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パリ協定からの米国離脱、世界の気候脆弱性を一段と深める

【国連IPS=オリトロ・カリム】 1月27日、米国は2015年に採択された国際条約「パリ協定」から正式に離脱した。パリ協定は、地球温暖化の抑制と、各国が気候変動の影響に備える強靭性(レジリエンス)の向上を目的とする。トランプ政権が1年にわたり規制を後退させ、連邦レベルの気候政策の解体を進めてきた流れの中での離脱であり、国際的な気候対策を弱めるとみられる。環境劣化や生物多様性の損失を加速させ、健康と安全、さらには長期的な開発にもリスクを広げるなど、影響は広範に及ぶ可能性がある。 パリ協定は採択以来、世界の気候行動を推進する中核的枠組みとして機能してきた。各国に対し、温室効果ガス排出の削減、再生可能エネルギーの拡大、適応策の強化、脆弱なコミュニティの保護を促してきたほか、排出削減目標の定期的な更新と、その実施計画の提出を義務づけている。こうした仕組みにより、国際的な取り組みの継続と透明性の確保、各国間の情報共有が支えられてきた。 アムネスティ・インターナショナルは、ドナルド・トランプ政権の一連の措置が、「主要な多国間・二国間の気候関連機関やプログラム」への資金を打ち切る方向に向かうおそれがあると警告した。その影響は米国にとどまらず、国際社会全体に及ぶ可能性があるという。さらに同団体は、米国による国際連合(UN)機関への資金拠出がまもなく停止する見通しで、気候の影響を受けやすいコミュニティへの生命に関わる支援が途絶えるほか、気候の監視・観測や、排出削減(緩和)に向けた重要な取り組みが中断しかねないと指摘している。 具体的には、米国の離脱により、気候変動に起因する避難・移住、災害復旧、インフラ再建への国際的な取り組みが弱体化する可能性がある。支援の縮小は、気候被害が拡大するなかで途上国のコミュニティの脆弱性を高め、気候による損失の負担がより重くのしかかると見込まれている。 離脱前から、国際連合は深刻な資金危機に直面していた。米国が通常予算の義務的分担金の未払いを続け、対外援助も大幅に削減してきたため、危機は一段と深まっている。さらに米国は、気候災害に直面する脆弱なコミュニティを支える重要な枠組みである国連の「損失・損害基金(FRLD)」の理事会からも離脱した。従来約束していた1750万ドルの拠出も不透明で、基金の運用に支障が出るとの懸念が強まっている。 今回の離脱により、米国はパリ協定の歴史上、唯一の離脱国となる。協定の締約国ではない国は、イラン、リビア、イエメンなど少数に限られる。気候交渉の主要アクターである米国が離脱したことで、他の富裕国に拠出拡大を促す外交的圧力が弱まる可能性もある。 アムネスティ・インターナショナルで気候正義と企業責任を担当するプログラム・ディレクターのマルタ・シャーフ氏は、「米国のパリ協定離脱は、いわゆる『底辺への競争(レース・トゥ・ザ・ボトム)』をあおりかねない不穏な前例だ。ほかの主要な国際気候枠組みからの離脱と相まって、気候行動をめぐる国際協力の仕組みを解体しようとする動きだ」と述べた。その上で同氏は、「米国は気候対策に後ろ向きな有力勢力の一つにすぎない。しかし影響力ある超大国として、化石燃料への回帰を促す圧力を各国や有力アクターにかけることは、とりわけ大きな害をもたらす。協定の下で10年以上積み上げてきた世界の気候対策の前進を後退させかねない」と付け加えた。 これに対し、国連事務総長報道官のステファン・デュジャリック氏は、「気候変動対策は続ける。公正な移行に向けた取り組みも継続する。とりわけ最も脆弱な国々に対し、排出削減(緩和)と適応のための資源を拡充する努力を続ける。この点で、私たちの取り組みが揺らぐことはない」と述べた。 1月22日には、国連環境計画(UNEP)が年次報告書「自然のための資金の現状(State of Finance for Nature)」を公表した。自然に基づく解決策(NBS)への世界の資金の流れを分析したもので、気候や自然を損なう活動への投資が、生態系の保全・再生への投資のおよそ30倍に上ると指摘した。 UNEPの推計によれば、環境を損なう資金の約7割は民間部門による一方、環境保護に向かう資金は1割程度にとどまる。2023年には、環境に有害な世界の活動に約7・3兆ドルが投じられ、そのうち約4・9兆ドルが民間、約2・4兆ドルが公的部門によるものだった。化石燃料利用の促進をはじめ、農業、水、輸送、建設分野への支援を最大化する性格を持つという。 これに、ドナルド・トランプ大統領が掲げる「掘れ、掘れ、掘れ(drill, baby, drill)」政策の復活が重なることで、世界の気候対策はさらに揺らぐ見通しだ。化石燃料依存を加速させ、排出削減目標の達成を損ない、緊急の適応と生態系回復に必要な資金ギャップを一段と拡大させる可能性がある。 ジェレミー・ウォレス氏(ジョンズ・ホプキンズ大学・中国研究)は、米国が化石燃料依存を深めることは国際社会に「気候目標の水準を引き下げてもよい」というシグナルを送ると記者団に語った。その結果、他の主要排出国が、より控えめなエネルギー転換や、より低い排出削減目標を選択することを後押ししかねないという。 たとえば中国は近年、今後10年で温室効果ガス排出を7~10%削減するにとどまる目標を掲げたが、気候専門家からは野心が不足し、世界の削減目標に照らして不十分だとして広く批判されている。 バサブ・セン氏(政策研究所(Institute for Policy...

