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NPT再検討会議が開幕、イランめぐる対立で「コンセンサス」の脆弱性露呈
【国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】
核兵器不拡散条約(NPT)の2026年再検討会議が4月27日(月)、ニューヨークの国連本部で開幕した。世界が再び核の危険に向かいつつあるとの警告が相次ぐ中、開幕早々、イランの副議長職をめぐる対立が表面化し、NPTのコンセンサス重視の枠組みの下に潜む政治的脆弱性を露呈した。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は各国代表に対し、核時代をめぐる記憶が危険なほど風化しつつあると警鐘を鳴らした。かつて子どもたちは机の下に身を隠す訓練を受け、核攻撃に備えたシェルターが建設され、核実験は地域社会と環境に甚大な被害をもたらした。核の脅威や軍拡競争、不信が再び強まる中で、そうした記憶は薄れつつある、とグテーレス氏は指摘した。
グテーレス氏は各国に対し、NPT上の義務を履行し、保障措置を強化し、核戦争を防止するとともに、人工知能(AI)や量子コンピューティングを含む新たなリスクに対応できるよう条約を適応させることを求めた。その訴えは明快だった。世界は、知らぬ間に再び核の危険へと向かう余裕などない、というものである。
第11回再検討会議の議長を務めるベトナムのドー・フン・ヴィエト大使も、冒頭から強い危機感を示した。世界の軍事支出は過去最高水準に達し、核兵器は近代化・増強され、軍備管理の枠組みは弱体化している。核兵器使用の可能性は、もはや外交官や軍事計画担当者が想定する最悪のシナリオの中だけにとどまらない、と同氏は述べた。さらに、NPT締約国がコンセンサスに基づく最終文書に合意できたのは2010年が最後であることも指摘した。
「これは単なる会議ではない」とヴィエト氏は各国代表に語り、その成否は国連の壁の内側にとどまらず、今後5年間を超えて影響を及ぼすと警告した。
しかし、最初の本格的な試練は、軍縮に関する文言や最終文書をめぐるものではなかった。焦点となったのはイランだった。
米国は、イランが会議の副議長の一人に選出されたことに異議を唱えた。米国は、保障措置や国際原子力機関(IAEA)との協力をめぐるイランの実績を踏まえれば、同国はNPT体制を守ることを使命とする会議で指導的役割を担うにふさわしくないと主張した。さらに、イランは条約上の義務を軽視し、IAEAに十分協力せず、正当な民生上の必要性を大きく超える水準までウラン濃縮を進めていると非難した。
オーストラリアも米国の異議を支持し、イランはIAEAに協力せず、保障措置上の義務を尊重していないと述べた。英国も英仏独3カ国を代表して発言し、イランが会議指導部に加わったことへの懸念を公式記録に残した。
アラブ首長国連邦(UAE)は、地域諸国の中でもとりわけ厳しい異議を表明した。UAEは、イランの行動が再検討会議の信頼性を損なっていると述べ、同国が検証を妨害し、地域を不安定化させ、航行の自由を脅かし、ホルムズ海峡を経済的威圧の手段として利用しようとしていると非難した。
イランはこれらの非難を退け、政治的動機に基づくものであり、会議の進行を操作しようとするものだと反論した。テヘランは、2015年の核合意からの米国の離脱、米国による核戦力の近代化、イスラエルへの支援、さらに、保障措置下にあるイランの核施設への攻撃とされる行為を挙げ、ワシントンの二重基準を批判した。またイランは、米国とオーストラリアの副議長選出についても、同意しない立場を示した。
その後、ロシアはイランを公然と標的にする動きに反発し、会議初日から政治問題化すべきではないと警告した。モスクワは、懸念事項は一般討論や主要委員会の場で扱うべきであり、一締約国に対する政治的攻撃として持ち込むべきではないと述べた。
この対立は採決には至らなかった。代わりに、異議を唱えた国々が異議を公式記録に残すことが認められた。これにより、NPTが長年維持してきたコンセンサスの慣行は守られたものの、政治的な傷口は開いたままとなった。
この問題は、ヴィエト氏が記者会見場に移った後も尾を引いた。
同日遅くに開かれた記者会見で、ATNニュースはヴィエト氏に対し、核問題に関わる主要国、地域グループ、締約国との数カ月に及ぶ協議を経ても、なぜイランの立候補を事前に収拾できなかったのかと質問した。とりわけ、2025年にイランが関与した紛争後の緊迫した政治環境を踏まえた問いだった。
