくのが目撃された。
今回の災害によって、ネパールが国際的な気候変動交渉の場で訴えてきた「損失と損害(Loss and Damage)」の問題が、改めて大きく取り上げられることになるだろう。
とりわけ脆弱な山岳国において、気候危機が経済にもたらす損失は深刻である。今回のインフラや財産への被害額は、数十億ドル規模に達するとみられる。
わずか数分のうちに、ボテ・コシ川とトリスリ川沿いにある少なくとも6か所の主要水力発電所、送電線、変電所が破壊されるか、大きな損傷を受けた。
ヌワコットにあるネパールの象徴的な25メガワット級大規模太陽光発電所も、土砂に埋没した。
建設中の他の事業も壊滅的な被害を受けた。
ボテ・コシ川とトリスリ川に架かる少なくとも12本の橋が流され、その中には被災地点から70キロ下流に位置するものもあった。北部へ向かう幹線道路も各地で寸断された。
今回の災害は、2025年9月の「Z世代(GenZ)抗議運動」によって早期選挙が実施されてから、ほぼ1年後にネパールを襲った。
その選挙では、バレンドラ・シャー首相率いるRSPが地滑り的勝利を収めた。政権発足からまだ半年もたっていないなか、政府は今、緊急の捜索・救助活動と、壊滅的な被害を受けたトリスリ渓谷の復旧・復興という大きな試練に直面している。
長期的に見れば、ネパールは今後、発生頻度がほぼ確実に増えるとみられる地震や気候変動に起因する災害に対処するため、実効性のある戦略を構築しなければならない。
クンダ・ディクシットは『Nepali Times』の元編集長で、現在は同紙発行人。著書に『Dateline Earth: Journalism As...
チベット高原の下流に暮らすという危険
ボテ・コシ川は中国国境を越えてネパールに流れ込む。防災もまた、国境を越える必要がある
【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=スシム・タパリヤ】
ネパールは、中国のチベット高原の下流に位置している。しかし同国の災害対策には、これまで十分に目を向けられてこなかった重大な盲点がある。
上流で起きた災害は、そのまま下流の災害となる。それにもかかわらず、ネパールの洪水対策の多くは、2本のボテ・コシ川やカルナリ川、アルン川がネパール国内に入ってから始まっている。
チベット高原はアジアの主要河川のいくつかの水源となっているが、地球温暖化に伴い、同地域の氷河、氷河湖、永久凍土、さらには地形そのものが変化しつつある。ネパールにとって、ヒマラヤ山脈の反対側で起きた出来事が、やがて洪水となって押し寄せ、人命を奪い、インフラを破壊する可能性がある。
2本のボテ・コシ川はいずれもチベットを源流とする。一方はコダリで、もう一方はラスワでネパールに入る。いずれも急流となって深い峡谷を流れ、集落、水力発電施設、そしてネパールと中国を結ぶ2本の主要な貿易ルート沿いの道路を通過する。
問題は、単にネパールが洪水に脆弱だということではない。ネパールで洪水となる災害の原因が、国外で発生する場合があるということだ。昨年も、そして今年も、同じ川でまさにそれが起きた。
こうした災害に備えるには、川と同じように国境を越えて伝わる情報、調査研究、そしてコミュニケーションが必要になる。2年連続のモンスーン期に起きたボテ・コシ川の洪水は、その脆弱性を浮き彫りにした。
2025年7月8日、ラスワを流れるボテ・コシ川を突発的な洪水が襲った。少なくとも18人が死亡し、ラスワガディの友好橋が流失したほか、水力発電施設、送電線、変電所、ネパールと中国を結ぶ道路が被害を受けた。
昨年と同様、ネパール水文気象局は今週、国境のネパール側では大雨は観測されていなかったと発表した。洪水予報部門が洪水の発生を把握したのは、水がすでにベトラワティに到達してからだった。
ネパールには、中国側の降雨量や河川水位のデータを受け取る仕組みがない。しかし昨年も今週も、洪水がいったんネパール国内に入ると、当局はトリスリ川流域の下流住民に対し、速やかに一斉SMS警報を送った。
だが、洪水がすでに国内に入った後に送られる警報は、本来の意味での「早期警戒システム」とは言い難い。
