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フランス、英国・米国と一線を画し、パレスチナ国家承認へ
【国連IPS=タリフ・ディーン】
国連の中でも最も強力な政治機関である安全保障理事会の常任理事国(拒否権保有国)の一つであるフランスは、他の西側常任理事国である米国・英国と立場を分かち、パレスチナを国家として承認する方針を示している。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、今後数か月以内にパレスチナ国家を承認する意向を示し、6月にニューヨークで開催予定の国連会議に合わせてそれを実現する可能性に言及したと報じられている。
現在、国連加盟193か国のうち、147か国がパレスチナを主権国家として承認しており、その多くはアフリカ、アジア、中南米、中東諸国である。一方、米国、英国、フランス、ドイツ、日本などの主要西側諸国は依然として承認していない。
パレスチナは2012年11月以来、国連総会における「オブザーバー国家」の地位を有しているが、正式な国連加盟は米国による拒否権により阻まれてきた。
米国は長年、パレスチナの一方的な国家承認に反対しており、フランスの動きがあったとしても、その立場を変える可能性は極めて低い。
4月10日、米国務省のタミー・ブルース報道官は記者団に対し、「フランス政府の発言については承知しており、詳細はフランスに問い合わせてほしい」と述べた上で、「米国はイスラエルと共に、人質全員の解放とハマスの打倒を目指している。」と強調した。
さらに、米国の特使ウィトコフ氏の言葉として、「現在進行中の議論を見てほしい。」「私たちは今、ガザにとって何が最善か、人々の生活をどう改善できるかについて、実りある対話を行っている。この政権は、ガザに平和をもたらし、人質全員(その中にはエダン・アレクサンダーを含む5人の米国人も含まれる)の解放を確保するため、地域のパートナーと引き続き真剣に協力していくつもりだ。」と語った。
一方、サンフランシスコ大学の政治学教授スティーブン・ズネス氏は、「パレスチナ国家承認に関する質問に対して、ハマスの名前を持ち出すのは奇妙だ」と指摘。ハマスはパレスチナ自治政府(PA)とは異なる武装勢力であり、10月7日の攻撃とも無関係であるとした。また、アブラハム合意を強調することは、イスラエルの占領終結やパレスチナ国家樹立と引き換えにイスラエルを承認してきたアラブ諸国の従来の立場と対立するものだと批判した。
ズネス氏はさらに、トランプ政権とバイデン政権の間にこの問題に関する本質的な違いはないと述べ、2024年には米国がパレスチナの国連加盟を支持する安保理決議を拒否権で阻止したことを挙げた。米国はまた、「パレスチナは国家ではない」として、国際刑事裁判所(ICC)がガザやパレスチナにおける戦争犯罪を裁く権限を持たないと主張した。
ジャダリーヤ誌共同編集者ムーイン・ラバニ氏は、フランスがサウジアラビアと共催する6月の国連会議でパレスチナを承認する可能性があるが、実際に実行するかは不透明だと述べた。マクロン大統領の発言は一貫性に欠け、イスラエルの中東諸国による承認やパレスチナ政治からのハマス排除など、非現実的な条件を付けていると指摘した。
ラバニ氏は、「パレスチナ国家承認を掲げながら、実際にはイスラエル国家のみを認め、50年以上続くイスラエルの占領政策に何の制裁も課してこなかったフランスの姿勢は、説得力に欠ける。」と述べた。
さらに、マクロン大統領が戦争犯罪で起訴されているイスラエルのネタニヤフ首相の米国渡航のためにフランス領空を開放したことに触れつつ、そのネタニヤフ首相と息子ヤイル氏がマクロン氏をヴィシー政権のペタン元帥に例え、「くたばれ」と罵倒したことについて、「パリでは依然としてイスラエルが無条件に免責されている。」と批判した。
また、『パレスチナ・クロニクル』編集長のラマジー・バロウド博士は、フランスによる国家承認は興味深い動きである一方で、現在の状況ではその意義は限定的だと語った。「ガザでの壊滅的な戦争犯罪が17か月以上続き、西側諸国がそれを支持した今となっては、このような承認は象徴的、あるいは機会主義的とすら見える可能性がある。」と述べた。
