Exclusive articles:

Breaking

「ジブリ化」は可愛いピクセルだけじゃない

最新のAI生成画像ブームが、児童搾取の新たな温床になり得る 【カトマンズNepali Times=アニル・ラグヴァンシ】 やわらかいパステルカラーに、まるで宮崎駿の映画から切り取ったような幻想的な背景―。今月はじめ、姪が初めてのジブリ風ポートレートを見せてくれたときの興奮は、言葉に表せないほどだった。 これは、個人の写真をスタジオジブリ風に変換する最新の生成AIツールによるもので、「ジブリ化(Ghiblification)」と呼ばれ、世界中で注目を集めている。 しかし、その裏には重大な危険が潜んでいる。この楽しいブームは、プライバシーの侵害や、児童ポルノ、セクストーション(性的脅迫)、いじめ、ヘイトスピーチといった問題への新たな扉を開いてしまう可能性があるのだ。 ChildSafeNetとUNICEFネパールが実施した生成AIと児童安全に関する最近の調査では、カトマンズの若者の60%以上が生成AIを試しており、多くがその潜在的リスクを認識していなかった。 画像生成アプリに写真をアップロードするたびに、ユーザーは単なるピクセル以上のもの―肖像、メタデータ、そして私的空間の情報―を、ブラックボックスのようなシステムに託している。これらの情報は無期限に保存され、AIモデルの訓練データに組み込まれる可能性がある。特徴的な顔立ちや位置情報、背景の細部さえも記憶され、他人の画像として再生成されるおそれがあるのだ。 OpenAI(ChatGPTやDALL·Eの開発元)などの企業では、ユーザーがオプトアウトしない限り、共有された画像を訓練データとして使用している。しかし、その悪用リスクは計り知れない。 生成AI画像の急速な普及により、家族や子どもたちの写真が無意識にアップロードされてしまうケースが多発している。これらの画像には、顔認識に役立つ情報だけでなく、社会的関係や文化的背景も含まれており、企業にとって貴重なデータ資源となる。 Body and Dataの計算機科学者ドヴァン・ライ氏は、「視覚的に魅力のある画像は、偽情報の拡散や文化的ステレオタイプの強化にも悪用されやすい。子どもは特に脆弱で、性的なディープフェイク画像を作るのも容易です。」と警告する。 多くのAI画像生成プラットフォームは、アップロードされたコンテンツの取り扱いについて明確に説明していない。子どもの写真が取り込まれると、その特徴がモデルに内在化され、意図しない形で再現される可能性がある。これは、倫理的な時限爆弾だ。 ライ氏はさらにこう警告する。「子どもの顔が、広告やミーム、論争のあるコンテンツに無断で使われることもあり得ます。」 インターネット・ウォッチ財団によると、最近1か月で、3500件以上のAI生成による児童性的虐待コンテンツが暗号化フォーラムで確認された。中には、児童の顔を性的画像に合成した悪質なディープフェイクも含まれていた。ジブリ風ではなかったものの、どんな無害に見えるフィルターでも、悪用され得ることを示している。 さらに一部のAIツールは、被害者の顔をポルノ映像に合成した児童強姦・拷問のディープフェイク動画さえ生成可能になっている。これは性的暴力を常態化させ、性的脅迫やいじめ、憎悪表現を助長する危険がある。 ネパール警察サイバー犯罪課のディーパク・ラジ・アワスティ警視は「AI画像や動画を用いた誹謗中傷、偽情報拡散、ヘイトの事案が国内で発生しており、政治家や著名人を中傷するディープフェイクの苦情も受けている。」と述べている。 保護者は、AI生成画像が子どもの安全や創造性に与える影響を懸念すべきだ。AIへの過度な依存は、絵を描くといった伝統的な創造力の低下を招くこともある。 Smart Parents Nepalのカビンドラ・ナピット氏は、「保護者は子どもにオンラインリスクを教え、常に新たな脅威に注意を払う必要があります。」と話す。 若者を守るための提言: 安全設計(Safety-by-Design):製品開発の初期段階から子どもや脆弱層の安全を組み込む設計手法を導入する(豪eSafety委員会が提唱)。 