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歴史的殉教地ナガサキ:隠れキリシタンから原爆投下まで

「キリストの教えに倣って私は迫害者を赦します。彼らを憎みません。私はすべての人を憐れんでくださるよう神に願い、私の血が恵み豊かな雨のように人々に降り注ぐことを望みます。」パウロ三木 【National Catholic Register/INPS Japan長崎=ヴィクトル・ガエタン】 長崎市街地を取り囲む緑豊かな山間部(彦山中腹)を歩き、1931年にここに修道院を創設した聖マキシミリアノ・コルベ神父の足跡をたどった。コルベ神父がポーランドに呼び戻されるまでの5年間を過ごしたこの地には、奇跡の泉で巡礼地として知られるルルドを神父が再現した洞窟と泉がある。 アメリカ人は長崎といえば、1945年8月9日に米爆撃機B29による原爆投下を連想する。しかし日本では、この地域はカトリック信仰の地としても認識されている。1600年代、宣教師たちが日本の南西部各地の港から上陸して伝えたカトリック信仰は、急速に広まり、当時長崎のカトリックコミュニティーは、貿易商の間で「リトル・ローマ」と呼ばれていた。   長崎を訪れれば、残酷で神秘に包まれながらも今日に伝わる日本におけるカトリック信仰の軌跡を垣間見ることができる。それはまた、連綿と続いた殉教の悲劇の歴史でもある。 新たな信者と殉教者たち イエズス会の宣教師、聖フランシスコ・ザビエル神父が日本に興味を持ったのは、ポルトガル商船が航路を外れて日本列島の南端(種子島)に漂着し、戦国大名たちが割拠する美しい大地を「発見」した僅か数年後のことだった。 ザビエル神父は、日本に在住した2年間(1549年~51年)約1000人の魂をカトリック信仰に導いた。その後の30年間で、約20万人の日本人がカトリックに改宗した。 その中に、当時日本南部を席巻していたこの新宗教に家族が入信した際に幼くして洗礼を受けたパウロ三木がいる。彼の父は(織田信長に仕える)有力なキリシタン武将であった。彼は日本初のイエズス会神学校に入学して布教活動を展開したが、まもなく時代は豊臣秀吉の政権に代わり、キリシタンに対する残忍な迫害が強化されていくことになる。 ヨーロッパ人がカトリック教会による布教活動を通じて日本を征服しようとしていると恐れた関白豊臣秀吉は、1587年に宣教師の追放を命じる「伴天連追放令」を発した。その結果、多くの宣教師が地下に潜伏した。 しかし主要な国際貿易港となっていた長崎は、その後もしばらくキリシタン大名の大村純忠の管理下にあり、大村氏が港湾税を用いてイエズス会による学校、貧民院、教会運営を支援しため、主要なカトリック信仰の中心地であり続けた。 その後、財宝と聖職者を乗せたスペインのガレオン船が座礁する事件(サン=フェリペ号事件)が起こり、激怒した秀吉は、カトリック宣教師や信者を捕縛し、京都で引き回したのち厳冬の陸路を長崎まで1ヶ月かけて徒歩で行進させ、長崎で公開処刑した。秀吉の狙いは凄惨な罰を示すことでキリスト教の布教活動を麻痺させることにあった。     当時33歳の三木は、6人のフランシスコ会の外国人宣教師と修道士、17人の一般カトリック信者を共に番兵に引き立てられていった3人の日本人イエズス会カテキスタの一人であった。優れた説教者であった三木は、この苦難の道中、耳たぶを切断され、拷問され、飢えと野次に苛まれながらも、福音のメッセージを宣べ伝えた。 長崎に到着すると26本の十字架が用意され数千人の群衆が集まって刑場の丘に引き立てられた。