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国連総会、米国ビザ拒否でジュネーブ一時移転論再燃

【国連IPS=タリフ・ディーン】 1988年、パレスチナ解放機構(PLO)議長ヤーセル・アラファトが米国からニューヨーク訪問のビザを拒否された際、国連総会は米国に抗して、史上初めて会場をジュネーブに移し、PLO議長にとってより敵対的でない政治環境を提供した。 アラファトは1974年に初めて国連で演説したが、ジュネーブでの発言をこう切り出した。「この名誉ある総会での2度目の会合が、ジュネーブという温かく迎えてくれる都市で行われることになろうとは、夢にも思わなかった」。 そして今、37年を経て、再び総会を一時的にジュネーブへ移すべきだとの運動が起きている。理由は、パレスチナ代表団が米国への入国ビザを拒否されているためだ。 中東における米国政策の改革を目指す非営利団体DAWNのサラ・リア・ウィットソン事務局長はIPSの取材に対して、「米国はガザにおけるジェノサイドやパレスチナ国家承認に関する議論を阻止しようと、パレスチナ当局者のビザを取り消しているのは明らかです。」「世界は毎日目撃しているイスラエルの残虐行為にうんざりしており、米国がこのような茶番を繰り返した前回と同じく、総会をジュネーブに移すべきだと強く望んでいます。」と語った。 彼女は、会場を移すことは国際社会が長年の国際法違反を容認しないという明確なメッセージになると主張した。 DAWNは先週発表した声明で、1947年の米国・国連本部協定は、二国間の対立にかかわらず、すべての代表が国連に参加できる「無制限の権利」を保障していると指摘した。 米国がこの協定を破ったのは今回が初めてではない。1988年、米国はアラファトのニューヨーク総会出席を拒否し、国連は米国の違反を認定する決議を採択、総会をジュネーブに移すという異例の対応を取った。 セント・ピーター大学外交・国際関係学部のマーティン・S・エドワーズ副学部長はIPSの取材に対して、「会場移転の呼びかけは想定の範囲内だ。」と指摘したうえで、「トランプ政権は他国の意見を顧みずに政策を進めることを好みます。『アメリカ・ファースト』は『アメリカ・アローン』へと変わりつつあるのです。」と語った。 パレスチナ承認を進める国々が実際に行動すれば、米国は安保理常任理事国5カ国の中で唯一、承認しない国となる。 「会場をジュネーブへ移すという威嚇は極めて合理的であり、世界が圧力に対抗して押し返すことができるという教訓を、ホワイトハウスはまだ学んでいない」と同氏は述べた。 国連のステファン・ドゥジャリック報道官は8月29日、ビザ拒否に関して「国務省と協議する。特に協定の第11条と第12条は読む価値がある。」「すべての加盟国、オブザーバーが代表を派遣できることは重要であり、とりわけ今回、フランスとサウジアラビアが主催する二国家解決会合を控えているためです。」と語った。 一方、米国務省は8月29日発表の声明で、「米国法に従い、マルコ・ルビオ国務長官は国連総会を前にPLOおよびパレスチナ自治政府(PA)の関係者のビザを取り消す」と表明した。 声明はさらに「PLOとPAがテロを否認し、扇動をやめない限り、平和のパートナーとは認められない。ICCやICJへの提訴や一方的な国家承認の追求は、ガザ停戦協議の崩壊を招いた要因でもある。」とした。 ただしPAの国連代表部は協定に基づき渡航を認めるとしたうえで、「PA/PLOが義務を果たし、妥協と平和共存への具体的な道を歩むなら、再関与は可能だ」と付け加えた。 現在、パレスチナは193加盟国のうち147カ国(約76%)から国家として承認されている。2012年11月以降、国連では「非加盟オブザーバー国家」とされている。 さらに、米国の抗議を押し切り、2018年にはパレスチナが国連最大の経済ブロックである134カ国の「77カ国グループ(G77)」の議長に選出された。 元国連事務次長補は匿名を条件にIPSの取材に対して、「米国は総会で拒否権を持たないため、OIC(イスラム協力機構、57カ国)主導で決議を採択することは容易だろう。」と語った。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: 米国は“ブラックリスト”で国連創設80周年サミットから政治指導者や代表を排除するのか? G7が動く―パレスチナ国家承認に向けた西側の外交転換 地球のための報道

