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ムスタンに響く百万のマントラ

釈迦の誕生と悟りを記念する祈願祭、ロ・モンラム・チェンモに僧侶らが参集 【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】 チベット暦の最初の月、信仰者たちは「サガ・ダワ(聖なる月)」に「ロ・モンラム・チェンモ」の儀式を行い、仏陀の誕生、悟り、入滅を記念する。 「ロ・モンラム・チェンモ(Lo Monlam Chenmo)」は直訳すれば「ムスタン大祈願祭」となり、6月初めには1週間にわたり開催された。この間、すべての衆生の長寿と幸福、仏法(ダルマ)の継承・存続・普及、そして世界平和を願って、百万回を超えるマントラ(真言)が唱えられた。 祈願祭には、ムクティナート近郊の僧院の町ジャルコットに、僧侶と尼僧あわせて578人、さらに多くの地元住民が集まった。この祭りは600年以上の歴史を持つが、20世紀後半には衰退期を迎えた。当時、モンラム・チェンモはダライ・ラマの長寿を祈る場として用いられていた。 「ロ・モンラム・チェンモは7年前、ネパールで再び復興された。多くの寄付が、海外に移住した地元出身者から寄せられている」と語るのは、伝統文化や地元教育、ムスタンの遺産保護に取り組むジャルコットのノルブスム財団に所属するクンジョン・タクリ。「この祭りは来年はアッパー・ムスタン(上ムスタン)で、その翌年はロウワー・ムスタン(下ムスタン)で開催され、両地域が隔年で交互に主催している」 この祭りは、チベットをはじめ、ネパール(カトマンズを含む)、インドのラダックやシッキム、そしてブータンでも祝われている。 モンラム・チェンモは、1409年にチベットでラマ・ツォンカパによって初めて執り行われた。釈迦牟尼仏が示した奇跡を記念するために、新年の最初の2週間にわたり実施されたものである。最終日は満月の日であり、今年は6月11日に当たった。この日は「奇跡の日(Day of Miracles)」とも呼ばれ、多くの祭礼や儀式が行われる。 「最終日はとくに吉日とされ、祈りや修行を行うには最も適した日とされている。この日に行う善行は、功徳が何倍にも増幅されると信じられている」とタクリは言う。「そのため、スワヤンブナートやボダナートなど、主要な仏教聖地では、祈りを捧げる人々が真夜中から集まり始める」 この日、多くの人々がスワヤンブを時計回りに21周巡礼する「コラ(kora)」に挑む。その全長は約30kmにも及ぶ過酷な道のりである。また、他の信仰者たちは、サガ・ダワの月の間に聖地を108周する巡礼を行い、自らのカルマを浄化し、霊的な功徳を得ようとする。 祭りの期間中、個人でプージャ(供養)を行うこともできる。例えば、ヒンドゥー教の儀式である「シュラッダー(श्राद्ध)」―先祖を供養するためのもの―を捧げる者もいる。ジャルコットがムクティナートに近いことから、この祭りは仏教徒とヒンドゥー教徒の両方にとって意味深いものである。 また、多くの参加者は、仏教の非暴力の教え(アヒンサー:अहिंसा)に従い、サガ・ダワの月の間は殺生や害を及ぼす行為を慎み、菜食主義を貫く。さらに「ダーナ(दान:布施)」の実践として、僧侶や僧院に飲食物などを寄進し、慈悲の行為を体現する。 この祈願祭は、カトマンズを中心にネワール仏教徒によって実施されるもう一つの月例祭「グンラ(Gunla)」と多くの点で類似している。グンラは「功徳の月」を意味し、ネパール暦では第十月にあたり、通常は雨季にあたる時期に行われる。 グンラは、経典の読誦、断食、奉納音楽の演奏、巡礼の実施、そして五戒(पञ्चशील)――不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不飲酒――を実践しながら、仏法に対する内省と精神的修養の時間として位置づけられている。(原文へ) INPS Japan/Napal Times Original URL:...

