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核時代80年:ラテンアメリカの軍縮路線が示す「対抗モデル」

【メキシコシティーINPS Japan=ギレルモ・アヤラ・アラニス】 核抑止が再び世界の権力構造の柱として前面に出つつある中で、ラテンアメリカ・カリブ海地域は、核兵器に依存しない安全保障という立場を粘り強く掲げている。安全は核によってではなく、核兵器を持たないことによってこそ確かなものになる―という考え方である。 |英語版|スペイン語| その確信を中心に据えるのが、新刊『A 80 años de la era nuclear: ¿Dónde...

「勝利と涙」:元グルカ兵が告発する不平等―フォークランド戦争とハワイ事件の記憶

【カトマンズNepali Times=ビシャド・ラージ・オンタ】 ネパールのグルカ兵は、比類ない勇気と忠誠心で世界的に名高い。だが、1986年にハワイで起きた出来事と、その後に続いた公正な賃金・年金を求める長い闘いは、ネパールの屈強な兵士たちが不正義を黙認しない存在でもあることを示している。 香港を拠点とする「第7エディンバラ公爵グルカ・ライフル連隊第1大隊」は、統合太平洋多国籍即応訓練センター(Joint Pacific Multinational Readiness Center)でのジャングル戦訓練のため、ハワイに派遣されていた。その最中、同部隊の兵士たちが指揮官のコリン・ピアース少佐(Major Corin Pearce)に暴行を加える事件が起きた。 グルカ兵側は、ピアースが自分たちを侮辱したと主張し、兵士111人が解雇された。ピアースは肋骨を折り、頭部にも負傷を負ったが、本人もまた除隊処分となった。 この事件は世界的に報じられ、英軍においてネパール人兵士が公正に扱われていないのではないか、という見方を強めた。また、退役兵の一部が英国人同僚と同等の補償を求め、数十年に及ぶ闘いを始める契機にもなった。 退役した英軍グルカ兵のシャンカル・ライ(Shankar Rai)は、著書『Triumph...