2025年の洪水は、ネパールと中国の国境付近にあるレンデ川源流域で発生した氷河湖決壊が原因だった。衛星画像の分析によって、チベットにある氷河表面湖が突然排水されたことが確認された。
この事実は、ネパールがボテ・コシ川のリスクをどう捉えるかを根本的に見直す契機となるべきだった。
破壊的な洪水は、ネパールの監視網が及ばない国外で発生し、ネパールの予報担当者が通常注視している降雨パターンとは無関係に起こり、下流の地域社会にほとんど対応する時間を与えないまま到達する可能性があるからだ。
国際総合山岳開発センター(ICIMOD)が2026年に発表した氷河評価によると、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域では氷河の減少が加速しており、2000年以降、氷の消失速度はおよそ2倍になった。
長期観測対象となっている38の氷河のうち、国際的な基準を満たす観測が行われているのはわずか7か所にすぎない。このため、山岳圏の雪氷環境の広い範囲が、依然として十分に観測されていない。
こうしたリスクは、単なる仮説ではない。
2025年に行われたポイク川―ボテ・コシ川流域、およびギロン川―トリスリ川流域という国境をまたぐ2つの流域の評価では、28の氷河湖が氷河湖決壊洪水(GLOF)の発生リスクが高いと判定された。
研究者らによると、最悪のケースでは洪水によって3000棟を超える建物、約50本の橋、9か所の水力発電施設、約50キロメートルの道路が危険にさらされる可能性がある。
研究チームは、これらの分析結果を、中国とネパールが共同で策定する災害リスク削減戦略に活用するよう提言した。
また2026年、チベット南西部にある別の氷河湖を調査した研究では、この湖の面積が1975年から2024年までの間に194%拡大したことが明らかになった。
シミュレーションでは、地滑りによって氷河湖決壊洪水が発生した場合、中国とネパール双方の建物が被害を受ける可能性が示された。このため研究者らは、早期警戒システムと地域レベルの災害防止体制の構築を求めている。
こうした事実を考えれば、「ネパールには十分な情報がない」という説明だけでは問題を捉えきれない。
衛星画像は存在する。氷河湖の一覧もある。水文モデルも構築されている。研究者たちは国境を越えて災害リスクを地図化し、どのインフラが被害を受ける可能性があるのかまで特定している。
むしろ不明確なのは、そうした知見が研究の世界から、人々の命を守るための制度や仕組みにどこまで確実に反映されているかという点だ。
昨年の洪水は、この制度上の問題を明確に示した。そして今週、さらに多くの犠牲者を出した洪水によって、その欠陥は一層明白になった。
国境を越えて流れる河川において、越境的な情報共有は単なる外交上の便宜ではない。それ自体が災害対策の一部でなければならない。
もっとも、ネパールが上流で起きていることをまったく把握できないわけではない。
8月13日、中国のニャラム付近で地滑りが発生し、東ボテ・コシ川の流れがせき止められた。河川水位が不吉なほど低下すると、ネパール当局は下流住民に警戒を呼びかけ、治安部隊が突然の増水に備えて川を監視した。
しかし、川がせき止められたことについて事前の警告はなかった。
プラネット・ラボから入手した衛星画像には、地滑りあるいは氷雪崩がレンデ川へ一気に流れ込み、川をせき止めたとみられる様子が写っている。
プラネット・ラボは、地滑り跡の下流に位置するレンデ川と、その川がすぐ下流でネパール国内に入る地点の画像を並べて示している。
効果的な早期警戒システムとは、単に携帯電話へメッセージを送ることではない。
世界気象機関(WMO)は早期警戒システムを、災害リスクに関する知識、監視・予測、情報伝達、そして対応への備えを一つにつなぐ連鎖として定義している。
ネパール自身の防災機関も、この違いを認識している。
国家災害リスク削減・管理庁(NDRRMA)の2024年報告書によると、ネパールは複数の災害に対応する「マルチハザード早期警戒システム」と、災害の影響予測に基づく行動計画の整備を進めている。