十字架に鉄製の枷とロープで固定された殉教者たちは、刑吏の槍が両脇を貫き絶命するまで聖歌を歌い、祈り続けた。 三木の最後の言葉は、彼の聖なる精神を体現していた 十字架に架けられたパウロ三木は、「キリストの教えに倣って私は迫害者を赦します。彼らを憎みません。私はすべての人を憐れんでくださるよう神に願い、私の血が恵み豊かな雨のように人々に降り注ぐことを望みます。」と述べた。長崎の日本二十六聖人記念館の館長であるイエズス会のレンツォ・デ・ルカ神父は、「しかし、処刑では信仰を根絶することはできませんでした。人々は目の当たりにしたこの光景に心を動かされ、かえって信仰を深めたのです。」と説明した。 キリシタン信徒たちは血に染まった衣服など殉教者の遺物を収集し、今日日本二十六聖人記念館に展示されている。この記念館は、教皇ピウス9世が聖パウロ三木と25人の殉教者を列聖して100周年を記念して1962年に設立された。 隠れキリシタン 徳川幕府は大々的な処刑が信者に対して効果的でないことがわかると、とりわけキリスト教を全面的に禁止した1614年以降、個別的なアプローチを強めていった。キリシタンに関する情報には報奨金が提供され、宣教師にはより高い賞金がかけられた。(この様子は遠藤周作の小説を基にしたマーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙』で描かれている。)また檀家制が導入されすべての世帯の仏教寺院への登録が義務付けられた。 隠れキリシタンを見つけ出す手段として、誰もがイエスやマリアの肖像を踏むことが要求された。「踏み絵」はしばしば美しいブロンズ像で、多く踏まれたため表面が滑らかになっている。長崎では、踏み絵の儀式は1629年から1856年まで毎年行われていた。 展示された踏み絵 カトリック信者が摘発されると拷問は凄惨を極め、生きたまま温泉で茹でられたり、杭につながれたままゆっくりと溺れさせられたり、筵にくるまれたまま焼かれたり、排泄物の桶に逆さまに吊るされたりした。キリスト教を理由とする処刑は1805年にようやく廃止された。 弾圧は信仰を地下に追いやった。カトリックの聖像や聖具などは、壁の中などに隠されるか、目につくところに隠された: 小さな白い観音像は、マリア観音とし聖母マリアの代用品となり、密かに崇拝された。 隠れキリシタンは、司祭を置かずに世代から世代へと信仰を受け継いでいった。洗礼が唯一の正規の秘跡であった。  殉教者記念館には年間約5万人が訪れ、韓国からの巡礼者も増えている。デ・ルカ神父によると、日韓両国の司教協議会は、このような訪問を奨励することで相互理解を深めることを約束したという。 コルベ神父と無原罪の園 ポーランドのカトリック信者は、聖マキシミリアノ・コルベ神父ゆかりの場所を訪れるために長崎にやってくる。 驚くべきことに、1930年に来日してから1ヶ月以内に、コンベンツアル・フランシスコ会のコルベ神父は、日本初のカトリック雑誌である『無原罪の騎士』(現地訳では『マリア無原罪の騎士』)の日本語版をすでに印刷していた。 コルベ神父は、最初は1864年にフランスの宣教師たちによって設立された長崎の大浦天主堂の近くに滞在した。これは、日本が海外貿易に再び開かれる中で、外国商人が増加する共同体に奉仕するためであった。 大浦天主堂 コルベ神父は大浦天主堂と隠れキリシタンとの特別なつながりに深い感銘を受けた。大浦天主堂の献堂後まもなく、浦上地区の信者の一団がベルナール・プティジャン神父を訪れた。彼らは250年以上も信仰を守ってきたカトリック信者の子孫だった。