同意と透明性:画像が訓練データに使われる可能性があることを明示し、簡単にオプトアウトできる仕組みを整備。 強化されたモデレーション:自動検出と人間による監視を組み合わせ、児童の性的画像に関するプロンプトや生成物を即時にブロック・削除。透かしや指紋技術の導入も有効。 法的保護:AIによる児童性的虐待コンテンツの作成・流通・使用を犯罪とし、国際協力による追跡と処罰を強化。 多主体連携:技術企業、法執行機関、教育機関、NGOが連携し、情報共有と資源統合を図る。 デジタル・リテラシー教育:子どもに空想と現実の区別を教え、リスクを認識させる。被害報告のための明確で秘密保持されたチャネルも必要。 保護者の支援:子どもとオープンで信頼できる関係を築き、AIの危険性を伝える。年齢に応じたフィルターや監視ツールも導入。 支援サービスの整備:子どもや若者に配慮したカウンセリングや法的支援体制を提供。(原文へ) ※掲載されたすべてのジブリ風画像は、著者が著作権フリーの素材を使って生成。 INPS Japan/IPS UN Bureau...

帰国した出稼ぎ労働者を襲う「静かな病」―腎不全という代償

【カトマンズNepali Times=ピンキ・スリス・ラナ・ダヌーサ】 ジャナクプルの南、インド国境近くにある村・フルガマでは、人口約4,500人のほとんどすべての世帯に、海外で働く息子がいる。 ネパールの20〜35歳の男性の約40%が、主にインド、湾岸諸国、マレーシアなどに出稼ぎに出ている。過去9カ月間だけで、741,297人が海外へと渡航しており、その多くがアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタール、マレーシア、クウェートに向かった。この数字には学生ビザで出国した者やインドへの渡航者は含まれていない。 彼らの多くが就くのは、「3Kジョブ(汚い・危険・きつい仕事)=英語では3Dジョブ」であり、さらにもう一つのD、すなわち「脱水(dehydrating)」のリスクもある。 湾岸諸国の灼熱の砂漠やマレーシアの高温多湿な熱帯ジャングルでの屋外労働、粗末な食事、脱水、不健康な生活習慣は、ネパール人労働者に腎不全のリスクをもたらしている。特にダヌシャ郡は、インドや他国への出稼ぎ者の割合が極めて高い地域のひとつだ。 腎臓専門医は、腎臓病を「沈黙の殺し屋」と呼ぶ。症状が現れたときにはすでに手遅れであることが多く、出稼ぎ労働者は慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESRD)に特に罹りやすい。 安価な労働力への需要が高まり、出国前の健康教育が不十分なまま出稼ぎに出ることが、移住労働をより危険なものにしている。カトマンズとダヌシャの病院および透析センターの調査によれば、出稼ぎから戻った男性の腎不全リスクは、同年代の一般のネパール人男性よりも高い傾向にある。 「この病気は特定の原因によるものではない、つまり特発性(idiopathic)です」と、国立腎臓センターのリシ・カフレ医師は説明する。「ですが、湾岸諸国に向かう出稼ぎ労働者をスクリーニングし、その3~4年後に末期腎不全を発症している実例を見れば、出稼ぎ労働が腎臓病のリスクを高めることは明らかです」 カフレ医師はさらに言う。「彼らは収入を最大化しようとして、極度の暑さのなかで長時間働き脱水状態になります。水や野菜よりも、コカ・コーラや肉を選ぶ人が多いのも一因です」 腎不全のリスクは帰国した出稼ぎ労働者において高いが、生活習慣病、糖尿病、未診断の高血圧などにより、世界的にも患者数は増加している。 現在、ネパール政府の「貧困市民基金(Bipanna Nagarik Kosh)」に登録されている腎臓病患者は28,266人。そのうち男性は17,044人、女性は11,222人である。昨年だけで、新たに9,176人が登録された。入院している腎臓病患者の多くは15歳〜65歳の年齢層に属する。 