イラン・イスラエル戦争:インド人スパイ関与説と情報戦の深層

【メルボルン LondonPost=マジド・カーン】 2025年6月中旬に発生したイランとイスラエルの軍事衝突は、国際社会に大きな衝撃を与えた。イスラエルは今回の事態をイランによる「重大な戦略的誤算」と非難。一方、イランは甚大な軍事的損失に加え、防衛体制への国民の信頼が揺らぐ事態に直面した。 この衝突のさなか、一部メディアは「イラン国内のインド人が危険にさらされた」「標的にされた」と報じた。しかし、詳細な検証によって、状況はより複雑かつ事実に基づいたものであることが明らかになった。 6月12日と13日、イスラエルはイラン領内深部に対して、空爆と秘密作戦を組み合わせた高度な軍事作戦を実施した。ナタンツやイスファハンの核濃縮施設、ミサイル基地、レーダー施設など、戦略的インフラが標的となった。 『The Wall Street Journal』や『AP通信』によると、この作戦ではイスラエルの諜報機関モサド主導とみられるサイバー攻撃と無人機を用いてイランの防空網を無力化し、その後、有人機を投入して精密爆撃を行った。合計15カ所の施設が攻撃され、イスラム革命防衛隊(IRGC)の幹部や核科学者を含む多くの死傷者が出た。 イスラエルの攻撃は、そのタイミングと複雑さにおいてイラン側の想定を大きく超えており、特にSNS上では「防空システムはどこにあったのか?」という国民の疑問と批判が広がった。 イラン側が対応に失敗した要因の一つとして、イスラエルの戦略的意図を誤読したことが挙げられる。イランの分析官らは、イスラエルによる軍事行動は核協議(オマーン)での進展の行き詰まりと連動すると誤って予測していた。 その誤認により、イスラエル軍の動きを示す初期情報は「心理戦」と見なされ、真剣に受け取られなかった。この判断ミスは、要員の移動や資産の防護といった防衛行動の遅れを招き、結果として攻撃時に複数のIRGC高官が標的施設内に居合わせていた。 この事態は、単なるイラン諜報機関の失策ではなく、誤情報、準備不足、そして硬直化した指揮体制が複雑に絡み合った深刻な機能不全だった。現場の指揮官が即応判断を下す裁量を持たず、上層部の承認を待たねばならない体制が、対応の遅れに拍車をかけた。 軍事的な展開と並行して、「インド人が攻撃に巻き込まれた」「標的にされた」との噂がSNSや一部メディアで拡散された。中には「インド人留学生がミサイル攻撃の近くにいた」「犠牲者が出た」といった未確認の報道も含まれていたが、いずれも信頼できる証拠に基づいていなかった。 6月13日以降、在テヘラン・インド大使館は注意喚起を発出し、在留インド人に対し安全な地域への一時的な避難を促した。24時間対応のホットラインも設置され、インド人留学生や労働者との連絡が強化された。 『The Times of India』や『WION』といった主要メディアは、大使館の対応を中心に冷静な報道を行い、在イランのインド人に取材したインタビューでは「不安はあるが、今のところ直接的な危険は感じていない」との声が多く寄せられた。 誤情報が拡散した背景には、地政学的緊張に伴う不安感、SNS上での未確認情報の拡散、そして過剰な反応があるとみられる。インド政府の安全勧告が一部では「実際にインド人が被害を受けた」と誤って解釈され、外交的な混乱を引き起こすおそれもあった。 より広い視点では、今回の衝突はイラン防衛体制の脆弱性と、現代戦の性質の変化を浮き彫りにした。イラン国内では、諜報機構の刷新、軍指揮系統の分散化、そして予測分析への過度な依存を見直すよう求める声が高まっている。 イスラエルの作戦は、サイバー戦、人間情報(HUMINT)、精密爆撃を統合した「ハイブリッド戦」のモデルを示し、被害を最小限に抑えつつ、戦略的成果を上げた。この戦術は、今後の中東各国の軍事ドクトリンに影響を与えるとみられている。 一方、チャーバハール港などのインフラ事業に従事するインド人が「イスラエルのスパイ活動に関与していた」との報道がインドおよび一部の国際メディアで浮上した。 『The New...