|ダボス会議|経済を凌駕する『力の政治』

【ダボスATN=ATNニュースチーム】 今週、世界各国の主要な政治指導者(国家元首・政府首脳約65人を含む)が、スイス・ダボスで開かれる世界経済フォーラム(WEF)年次総会2026に集結した。今年のWEFは、企業主導の「アイデアの祭典」というより、世界秩序の耐久力をその場で試す実地の検証に近かった。成長見通しではなく、地政学が議論の中心を占めたからだ。 各セッションや非公開会合、廊下での会話に共通していた支配的な空気は、米欧摩擦の先鋭化だった。背景には、ドナルド・トランプ大統領がグリーンランドをめぐって圧力を再び強め、関税を交渉の梃子として用いていることがある。例年なら周到に演出された楽観ムードが支配するが、今年は「危機下の同盟管理」を思わせる緊張感が漂っていた。 欧州の指導者は公の場で結束を示した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、グリーンランドの主権は「交渉の余地がない」と改めて明言し、各国と連携して北極の安全保障を強化する措置を欧州連合(EU)として準備していると語った。メッセージは明確だが、表現はあくまで外交的である。欧州が求めるのは米国との協力であり、強要ではない。 カナダも同様の立場を示した。マーク・カーニー首相は、地政学的対立と結びついた貿易措置の行使にカナダ政府は反対だと述べ、関税の「武器化」は国際貿易体制への信頼を損ないかねないと警告した。 先行きの安定を求めてダボスに集まる企業幹部からも、不安の声が出ていた。複数の最高経営責任者(CEO)は、感情に左右される政治判断や唐突な政策転換が市場を揺さぶり、長期の投資計画を立てにくくしていると指摘した。ある欧州企業の幹部は私的に、この場の雰囲気を「政治的すぎる。変動が大きく、不確実性が高すぎる」と表現したという。 米国側は沈静化を図っている。スコット・ベッセント財務長官は、米欧関係の決裂を懸念する見方は誇張だとして退け、同盟国に外交の進展を見守るよう求めた。だが市場はそれほど楽観的ではない。主要経済圏の間で貿易が混乱する危険が高まっているとの見方を投資家が織り込み、火曜日には世界の株式が下落した。 ダボスの外で起きた出来事も、会議に漂う地政学の影をいっそう濃くした。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアによるミサイル攻撃の再開への対応のため、予定していた登壇を取りやめた。アルプスで各国指導者が戦略を論じる一方、戦争が別の場所で現実を規定し続けている――その事実を突きつける出来事だった。 政治の議論を地政学が主導する一方、経済面で存在感を示したのは人工知能(AI)である。ただし、近年ほどの過熱は見られなかった。 この日の主要論点の一つとなった討論で、PwCのモハメド・カンデ会長は、企業の半数超がAI投資から目立った成果を得られていないと指摘した。問題は技術そのものではなく、組織の準備不足や、実装をめぐる指揮系統の曖昧さにある―というのが同氏の見立てであった。 こうした現実路線は、複数の技術分野の討論でも共有された。登壇者からは、AIが急速に商業ツールから「戦略資産」へと性格を変えつつある、との警告が相次いだ。半導体、データ、基盤設備をめぐる競争は、すでに戦略的対立に近い様相を帯びているという。先端AIは、社会を変え得るほど強力である一方、管理を誤れば不安定化を招き得る「重要な社会基盤」に等しい―そうした比喩も繰り返された。 非公開の場では、近年と比べて語り口が明確に変わった、という声も聞かれた。破壊を礼賛する議論は後退し、統制、運用の規範、そして予期せぬ帰結への懸念が強まっているという。 この日の終盤には、全体の方向性は明確になっていた。ダボス2026の焦点は、気候公約でも環境・社会・企業統治(ESG)の流行語でも、派手な技術の展示でもない。いま問われているのは、むき出しの「力の政治」である。誰がルールを定め、誰がそれを執行し、大国が「ルールは共有されている」という建前を降ろしたとき、何が起きるのか―その問いが前面に出ている。 主催者は対話と協調を強調し続けている。だが会場の空気はむしろ、分断の深まりを映している。中立の場を提供し、国際的な合意形成を後押しする―フォーラム本来の役割は、国際政治の力学が取引優先へ傾き、同盟がますます条件付きになっていく世界の中で試練にさらされている。 注目は水曜日に移る。トランプ大統領がフォーラムで直接演説すると見込まれているためだ。外交官も企業幹部も投資家も、決まり文句ではなく「シグナル」を読み取ろうと身構えている。政権はグリーンランド問題でどこまで踏み込むのか。貿易をどこまで強硬に交渉の梃子として使うのか。同盟国との交渉で、歩み寄りの余地は残されているのか。 現時点のダボスは、楽観のサミットというより、意思決定者たちが静かに前提を組み替えている場である。その気配が強かった。(原文へ) Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/davos-2026-power-politics-eclipse-the-economy 関連記事: INPS Japan 欧州には戦略的距離が必要だ──米国への盲目的同調ではなく ホワイトハウス首脳会談:欧州は団結、ウクライナは屈服を拒否 米国の「核の傘」が崩壊すれば、欧州は「独自の核兵器(ユーロ・ボム)」を選ぶのか?

