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アゼルバイジャンとアルメニア、アルマトイで和平交渉開催

【アスタナINPS Japan/Atana Times=ダナ・オミグラジィ】 アゼルバイジャンのジェイフン・バイラモフ外相とアルメニアのアララト・ミゾヤン外相は、5月10日にカザフスタンのアルマトイで交渉を開始した。カザフスタンのムラト・ヌルトレウ副首相兼外相は、両外相を歓迎し、カザフスタンが仲介役を引き受けることなく、交渉をホストする事務局としての職務を誠実に遂行する準備ができていることを強調した。 「アゼルバイジャンとアルメニア両国は、カザフスタンにとって親密な国であるだけでなく、重要な戦略的パートナーでもあります。古来より、両国民は何世紀にもわたる友好の絆、相互理解、共通の歴史的過去によって結ばれてきました。両国間の協議が、信頼にもとづく対話を通じて実りあるものとなり、成功裏に目標を達成することを祈念します。」と語った。 バヤラモフ外相は、カザフ政府、とりわけこの交渉をホストするイニシアチブをとってくれたカシム・ジョマルト・トカエフ大統領に感謝の意を表した。 「我々はこのプロセスを非常に重要視しており、作業を継続する用意があることを確認したい。アルマトイでの交渉は非常に有益なものになると確信しており、今後2日間、未解決の問題の解決策を見出すために前向きに取り組んでいきたい。」とバイラモフ外相は語った。 ミゾヤン外相もまた、今回の会談をホストしたカザフ政府に感謝の意を表した。 「アルメニアは和平を目指していることを強調したい。我々は非常に建設的に交渉プロセスに参加しています。さらに、我々は平和条約の締結にとどまるべきでないと考えています。すべての輸送インフラは、その領土を通過する国々の主権の下に置かれるという理解の下で、(現在遮断している)域内のすべての交通通信を共同で解除することができます。私たちが合意する国境、行政、税関手続きを抑制するすべての手続きは、相互主義の原則に従い、相互のものとなります。」とミゾヤン外相は語った。 ヌルトレウ外相はまた、アゼルバイジャンおよびアルメニアの外相と個別に二国間協議を行い、協力の展望について話し合った。 ミゾヤン外相との会談では、両外相はカザフスタンとアルメニア間でハイレベルの政治対話が進展している現状に満足の意を示した。 3カ国の外相は、国境画定を含むアゼルバイジャン・アルメニア間の関係解決における画期的な1991年のアルマ・アタ宣言の役割を挙げ、今般アルマトイでアゼルバイジャンとアルメニア外相が会談した象徴的な重要性を強調した。 バヤラモフ外相との会談では、カザフ・アゼルバイジャンの戦略的パートナーシップと同盟の強化について話し合われ、貿易と通過・輸送拡大の可能性について意見交換が行われた。 バイラモフ外相は、アゼルバイジャンとアルメニアの二国間和平プロセス促進におけるカザフスタン政府の努力と支援に感謝の意を表した。(原文へ) INPS Japan この記事は、Astana Timesに初出掲載されたものです。 関連記事: アゼルバイジャンのシュシャで「カリ・ブルブル」国際音楽祭が開幕 |視点|カザフスタンが 「21世紀のスイス」になる可能性(ドミトリー・バビッチ) |視点|カザフスタンの宗教間対話イニシアチブ:知恵とリーダーシップで世界の調和を育む(浅霧勝浩INPS Japan理事長)