バロウド氏は、2024年にノルウェー、スペイン、アイルランドがパレスチナを承認したことはパレスチナ人にとって精神的な励ましにはなったが、実際の状況改善や米・イスラエルの政策転換にはつながらなかったと指摘した。
さらに、フランス政府が本気で「パレスチナ支持」に転じるのであれば、フランス国内でパレスチナ連帯運動に取り組む市民活動家が自由に活動できる環境を保障すべきだと述べた。「現在の承認の動きは、過去と現在の対パレスチナ政策から目を逸らすための政治的操作と受け取られかねない。」と警鐘を鳴らしている。(原文へ)
INPS Japan/ IPS UN BUREAU REPORT
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「プラスチック・マン」──ごみを宝に変える男
【ダカールIPS=フランク・クウォヌ】
セネガル・ダカール郊外のメディナ・グナスの静かな一角で、一人の男性が多くの人に見捨てられた場所に新たな命を吹き込んでいる。
かつてプラスチックごみの山が広がっていたその場所に、今では緑豊かなオアシスが生まれた。それは彼のたゆまぬ情熱の賜物だ。
「プラスチック・マン」の愛称で知られるモドゥ・ファルさんは、単なるリサイクル活動を超えた闘いに身を捧げている。彼は活動家であり、教育者であり、そしてよりクリーンで持続可能な未来を目指すキャンペーンの担い手だ。
ごみの山から緑の聖域へ
世界がCOVID-19のパンデミックに揺れていた2020年、ファルさんは別の使命に取り組んでいた。かつては活気にあふれていた彼の地元メディナは、洪水の被害と住民の流出によって荒廃し、やがてごみ捨て場と化してしまった。
「最初は、がれきと壊れかけた壁しかありませんでした」と彼は振り返る。「でも、私は何かできると信じていました。」
多くの人が見捨てた空間に、ファルさんは大きな可能性を見出した。彼はボランティアの仲間たちとともに、木を植え、教育展示を設置し、捨てられたものを再利用して空間を生まれ変わらせていった。
「ここにある一つひとつのものが物語を持っています。私たちはそれらを救い、新しい命を与えたのです」と、ダカールでの『アフリカ・リニューアル』の取材に語った。
ごみの清掃は始まりにすぎない。ファルさんは意識改革こそが必要だと強調する。「問題は、私たちが捨てるごみだけではなく、プラスチックとの関係そのものなんです。」
子どもたちの未来を変える教育
ファルさんは、教育プログラムやワークショップを通じて、子どもたちにリサイクルや再利用を教えている。彼は、廃棄物を「ごみ」ではなく、「創造と持続可能性のための資源」として見る目を育てたいと考えている。
たとえば、古いタイヤは椅子に、プラスチックボトルは装飾品に生まれ変わる。
「子どもたちに、廃棄物が新たな命を持つことを示す必要があります。今日それを学べば、明日には行動が変わるのです。」
しかし、教育だけでは十分ではない。ファルさんは、廃棄物管理の制度改革と環境規制の強化が不可欠だと訴える。「今すぐ行動しなければ、プラスチック汚染は手がつけられなくなるでしょう。」
揺るがぬ決意
幸いにも、ファルさんの活動は当局からも認められ、環境保護への功績で表彰を受けた。しかし、道のりは平坦ではなく、彼は業界からの反発にも直面してきた。
それでもファルさんは立ち止まらない。有害物質を水路に排出する企業を告発し続けている。
「数年前までは、ここにもカエルがいたんです。でも今では、一匹も見かけなくなりました。」
セネガルでは使い捨てプラスチックの使用が禁止されているにもかかわらず、街にはいまだにビニール袋があふれている現状に警鐘を鳴らす。
未来を担う世代への投資
ファルさんの夢は、地域にとどまらず広がっている。彼の次なる目標は、若者が持続可能な社会の構築方法を学べるエコロジートレーニングセンターの設立だ。