ヴィエト氏は、イランは数カ月前、非同盟運動(NAM)によって副議長候補の一団の一部として指名されたと説明した。ただ、その立候補に対する懸念が表面化したのは、会議開幕の約1週間前だったという。同氏は、規則上、各国は無記名投票を含む採決を求めることができると述べる一方、NPT再検討会議では、手続き上または実質的な問題について、これまで採決が行われたことはないと指摘した。
ヴィエト氏は、多くの締約国の支援を受けながら、採決の回避に努めたと述べた。採決に踏み切れば、条約のコンセンサスに基づくプロセスに有害な前例を残す可能性があったためである。その結果、各国は決定に同調しない立場を記録に残すことで合意した。
この説明は、会議が抱える中心的なジレンマを端的に示していた。NPTが権威あるメッセージを発するにはコンセンサスが不可欠である。一方で、コンセンサスは外交上の圧力弁にもなり得る。各国が決裂を回避しつつも、根底にある対立を未解決のまま残すことを可能にするからである。
ヴィエト氏は、NPT体制が平穏な状況にあるとは見ていなかった。同氏は記者団に対し、NPT体制はその歴史上、最も困難な局面の一つに直面しており、条約の存在意義と信頼性が問われていると述べた。また、過去2回の再検討会議が成果文書でコンセンサスに達しなかったことを踏まえ、今回の会議では、履行を強化するための実践的かつ具体的な措置を打ち出す必要があると強調した。
合意に基づく成果文書を得られない会議でも成功とみなし得るのかと問われると、ヴィエト氏は、コンセンサスによる成果文書こそが締約国間の合意を最も明確に示すものだと述べた。3回連続で合意に至らなければ、NPT体制の信頼性と強さについて極めて憂慮すべきメッセージを発することになる、と同氏は警告した。
1970年に発効したNPTは、不拡散、核軍縮、原子力の平和利用という三つの柱に基づいている。核兵器の拡散を抑制する中核的な法的枠組みであり続けている。しかし4月27日の開幕は、これら三つの柱すべてが大きな圧力にさらされている現実を示した。
核兵器国は核戦力の近代化を進めている。軍備管理協定は弱体化している。北朝鮮はNPTの枠外にとどまり、核開発を続けている。イランは、保障措置とウラン濃縮をめぐる深刻な対立の中心にある。ロシアによるウクライナ戦争は、核による威嚇と原子力施設の安全という問題を、国際安全保障の中心課題として再び浮上させた。中東では、1995年NPT再検討・延長会議で採択された「中東に関する決議」が求めた、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の創設がいまだ実現せず、影を落とし続けている。
一般討論では、ウクライナと同国を支持する国々が、ロシアによる戦争、核をめぐる威嚇、ザポリージャ原子力発電所の占拠を非難した。フランスと北欧諸国は、ロシア、中国、イラン、北朝鮮をめぐる懸念を表明した。オーストラリアは、AUKUSに基づく原子力推進潜水艦計画について透明性を強調し、同計画が不拡散体制の強化につながるようIAEAと協力していると述べた。カザフスタンと中央アジア諸国は、非核兵器地帯を実践的なモデルとして示し、途上国は保健、農業、エネルギー、開発のために原子力技術を平和利用する権利を強調した。
今のところ、会議はイランをめぐる手続き上の決裂を回避した。しかし、それを引き起こした政治的亀裂を解消したわけではない。
NPT再検討会議は、コンセンサスという従来の理念の下で幕を開けた。だが初日の終わりまでに、そのコンセンサスは、不信、戦争、二重基準、そして核をめぐる不安によって早くも試されていた。条約は最初の衝突を乗り越えた。抑制よりも抑止へと傾きつつある世界の中で、4週間にわたる外交を乗り切れるかどうかが、今や真の試練である。(原文へ)
Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/iran-clash-tests-npt-consensus-as-treaty-review-opens-at-u-n
INPS Japan
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NPT再検討会議が国連で開幕―揺らぐ核不拡散体制の信頼性