雨漏りする屋根: 「アジアの世紀」脅かすヒマラヤ融解

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。 【Global Outlook=ロバート・ミゾ】 世界の屋根が雨漏りしている。より正確には、融けている。脆弱なヒマラヤの生態圏は、気候変動が引き起こした気温上昇による大きな脅威に直面している。これは、生態系への影響をもたらすだけでなく、下流に住む何百万もの人々の生活を、政治的境界や文化を超えて、破壊はしないまでも変えてしまうだろう。次なる世界的大国と目され、「アジアの世紀」の二大主役として競い合ってもいる中国とインドは、経済や政治の安全保障という点でヒマラヤの健全性に負うところが極めて大きい。しかし、気候変動がもたらすであろう運命がこの地域に差し迫っており、そのうちのいくつかはすでに起こりつつあることを考えると、アジアの世紀は控えめに言っても不確実であるようだ。(日・英) ヒマラヤ地域は、そこに暮らす人間や他の多くの生き物にとって極めて重要であるだけでなく、近隣の数カ国、具体的にはアフガニスタン、インド、中国、ネパール、ブータン、パキスタン、バングラデシュ、さらにはミャンマーの何十億人という人々の命を支えている。ヒマラヤは、北極、南極に次ぐ膨大な量の凍った水が集中していることから「第3の極」とも呼ばれ、ガンジス川、インダス川、黄河、メコン川、イラワジ川といった命を支える主要な河川系の水源となっている。これらの河川は、流域にアジア文明の主要な中心地を擁し、何十億人もの人々に、食料、エネルギー、生計手段を直接的あるいは間接的に提供している。いわゆるアジアの世紀は、これらの川の流域に根差していると言って良いだろう。また、地政学的にも、ヒマラヤ地域には世界で最も重武装された二つの国境(インド・パキスタン間、インド・中国間)があり、そのため軍事インフラの設置面積が拡大している。それがさらに、全体的な生態系の脆弱性に拍車をかけている。 ヒマラヤの氷河が融解していることは、だいぶ前から知られている事実である。科学者らは10年以上前からこの融解について警告し、時には「論争」を引き起こしてきた。しかし、最近の科学研究により、さらに憂慮するべき事実が裏付けられた。当初の記録または予測よりもはるかに速いペースで融解が進んでいるのだ。カトマンズにある国際総合山岳開発センター(ICIMOD)は、2023年の研究で、2011~2020年におけるヒマラヤ氷河の融解スピードはその前の10年間より65%速かったと報告した。報告では、たとえ地球温暖化がパリ協定で定めた通り1.5℃~2℃に抑えられたとしてもヒマラヤ氷河は2100年までに容積の3分の1から半分を失うと結論付けている。ただし、これはまだ最善のシナリオの話である。 イースト・アングリア大学の大規模な研究プログラムでは、気候温暖化のレベルが上昇すると人間や自然のシステムへのリスクがどのように増大するかが検討された。学術誌「Climatic Change」に発表されたこの研究では、地球の気温が3℃上昇するとヒマラヤ地域の約90%で1年以上続く干ばつが起こり、予測される上昇が4℃の場合は4年以上続く干ばつが起こると予想されている。報告書の執筆者らは、破滅的な気候現象を回避するためには、地球温暖化をパリ協定が掲げる1.5℃の限度内に抑える持続的な政策が必要であると繰り返し述べている。 ヒマラヤ氷河の融解による破滅的な影響は現れ始めている。2023年10月、インド北東部のシッキム州のサウス・ロナック湖が決壊し、住宅、橋、高速道路、1,200 メガワット級ウルジャ水力発電所のチュンタン・ダムが破壊されて、30人が死亡したほか、下流の村のさらに多くの人が家を失った。当初、決壊は集中豪雨によるものと報道されたが、インド宇宙研究機関(ISRO)が湖増水の様子を捉えた衛星画像から、氷河湖決壊洪水(GLOF)と過剰降雨の組み合わせによって引き起こされたことが明らかになった。