「ごみを拾うだけではなく、なぜこの状況になったのかを理解し、根本的な解決策を探さなければなりません。」
彼はまた、学生が環境に関するドキュメンタリーを鑑賞できる場所を設けたいと話す。「地球を守るのは、将来の彼らです。今のうちに何が起きているのかを知ってもらわなければ。」
さらに、地域のアーティストと協力して、廃材からアート作品を創出する試みも進行中だ。
「廃棄物が芸術作品に変わるのを見ると、その価値が一目でわかります。」
彼は毎月の清掃活動を地域ぐるみで行う計画も立てている。「これを習慣にすれば、環境そのものを変えることができるはずです。」
行動が変革を生む
「プラスチック・マン」は、口先だけの活動家ではない。彼は言葉ではなく、行動で示している。
「よく、『私たちがしていることなんて、海の一滴にすぎない』と言われます。でも、海とは無数の一滴が集まったものじゃありませんか?」
彼の取り組みは、一人の決意が社会に変革をもたらすことを証明している。リサイクルされたボトル、植えられた一本の木、教育された子ども──その一つひとつが未来への希望だ。
インタビューの最後に、彼はこんなメッセージを残した。
「私たちはこの地球の守り手です。誰にでも役割があります。出身や財産は関係ありません。大事なのは、何をするかです。」(原文へ)
INPS Japan /IPS UN BUREAU REPORT
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アルフォンソ・ガルシア・ロブレスの精神は若者から蘇る
核兵器のない世界のために―創価学会メキシコが企画した「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」展がアナウアク大学で開催
【メキシコシティーINPS Japan=ギレルモ・アヤラ・アラニス】
メキシコ市北部に位置するアナワク大学の展示ホールが、若者たちに核兵器の脅威と、それを防ぐために市民社会が行っている取り組みを伝える中心地となった。創価学会メキシコ、アルフォンソ・ガルシア・ロブレス外交財団、OPANAL(ラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止条約機構)などの取り組みが紹介された。
創価学会メキシコによって企画されたこの「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」展には、国際関係、コミュニケーション、デザイン、工学など多様な学部の学生たちが展示を訪れた。
「ティフアナからティエラ・デル・フエゴまで、ラテンアメリカ地域を核兵器の危機から守っているトラテロルコ条約。その推進者こそがアルフォンソ・ガルシア・ロブレスなのです。」と、創価学会メキシコのネレオ・オルダス理事長はINPS Japanの取材に対して語った。
展示は、創価学会インタナショナル(SGI)と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の協力により制作された42枚の情報パネルで構成されており、核兵器が地球の生命に与える脅威や、それに抗う市民社会の闘いについて来場者に深く考えさせる内容となっている。
「若者には社会を変革する原動力があります。若者は国の最大の宝です。彼らには創造性、力、純粋さ、そして情熱があるのです。」と、オルダス理事長は続けた。
アナワク大学の国際化担当ディレクター、パトリシア・エウヘニア・ルイス氏も、「自分がどんな専攻であれ、現実を知ることは重要です。そして、どのような世界を創りたいかを考え、影響を与える存在になってほしい。」と語った。
過去3年間で、この展示会はメキシコ国内の複数の大学で開催され、生徒・教師・職員・市民など10万人近くが訪れた。展示では、核兵器の研究・生産に関わる資金の流れについても紹介しており、24カ国の329の銀行、年金基金、金融機関が関与していることが強調されている。また、核兵器の健康・環境への影響、そして広島・長崎への原爆投下がもたらした被害についても学ぶことができる。