https://www.youtube.com/watch?v=VyJ_138yX8g 健康な人間の腎臓は、血液中の毒素や老廃物を濾過するが、腎不全患者は血液を定期的に人工透析機に通す必要がある。透析には3〜4時間かかり、腕の血管が次第に腫れてくる。 ネパール国内で慢性腎臓病(CKD)を患っている人は推定200万人、つまり全人口の約8%に相当する。糖尿病と高血圧の増加がこの病気の広がりを後押ししている。出稼ぎ労働者から政治家まで、幅広い層が腎臓疾患を抱えており、オリ首相自身も2度の腎臓移植を受けている。 週2回の透析を受けていても、食事や飲み物によって吐き気やむくみが出ることがある。透析回数を増やすには費用がかさみ、生活費補助も不十分で遅配される。 海外で働いたすべての人が腎臓病を発症するわけではない。しかし、腎臓専門医サイレンドラ・シャルマが主導する未発表の研究によれば、ネパールの腎臓病患者の4人に1人が出稼ぎ帰国者であり、繰り返される熱ストレスが主なリスク要因とされている。 ジャナクプルのマデス保健科学研究所では、103人の定期透析患者が通院しており、そのうち30人がダヌシャ、サルラヒ、シラハ、マホタリ、シンドゥリ出身の出稼ぎ帰国者である。 「病気の性質ではなく、広がり方を見れば、これはもはや“流行病”と言えるでしょう」とカフレ医師は語る。 過酷な労働がもたらした代償 マレーシアで10年間働いたジャグディシュ・サーさん(35)は、妹の結婚費用を工面するために借金を背負い、それを返すべく出稼ぎに出た。家が土壁の粗末な造りであることから、結婚相手として女性に何度も断られたという。 「女性にも期待があります。裕福な家庭に嫁ぎたいと思うのは当然で、私たちのような土の家に住む家庭は敬遠されるのです」とサーさんは話す。 マレーシアの縫製工場で働くことになった彼は、24歳で渡航。毎月最高でも3万5千ルピーの収入を得るため、しばしば12時間の残業にも応じた。昼食休憩は30分のみで、トイレ休憩も限られていたため、休まず働き続けたという。 2017年、一時帰国した際に視界がぼやけ、倒れるようになった。高血圧かと思っていたが、28歳で両方の腎臓が機能不全になっていると診断された。 「息子がマレーシアで貯めたお金は、すべてカトマンズでの治療費に消えました。土地まで売ったんです。」と母マントリヤ・デビさんは振り返る。 現在、ジャグディシュさんは週2回バイクでジャナクプルのマデス保健科学研究所に通い、無料の透析治療を受けている。家族は「マレーシアに行ったときの彼」と「戻ってきた彼」はまるで別人だと語る。 「この病気で私の人生は終わったも同然です。誰かを巻き込みたくない。」と、結婚をあきらめた理由を語るサーさん。「透析がなければ、生きていられなかったでしょう。」 彼の両親は高齢で付き添うことができず、サーさんが働けないため、父のラム・デブさんが移動式屋台でポップコーンを売って家計を支えている。 ■ 腎臓病に倒れた若者たち ミトゥ・クマールさん(25)はサウジアラビアで電気技師として働いていたが、嘔吐が続き現地の病院で慢性腎臓病と診断され、帰国した。現在はジャナクプルの「セーブ・ライブス・ホスピタル」で透析を受けながら、「もう一度働ける健康を取り戻したい。」と話す。 ウメシュ・クマール・ヤダブさんもサウジでガードマンとして勤務し、腎臓病を患って帰国。だが村の他の出稼ぎ経験者には同じ症状がないという。「これは不運な人間がかかる病気だ。他の人がみな同じなら納得するが…」と語る。 アンバル・バハドゥル・サルキさん(46)は、マレーシアのパーム油農園で働いていた。極度の高温多湿な環境下で高血圧になり、その後、両腎臓が機能不全となった。今では週2回、シンドゥリからジャナクプルまで3時間かけて通院している。 ダヌシャ出身のラム・ウドガル・マンダルさんは、20代後半から17年間サウジアラビアで運転手として働いていたが、4年前に末期腎不全と診断された。今、彼の息子がマレーシアで家計を支えている。「息子も自分と同じ道をたどるのではと心配だが、選択肢がない」と語る。 