米「平和委員会」は国連を弱体化させる狙いか

【ニューヨークIPS=タリフ・ディーン】 ホワイトハウスから発せられる相反するシグナルを踏まえると、ドナルド・トランプ大統領が創設した「平和委員会(Board of Peace)」は、最終的に国連安全保障理事会、ひいては国連そのものを置き換えることを狙っているのだろうか。 トランプ氏は先週、スイス・ダボスでの式典で同委員会の憲章を正式に批准し、「公式の国際機関」として設立した。トランプ氏が委員長を務め、創設メンバーとして「ガザに、住民にとって永続的な平和、安定、機会をもたらす安全で繁栄した未来を築くことにコミットした各国代表」が参加したとされる。 米「インスティテュート・フォー・パブリック・アキュラシー(Institute for Public Accuracy)」事務局長で、RootsAction.org全国ディレクターのノーマン・ソロモン氏はIPSの取材に対して、トランプ氏の「平和委員会」は、2003年のイラク侵攻に正統性を与えようとした「有志連合」に類似する「グローバル同盟」として設計されていると語った。 ソロモン氏によれば、トランプ氏は自らの指導に従う政府を取り込み、支配と略奪のために世界を一層「戦争の方向」へ押しやっているという。同氏は、加盟国が支払う代償は各国が負担する「10億ドル超」とされる加盟費をはるかに上回るとし、トランプ氏の手法を「世界的なギャングのような振る舞い」になぞらえた。 「同時に、彼の手法は透明でもある。世界のできる限り多くを米国が支配するための新たな仕組みを作ろうとしているのだ。」 トランプ氏は、米国が経済的・軍事的な影響力を得るためのアジェンダを覆い隠す「二重話法(ダブルスピーク)」の境界を押し広げ続けている、とソロモン氏はみる。アンクル・サムが発するメッセージの骨子は、「もう“いい人”ではない」ということだ。 著書『War Made Invisible: How...