【ニューヨーク国連INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】
世界の核秩序の中核をなすNPT体制が今週、再び国連の舞台に戻ってくる。そこには、過去の約束、新たな戦争、そして一つの避けがたい問いが重くのしかかっている。核兵器不拡散条約(NPT)は今なお、各国に対し、核兵器の保有ではなく自制を選ぶほうが安全だと納得させる力を持っているのか。|英語版|
第11回NPT再検討会議は、条約の3本柱―核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用―のすべてが圧力にさらされるなか、国連本部で開幕する。かつては国際的な核管理の枠組みとして機能していたNPT体制は、いまやさまざまな圧力が集中する場となっている。軍備管理は弱体化し、核をめぐる威嚇的な言説は高まっている。平和目的で整備された施設が、戦争の文脈で語られることも増えている。さらに、原子力潜水艦の推進技術を含む新技術は、過去の時代を前提につくられた規則を揺さぶっている。
国連の軍縮担当者にとって、問題はもはや机上のものではない。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は、核リスクが高まり、核兵器国と非核兵器国の間の信頼が損なわれ続けるなか、NPTは深刻な信頼性の試練に直面していると警告している。
この懸念は、条約の正式な締約国の枠を超えて共有されている。
ATNニュースの取材に対し、パキスタンの元国連常駐代表ムニール・アクラム大使は、NPT体制は「存立に関わる危機」に直面していると述べた。その理由として、核軍縮の停滞、インドとイスラエルをめぐる二重基準、そして核兵器が外部からの侵略に対する防護を与えるという認識の広がりを挙げた。
アクラム氏の警告は、外部からの戦略的評価として重要である。ただし、その発言は文脈の中で理解する必要がある。パキスタンは、インドやイスラエルと同様、NPTの締約国ではない。同氏の批判は、条約体制の外側から見た視点を反映している。すなわち、この体制の信頼性は、締約国の行動だけでなく、その枠組みの外にとどまる国々をめぐる例外や沈黙によっても弱められてきた、という見方である。
同氏の主張は、NPTが抱える最も深刻な政治的問題に突き当たる。各国が、条約上の約束によって自制が守られるよりも、核兵器の保有によって攻撃を抑止するほうが効果的だと結論づけるなら、NPTの論理は崩れ始める。
しかし、会議は悲観材料だけを抱えて始まるわけではない。カザフスタンは、より均衡の取れた見方を示そうとしている。
カザフスタンの国連常駐代表であり、第11回NPT再検討会議の副議長を務めるカイラト・ウマロフ大使はATNニュースに対し、議論は建設的な要素も反映すべきだと述べた。とりわけ、核不拡散という柱において、その必要があるという。
ウマロフ氏は「非核兵器地帯は、核不拡散の約束が地域レベルでどのように履行されるかを示す、最も実践的かつ効果的な例の一つであり続けている」と述べた。そのうえで、中央アジア非核兵器地帯の創設20周年を、NPTが今なお具体的な成果を生み出していることを示す「明確な実例」だと指摘した。
カザフスタンにとって、この例は抽象的なものではない。中央アジア非核兵器地帯は、旧ソ連の核実験場だったセミパラチンスクと、核実験がもたらした人的被害によって形づくられた同国の歴史に深く結びついている。会議に向けた同国のメッセージは明確である。条約は圧力にさらされているが、その有効性を示す実例も存在する、ということだ。
それでも、現在進行中のいくつかの争点は、そうした楽観論がどこまで持ちこたえられるかを試すことになる。
一つは、紛争地域にある原子力施設をめぐる危険の高まりである。保障措置下にある施設を含め、原子力施設やその周辺への攻撃は、戦争が拡大し、軍事的な論理が優先されるなかで、平和目的の原子力インフラを守り続けることができるのかという懸念を強めている。原子力の平和利用を柱とする条約は、原子力施設そのものが標的や圧力手段、あるいは戦場のリスクとなる時、過酷な試練に直面する。