1日で過去最多の1,200人超が英仏海峡を渡る 英国防相「国境管理は崩壊した」

【ロンドンLondon Post】 英国では土曜日、過去最多となる1日で1,194人の移民が18隻の小型ボートで英仏海峡を渡り、記録的な越境となった。これを受けて、ジョン・ヒーリー国防相は「英国は国境管理の主導権を失った」と厳しく批判した。 内務省が確認したこの数値は、今年に入ってからの1日あたりの最多記録であり、5月に記録された825人というこれまでの2024年の最多記録を上回った。これにより、今年の海峡越境者数の累計は14,811人に達し、前年同期比で42%増、年初5カ月としては過去最多となった。 ヒーリー氏はこの状況を「衝撃的」と形容し、仏海岸で密航業者が「まるでタクシーのように」移民を乗せて運んでいると非難。フランス側が合意された新たなルール(浅瀬での警察によるボートの摘発)を適用していないことが危機の要因だと指摘した。 ヒーリー氏は、スカイニュースの番組『サンデー・モーニング・ウィズ・トレヴァー・フィリップス』で「事実として、過去5年間で英国は国境の管理能力を喪失し、前政権が亡命制度を混乱に陥れ、移民は過去最多を記録した」と述べた。「密航業者は別の場所から出発し、海上で移民を拾っているのです」と語った。 一方で、現在のフランスとの協力関係は「求められるレベルに達している」としながらも、ルール変更の早期実施が急務だと強調。「我々の最大の課題は、このルール変更を実行に移し、密航業者を摘発し、ボートに乗った人々を海上だけでなく、出発前の段階で止めることです」と述べた。 仏海上当局によると、土曜日に阻止できた移民は184人にとどまり、試みられた越境のわずか15%にすぎなかった。英国側では、国境警備隊や救命艇が救助に当たったが、対応が追いつかず、ヨットやカヤックでの遭難に対処するために漁船まで動員された。 SNS上では、移民がゴムボートに密集して乗る様子を撮影した動画が拡散されている。 この急増は、労働党政権が純移民数削減とビザ要件の厳格化方針を発表してから3週間も経たない時期に起きた。また、移民問題が争点となるスコットランドの重要な補欠選挙を木曜日に控えており、政治的影響も大きい。 保守党の野党は土曜日を「労働党にとっての恥の日」と呼び、「英国は海の上で混乱に陥り、国境警備隊は限界に達している」と非難した。 キア・スターマー首相は、「犯罪組織の壊滅」を掲げ、国際協力の強化、新たな国境安全司令部の設置、そしてテロ対策レベルの権限を関連機関に付与する方針を打ち出している。しかし、季節外れの穏やかな天候も重なり、過去最多の越境が発生したことで、首相の公約は重大な試練にさらされている。(原文へ) INPS Japan/London Post 関連記事: 新型コロナウィルス感染症が拡大するなか「二重の脅威」に直面する移民たち FIFAワールドカップカタール大会に影を落とす欧米の偽善 国連、世界で1000万人が拘束されていることに懸念を表明