核実験に反対する国際デーに 若者がグローバル・ヒバクシャ支援を世界に訴え

【東京INPS Japan=浅霧勝浩】 国連が制定した「核実験に反対する国際デー(8月29日)」に合わせ、若者や専門家が東京の国連大学に集まり、「グローバル・ヒバクシャ支援のためのユースの役割」と題するフォーラムが開催された。このイベントでは、広島からマーシャル諸島に至るまで、核兵器の生産、使用、実験等によって被害を受けた人々を総称する「グローバル・ヒバクシャ」の声を若者の連帯がどう増幅し、核兵器廃絶に向けた世界的な機運を強めることができるかが強調された。|HINDI|CHINESE|ENGLISH| このイベントは会議であると同時に、行動への呼びかけでもあった。そのメッセージは明確だ。核の時代は過去の歴史ではなく、いまも世界中の人々の身体、記憶、そして闘いの中に生き続ける危機である。そして若者こそが、その声を未来へと継承していく責任を担わなければならない、と主催者たちは強調した。 青年平和意識調査 このフォーラムは、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、Qazaq Nuclear Frontline Coalition(カザフスタン核フロントライン連合)、創価学会インタナショナル(SGI)、フリードリヒ・エーベルト財団(FES)カザフスタン、マーシャル諸島教育イニシアチブ(MEI)が共催した。 5団体は、1月6日から8月9日の間に米国、オーストラリア、カザフスタン、日本、マーシャル諸島の5カ国で「青年平和意識調査」を実施し、その最終結果を発表した。対象は18歳から35歳の若者で、青年世代が核兵器について、どの程度の知識・認識を持ち、どのような行動を取っているのか、あるいは取ろうと考えているのかを問う調査で、1580人が回答した。 「どの国においても、被爆者の証言を聞いたことのある人は、核廃絶のために行動している割合が高いことが分かりました。」と、SGIユースの中沢大樹氏は語った。「各被害者の証言に耳を傾けることは、単なる記憶の継承ではなく、行動を生み出す触媒なのです。」 同じくSGIユースの阿部百花氏は、彼らの世代にとって被爆者の証言は「核兵器の人間的な代償と、その使用を防ぐ必要性を理解する最も力強い手段の一つ。」であると語った。 カザフスタンの核の遺産を想起 東京とカザフスタン・アルマトイを結んだオンライン対話では、FESカザフスタンのメデット・スレイメン氏が同国の悲劇的な歴史を振り返った。ソ連時代、北東部のセミパラチンスク実験場で456回の核実験が行われ直接影響を受けた人々とその子孫は約150万人にのぼること、そして、被ばくに関するデータはソ連崩壊時にモスクワに持ち去られたため、未だに核実験と被爆の影響に関する検証が困難になっていることを指摘した。「影響はいまだ十分に解明されていません。しかし人々の苦しみは明らかです」と語った。 カザフスタン政府は独立した1991年に実験場を閉鎖し、当時世界第4位の核戦力を自ら放棄した。国連はこの歴史的な決断をたたえ、2009年に8月29日を「核実験に反対する国際反対デー」に制定した。 日本の視点 日本の若者にとって、核の記憶は身近であると同時に遠い存在でもある。広島と長崎は国民的記憶の中心にあるが、オーストラリア先住民や太平洋の島しょ国の人々、カザフ人など他の核被害者の経験はしばしば見落とされてきた。 今年3月、ニューヨークで開かれた第3回核兵器禁止条約(TPNW)締約国会議に参加したSGIユースの二瓶優妃氏は、そのギャップを鮮明に感じたと語った。サイドイベントで、英国の核実験で被曝したオーストラリア先住民の証言を聞いたのだ。 