彼らは農民、漁師、職人、そして教会の十字架を認識した女性たちであり、同じ信仰を共有している証としてマリア像を見せて欲しいとプティジャン神父に要請した。 コルベ神父はコミュニティを築く人物として、長崎の郊外にある山間の無限罪の園にフランシスコ会の修道院を設立する決意をした。神父はこの僻地に新たな宣教の拠点を築いた1831年から36年の間に、宣教師の数は5人から20人に増えた。雑誌の発行部数は7万部に達し、出版活動は現在もポーランドと日本で続けられている。この間ずっと、コルベ神父は結核に苦しみ、しばしば病気に悩まされた。 コルベ神父が使っていた大きな木の机は修道院の小さな博物館の目玉であり、特にヨハネ・パウロ2世が修道院を訪問時にこの机に座ったことで注目されるようになった。 ジョージタウン大学の現代日本史の専門家であるケビン・ドーク教授は、聖人の日本での禁欲的な生活がアウシュビッツ強制収容所での殉教に備える助けとなったと指摘した。 原爆が長崎の軍事目標から何マイルも離れた場所で爆発したとき、それはアジア最大のカトリック大聖堂がある浦上地区の上空だった。その時、3人の司祭が告解を聞いていた。一方、コルベ神父の聖域は周囲の山々の地形により守られていたため、原爆の被害を免れた。  グラウンド・ゼロに立つ聖人たち 長崎の平和公園には、原爆の爆心地を記念する野外モニュメントがあり、浦上天主堂の一部であった聖人像が載った外柱の一部が立っている。この教会は、1895年から1917年の間に自由になった隠れキリシタンのコミュニティによって、一つ一つの煉瓦で建てられた。その存在は、この大惨事に対するカトリックの理解の中心性を象徴している。 爆発によって生じた火球、熱、放射線によって瞬時に消された市民のうち、8,500人はカトリック信者だった。17代目の隠れキリシタンの子孫である永井緑さんは、手にロザリオを持ちながら生きたまま焼かれた。緑さんの骨の一部だけが残され、溶けたビーズや、十字架、鎖と共に瓦礫から発見された。 1945年の終わりまでに、7万4千人が死亡し、7万5千人が負傷した。そのほとんどが民間人であり、戦略的価値が疑わしいこの核攻撃の直接的な結果だった。 長崎の悲劇を繰り返さないために 「長崎は最後の原爆被曝地でなければなりません。」と、1955年に設立された長崎原爆資料館の歩みについて説明してくれた野瀬弘志館長は語った。 この資料館を訪問したマザー・テレサは、「世界の指導者にこの資料館を見てもらいたい。なぜなら、核兵器の破壊的な規模とそれが人々の生活に及ぼす壊滅的な影響を効果的に伝えているからです。」と語った。 私は仏教団体である創価学会の長崎平和会館を訪れた際、2017年に国連で採択された核兵器禁止条約(TPNW)の署名国数の進捗を示す展示を見た。この条約には現在、バチカン市国を含む70カ国が批准している。 核兵器禁止条約は1968年に署名解放された核拡散防止条約よりも強力だが、これまでのところ、日本も米国も支持していない。(一方、創価学会と神社本庁は、9月にイタリアに本部を置くカトリックの信徒団体「聖エジディオ共同体」が主催するパリ会議に参加する予定で会議では核兵器禁止条約が議題となる予定である。) 「国家間の緊張が高まっているときでも、市民外交は重要です。人々の間に信頼のネットワークを拡大するべきです。」と、地元の創価学会リーダーである川崎 隆生 氏は語った。私が彼の職業を尋ねると、彼は「平和活動家です。」と答えた。(原文へ) National Catholic Register/INPS Japan Original...