アナワク大学のデザイン学部生フリエタ・アリアスさんは「核兵器なんて必要ありません。あれほどのことをしておいて、まだ存在するのは馬鹿げている。私たち若者こそ、きちんと知るべきです。」と語り、工学部のアレックスさんも「核戦争が起これば一瞬で全てが終わり、取り返しのつかない結果をなるでしょう。」と語った。
創価学会メキシコは、メリダ、プラヤ・デル・カルメン、サン・ミゲル・デ・アジェンデ、ティフアナ、ベラクルスなど、国内68都市で活動している。
今年1月26日には、創価学会インタナショナル創立50周年を迎えた。同団体が掲げる平和の価値観は、今後ますます若者の間で重要視されていくべきである。この文脈の中で、グアナフアト州サン・ミゲル・デ・アジェンデ市では、SGIがアルフォンソ・ガルシア・ロブレス外交財団から「平和と核廃絶への貢献に対する功労メダル」を授与された。
同財団会長のラファエル・メディナ氏はINPS Japanのインタビューに対して、「新世代が平和と核廃絶の種をまくことが極めて重要」と強調。「メキシコが世界初の非核兵器地帯(NWFZ)を生み出したことに誇りを持ってほしい。そして、今後さらに深く広く取り組むべきだ。」と語った。また、現在、ノーベル平和賞受賞者アルフォンソ・ガルシア・ロブレスの業績を紹介するドキュメンタリー映画の制作も進んでいることを明かにした。
OPANAL事務局長のフラヴィオ・ロベルト・ボンザニーニ大使もイベントに出席し、「若者こそが安全で平和な世界を築くことができる」と述べ、核兵器の脅威についての理解を深め、声をあげるよう呼びかけた。
また、OPANAL代表団の一員として広島出身の日本人インターン、佐藤ユミさんも参加していた。彼女は広島の原爆生存者を祖母に持ち、現在カリフォルニアのミドルベリー国際大学院で「不拡散とテロ対策研究」の修士課程を学んでいる。彼女は「日本とラテンアメリカの若者の多くが、核兵器の廃絶を望んでいる」と述べ、「同じ時代を生きるメキシコの若者と日々を共にできてうれしい。」と語った。
この「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」展は今後も大学や公共施設で巡回展示される予定であり、創価学会メキシコのオルダス理事長は、持続可能性や環境をテーマにした展示も近くメキシコ国内の教育機関で展開していくと発表した。(原文へ)
INPS Japan
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トランプ氏の関税攻勢、癇癪、そして貿易戦争──そして世界の戦略的健忘症
【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】
ドナルド・トランプ大統領が米国への全輸入品に「相互主義」に基づく関税を課すと発表したことで、世界は戦略的な対応ではなく、衝撃で応じた。中国製品への関税は驚異の145%に引き上げられ、ベトナムも46%の関税引き上げの対象に。さらに、従来は米国の同盟国だった欧州諸国も、この経済的な十字砲火に巻き込まれた。
世界貿易機関(WTO)のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は、この動きを受けて、2025年の世界貿易成長率見通しを3.0%から0.2%に大幅下方修正。米国の関税強化とその経済波及効果が主要因であるとし、世界のGDP、金融市場、特に途上国経済への影響に懸念を示した。
しかし、こうした展開に「なぜ驚いているのか?」という疑問も浮かぶ。
トランプ氏の経済戦略は、当初から一貫して明示されてきた。初めて大統領に就任した当初から、彼の貿易哲学は多国間主義ではなく「相互主義」を中核に据えていた。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱、WTOへの敵対姿勢、そして友好国・敵対国を問わず鉄鋼・アルミへの関税を課した一連の動き──今回の措置は、こうした路線の延長線上にすぎない。
では、なぜ世界は今になって慌てているのか?