「何の通告もなく一方的に核実験が実施され、先住民という弱い立場から未だに十分な補償をうけることができず、認知度も低いままです。」「日本では広島と長崎が歴史的悲劇として語られる一方で、グローバル・ヒバクシャの証言を聞くと、被害は現に今起こっており、苦しんでいる人が今なおたくさんいることが理解できました。」と二瓶氏は語った。 その気づきは、連帯のあり方を考え直す契機となった。「日本人として、グローバル・ヒバクシャの人々と連携して、本当の意味での核廃絶を目指していきたい。」と二瓶氏は語った。 条約と課題 Youth Community for Global Hibakusha高垣慶太氏は、TPNWの画期的な意義を強調した。同条約はそれまでの核管理条約とは異なり、初めて被害者支援と環境回復を締約国の義務として明記している(第6条・第7条)。同時に高垣氏は同条約に関する課題についても言及した。例えば、核保有国の不参加、政府とNGOの対立、そしてグローバルサウス諸国の多くが資金的に制約を抱えている点だ。「こうした諸課題は現実のものです。しかし、ビジョンもまた現実です。それを実現するために、私たちは努力を続けなければなりません。」と語った。 また高垣氏は、若者の活動を単なる「継承」に矮小化すべきではないと指摘した。「若者は『被爆者の思いを継ぐべきだ』とよく言われます。確かにそれは重要ですが十分ではありません。その前提として、私たち一人ひとりがどのような社会を築きたいのかを決め、その実現に責任を持つことが必要なのです。」と強調した。 カザフスタンからの呼びかけ 在日カザフスタン大使館のアンヴァル・ミルザティラエフ参事官は、カザフスタンは独立以来核兵器のない平和を国の基本的な選択として歩んできたことを指摘したうえで、本日のイベントは核の悲劇を記憶にとどめるだけでなく、未来に向けて行動を促す点で極めて重要だ。」と評価した。 青年平和意識調査で多くの若者が「核廃絶のために行動したいが、どうすればよいか分からない」と答えたことについては、「だからこそ核廃絶のキャンペーンはもっと分かりやすく、気軽に参加できる形にしていくことが重要です。」と指摘した。 「被爆者の証言を伝え続けていくことが、若者の思いを行動につなげる大きな力になります。」とミルザティラエフ参事官は強調した。さらに「青年には3つの力があります。『被害の事実を広める力』、『国境を越えて対話を繋ぐ力』、そして『社会を動かす行動力です』。」と述べ、「カザフスタンと日本、そして世界の若者と共に歩み、グローバル・ヒバクシャを支えながら、核兵器のない未来を築いていく、その実現を私は心から信じています。」と力強く訴えた。 国連大学学長の呼びかけ 国際連合大学学長のツシリッツィ・マルワラ博士もまた、核兵器の被害を受けたすべての人々の声を未来へ引き継ぐ責務があると強調した。国連創設時の誓い「戦争の惨禍から将来の世代を救う」を新たにし、未来を担う世代に対し、先見性と勇気をもって平和のために行動を起こそうと呼びかけた。(原文へ) INPS Japan 関連記事: 「グローバル・ヒバクシャ:核実験被害者の声を世界に届ける」(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー) 国連の未来サミット:核兵器廃絶と気候危機に取り組むために必要な若者主導の行動 |視点|人生ががらりと変わる経験だった(イリヤ・クルシェンコCTBTO青年グループメンバー)

アフガン報道の危機 逮捕・検閲・崩壊