シエラレオネの新しい児童婚禁止法が称賛される

【フリータウン/ナイロビIPS=ジョイス・チンビ】 シエラレオネの画期的な「児童婚禁止法2024」には、「いかなる者も児童と婚姻契約をしてはならない」と明記しており、児童婚を試みたり同意したりすることはもとより、児童婚を主催、出席、促進することや、それを目的とした児童に対する強制や不当な扱いを禁止している。 この法律は7月初め、シエラレオネのジュリアス・マーダ・ビオ大統領によって署名され、ファティマ・ビオ大統領夫人が主催した式典で披露された。ビオ大統領夫人が率いた「Hands Off Our Girls(私たちの少女らに手を出さないで)」キャンペーンがこの成果に大きく寄与した。 新法の成立により今後18歳未満の少女と結婚した男性は、15年の懲役刑、または約4,000米ドルの罰金、あるいはその両方を科される。 「Girls Not Brides(少女たちは花嫁ではない)」のシニア・リージョナル・エンゲージメントおよびアドボカシーオフィサーであるファトゥ・グエイ・ンディール氏は、IPSの取材に対して、新しい法律の有害な慣行を終わらせる力を強調し、「この新しい法律には、違反者に対する罰則の執行、被害者の保護、影響を受けた少女たちに対する教育や支援サービスへアクセスを確保するための条項も含まれています。」と語った。 「Girls Not Brides」は、児童婚の撲滅と少女たちが潜在能力を発揮できる社会を目指す1,400以上の市民社会組織のグローバルパートナーシップである。ファトゥ氏は、「新法はシエラレオネにおける児童婚や早期強制結婚との闘いに新たな息吹を吹き込みました。これは転機です。私たちは政府に対し、児童婚の犯罪化によって少女たちが保護され、悪影響を受けないようにするために不可欠な、被害を受けた少女たちへの支援サービスや教育へのアクセスを提供し続けることを求めます。」と語った。 この法律は非常に包括的で、児童婚を引き起こす陰謀や児童婚の幇助も禁止している。また児童との同棲、その企て、児童との同棲を引き起こす陰謀や幇助も禁止している。 UNICEFによれば、2020年だけで、18歳未満の少女のうち約80万人が結婚しており、シエラレオネの少女の3分の1を占めている。そのうち半数は15歳になる前に結婚している。15歳までに全児童の約9%、18歳までに約30%が結婚するほど、児童婚は蔓延している。 シエラレオネのNGOである「Women Against...

デジタル封建主義の時代には、批判的なジャーナリストの声が必要

【ウィーン INPS Japan=オーロラ・ワイス】 メディア・リテラシーとは、読書や数学のように習得できるスキルである。それは、今日の複雑で絶えず変化するメディア状況の中で情報を駆使して批判的な質問を投げかけ、操作されることを避け、安全かつ自信を持ってデジタル空間に参加できる能力を意味する。このトピックに関する教育イニシアチブが教育機関でも始まっている。 2024年5月末、「メディア・リテラシーと民主主義」をテーマに欧州安全保障協力機構(OSCE)の人的次元の補完会議*が開催され、域内各地から200人以上が参加した。この会議は、マルタ(OSCE議長国)、同メディアの自由代表部(RFoM)、同民主制度人権事務所(ODIHR)が共催した。マルタのイアン・ボーシュ議長はこのテーマの重要性を強調し、「情報が迅速かつしばしばチェックされないまま垂れ流される時代において、メディア・リテラシーは単に有益なだけでなく、不可欠なものです。今年は重要な選挙が相次ぐため、メディア・リテラシーの重要性は特に高まっています。情報を批判的に評価する能力を持つ有権者こそが、民主主義の強靭性(レジリエンス)を高め、選挙プロセスへの信頼と信用を高めることができるからです」と語った。 技術の進歩は、さまざまな情報源や公共の言説を豊かにする洗練されたツールへのアクセスを一変させた。一方で、ソーシャルメディアと人工知能(AI)は膨大な機会を提供する一方で、民主的な公開討論を脅かし、民主的プロセスへの信頼を損なうリスクも孕んでいる。 「メディア・リテラシーとは、フェイクニュースを認識することだけではありません。