もう一つは、海軍艦艇の原子力推進である。オーストラリアが米国と英国の支援を受けて原子力潜水艦を取得する見通しのAUKUSに基づく潜水艦計画は、保障措置をめぐる大きな論争を引き起こしている。争点は、オーストラリアが核兵器を取得するかどうかではない。オーストラリア政府は、潜水艦は通常兵器で武装されると説明している。問題は、先例と透明性、そして原子力推進が将来、他国に利用され得る形でNPTの枠組みを押し広げる可能性があるかどうかである。中国にとって、AUKUSは核拡散上の懸念を生む。一方、オーストラリアにとっては、保障措置の下に置かれた防衛計画である。これはNPTにとって、長期にわたり火種となり得る、扱いの難しい試金石である。
しかし、中東は依然として、NPTにとって政治的に最も敏感な未解決課題である。
アラブ連盟のマゲド・アブデルファッターフ国連常駐オブザーバーはATNニュースの取材に対し、再検討会議に臨むアラブ側の立場をイラン問題だけに還元すべきではないと述べた。同氏は、アラブ側の立場は、NPTの3本柱である軍縮、不拡散、原子力の平和利用を軸にしていると説明した。
アラブ諸国にとって、中心的な未解決課題であり続けているのは、1995年の中東決議である。この決議は、NPTの無期限延長を可能にした政治的合意の一環として採択され、中東非核兵器地帯の設立を支持することを約束したものだった。30年を経た今も、アラブ外交官らは、その約束は果たされていないと主張している。
アブデルファッターフ氏は、2019年に始まった、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯の設立に向けた国連の会議プロセスについて、NPTの歴史に根差すものだと説明した。その基礎にあるのが、1995年決議であるという。
このアラブ側の主張は、1995年決議の当初の共同提案国の一つであるロシアからも支持を得ている。米国と英国も、当時の共同提案国だった。
ATNニュースから、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯について問われたロシアのワシリー・ネベンジャ国連常駐代表は、ロシア政府は同地帯の設立を「極めて重視」しており、核不拡散に関する外交政策上の優先事項の一つと位置づけていると述べた。
ネベンジャ氏は、地域の安全保障状況の悪化により、この地帯の設立は「かつてないほど重要になっている」と述べ、この問題をNPTの1995年の政治的合意と直接結びつけた。同氏によれば、ロシア、米国、英国が共同提案した中東決議は、NPTを無投票で無期限延長することを可能にする一助となった。ロシアは、この決議が「その目的が達成されるまで有効であり続ける」との認識に立っているという。
ネベンジャ氏はまた、ロシアが、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯の設立に関する国連会議の全6回の会期にオブザーバーとして参加してきたと述べ、この会議を地域諸国間の対話と信頼醸成の場と位置づけた。同時に、イスラエルと米国が同プロセスに参加していないことに遺憾の意を示し、イスラエル抜きには実質的な進展は不可能だとの認識も示した。
こうして会議は、二つの相反する現実に直面している。NPTは依然として世界の核不拡散体制の基盤であり、各地域の非核兵器地帯を含む実際の成果を生み出してきた。しかし、核軍縮の停滞、地域的な二重基準、原子力施設への攻撃、核戦力の近代化、そして既存の保障措置に負荷をかける新技術は、その正当性を揺さぶっている。
NPTは終わったわけではない。この種の条約は通常、徐々に崩れていく。約束が儀礼化し、例外が恒久化し、各国が条約遵守よりも力のほうが自国を守ると考え始める時、条約は少しずつ侵食されていく。
それこそが、ニューヨークで問われている本当の試練である。危険なのは、またしても成果文書の採択に失敗することだけではない。より大きな危険は、NPTを支える基本的な合意が自制を守るものなのか、それとも特権を温存するだけのものなのかを、より多くの国が問い始めることである。
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国連、核不拡散条約再検討会議を前に「重大な圧力」を警告
【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】
核兵器不拡散条約(NPT)締約国による第11回再検討会議が、2026年4月27日から5月22日まで、ニューヨークの国連本部で開かれる。締約国は、核不拡散をめぐる共通基盤をいかに見いだすかという喫緊の課題に向き合うことになる。