この事態は2013年にすでに予見されており、湖が決壊する可能性は42%であるとインドの国立リモートセンシングセンターが予測していた。それ以前には、インド側のヒマラヤ地域で鉄砲水やGLOFにつながる集中豪雨が数回観測されていた。 GLOFは、ブータン、インド、中国、ネパール、パキスタンにまたがるヒマラヤ地域のコミュニティーに深刻な脅威をもたらしている。2020年、ヒマラヤ地域の重要な氷河湖に関する国連開発計画(UNDP)とICIMODの合同報告では、極めて危険であるとして47の氷河湖が特定された。これらは、決壊して中国、インド、ネパールの下流域に洪水を発生させる恐れがあった。さらに、「Nature」に発表された氷河湖決壊に関する2023年の研究では、世界でGLOFのリスクにさらされている全ての人々のうち50%以上がインド、パキスタン、中国、ペルーに住んでいることが示された。 このような生態学的不安と不確実な未来に直面すれば、予想されているアジアの優位性がどれほど脆弱なものか想像できるというものだ。アジアの世紀は、成熟に達する前にすでに阻まれているようだ。経済成長は生態学的基盤に根差しており、そこでは全ての経済活動が直接的または間接的に生起する。水、物質、生計手段のまさに源泉が脅かされれば、最終的には努力、事業、イノベーションの妨げとなる。気候変動に起因する氷河の融解と湖の決壊は、ヒマラヤ地域に領土を有する国々に今後も破壊的な影響を及ぼし、それによってアジアの興隆をめぐる熱狂に水をかけるだろう。何をなすべきかという問いを地域が一丸となって模索し、差し迫る破滅から自国のコミュニティーを守る手立てを団結して見いだす必要がある。 最近では、市民社会が声を上げ、政府に対してヒマラヤ地域に関する懸念に目を向けるよう求めるようになった。2024年2月、インドのヒマラヤ地域で活動する多くの社会団体や環境団体が、気候変動に対する地域の脆弱性を訴える「ピープル・フォー・ヒマラヤ(People for Himalaya)」宣言に署名した。彼らは、気候災害は生態学的であるだけでなく、政治的、経済的、社会的でもあると主張するとともに、開発プロジェクトを持続可能な形で設計し、ヒマラヤの脆弱な生態系に配慮することを求めた。宣言は、資本主義の強欲さがヒマラヤのさらなる商品化をもたらしているとして、国際金融機関から国や州の政府まで、さまざまな機関を非難している。それらの全てが、ヒマラヤ地域とそのコミュニティーの脆弱性増大に影響しているのだ。同様に、インドのラダック地方出身の気候活動家でありイノベーターであるソナム・ワンチュクは現在、脆弱な先住民のコミュニティーと地域の保全を保証するインド憲法第6付則の特別規定をラダック地方に適用することを求めて、「決死の気候ハンガーストライキ」を実行している。 インドや中国のような経済成長大国は、それぞれ自国の台頭と優越の脚本を書くことに熱心で、しばしば互いに競争しているが、気候に起因する変化によって彼らが直面している脅威は、彼らの野心をひどく損なうものとなる。ヒマラヤの健全性に大きな利害を持つ二つの隣国として、ヒマラヤを差し迫った大惨事から保護し、国境を越えて脆弱なコミュニティーを守る方法を見つけるという目標に向けて、ヒマラヤ地域に領土を有する国々の協調を導くことが両国の共同利益になる。しかし、残念なことに、国境問題と領土保全に関する地政学的検討事項が、依然として両国にとって重要度の高い課題となっている。優先順位の見直しを少しでも早く行うことが、地域にとっては利益となる。 ロバート・ミゾは、デリー大学政治学部の政治学・国際関係学助教授である。気候政策研究で博士号を取得した。研究関心分野は、気候変動と安全保障、気候政治学、国際環境政治学などである。上記テーマについて、国内外の論壇で出版および発表を行っている。 INPS Japan 関連記事: ヒマラヤ山脈の氷河、融解速まる グローバルな危機、ローカルな解決策 気候変動、災害、武力紛争