市民が見識と批判的思考を持ってデジタル状況を把握し、情報に基づいて民主的に参画できるようになることです」と、OSCEのテレサ・リベイロ(メディアの自由代表)は語った。 民主的な選挙プロセスにおけるメディア・リテラシーの重要性は、今回の会議の焦点であった。選挙に特化してメディア・リテラシーを高める戦略は、民主的なガバナンスの基盤を強化し、市民が情報に基づいて投票行動を決断できるようにするのに役立つ。 「投票箱の前に立って一票を投じるときほど、あらゆる事実を知ることの重要さを実感する瞬間はありません」とODIHRのマッテオ・メカッチ事務局長は強調した。 メディアの独立性を守りたいなら、ジャーナリストに適切な権利を与えて自身を守れるようにしなければならない。 フェイクニュース、偽情報、プロパガンダが氾濫する中、世間は通常、中立的で客観的かつ批判的なジャーナリズムについて議論している。誰もが「赤裸々な真実」を見たいと思っている。しかし、それが何なのか、そしてジャーナリストが国民に本物のニュースを伝えることができる雰囲気や環境をどのように作ればいいのか、公共放送オーストリア放送協会(ORF)のクラウス・ウンターベルガー博士(公共価値部門ディレクター)が説明してくれた。公共価値コンピテンス・センターの任務は、質の高いメディア討論を積極的に推進し、ORFの公共サービスとしての使命を追及するとともに、メディア・リテラシーや社会・民主主義の発展に資するメディアの役割に貢献することである。 ウンターベルガー博士の最も重要な発言の一つは、「メディアの独立性を守りたいなら、ジャーナリストに適切な権利を与えて自身を守れるようにすることです。」というものであった。 博士によれば、メディア組織が中立かつ客観的なジャーナリズムを維持するにはいくつかの重要な柱があるという。第一に、外部からの運営の監督と情報公開、効果的な規制、義務的な品質保証を通じた検証可能性。第二に、政府や政党、そして何よりもオーナーの利益からの独立性を可能にする持続可能な資金調達。 「第三に、必要に応じて自らの上司からも独立性を守ることができるジャーナリストの権利と義務。最後に重要なのは、『中庭報道』や誤った均衡主義、キャリア主義を超えた批判的なジャーナリズムを追求する勇気、大胆さ、無条件の意志です。」とウンターベルガー博士は語った。 特に技術の進歩がメディア空間の信頼性について大きな問題を引き起こしている。ウンターベルガー博士は、「誤報やフェイクニュース、プロパガンダは、綿密な検証、ダブルチェック/トリプルチェック、ファクトチェック、そしておそらくは適切なAI技術を活用することで見分けることが可能ですが、その際、何よりも疑い、検証し、疑問を呈する批判的ジャーナリズムの原則を通じて行うべきです」と語った。 現在、言論の自由を政治的影響や民間・公共メディアへの干渉からどう守るかについて多くの議論がなされている。私たちはウンターベルガー博士に、「今日のジャーナリズムは、特に新技術の出現によって、過小評価され、低賃金であり、これが質の低下につながっている」という見方について、見解を尋ねた。 「その通りです。欧州全域で、右翼ナショナリストやポピュリストの政府や政党が、特に公共メディアの独立性を危険に晒しています。最新の例では、スロバキアで議会が公共放送局を解散しました。同時に、少数の企業が所有する世界的に有効な技術によって『デジタル封建主義』が出現しており、そのAIは公共の立場からはまったく検証できないものです。この2つの動きは、質の高いジャーナリズムだけでなく、民主主義社会の公共コミュニケーション空間も脅かしています。デジタル市場が少数の寡頭的企業によって支配されており、質の高いジャーナリズムのためのビジネスモデルがまだ存在しないため、その存続が危ぶまれています。また、公共部門で実施されたコスト削減プログラムも、ジャーナリズムの品質に対する重大な脅威をもたらしています」とウンターベルガー博士は指摘した。 女性ジャーナリストへの性別特有の攻撃は増加傾向にある 2023年11月から24年6月までの期間に関する報告の中で、リベイロ氏(メディアの自由代表)は、OSCEの参加国において、「安全保障」対「報道の自由」という誤った二分法が蔓延しつつあり、それに伴う諸問題(①独立したジャーナリズムに対する政治的敵意の急増、②ジャーナリストに対する暴力やオンライン攻撃の増加、③ジャーナリストの監視に利用される技術の利用がテクノロジーの利用が急速に増加している問題等)を取り上げた。 