国連軍縮担当上級代表で事務次長の中満泉氏は、「NPTは、国際的な軍縮・不拡散体制の礎石であり、国際の平和と安全保障を支える極めて重要な柱としてしばしば言及されている」と述べた。
NPTは1970年に発効し、1995年に無期限延長された。この画期的な国際条約は、すべての締約国に対し、核兵器の拡散防止と核軍縮の推進を求めるとともに、原子力の平和利用を奨励している。核兵器国と非核兵器国を含む191カ国が締約国となっており、核兵器国も参加する唯一の法的拘束力を持つ枠組みであり続けている。再検討会議は通常、1970年以降5年ごとに開催されてきた。ただし、2020年に予定されていた会議はCOVID-19の影響で延期され、2022年に開催された。
今回の会議議長は、ベトナムのドー・フン・ベト国連常駐代表が務める。会議は第1週の一般討論で始まり、その後、条約の3本柱に沿ったテーマ別討議が行われる予定である。
会議には、外相を含む閣僚級代表のほか、主要な国際機関の高官も出席する。テーマ別討議と並行して、市民社会の参加者によるサイドイベントも開催される。今回の会議では、最終成果文書について合意に至らないまま閉幕した前回の再検討会議以降、NPTがどのように履行されてきたかが検証される。
会議に先立ち、中満氏は4月24日、国連本部で記者団に対し、締約国は今回の会議を、核不拡散をめぐる共通基盤を見いだす機会とすべきだと述べた。各国が最終的に避けなければならないのは、核拡散の拡大と、核兵器が意図的に使用される事態である。成果文書で合意に至ることは、締約国全体の共同責任だと中満氏は強調した。
NPT再検討会議は、地政学的緊張が深まり、主要な核兵器国が地域紛争に関与する中で開かれる。イランをめぐる現在の軍事衝突、とりわけ2022年以降続くウクライナ戦争は、各国の核拡散をめぐる認識を変化させている。
一部の専門家は、こうした状況が新たな軍拡競争の始まりにつながっていると指摘する。核兵器の「性能向上」をめぐる議論を進める国が増える一方、核兵器を「国家安全保障の究極の保証」とみなし、核兵器の取得に乗り出す可能性すら取り沙汰されている。中満氏は、こうした世論の高まりを、各国政府のNPTに対する公式立場とは別に存在する「拡散の推進要因」と位置づけた。さらに、核兵器の使用を示唆する言説が増えていることに懸念を示し、核兵器を保有する国が増えれば増えるほど、誤用や誤算によって核兵器が使用されるリスクが高まると警告した。
「核兵器の使用を防ぐことも、今回の会議における主要な焦点の一つとしなければならない。核兵器に関しては、繰り返しになるが、一国や二国の安全保障にとどまる問題ではない。国境を越え、私たちすべての安全保障に関わる問題である」と中満氏は述べた。「核兵器を保有する国が増えれば私たちの安全が保証されるという誤った認識に、終止符を打たなければならない」とも語った。
締約国の間で共有される「危機感」は、むしろNPTを「守り、維持する」方向へ各国を促す可能性がある。しかし中満氏は、核兵器に対する容認姿勢が広がりつつあることは、第2次世界大戦後から冷戦期を通じて築かれてきた成果を危うくしかねないと警告した。
現在の戦略的安全保障環境においては、先端技術の急速な進展も議論に影響を及ぼす要素となる。人工知能(AI)の登場は、各分野での活用への期待を高める一方、適切な歯止めがなければ悪用されるリスクもあり、国際社会で大きな議論を呼んでいる。
国連総会が、軍事分野におけるAIの利用と「国際の平和と安全保障への影響」について詳述した決議を採択したのは、2024年12月のことだった。ただし、この決議には、核兵器の文脈におけるAI利用への言及はない。
NPT再検討会議で軍事・核分野におけるAIの問題が議論されるのかと問われた中満氏は、核兵器の指揮統制システムへのAIの統合については「さまざまな場で議論され始めている」と述べ、今年ジュネーブでもさらなる協議が行われる予定だと説明した。NPT再検討会議は、この問題や軍事分野におけるAIガバナンスを本格的に議論する場ではないかもしれない。しかし、軍事分野でのAI利用に一定の歯止めを設ける必要性を含め、この問題について検討を深めるべきだとの認識は、締約国の間で共有されている。
「核兵器の指揮統制に関しては、当然ながら人間による監督が維持されなければならないという認識が高まっている」と中満氏はIPSの取材に対して語った。
中満氏は、欧州や中東で続く紛争をはじめ、国際社会が直面する諸課題がNPTに「重大な圧力」を及ぼしていると指摘した。