それは、米国経済の決意と影響力を過小評価するという「世界的な健忘症」が働いているからかもしれない。米国の経済規模は27兆ドルを超え、世界最大かつ最も回復力のある経済であり、世界最大の消費市場を有している。この巨大市場へのアクセスが武器化された時、その影響は迅速かつ深刻である。
今回の混乱が示しているのは、そうした驚きそのものよりも、世界が長年抱いてきた前提──「米国市場は常に開かれている」という幻想が崩れたことにある。
ここでいくつかの不都合な問いが浮かび上がる:
世界経済は、米国市場への依存度が危険なほど高まっているのではないか?
今回のパニックは過剰反応なのか、それとも貿易戦略を見直すための必要な目覚ましなのか?
グローバル・サウスの国々は、なぜ「米国後」の貿易体制に備えてこなかったのか?
経済的側面だけでなく、心理的な要因もあると言われている。脅威は単なる財政的打撃ではなく、「象徴的」な意味合いも持つ。トランプ氏の関税政策は、世界最大の経済大国における「予測可能性の崩壊」を意味する。国際的なルールが一夜にして変わるような状況では、「不確実性」が新たな通貨となり、不確実性こそがグローバル貿易にとって最大の毒である。
米国の最も近いパートナーである欧州諸国でさえ、裏切られたと感じている。長年優遇措置に慣れていた彼らも、今では戦略的ライバルと同列に扱われ、自動車や農産物などの輸出品が二桁の関税を課される事態に。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「かつての“西側”は死んだ」と発言。米国の予測不能な政策に対し、EUの安定性と民主主義、そして自由貿易への姿勢との対比を強調した。
そして中国との関係は、すでに緊張していたところにさらなる悪化を招いている。145%の関税は、もはや「税金」というより「壁」だ。中国のテクノロジーや製造業企業は、事実上米国市場から締め出されることになる。その影響は甚大で、サプライチェーンの混乱、投資の停滞、そして世界の2大経済圏のさらなる分断が避けられない。
中国も報復関税として最大125%の関税を米国製品に課すと発表し、中国商務省は「関税をいくら上げても経済的合理性は失われ、米国の政策は世界経済の笑い話になる」と痛烈に批判した。
一方、あまり注目されていないが重要なのは、米国の消費者側の影響である。ウォルマートの棚やフォードやGMのショールームで、これらの関税の影響は確実に現れる。価格は上昇し、商品の供給は減るだろう。「アメリカ・ファースト」の掛け声に歓声を上げていた支持層も、いずれその代償を痛感することになる。
だが、この混乱の中にはあまり語られていない「チャンス」もある。
今回の関税措置が先進工業国に打撃を与える一方で、ラテンアメリカ、サブサハラ・アフリカ、東南アジア、中東の一部など、一部の新興国は比較的軽い10%程度の関税で済んでおり、逆に米国市場での輸出拡大のチャンスを得ている。政治的な必要から再編されつつあるサプライチェーンの中で、これらの国々が存在感を高めるチャンスが到来しているのだ。道のりは容易ではないが、脱・大国依存の可能性が開かれている。
では、こうした政策は持続可能なのか?
トランプ氏は「短期的な痛みが長期的な利益につながる」と信じ、有権者に訴えている。国内製造業の復活、サプライチェーンの再構築、そして米国経済の主導権回復──それが彼の賭けである。ただし、その過程では財政的なコストだけでなく、米国の外交的孤立、国際機関の弱体化、さらには米国を迂回する新たな貿易体制の誕生という代償も伴うだろう。
そして世界はどうするのか?
いまこそ「世界の再設計」が求められている。米国市場に過度に依存してきた国々は、自国市場の強化や多角的な貿易戦略の再構築を真剣に検討する時を迎えているのかもしれない。(原文へ)
INPS Japan/ATN
Original Link: https://www.amerinews.tv/posts/trump-s-tariff-blitz-tantrums-and-trade-wars-and-the-world-s-strategic-amnesia
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