いま、中国に目を向けよ

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。 【Global Outlook=スタイン・トンネソン 】 世界平和はいま脅かされている。ウクライナ、中東、アフリカでは戦争が続き、米国の貿易戦争も進行中である。ドナルド・トランプ大統領は複数の国際条約や国際機関から離脱し、同盟上の義務から後退し、他国への軍事介入にも踏み切っている。強い不安感を背景に、各国政府は軍事予算を増やしている。これだけでも深刻だが、巨大テック企業がクラッシュに向かうのではないかという懸念もある。私たちは、終わりの見えないトンネルの中で、方向を失ったコウモリのようにさまよっている。 その中で中国は、独立した主権国家から成るグローバルな国際システムと、不干渉原則を重視する姿勢で際立つ。中国の世界観は、個人の権利より国家の主権的権利に重心がある。国家間の戦争がない世界を望む。中国はトランプ関税の嵐に耐えつつ、4月にトランプ氏を国賓訪問として迎える予定だ。世界の将来を左右する存在になるかもしれない。 1月3日のカラカスでの米国の急襲は、国連憲章への重大な違反であった。にもかかわらず、多くの政府は非難を避け、違法性に言及するにとどめた。大統領を拘束するという行為が、他国にとって前例になり得ると批判者は指摘した。ロシアがゼレンスキーを拘束するのか。中国が頼清徳を連れ去るのか。 異なるリアリズム 米国の急襲に対するロシアと中国の反応は異なっていた。両国はいずれもマドゥロ政権に政治的・経済的に関与してきた。両国とも公式に抗議声明を出したが、プーチン大統領は沈黙を保った。自身によるウクライナ侵略は、規模と破壊性の点で、トランプが行った行動をはるかに上回っているからである。 ロシアの元大統領で、現在は国家安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフは1月4日、トランプの行動は違法だとしつつも、「内部的には整合的」であり、米国の利益追求として理解できるとの趣旨の発言を行った。ここには、ホワイトハウスとクレムリンの世界観の接近が示唆されている。すなわち、国際関係を利益の競争と捉え、強硬な力の行使を当然視する見方である。メドベージェフはまた、ベネズエラは米国の「裏庭」だとも述べた。 これに対し、中国の反応はより規範に根差したものだった。北京は米国の行動を国際法違反として非難し、「国際法、国際関係の基本規範、国連憲章の目的と原則を明白に違反している」と述べた。中国の公式論評は、いかなる国であれ世界の「警察官」のように振る舞うべきではないと警告した。1月5日、アイルランド首相との会談で習近平国家主席は、「一方的で覇権的ないじめが国際秩序に深刻な影響を与えている」と批判し、「すべての国は、他国の人々が独自に選んだ発展の道を尊重すべきだ」と訴えた。 こうした発言は単なるレトリックにすぎないと退けることもできる。しかし、中国がこれを本気で語っている可能性も考えてみる必要がある。主権を基礎とする国際秩序は、中国自身がその国益と合致すると見ているのかもしれない。 国益と平和 主権を基礎とする安定した国際秩序は、対外環境の予見可能性を高め、開かれたグローバル市場へのアクセスを確保するという点で、中国の中核的利益に資する。中国は世界各地で広範な経済的利害を抱えている。供給過剰傾向の産業が生み出す電気自動車、太陽光パネル、風力発電設備などの輸出が欠かせない。他方で、大豆、石油、半導体(チップ)など、さまざまな必需品の輸入にも依存している。利益率は低く、貯蓄率が過大であるため国内消費は低水準にとどまる。経済改革を進めるうえでも、中国はグローバル市場への十分なアクセスを必要としている。 地政学的安定を確保するため、中国は陸上で国境を接する近隣諸国のうち、インドとブータンを除くすべてと国境画定で合意してきた。上海協力機構(SCO)を通じて、中央アジアではロシアと影響力を分かち合う枠組みも築いている。モンゴルはかつて清の領域の一部だったが、中国はこれを主権国家として認めてきた。結果として、中国の領土紛争は、インド、海上の近隣諸国、そして台湾にほぼ限られる。 この約40年、中国は他国との武力紛争を回避してきた。ヒマラヤ、南シナ海、東シナ海での事案は憂慮すべきものだったが、衝突は限定的にとどまっている。