一方で同報告書は、政府機関、学術機関、その他の関係者の連携を強化する必要性も認めている。
2024年にボテ・コシ川/スン・コシ川およびトリスリ川流域の地域社会を対象に実施された研究では、ボテ・コシ川沿いの住民の間で氷河湖決壊洪水の危険性に対する認識が高いことが分かった。
そのうえで研究者らは、より強固な早期警戒システム、国境を越えた協力、住民への啓発、災害に強いインフラの整備を提言した。
米スティムソン・センターの評価も、リモートセンシングや地球観測技術の進歩によって、土砂を伴う洪水や極端な増水をネパールでリアルタイムに監視することは、技術的には可能だと指摘している。
いま問われているのは、これらすべてをどう結びつけるかである。
ネパールは、災害が発生した後の対応能力については実績を示してきた。
水曜日には、ネパール軍、武装警察隊、ネパール警察が直ちに動員された。軍および民間のヘリコプターが負傷者の緊急搬送に投入され、洪水がトリスリ川水系へ流れ込むのに合わせて、下流地域に警報が発令された。
しかし、救助活動は必然的に事後対応である。
ヘリコプターが飛び始める頃には、すでに橋が流され、道路が寸断され、集落が孤立している可能性がある。
防災で問われるべきなのは、「そこに至る前に何ができたのか」ということだ。
ボテ・コシ川の場合、それは中国との信頼できるデータ共有、氷河湖や不安定な地形の監視、衛星データや科学研究を政府のリスク評価に組み込むこと、そして上流で異常が確認された際に、地方当局、水力発電事業者、地域住民がどのように行動するかについて明確な手順を定めることを意味する。
さらに、災害後にどのように復旧・復興するかについても再検討する必要がある。
昨年の洪水で被害を受けたベトラワティ―ラスワガディ回廊は、今回も道路や橋が流されるなど、再び甚大な被害を受けた。
新たに明らかになった災害リスクを考慮せず、従来と同じインフラをそのまま再建するだけでは、同じ脆弱性を再びつくり出すことになりかねない。
ネパールがすべての洪水を予測することはできない。氷河の後退を止めることも、あらゆる地滑りの発生を防ぐこともできない。
しかし、上流で何らかの異変が起きた際、それをきっかけとして監視、情報共有、リスク評価、そして下流での備えが直ちに始動する仕組みを構築することはできる。
2025年の洪水は、情報が十分な速さで国境を越えられなかったときに何が起きるのかを示した。
そして8月26日の洪水は、国外で発生した災害要因が、いかに短時間でネパール全体を揺るがす国家的災害へと発展し得るかを、改めて突きつけた。
いまや問われているのは、ボテ・コシ川が洪水を起こし得ることをネパールが知っているかどうかではない。
次に上流で異変が起きたとき、行動するのに間に合うだけの早さで、その事実を知ることができるのか。
川がすでに国境を越えてから届く警報は、本当の意味での「早期警戒」とは呼べない。
それは、峡谷を押し寄せてくる巨大な土砂と濁流に備えるよう、人々に告げる最後の警告にすぎない。
Original URL: https://nepalitimes.com/the-danger-of-living-downstream-from-the-tibetan-plateau
INPS Japan
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クルルタイ選挙で高まる政党・議会・外交への期待 専門家が指摘
【アスタナINPS Japan/The Astana Times=アセル・サトゥバルディナ】
カザフスタンで初めて実施された新議会「クルルタイ」の選挙は、単に同国の議会制度の枠組みを変えただけではない―。8月24日、アスタナでカザフスタン戦略研究所(KazISS)が主催した会合に参加した専門家らはこう指摘した。専門家らは、カザフスタンが憲法改革をより持続可能な政治制度へと具体化しようとする中、高い投票率、政党の役割拡大、さらに中央アジアをめぐる地政学的競争の激化が重要な要素になっていると強調した。|英語版|