神権政治家と治安主義者―イラン・イスラエル間エスカレーションの危険な構造的論理

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】 イスラエルとイランの最新の応酬は、中東を再び地域戦争の瀬戸際に追いやった。メディアは空襲警報、ミサイル攻撃、報復のドローン攻撃といった派手な見出しを並べているが、真に注目すべき語られざる物語は、軍事戦略や外交的失敗ではなく、むしろ「エスカレーションを前提とする統治構造」そのものにある。 これは、中庸派や外交官によってではなく、「神権政治家」と「治安主義者」という2つの強大な権力集団によって支配される体制同士が作り出した戦争である。 イランにおける二重権力構造:神と銃 イランでは、権力は「宗教的権威」と「軍事的支配」に分かれているが、それは決して均衡が取れているわけではない。最高指導者アリー・ハメネイ師は宗教的正統性を与え、イスラム革命防衛隊(IRGC)がその命令を実行することで国家を支配している。 IRGCは単なる軍隊ではない。石油輸出からテクノロジー監視に至るまで、多くの経済的利権を有する「国家の中の帝国」である。 イランの軍事的対応は単なる報復ではなく、自国の統治体制を示す手段でもある。IRGCは危機によって生き延びる:戦争は国内弾圧を正当化し、制裁は自立を促し、孤立はイデオロギー的純粋性を強調するために利用される。 神権政治家たちは、イスラエルや西側諸国との対立を「神聖な抵抗」として描くことによって、この体制を支えている。そしてこの神話が機能する限り、国内の反対意見や異論は「裏切り」あるいは「異端」として排除できるのだ。 イスラエルの極右治安主義者たち イスラエルもまた、制度的な転換の途上にある。現首相ベンヤミン・ネタニヤフの連立政権には、超国家主義者や宗教的強硬派が含まれており、イランとの対立を単なる政策ではなく「運命」として捉えている。 モサド(諜報機関)、IDF(イスラエル国防軍)、エリートのサイバー部隊などは、従来は戦略立案に関与してきたが、現在では外交政策そのものを動かすようになっている。 彼らの方針は単純だ――「優位性による抑止」。先制攻撃は警告ではなく、この地域におけるイスラエルの永続性を宣言するものである。 しかしこれは単なる軍事戦術にとどまらない。ネタニヤフにとってイランは、自身の政治的生存のための「外部の脅威」として利用されており、それは国内の分断や司法問題、民主主義の後退から国民の目をそらす道具となっている。エスカレーションは失策ではなく、「制度の一部」なのである。 戦略的誤算ではなく、構造的エスカレーション 我々が目にしているのは、従来の「安全保障のジレンマ」ではなく、「統治のジレンマ」である。 テヘランでもエルサレムでも、紛争は支配の正当性を支えている。神権政治家は実存的脅威を叫び、反対意見を封じ込める。治安主義者たちは、非合理な敵に対しては武力しか通じないと主張する。いずれの場合も、戦争やその脅威は失敗ではなく、「国家運営の手段」となっている。 互いを常に緊張状態に置くことは、双方の利益になる。これは偶然ではなく「構造」そのものである。どちらの体制も、緊張の緩和には報いない。逆に、平穏こそが危険である。それは問いを生み、改革を促し、権力構造を揺るがすからだ。 米国政府は外交戦略を根本から見直すべきだ 米国の対イラン・対イスラエル政策は何十年にもわたり、「イランを制裁し、イスラエルを武装させ、混乱を抑える」という機械的な公式に頼ってきた。しかしこの公式はもはや時代遅れである。なぜならそれは、永続的な対立を生み出す「国内の権力メカニズム」を理解していないからだ。 米国と欧州の同盟国が本気で解決を目指すのであれば、ミサイルや遠心分離機を「病の根源」ではなく、「症状」として捉える必要がある。 長期戦略には以下が必要だ: 武装経済構造を標的にすること:戦争によって利益を得る制度や機関への圧力を強化する。 市民社会への投資:包囲されているというナラティブに異を唱える声――イランの女性人権活動家やイスラエルの人権擁護者などを支援する。 外交の再構築:外交交渉を取引の手段とするだけでなく、和平を不可能にしている国内構造そのものに焦点を当てる。 結論:戦争という論理を無効化せよ 国際社会が「封じ込め」ではなく「構造的関与」に戦略を転換しない限り、この悪循環は続き、さらに悪化するだろう。今日のミサイルの応酬は異常事態ではない。それは、「脅威の中でこそ生き延びるよう設計された政権」の必然的な帰結である。 この連鎖を断ち切るには、単に「自制」を呼びかけるだけでは不十分だ。エスカレーションの論理そのものを「非正当化」しなければならない。 神権政治家と治安主義者が平和を選ぶことはない――少なくとも、戦争が彼らに与える「力」の方が、和平よりも大きい限りは。 だからこそ、政策立案者は次のように問い直さなければならない。「次の攻撃をどう防ぐか」ではなく、「この絶え間ない包囲状態から利益を得ているのは誰か――そして、どうすればそれを終わらせられるか」と。 私たちは今、「平和ではなく、恒久的な危機の中でこそ生き延びるよう設計された」政治システムと向き合っているのだ。(原文へ) INPS Japan/ATN Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/theocrats-securocrats-iran-israel-escalation 関連記事: 米国が世界の舞台から後退する中、軍事衝突が歴史的水準に イランにおける女性の生活と自由: 1年後の成果、損失、教訓 核の「曖昧政策」のなかで活動する「イスラエル軍縮運動」