しかし、だからこそNPT再検討会議とその成果は一層重要性を増している。核拡散はさらなる不安定化と安全保障上の不安を招くだけだという共通認識が、今後4週間にわたる重要な対話を後押しすることになる。そしてその対話は、NPTの原則を堅持するという共通の決意につながらなければならない。(原文へ)
INPS Japan
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「新常態」を迎える日中関係―中国からの視点
この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています
【Global Outlook=王広濤(ワン・グアンタオ)】
高市早苗首相の台湾をめぐる発言を発端とする日中間の外交上の緊張は、短期的には緩和の兆しをほとんど見せていない。両国関係は「新常態」に入りつつあるのかもしれない。
2026年初頭以降、日中双方は対抗措置の応酬を重ねてきた。1月6日、中国商務部は、日本向けのデュアルユース品に対する輸出管理を強化すると発表した。2月24日には、日本の20団体・機関を輸出管理リストに追加し、さらに20団体・機関を監視リストに載せた。3月24日には、自衛隊員が刃物を持って東京の中国大使館に立ち入る事件が発生し、国際的にも大きな注目を集めた。さらに、4月10日に公表された日本の2026年版外交青書では、中国の位置づけが「最も重要な隣国の一つ」から、単に「重要な隣国」へと格下げされた。
こうした一連の否定的な応酬を、どのように理解すべきだろうか。日中両国は当初から関係改善に消極的だったのか。それとも、現在の関係悪化は主として高市氏の台湾をめぐる発言に起因するものなのか。一部には、高市氏が自民党総裁となり、その後首相に就任した時点で緊張は避けられず、北京はもともと二国間関係に高い期待を抱いていなかったと見る向きもある。しかし、この解釈はやや決めつけが過ぎるかもしれない。
たしかに、高市氏が過去に中国関連の問題をめぐって行った発言を踏まえれば、中国政府が高市氏の台頭を歓迎していなかったことは事実である。それでも北京は当初、慎重に推移を見守る姿勢を取っていた。注目すべきは、高市氏が靖国神社参拝を控え、中国に関わる人権問題でも露骨な強硬姿勢を取らなかったため、中国側もハイレベル接触の可能性を残していたことである。2025年10月31日、両国首脳は韓国で開かれたAPEC首脳会議に合わせて会談しており、当時はなお、一定の外交的安定を維持し得る余地があったことを示している。
11月7日の高市氏の台湾をめぐる発言に対し、北京が強く反発した背景には2つの要因がある。第1はタイミングである。発言は首脳会談の直後になされたもので、意図の有無にかかわらず、外交の雰囲気を損ない、さらに重要なことに、中国指導部の政治的威信を傷つけるものと受け止められた。中国外交部が「奉示」、すなわち上層部の指示を受けて日本大使を呼び出したことは、この問題が最高政治レベルに達していたことを示している。第2は発言の中身である。台湾有事が日本による集団的自衛権の行使を可能にする事態に該当し得るという高市氏の示唆は、北京が明確なレッドラインとみなす一線を越えるものだった。日本側が何らかの有事対応計画を持っているとしても、現職首相が国会の場でその可能性に公然と言及したことは、これまでなかった。
一見すると、現在の状況は、2010年の尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺での衝突事件を機に悪化した日中関係を思い起こさせる。しかし今回は、より深く、長期にわたる影響を及ぼす可能性が高い。その背景には、3つの構造的要因がある。
第1は、台湾問題が占める中心的な位置である。尖閣諸島をめぐる領有権問題について、中国は少なくとも原則として、係争の存在を認めてきた。これに対し、台湾問題はあくまで内政問題として位置づけられている。北京の視点からすれば、外部からの関与は内政干渉にほかならない。この意味で、台湾は日中関係だけでなく、中国の対外関係全般を測る重要な指標となっており、今後もそうあり続ける可能性が高い。台湾をめぐる各国の立場や行動は、その国が中国の核心的利益を尊重しているか、また過去の政治的約束を守っているかを測る試金石として、ますます重視されるようになっている。こうした文脈のなかで、高市氏は発言を撤回していないだけでなく、さまざまな場で日台協力を強調しており、政策上の柔軟性には限界があることをうかがわせる。