【プラハIPS=バシール・アフマド・グワク】 アフマド・シヤールは現在、バルフ州で道路建設に従事している。頭上から落ちてくる岩や破片から身を守るためにヘルメットを着用しているが、かつて同じようなヘルメットをまったく別の理由でかぶっていたことがある。北部アフガニスタン各地を取材していた記者時代、彼のヘルメットにはダリ語と英語で「ジャーナリスト」と記されていた。 「取材時には『私はジャーナリストだ』と交戦当事者に示すためにジャーナリスト用ヘルメットを着用していました。厳しい時代でしたが、同時に黄金期でもありました。人々の声を伝える仕事を愛していました。しかしタリバンが権力を掌握してからは、規制と経済的困難が重なり、記者を続けられなくなりました。」とシヤールは語る。「今は建設労働者です。決して楽な仕事ではありませんが、家族を養うためには選択肢がありません。」3人の子の父である彼は一家の唯一の稼ぎ手だ。 シヤールのようにタリバン政権下で苦しむジャーナリストは少なくない。2021年8月15日に権力を奪還して以来、タリバン政権は2025年6月までに少なくとも21のメディア関連指令を発出。国営テレビ・ラジオへの女性出演禁止、抗議活動の報道禁止、音楽の禁止など広範な規制を課してきた。 こうした規制に加え、深刻な経済危機と資金不足が重なり、タリバン統治下で350の独立系メディアが閉鎖に追い込まれた。2021年8月以前は600以上の独立系メディアが存在していたが、その活気は失われた。IPSが確認した国際ジャーナリスト連盟(IFJ)、国境なき記者団(RSF)、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)などの報告書に基づく数字である。 「タリバンの復権から4年、かつて活気にあふれていたアフガニスタンの自由な報道は見る影もありません。国内の報道の自由は壊滅的状況にあり、国外に逃れたアフガン人記者もパキスタンやイランで恣意的逮捕の危険に直面しています。」とCPJアジア太平洋地域ディレクターのベー・リー・イー氏はIPSの取材に対して語った。 アフガニスタン最大の独立系ニュースネットワークTOLOnewsは2024年6月、25人の記者を解雇せざるを得なかった。タリバンから「誤解を招き、反政権的な宣伝とされた」とされた番組を停止するよう命じられたためだ。匿名を条件に語った編集幹部は「規制が相次ぎ、情報へのアクセスも遮断されています。資金も枯渇しつつあり、もはや国民に十分なニュース放送を届けられません。」と訴えた。 タリバンは女性の服装やメディア出演に厳格な制限を課しており、演劇やテレビ娯楽番組への女性の参加は禁止された。野党関係者とのインタビューも禁じられ、国際テレビ番組の放送や映画・ドラマの公開も停止された。国外メディアとの協力も禁止されている。 「カブール陥落以降、タリバンは報道に対する弾圧を強化し、検閲、暴行、恣意的逮捕、女性記者への制限が日常的に行われています。タリバンとその情報総局(GDI)は日々アフガン記者を取り締まり続けています。」とイー氏は指摘する。 多くの女性記者は国外に脱出したが、残った者は恐怖の中で生きている。取材に応じたカブールの記者ファリダ・ハビビ(仮名)は、障害を持つ父を置いて逃げることができず国内に残った。タリバンにより『声が非イスラム的だ』とされ放送から退けられ、今はオンラインメディアで働いている。「本当に鬱々とした毎日です。外出も自由にできず、給与もごくわずかです」と彼女は語る。 タリバンの「勧善懲悪省」は生き物の姿を描いた画像の掲載を禁止した。多くの規則に具体的な罰則が明記されていないため、当局はこの曖昧さを利用して記者を恣意的に処罰している。 アフガニスタン・ジャーナリスト・センター(AFCJ)の2024年報告書によれば、2021年8月から2024年12月までに703件の人権侵害が記録された。これには恣意的な逮捕・拘束、拷問、脅迫、威嚇が含まれる。 同様に国連アフガニスタン支援団(UNAMA)も2024年の報告書で、タリバンによる「報道の自由の体系的な解体」を強く非難した。UNAMA代表のローザ・オトゥンバエワ氏は「アフガンの記者たちは不明確な規則の下で活動し、何を報じられるかも不明確なまま、批判と見なされれば恣意的な拘束にさらされています。自由な報道は、どの国にとっても選択ではなく不可欠です。アフガニスタンでは今、その不可欠な権利が体系的に解体されています。」と述べた。 一方、タリバン政権は不当行為を否定し、報道を支援していると主張する。2025年7月2日、カブールで記者団に応じた情報文化省の報道官ハビブ・ガフラン氏は「我々は自由なメディアを支持するが、誰もイスラムのレッドラインを越えることは許されない」と述べ、詳細は示さなかった。また、記者向けの資金支援基金の設立を進めていると付け加えた。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: タリバンの布告がアフガン女性の危機を深刻化、NGO活動を全面禁止へ |世界報道自由デー|2025年世界報道自由指数が過去最低に—報道の自由に“危機的状況” アフガンメディアフォーラムを取材