カザフスタン―アゼルバイジャン間フェリー、2026年前半に運航開始へ

【ローマThe Astana Times=ナジマ・アブォヴァ】 カスピ海で、カザフスタン西部のクルィク港とアゼルバイジャンのアラト港を結ぶフェリー航路が、2026年に開設される見通しとなった。貨物取扱量の拡大と地域の海上連結性強化が期待されるとして、カザフスタン国営通信カジンフォルムが12月23日に報じた。 マンギスタウ州のヌルダウレト・キリバイ州知事(アキム)は、中央コミュニケーション・サービスでの会見で、「2026からジョージア側の企業と協力し、クルィク港とアラト港の間でフェリー6隻の就航を計画している。すでに2隻がカスピ海に入り、2026年前半に運航を開始する。その後は毎年2隻ずつ追加し、2028年までに6隻すべてが運航する。」と語った。 キリバイ知事は、この取り組みがカザフスタン独自のフェリー船隊の形成につながるほか、貨物量の増加と、カスピ海域の海上輸送の発展を後押しするとの見通しを示した。 また、中国から中央アジアとカスピ海経由で欧州までを結ぶトランス・カスピ国際輸送ルート(TITR、ミドル・コリドー)について、今年マンギスタウ州を経由する貨物輸送は前年比20%増の250万トンに達したという。 運航会社セムルグ・インベストは船隊を2027年までに6隻へ拡充する計画で、今年は積載能力7000トンの船舶1隻を同ルートに追加投入した。 マンギスタウ州では新港の建設も計画されている。着工は2026年で、投資協定は最終段階にあり、2025年内または26年初めの署名が見込まれる。建設は2026年第2四半期に開始予定で、港湾用地はすでに指定され、登録手続きが進められている。 新港整備は、中国、カザフスタン、アクタウ、バクー、ポティを経て欧州へ至る新たな国際輸送回廊の形成を後押しすると期待されている。 INPS Japan/The Astana Times Original URL: https://astanatimes.com/2025/12/ferries-between-kazakhstan-and-azerbaijan-to-launch-in-2026/ 関連記事: 中央アジア・日本首脳会合、トランス・カスピ回廊を後押し トカエフ大統領は核リスク再上昇に警鐘 カザフスタン共和国大統領直属カザフスタン戦略研究所(KazISS)副所長にダウレン・アベン氏が就任 トカエフ大統領とトランプ大統領、170億ドル規模の協定で関係を深化

トカエフ大統領が懸念する「核の脅威の増大」はどこまで正当化されるのか

【ロンドンLondon Post=ラザ・サイード】 国際安全保障と中央アジア地政学を取材する立場から、また、ソ連時代にセミパラチンスク核実験場の被害を受け、1990年代に世界第4位規模の核兵器を自発的に放棄したカザフスタンの経験に照らせば、カシム=ジョマルト・トカエフ大統領が繰り返し発してきた「核の危険が高まっている」との警告は、十分に正当化される。カザフスタンは450回を超える核爆発を経験し、長期にわたる環境破壊や健康被害、社会的トラウマを抱えてきた。この歴史は、核不拡散を訴えるうえで同国に道義的な重みを与えている。|ヒンドゥー語版|タイ語|英語| トカエフは一貫して核リスクの高まりに警鐘を鳴らしてきた。とりわけ2025年9月の国連総会演説では、軍備管理条約体制の崩壊に強い懸念を示し、破局を回避するため核保有国間の高官級対話を呼びかけた。さらに同年12月、東京の国連大学での講演では、世界の安全保障を核抑止に依存させることはできないと改めて強調し、日本と共有する核の惨禍を踏まえつつ、核の脅威を低減するための多国間行動を訴えた。カザフスタンの立場から見れば、これらの懸念は扇情的な警鐘ではない。ロシアと中国という核大国に隣接し、経済的相互依存を抱えつつ、核不拡散条約(NPT)や中央アジア非核兵器地帯条約(セミパラチンスク条約)にコミットしてきた国としての現実に根差すものである。 世界の核情勢も、トカエフの警告を裏づけている。2025年には、誤算や意図的使用の危険を高める具体的なエスカレーションが顕在化した。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の『年鑑2025』によれば、核兵器保有9カ国の核弾頭総数は約12,241発にのぼり、そのうち9,614発が軍用備蓄に含まれる。さらに、軍備管理体制が弱体化するなか、各国は一斉に核戦力の近代化を進めている。これは、冷戦後の削減局面から、新たな軍拡競争へと転じつつあることを示している。 また、「原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists)」は2026年1月、終末時計を「午前零時まで85秒」に進め、史上最短とした。理由として核リスクの高まりを挙げ、ウクライナなどの紛争における核使用を示唆する発言の増加にも警鐘を鳴らしている。 東西の架け橋を自任するカザフスタンにとって、この趨勢は地域の安定そのものを脅かしかねない。セミパラチンスク核実験で放射線が土地と人々を世代を超えて汚染した記憶は、いまも国家の安全保障観に強い影響を及ぼしている。トカエフが提唱する「生物学的安全保障・安全に関する国際機関(International Agency for Biological...