中央選挙管理委員会(CEC)が8月24日に発表した暫定結果によると、アディレット党はカザフスタン初のクルルタイ選挙で71.17%の票を獲得した。
アウイル人民民主愛国党は6.26%、レスプブリカ党は5.56%、アク・ジョル民主党は5.21%、全国社会民主党は5.11%だった。
一方、カザフスタン人民党は3.11%、バイタク緑の党は1.07%にとどまり、「すべての候補に反対」は2.51%だった。
カザフスタンの選挙法では、クルルタイで議席を獲得するためには、政党が少なくとも5%の得票率を確保する必要がある。暫定結果では、5政党がこの基準を突破した。
KazISSのジャンドス・シャイマルダノフ所長は、8月23日の選挙について、今年初めに導入された新たな憲政の枠組みを、法制度上の設計から実際の政治運営へと移す最初の試金石になったと述べた。
同氏は、74%を超える投票率と、5政党が5%の基準を上回ったという暫定結果を、新議会の性格を形づくる二つの重要な要素として挙げた。すなわち、一つの圧倒的な政治勢力が存在する一方で、複数の小規模政党もクルルタイに議席を持つ構図である。
「今後の課題は、有権者が示した選択が、新しいクルルタイの活動や立法上の優先課題、さらには各政党の日常的な政治活動にどのように反映されるのかを見極めることだ」とシャイマルダノフ氏は語った。
選挙は始まりにすぎない
イタリア・アジア研究所のドメニコ・パルミエリ所長は、今回の選挙は長い道のりの始まりにすぎないと指摘した。制度改革が実際に機能するかどうかは、選挙そのものでは判断できず、今後のクルルタイの実績によって評価されることになるからだ。
「昨日はカザフスタンにとって非常に重要な日だった。しかし、それは新たな道の始まりにすぎない。これらすべての変化と改革は、今後数カ月、数年にわたって実行され、その経過を見ていかなければならない」とパルミエリ氏は述べた。
同氏は、2022年の大統領選挙、今年3月の憲法国民投票、そして8月23日の議会選挙を継続的に見てきた。
パルミエリ氏は、一院制議会への移行について、より効率的な制度となる可能性があると評価する一方、その実効性を判断できるのは、新たに選出された議員が実際に立法活動を始めてからだと指摘した。
「新しい議会と新しい議員がどのような仕事をするのかを見るためには、少なくとも6カ月は待つ必要があると思う」と同氏は語った。
選挙の技術的な運営については、円滑に進んだとの評価を示した。
パルミエリ氏が特に注目したのは、カザフスタン国民が投票に参加し、自国の発展について自らの意思を示そうとする姿勢だった。これはイタリアとは大きく異なるという。
カザフスタンでは有権者の約75%が投票したのに対し、イタリアでは投票率が50%に達すれば成功とみなされると同氏は述べた。
政党は有権者の要求に応えなければならない
政治学博士で、アルマトイにあるナリホズ大学の教授を務めるアンドレイ・カザンツェフ氏は、カザフスタンの高い投票率を、多くの国で政治参加が低下している世界的傾向との比較から分析した。
同氏は、その背景には、個人化の進展や従来型の政治に対する国民の関心低下があると指摘した。
ただし、今回の高い投票率を、国民が政党政治そのものに強い関心を持つようになった証拠と解釈すべきではないとも述べた。
むしろ、国際情勢の不確実性が高まる中で、自国がどの方向へ進むのかという国民の幅広い関心を反映している可能性があるという。
「これは社会の関心が非常に高いことを示している。ただし、それは必ずしも政治そのものへの関心ではないだろう。一般の人々と話をしてみても、彼らが政党政治そのものに特別な関心を持っているとは限らない。しかし、彼らが関心を持っているのは未来だ。自分たちはどうなるのか、子どもたちはどうなるのか。そして世界で何が起きているのかを、毎日テレビで目にしている」とカザンツェフ氏は語った。
こうした国民の関心は、再設計されたカザフスタンの政治制度の下で、今後さらに重要になる可能性がある。
クルルタイ議員が地域別の選挙区ではなく政党名簿を通じて選ばれることになったため、政党は国民の期待を立法上の優先課題へと反映させるうえで、これまで以上に大きな責任を担うことになるとカザンツェフ氏は指摘した。