第2は、政治的な意思疎通のチャンネルが弱体化していることである。過去には、二国間関係が困難に直面した際、中国との太いパイプを持つ日本の有力政治家がしばしば仲介役を担ってきた。安倍晋三政権や岸田文雄政権の時代には、首相の親書を携えた特使がたびたび中国を訪れ、対話の促進に努めた。自民党の連立パートナーだった公明党の関係者も、意思疎通の維持に寄与してきた。しかし現在、そうした役割を担ってきた政治家の多くは表舞台を去っている。
同時に、日本国内では対中強硬姿勢が政治的正当性を増している。関与や対話を訴える政治家は「親中派」と見なされるリスクを負い、最近の衆議院選挙では、そうした印象が一因となって議席を失った者もいるとされる。その結果、与党連合内でも野党内でも、中国と積極的に向き合おうとする人物、あるいは政治的にそれが可能な人物は少なくなっている。
第3は、関係改善に向けた明確な契機が乏しいことである。短期的には、すぐに外交的打開につながる機会はほとんど見当たらない。今年夏に愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会は、人的交流やスポーツ交流の場となり、草の根レベルから徐々に雰囲気を改善する可能性はある。しかし、二国間関係の実質的な進展には、最終的にハイレベルの政治的イニシアチブが不可欠であり、現時点ではその機運を欠いている。
関係改善に向けた一つの機会となり得るのが、11月に深圳で予定されているAPEC首脳会議である。2014年に北京で実現した安倍晋三首相と習近平国家主席の会談を先例に、日本は同様の首脳会談を模索する可能性がある。実現すれば、重要な転機となり得る。しかし、現在の緊張の高まりや日本国内の政治環境の変化を踏まえれば、そうした会談を実現することは、2014年よりも難しくなるかもしれない。
中国は、高市氏に台湾をめぐる発言を撤回するよう繰り返し求めてきた。日本の現在の政治状況を考えれば、撤回は見込みにくい。とはいえ、外交的な打開の余地が完全に失われたわけではない。注目すべきは、中国外交部の報道官が日本に対し、台湾に関する従来の立場を「誠実に、正確に、完全に表明する」よう繰り返し求めていることである。これは、意味のある対話を再開するための一つの前提条件を示唆している可能性がある。
それでも、双方に関係を安定させる意思があるなら、打開の機会はなお残されている。非政府間の交流チャンネルを広げることは、建設的な役割を果たし得る。感情的な言説に支配されるのではなく、国境を越えて、より均衡の取れた理性的な声が届く環境を整える必要がある。
しかし現時点では、相互認識は否定的なフィードバックの連鎖にますます左右されている。中国側では、政府が発出した渡航・留学に関する注意喚起が、日本を訪問したり日本で学んだりしようとする国民の意欲に大きな影響を及ぼしている。これは「政府主導型」の制約と呼べる。一方、日本側では、中国の否定的側面を強調するメディア報道が世論を左右し、中国との関わりをためらわせている。こうした動きは、メディア間競争の商業的論理を反映した「市場主導型」の制約と理解できる。
指導者レベルでは、東京は対話に前向きな姿勢を示し続けているものの、具体的な意思表示はなお限られている。たとえば、エマニュエル・マクロン仏大統領は以前、中国首脳をG7サミットに招待する意向を示していたが、日本はこれに懸念を表明した。最終的に、マクロン氏の訪日時にフランス政府は、中国首脳を招待しない方針を示した。しかし、日本が懸念を示すのではなく、むしろ招待を積極的に支持し、中国側も応じていれば、日中間のハイレベル接触の機会をつくり出せた可能性もある。
同様に、中国大使館で発生した自衛隊員による事件についても、高市首相と小泉進次郎防衛相は、迅速かつ実質的な対応を示さなかった。小泉氏は数日後、この事件について単に「遺憾」と述べるにとどまった。こうした抑制的な反応は、緊張緩和を意図したものだったのかもしれないが、同時に、危機を外交関係の立て直しにつなげる可能性を狭めるものでもある。
王広濤(ワン・グアンタオ)は、中国・復旦大学日本研究センターの准教授。専門は、日本の国内政治と外交政策、日中関係、東アジア国際関係である。近年の主な論文に、International Affairs誌に掲載された「Bridging the Gap between International Relations and...