中国は台湾周辺で大規模な軍事演習や航空・海上活動を実施してきた。これらの演習は多くの場合、事前に告知されている。一方で、中国軍機や艦艇の活動は近年、台湾側が防空識別圏(ADIZ)や周辺海域への繰り返しの進入と受け止める水準にまで拡大しており、海峡の中間線を越える事例も常態化している。演習海域が台湾の領海に接近、あるいは含まれているとの台湾当局の指摘もあるが、領空・領海への侵入に当たるかどうかについては、法的解釈と当事者の立場によって評価が分かれている。中国国内には、いずれ大国は国外で自国の利益を守るため武力を用いざるを得ない、と主張する見方がある。戦闘経験が必要だという声もある。しかし孫子の兵法の観点では、必ずしもそうではない。孫子が説くところでは、戦争に勝つ最善の方法は、戦わずして勝つことである。中国のこれまでの強硬な行動の狙いは、戦争を誘発することではなく、シグナルを発して警告することにあった。いまなお、各主体が自制を示す余地は残っている。 台湾の現状維持 台湾は中国のアキレス腱である。台湾は国際的に承認された国家ではないため、台湾への軍事侵攻は、それ自体が直ちに国連憲章2条4項に違反すると断定されるとは限らない、との見方も成り立ち得る(ロシアによるウクライナ侵攻や、米国のベネズエラ介入とは異なる)。しかし、この点は大きな論争を呼ぶだろう。 もっとも、軍事攻撃に用いられる手段は、慣習国際法やジュネーブ諸条約に違反する可能性が極めて高い。全面侵攻となれば抵抗は避けられず、米国や日本の介入を招く恐れもある。台湾をめぐる戦争は拡大し、核兵器の応酬に発展する可能性すら否定できない。 中国の2005年反国家分裂法は、台湾が独立に向けた動きを取る場合、あるいは平和的統一の見通しが失われた場合、武力行使を義務づけている。こうした「レッドライン」は、戦場の主導権を中国自ら手放す結果になりかねず、孫子の兵法の発想にはそぐわない。レッドラインは、相手に挑発の余地を与え、相手の条件で戦争を誘発する危険をはらむ。 平和の観点から理想を言えば、中国は台湾政府を安心させ、高度な自治を認める方向で備えるべきだろう。そうなれば、台湾海峡を越えた自由貿易が可能となり、中国は台湾の世界最先端の技術へのアクセスも確保できる。 中国の軍事演習、米国の対台湾武器売却、そして台湾の指導者による「独立志向」と受け止められる行動は、緊密に絡み合い、自己強化的なエスカレーションの連鎖を生みかねない。だからこそ、相互の安心供与が不可欠である。台湾問題の最も現実的な解は、実は「解を求めないこと」なのかもしれない。1979年以来、現状維持は双方にとって機能してきた。 小国の役割 勢力圏の発想で動くプーチンとトランプの反グローバリズム政策は、アジアの国々―大国から小国まで―が平和促進に役割を果たす余地を生み出している。賢明な中国であれば、北東アジアでも東南アジアでも、こうした動きを後押しするだろう。11加盟国から成る東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ASEAN主導の首脳会合、ASEAN地域フォーラム、東アジア首脳会議などを通じ、大国の指導者を同じ場に集めてきた実績がある。ASEANは、日本、韓国、中国、さらにはインドも含め、国連を再活性化し、ルールに基づく国際秩序を支えるための持続的な努力において、新たな協力の時代を形づくる助けになり得る。 東アジアの国々が相互の安心を高める模範を示せば、欧州にとっても、ロシアという宿敵と気まぐれな米国の「保護者」の間に挟まれた圧迫感を和らげる一助となるかもしれない。残念ながら、米国とロシアは世界最大の核兵器庫を抱える。中国の核戦力も憂慮すべきペースで増大している。それでも北京は先制不使用(No First Use)を掲げている。日本も反核の立場を堅持することが望まれる。1995年に宣言されたASEAN非核地帯は、加盟国に対し、核兵器の開発、保有、配備を行わないことを引き続き誓約させている。 トンネルのアジア側には、光が差すのかもしれない。(原文へ) INPS Japan 関連記事: NFUは維持、核戦力は拡大―中国の核ドクトリンが軍縮と戦略的安定に与える影響 中国の台湾に対する新たな戦術:名を語らぬ軍事演習 |視点|核兵器の先制不使用政策:リスク低減への道(相島智彦創価学会インタナショナル平和運動局長)