地球のための報道

【カトマンズNepali Times=クンダ・ディキシット】 The Napal Timesは、INPS Japanが創価学会インタナショナル(SGI)と推進している「Toward A Nuclear Free Words(核なき世界に向けて)」と「SDGs...

報道の自由と気候ジャーナリズム、危機の中の連帯(ファルハナ・ハクラーマンIPS北米事務総長・国連総局長)

【ローマIPS=ファルハナ・ハクラーマン】 ジャーナリズムは再び危機に瀕している。報道の自由に対する挑戦は甚大かつ多面的であり、「自由」で開放的な社会においても、独裁的な社会においても、混迷の度合いを深めている。しかしこれに対する単純な解決策はない。 個人やメディア全体にとって、今日の危機は存亡にかかわる深刻なものである。 ジャーナリスト保護委員会によれば、昨年10月のイスラエル・ガザ戦争が始まって以来、100人近いジャーナリストやメディア関係者が殺害され、紛争地域における死者数としては過去数十年で最悪だという。そのほかにも逮捕されたり、負傷したり、行方不明になったりしている。またジャーナリストの家族も殺されている。ジャーナリストの中には、イスラエル軍に狙われていると考える者もいる。 生命や身体への脅威だけでなく、2023年には何万ものメディアの仕事が失われた。報道機関全体が閉鎖されたり、買収されたり、縮小されたりしている。 デジタル・カオスが強化され、偏見と偽情報のはびこるソーシャル・メディアの世界では、視聴者は、彼らが選ぶ報道機関と同様に、ますます分裂している。 ボットやAIが生成するディープフェイクは、この政治的混乱と不信感をさらに増幅させるだろう。流言飛語、微妙な脅し文句、旧来型の脅迫は、自由と民主主義を侵食する強力な組み合わせである。 ロシアではジャーナリストが多数国外に流出している。香港はかつての面影はない。ミャンマーの軍事政権は記者を殺害し投獄している。しかし、ますます二極化が進む米国では、アメリカ人の3分の2以上がマスメディアを信用していないと答えている。優れた報道も行われているが、その多くは目に触れることなく、あるいは完全に見過ごされている。 南アフリカの会員制日刊紙マーベリックは4月、市場の失敗がいかに独立ジャーナリズムを危険にさらしているかについて注意を喚起するため、丸一日休刊した。 「ジャーナリズムがなければ、民主主義も経済も崩壊する」と同紙は宣言した。 こうしたまったく異なる要因がどのように組み合わさっているのかは、世界的な気候の崩壊や、環境に対するより広範な脅威に関するメディア報道を見れば明らかだ。 環境は、時に紛争報道にも似た非常に危険なテーマであるだけでなく、汚染産業(その中には巨大な国有企業もある)や、政治、学界、「非営利」財団、そしてマスメディア自身に巣食う偽情報のパートナーたちによって発せられる企業プロパガンダの巣窟となっている。 ユネスコは今年の「世界報道の自由デー」を、現在の世界的な環境危機におけるジャーナリズムと表現の自由の重要性に捧げる。ユネスコが言うように、「科学者と同様に独立したジャーナリストも、私たちの社会が環境政策を含め、十分な情報に基づいた決定を下すために、嘘や操作から事実を切り離すための重要な役割を担っている。」 「調査報道ジャーナリストはまた、環境犯罪に光を当て、汚職や強大な権益を暴き、時には究極の代償を払うこともある。」 世界最大の民主主義国家であるインドでは、ナレンドラ・モディ氏が首相に就任してから10年後に選挙が行われるが、国境なき記者団は、この間インドで殺害されたジャーナリスト28人のうち少なくとも13人が、主に土地の差し押さえや違法採掘など、環境に関連する記事を担当していたと指摘した。そのうちの何人かは、いわゆるサンド・マフィアと呼ばれる、建設業界に資金を供給する組織犯罪ネットワークの調査中に殺害された。 国境なき記者団は、2023年世界報道の自由度指数でインドを180カ国中161位にランク付けした。 グローバル・サウスでは、先住民、ローカル、独立系のジャーナリストやコミュニケーターは、十分なバックアップやリソースのない遠隔地で活動している間、暴力や 脅迫に対してとりわけ脆弱である。 しかし、世界の先進民主主義国(生物多様性の大量絶滅、汚染、地球を過熱させる温室効果ガスの排出の道を切り開いた国)では、大手メディアは化石燃料企業と提携し、積極的に協力している。 DrilledとDeSmogの報告書で明らかにされているように、多くの大手メディアは、「社説やビデオ、さらにはイベントやポッドキャスト全体を広告主のために制作する自社ブランドのスタジオ」を持っており、その多くは化石燃料会社である。 「ポリティコ、ロイター、ブルームバーグ、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ファイナンシャルタイムズのようなメディアは、石油会社のために、気候に関するジャーナリストの発表と正反対の記事を作成している。そして、広告コンテンツと報道の違いを見分けられる人は、せいぜい3分の1であることが、専門家らによる調査からわかっている。 https://www.youtube.com/watch?v=ttkMQ1fWhMA ジャーナリスト、特に気候危機と生態系の崩壊を取材するジャーナリストは、一般大衆の関心を引き、情報を伝えようとする努力を妨げる、ほとんど無形の矛盾にも立ち向かわなければならない。 私たちや私たちの地球が直面している危険の大きさを、すでに悲惨な出来事の数々に打ちのめされている世界中の聴衆にどう伝えるのか。ある米国の政治学者が「banality of crazy(狂気の凡庸さ)」と呼んだものに、どう抗うのか。 「狂気の凡庸さ」とは、元々ドナルド・トランプ氏の暴力的で性差別的で人種差別的な暴言を指していた。彼の暴言は頻繁に繰り返されるためそのうちメディアがほとんど反応しなくなった。このことからこの言葉は他の危険なニューノーマルを表現するのにも使われている。 この問題に対する答えはひとつではない。報道の自由はまさにそれにかかっている。それはまた、私たち自身の誠実さと信頼性にかかっているのだ。(原文へ) 国際通信社IPSが、INPS Japanが創価学会インタナショナル(SGI)と推進しているSDGs for Allメディアプロジェクトに2024年4月から参画している動機の一つは、まさに「報道の自由」と「気候ジャーナリズム」を守り、国際社会で起こっている真実を読者に伝えるためである。IPSのジャーナリストは本プロジェクトに参画しているLondon Post,Nepali Timesと共に、世界で起こっている環境、紛争、人権問題等について、他人事ではなく自らの問題意識として捉え、身近にできることから変革の主体者となる「同苦の精神」を持ち合わせたSGIメンバーをはじめとした読者の存在を励みに、世界各地から最新の分析記事を配信してまいります。 INPS...