ダヌシャ出身のラリト・バランパキさん(28)は、ドバイの製錬所で夜勤と極度の暑さのなかで働いていたが、栄養失調と睡眠不足で体を壊し、腎不全となった。兄の家族と共にカトマンズで暮らしており、「金は稼いだかもしれないが、病気をもらって帰ってきただけだ」と悔しさを滲ませる。 スラジュ・タパ・マガルさん(30)はクウェートでアルミ建材の取り付けをしていた。夏は50℃以上、冬は極寒という過酷な気候の中で10時間働き、ある夜、吐血した。26歳で腎不全と診断された。透析通院費は借金に頼り、生活補助金の5,000ルピーも遅延して届かず、政府病院の薬も在庫切れが常態化している。「病気のせいで誰も雇ってくれない」と語る。 ■ 公的支援と医療体制の限界 2016年、ネパール政府は貧困層向けに無料透析治療を開始。2018年には月5,000ルピーの生活補助も導入された。 理論上、国内107の病院で無料透析が受けられるはずだが、実際には腎臓専門医がいない施設も多い。政府が専門医の給与を支給しないため、透析機器のメンテナンスも行き届かない。 マデス州では、11の病院が無料透析を提供しているが、ジャナクプルの3つの病院を訪れたところ、いずれも専門医不在で、一般内科医や看護師が代わりに処置を行っていた。 「政府が適切な報酬を出さないので、腎臓専門医は私立病院にしかいません」とカフレ医師。 バグマティ州には無料透析病院が44カ所あり、8,000人以上の腎臓病患者を支えている。多くの患者が移住労働者であるため、結果として、豊かな国々の過酷な環境で腎臓を壊した人々の治療費を、ネパールの資源の乏しい医療制度が負担しているのが現状である。(原文へ) INPS Japan/Nepali Times 関連記事: FIFAワールドカップカタール大会に影を落とす欧米の偽善 労働移住と気候正義? 移住労働者に「グローバルな見方」を学ぶシンガポールの学生

米国の拠出削減が国連職員に広がる不安とメンタルヘルスへの影響をもたらす

【国連IPS=タリフ・ディーン】 トランプ政権による国連への度重なる威嚇的な発言や、複数の国連機関からの脱退、さらには財政的な拠出削減によって、多くの職員の間に将来への不安が広がっている。その影響はメンタルヘルスにも及んでいる。 「国連の資金難は、人員削減や給与の引き下げにつながるのか?」「昇進や昇給の凍結があるのか?」「米国籍を持たない職員は永住権を失い、退職後に家族と共に母国に戻らなければならないのか?」 こうした疑問が職員の間で飛び交う中、国連の人道支援機関である人道問題調整事務所(OCHA)は、主に米国からの拠出削減による資金不足のため、約20%の人員削減と複数国での活動縮小を計画している。 OCHAに限らず、世界食糧計画(WFP)、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も、米国からの支援減により、事務所の閉鎖、スタッフ削減、プログラム終了などの措置を余儀なくされている。 先週、ニューヨーク国連職員組合(UNSU)は職員に対してメモを発行し、「現在の財政状況が引き起こす重大な懸念と不透明感」を認めた上で、次のように呼びかけた。 「この不確かな時期において、メンタルヘルスとウェルビーイングの優先は不可欠です。職員組合では、今後に備えるための実践的なヒントや対処法を提供する『メンタルヘルス・セッション』を準備中です」 UNSUのナルダ・キュピドール会長のメモでは、「公平で公正な待遇を求めて、組合は今後も揺るぎなく職員の権利を守る」と誓っている。 ウィーンで開催された職員管理委員会(SMC) 4月7日から12日にかけてウィーンで開催された職員管理委員会(SMC)は、職員の福祉や勤務条件に大きな影響を与える課題に焦点を当てた。 議題の中心は以下の三点だった: 国連80(UN80)イニシアチブ 財政危機 人員削減政策 これらは密接に関連し合い、職員への影響が深刻であるため、数日にわたり集中的に協議された。 