「需要は高い。今度は政党が供給する側にならなければならない」と同氏は述べた。
そのためには、政党が活動のあり方を近代化し、有権者の懸念をより的確に把握するとともに、国の将来について明確なビジョンを示す必要があるという。
政党がそれを実現できるかどうかは、新たな憲政モデルが意図された通りに機能しているかを測る最初の指標の一つになる可能性がある。
カザフスタン国境を越える影響
米ワシントンを拠点とするハドソン研究所の上級研究員、森安健氏によれば、カザフスタンの政治的移行が持つ意味は、国内制度の変化だけにとどまらない。
森安氏は会合で、中央アジアの資源、貿易ルート、地政学的位置に対する国際社会の関心が高まっていると指摘した。
米国では、中国への重要鉱物依存を減らそうとする動きが強まる中、中央アジアへの関心が急速に高まっている。一方、中国は、海上貿易ルートの混乱による影響を受けにくいユーラシア大陸の陸上輸送ルートを、これまで以上に重視するようになっているという。
「中国も米国も、互いへの依存から距離を取ろうとしている。そして、その両者が中央アジアで出会っている。だからこそ、この地域への関心がこれほど高まっているのだ」と森安氏は語った。
こうした状況を踏まえ、同氏はカザフスタンの政治的移行を、中央アジア全体で進むより広範な結束の一部と位置づけた。
中央アジア諸国は近年、地域内の連携を強化し、国際社会においてより大きな集団的役割を果たそうとしている。
森安氏はその一例として、今年6月のキルギス共和国の国連安全保障理事会非常任理事国への選出を挙げ、地域諸国からのより強い支持がキルギスの議席獲得を後押ししたと指摘した。
「この地域では徐々に統合が進んでいると思う。それは2016年、ウズベキスタンで新たな大統領、シャフカト・ミルジヨエフ氏が就任したころから始まったのではないか。そして、カザフスタンで進む権力の集約と安定化も、この大きな流れの一部だと思う」と同氏は述べた。
さらに、カザフスタン国内の政治制度がより明確で安定したものになれば、大国間競争が激化する中でも、同国が外交上の均衡を維持し、これまでのバランス外交を継続する能力を強化する可能性があると指摘した。
今後の動き
制度移行はすでに次の段階に入っている。
8月24日、カシムジョマルト・トカエフ大統領は、新たな憲法体制の実施が始まる中、国立銀行、国家保安委員会、最高司法評議会の各トップ、および人権委員を再任した。
カザフスタン憲法によると、中央選挙管理委員会が選挙の最終結果を正式に発表した後、トカエフ大統領はクルルタイの最初の会期を招集することになる。法律では、最終結果の公表から30日以内に開催しなければならない。
新議会が活動を開始すると、現政権はいったん総辞職することになる。
新憲法の下では、大統領はクルルタイに議席を持つ各政党会派との協議を経て、首相候補を指名する。
首相が任命されると、10日以内に政府の組織と閣僚構成を提案しなければならない。その後、閣僚はクルルタイとの協議を踏まえ、大統領によって任命される。
新憲法はまた、副大統領職の新設を定めている。
トカエフ大統領は、副大統領の人選について近く発表するとしている。
大統領は、新議会の最初の会期が始まってから2カ月以内に、クルルタイの承認を得て副大統領を任命しなければならない。
副大統領は国会議員を兼任することも、政党に所属することも認められない。
また、大統領が任期満了前に職を離れた場合には、副大統領が大統領権限を引き継ぐことになる。
Original URL: https://astanatimes.com/2026/08/kurultai-vote-raises-stakes-for-parties-parliament-and-foreign-policy-experts-say/
INPS Japan
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プロジェクト・サファイア:米国とカザフスタンの安全な世界への使命30周年