国連のAI決議:野心あるも実効性に欠ける

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】 ニューヨーク、国連本部──国連総会は人工知能(AI)に関する決議(文書A/79/L.118)を採択した。国際社会がAIガバナンスを本格的に検討し始めたことを示す動きとして注目を集めたが、その内容を精査すると、実効性に乏しく、対話や報告を重ねる枠組みを新設するにとどまっている。 この決議は、リスクや機会、影響を評価する40人規模の「人工知能科学パネル」の設立を決め、持続可能な開発目標(SDGs)支援やデジタル格差是正を目的とした「AIガバナンスに関するグローバル対話」を立ち上げた。総会では多くの代表団がこれを歴史的な一歩と評価した。イラク代表は「77カ国グループ+中国」を代表し、AIが教育、医療、デジタル経済を変革する可能性を強調した上で、途上国のニーズに応じた公平で包摂的なガバナンスを求めた。デンマーク代表はEUを代表し、科学的独立性と多様な主体の関与を重視する枠組みを高く評価し、国連の有効性を示す成果だと述べた。 しかし、その意義づけとは裏腹に、この決議は「手続きを優先し、実質を伴わない」という国連加盟国の従来の傾向を映し出している。アントニオ・グテーレス国連事務総長が「国連80周年」の関連報告で任務過多と財政危機を警告したように、国連は実行力や政治的意志を欠いたまま包括的なマンデートを次々と生み出してきた。今回の決議もその例外ではなく、野心的な目標を掲げながらも範囲は限定的で、実効性に欠ける。 最大の問題点は、軍事利用のAIを明示的に対象外とした点である。自律型兵器やAI駆動の監視、アルゴリズムによる戦闘指揮は最も深刻なリスクを伴う領域であるにもかかわらず、国際的な対話から除外された。これは合意形成を優先するための回避に過ぎず、現実の課題への対応を弱めている。 資金面も懸念材料だ。決議は自発的拠出金に依存しており、その多くがAIの影響力を持つ大企業から拠出されることが予想される。手続きが透明に見えても、資金提供は優先順位を左右しがちであり、企業資金が条件なしに提供されることはまれである。「AI格差の是正」をうたってはいるが、実効的な資金や技術移転が伴わなければ、約束は実現しない可能性が高い。途上国にとってこれは抽象的な議論ではなく、デジタル教育の欠如、AI診断機器を持たない医療現場、そして一部の大国と企業が将来のルールを決める中で取り残される経済という現実を意味する。 AI決議は、AIガバナンスの緊急性を認識し、対話の場を提供した点では評価できる。しかし「認識」と「実行」は異なる。加盟国が軍事AIに踏み込み、資金面で裏付けを行い、象徴的な対話にとどまらない実効的な枠組みに移行しない限り、この取り組みがAIの行方を左右することはないだろう。 人工知能の進展は外交の速度を上回っている。国連が「対話」を「統治」と取り違え、任務過多に陥ったこれまでの悪循環を繰り返すならば、主導権を主張する分野で自らの存在意義を失いかねない。選択は明白である──AI決議に実効性を持たせるのか、それとも大国と企業がAIの未来を決定するのを傍観するのか。(原文へ) アハメド・ファティは、国連担当記者であり国際問題アナリスト。著書に『America First, The World Divided: Trump 2.0 Influence』がある。外交、多国間主義、権力、国際政治の動向について執筆している。 INPS Japan/ATN Original...