アントニオ・グテーレス事務総長は、「UN80イニシアチブ」タスクフォースに対し、以下の提案を速やかに策定するよう要請している: 業務の効率化と改善策の特定 加盟国から与えられた任務の実施状況の見直し 国連システム全体の計画的な再編と資源の合理化 職員の精神的健康に対する懸念の高まり 国連人口基金(UNFPA)の元副事務局長で、パスファインダー・インターナショナルの元CEOを務めたプルニマ・マネ博士は、IPSの取材に次のように語った: 「米国による国連機関からの脱退や財政的削減は、加盟国にとっても、職員にとっても、非常に懸念される問題です。それは、精神的健康に影響を与え、困難な業務に最善を尽くす能力を低下させてしまいます。」 世界が多くの混乱に直面している今、国連には大きな期待が寄せられているが、資金削減はその対応能力を著しく損なうと彼女は指摘する。 「その中で、職員の福祉に取り組む国連関連団体が、メンタルヘルスの重要性に注目していることは安心材料です。」とマネ博士は評価する。 また、SMC XIIIが4月上旬に開かれたこと、そこでも財政危機と人員削減が大きなテーマとして取り上げられたことにも言及し、「不透明さが状況を一層困難にしている。」と強調した。 「米国が国連を投資に値しないと見なしたままで、方針に変更がなければ、行動面での麻痺が深刻化し、職員の精神的健康や職務遂行能力に大きな代償をもたらすでしょう」とマネ博士は警鐘を鳴らす。 財政危機と米国の滞納金 2024年時点で、国連事務局には世界467拠点に35,000人以上の職員が在籍し、その国籍は190カ国以上に及ぶ。国連ファミリーは、約100の機関、基金、プログラムから構成されている。 しかし、財政危機は加盟国による分担金の未納や遅延も一因だ。2025年4月30日時点で、分担金を全額納付した加盟国は193カ国中わずか101カ国にとどまる。 国連のステファン・ドゥジャリク報道官は4月28日、「削減にもさまざまな種類があるが、最も深刻なのは人道・開発パートナーに対するものです。資金が途絶えれば、そのプログラムは即座に停止せざるを得ません。」と語った。 グテーレス事務総長も、「現在は流動性危機に直面しており、委託された資金を最大限責任ある方法で管理している。」と述べている。 米国は最大の滞納国 現在、最大の滞納国は米国であり、通常予算の22%、PKO予算の27%を負担する最大拠出国でもある。 米国が国連に滞納している金額は、通常予算で15億ドル。PKO予算や国際法廷への分担を含めると、その総額は28億ドルに上る。 2025年の通常予算は37億1,737万9,600ドルで、2024年の36億ドルから約1,300万ドル増加している。米国に次ぐ第2の拠出国は中国で、通常予算の18.7%を負担している。 主要な拠出国は以下の通り: 米国 中国 日本 ドイツ フランス 英国 イタリア カナダ ブラジル ロシア UN80イニシアチブと職員参加 UNSUは、UN80イニシアチブが職員の勤務条件に大きな変化をもたらす可能性があると指摘している。 「変化の全容はまだ不明だが、共通制度の中で起きている同様の課題に関する報道が続く中で、職員にとってストレスや不安の要因となっている」と職員組合は述べている。 UN80イニシアチブでは、職員からの意見を受け付ける「提案箱」も設置されており、5月1日までに提案の提出が求められている。 「現場で日々働いている皆さんからこそ、有効な解決策が生まれると私たちは信じています。ぜひUN80だけでなく、職員組合にも提案をお寄せください」とメモは呼びかけている。 提案は以下のメールアドレスで受け付けている:newyorkstaffunion@un.org UNSUは、「効率と改善」「任務の履行」「プログラムの再編成」という三つの柱における意思決定に職員が幅広く関与する重要性を、再度強調している。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: 第2期トランプ政権:多国間主義と国連への試練(アハメドファティATN国連特派員・編集長) |米国|国際援助庁(USAID)の閉鎖は世界の貧困国を危険にさらす恐れ 国連は80年の歴史で最大の危機に直面しているのか?

距離を置き、同志国との連帯を築くべき時か?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。 【Global Outlook=ケヴィン・P・クレメンツ】 ホワイトハウスで行われたドナルド・トランプ、J・D・バンス、ウォロディミル・ゼレンスキーの会談は外交的な大失敗に終わり、主役たちの本性をあらわにした。会談は首脳レベルの政治的大喧嘩となり、多くの人はそれを、ホワイトハウスが米国の政治的協力関係を大幅に変更する口実を作るための不意打ち攻撃と捉えた。このような転換は、当然視されてきた長年の伝統ある同盟関係を弱体化させ、戦後のリベラルな国際秩序の土台を揺るがしている。それは法の支配を侵害し、われわれがルールに基づく国際協調と考えていたものに異議を唱えるものである。国連の役割、より広くは多国間主義の役割に対し、大きな疑問符を突き付けている。ニュージーランドのような小さな国が依存するこのような協調関係が損なわれたことで、19世紀さながらのなりふり構わぬ力に基づくナショナリズムが再び声高に主張されるようになった。(日・英)  特に米国民にとって、事態をさらに悪化させているのは、連邦政府の空洞化、大統領府への異常なまでの権力集中、生気のない骨抜きにされた共和党、分裂し麻痺した民主党、そして、2世紀以上にわたって米国を支えてきた法の支配とチェック・アンド・バランスの原理に対する日々の攻撃である。 それに加えて、そして恐らく米国の同盟国にとって極めて憂慮すべきことに、政権は明白な反ロシア的見解からロシアとの関係密接化へと突然大きく舵を切るとともに、伝統的な西側の友好国や同盟国と意図的に距離を置くようになった。大統領がウクライナに関連してロシア寄りのレトリックを用いたことを皮切りに、米国はウクライナのエネルギー供給網に対する支援を打ち切り、ウクライナに関する重要な国連決議においてロシア、北朝鮮、ベラルーシと手を組んだ。ロシアに対する国際的制裁にもかかわらず、トランプ大統領はロシアのG7復帰を提唱し、サウジアラビアでウクライナに関する米国・ロシア間の交渉を推進した。ホワイトハウスは数回にわたってプーチンに電話をかけたが、政府関係者はこれらの話し合いの内容を知らされていない。当初のウクライナへの軍事支援停止は、ゼレンスキーが停戦協定に署名した際に撤回されたものの、トランプが強制力を用いてロシアに味方する用意があることは明白だった。 戦争の終結を直接模索し、主要当事者に働きかけることの価値を認めることは重要だが、この戦争に真の安定した終結をもたらすためのトランプの手腕あるいは能力に対する信頼は、現在のやり方ではほとんど得られない。 特に、トランプは、外国代理人登録法に基づく外国代理人に対する主要な執行措置を廃止した。米国の選挙における外国の介入を取り締まる対策本部を解散した。司法省の制裁逃れ摘発ユニットや合衆国国際開発庁(USAID)を、最近では「ボイス・オブ・アメリカ」を閉鎖した。関税に関する常軌を逸した決定は言うまでもなく、これらの大統領令はいずれも、トランプ政権下の米国の外交政策が「アメリカ・ファースト」のみならず、トランプの極めて特異で利己的な利益追求の足かせとなる厄介な同盟の排除も基本方針としていることを示している。そしてこれまでのところ、トランプがウラジーミル・プーチンや他の独裁者に熱をあげるのを止めるものはない。 こういったこと全てが、ニュージーランドのような小規模国にとって、さらにはタスマン海を挟んだより大きな隣国にとっても、深刻な課題をもたらしている。パートナーシップで最も権力を持つメンバーが国連と民主主義の中核的価値を弱体化させている場合、もはや同盟の確実性はない。また、トランプがファイブ・アイズの解体を要求しており、ハッキングやロシア人への最高機密情報の海外漏洩を防ぐ基本的なサイバーセキュリティ対策を廃止してしまった状況で、保証されたインテリジェンス・セキュリティーはない。ウクライナ支援のために「有志連合」案が浮上しても、トランプ大統領はこれを気にかけることもなく、またウクライナ紛争の解決に向けてより公平なアプローチを取ろうという気にもなっていない。サウジアラビアがお膳立てした2国間の話し合いは、協調的な問題解決のための安全な環境を整えるというより、不利な条件を受け入れるようウクライナに圧力をかけることが目的だったようだ。 これがニュージーランドに意味するもの では、これによってニュージーランドはどうなるのか? 政権も野党も、この不確実な状況において防衛費を増額し、和平が訪れたら多国間の平和維持作戦に参加する準備をするようプレッシャーをかけられている。筆者の感じるところでは、トランプがもたらした外交政策のカオスはニュージーランドにとって、米国が権威主義寄りの政治体制に傾きつつある現状を踏まえて、われわれが米国とどこまで密接に連携することを望むかを深く考える機会である。 筆者は、今こそニュージーランドが冷戦時代の古い米国主導の同盟から距離を置き、どの国となぜパートナーを組むべきかについて批判的に考察するチャンスであると考える。第1に、世界平和度指数(GPI)のスコアが高い同志国との関係を深めるべきだと筆者は考える。2024年のGPIランキングを見ると、アイスランド、アイルランド、オーストリア、ニュージーランド、シンガポール、スイス、ポルトガル、デンマーク、スロベニア、マレーシア、カナダが最も平和度の高い国々であり、イエメン、スーダン、南スーダン、アフガニスタン、ウクライナ、コンゴ、ロシア、シリア、イスラエル、マリが最も平和度の低い国々である。現在暴力的紛争に巻き込まれている国々より、予測可能で信頼できる確実な協調的関与の基盤を構築したいのであれば、まずは上位10カ国に働きかけるのが良いだろう。 第2に、われわれと同じ民主主義的価値観や人権と法の支配に対する信念を持つ同志国の間で世界的議論を行い、時代遅れの冷戦構造のみに依存しない国際協力と集団安全保障の新たなビジョンにおいて、われわれはどのような未来を実現したいか、軍はどのような役割を果たすかを話し合う必要がある。 現状を維持し続けることができないのは明白である。トランプ政権がいずれは心を入れ替えるだろうと信じるふりをするならば、決して事を荒立てず、あるいは王様が服を着ていないことを指摘しないならば、われわれはトランプの有害なナルシシズムを助長し続けることになる。賢明な行動の道筋は、ワシントンから流れ出るカオスと不確実性に連帯して立ち向かうことができるよう、有志・同志国の戦略的連合を結成することである。ニュージーランドは民主主義のパートナーと協力し、多国間体制を回復するとともに、全ての人の平和と安全保障を促進するルールに基づく国際秩序の尊重を改めて築くために、積極的な策を講じなければならない。 ケビン・P・クレメンツは、戸田記念国際平和研究所所長である。ニュージーランド在住。 INPS Japan 関連記事: 一部の勢力を除き、世界の指導者らは多国間主義を支持 国連は80年の歴史で最大の危機に直面しているのか? カザフスタン、世界政策会議で多国間協力へのコミットメントを再確認