「メディアの持続可能性やジャーナリストに対するオンライン暴力といった懸念は、偽情報や技術の進歩、巨大IT企業による利益追求型ビジネスモデルによって悪化しています。今日の技術は前例のない形で権力を集中させており、ソーシャルメディアのような大規模な言語モデルは、民主的な自由と開放性を悪用するのを容易にしています」とリベイロ代表はデジタル情報環境の混乱を強調した。 パンデミックの最中、多くのジャーナリストが慎重に指示されたプロ・コロナ報道で上司からの圧力に苦しんだ後、現在では、ウクライナ戦争における資金の流れやマネーロンダリング、兵士の行動、武器の密売などを調査することに敢えて挑んだジャーナリストが一部解雇された。こうした欧州のジャーナリストの中には、職を失っただけでなく、国を追放された者もおり、このことは、あらゆるレベルで組織化され、周到に計画された攻撃を受けたことを示している。私たちは、欧州連合(EU)におけるメディアの自由と民主主義を検証するOSCEのサイドイベントで、彼らの衝撃的な体験を聞く機会を得た。他方、ロシアは孤立し、完全なメッセージ統制と偽情報体制を支配している。 特に懸念されるのは、女性ジャーナリストを標的としたオンライン暴力や偽情報の急増であり、これは多様性と民主主義に深刻な影響を及ぼしている。OSCEの調査によると、女性ジャーナリストの約3分の2が仕事中にオンラインで性別に基づく暴力を経験しており、オンラインとオフラインの両方で女性ジャーナリストの安全に対処するための協力が急務である。オンライン上の脅威と性別関連の偽情報が女性ジャーナリストに対するオフラインでの攻撃につながる明確な因果関係を示すOSCEの研究も出ている。 特異な現象として、第三者が攻撃を命じ、刑事訴追を含む免責特権を持つ大使館職員を通じて女性ジャーナリストを標的とする傾向がある。オーストリア外務省と内務省は、こうした自国内で活動する外国諜報員に最高位の外交特権を付与している個人を特別監督する必要がある。こうした外交官の活動は、憲法に違反するだけでなく、外交関係に関するウィーン条約にも違反している。 外的要因に加え、ジャーナリストはメディア内部においても、公共の利益になる情報を提供することとは全く異なる目的を持つ潜入者によって脅かされている。私自身、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)のプロデューサーという立場を悪用し、ジャーナリストに偽情報を与えて信用を失墜させようとする人物に攻撃された経験がある。また、自らをバルカン地域のボスニア人政治専門家と称し、ソーシャルメディアを通じてジャーナリストの信用失墜を意図して妨害活動をしているジャミン・ムジャノヴィッチ氏による攻撃についても言及する価値がある。 オンラインおよびオフラインでの性別に基づく暴力や性別に関連する虚偽情報は、ジャーナリストの福祉と職務遂行能力を危険にさらす。これらの行為は、女性ジャーナリストを自己検閲に走らせたり、キャリアを断念させたりする原因となり、標的とされた人々だけでなく、メディアの自由と多様性全体にも悪影響を及ぼす。このことは、2023年12月に北マケドニアの首都スコピエで開催された第30回OSCE閣僚理事会で採択された「女性ジャーナリストの安全に関する共同声明」でも合意されている。 批判的な声を封殺する慣行は続いており、「好ましくない」とされ非合法化される報道機関が増え、「外国の諜報員」に指定されるジャーナリストが後を絶たない。独立したジャーナリストが単に仕事をしているだけで攻撃され、投獄され、国際情報源がブロックされ、亡命中のジャーナリストが嫌がらせを受けることは、独立したニュースと情報を配信する勇敢な試みに対する個人的なリスクが伴う情報環境の暗い現状を示している。 最近、メディア・リテラシーについて語られるようになったのは良いことだが、ジャーナリストの安全について語るのをやめてはならない。私たちは、職務遂行中に殺害されたメディア関係者の数が過去最多であることを明らかにしているのはそのためだ。 ジャーナリストの生命と自由に対する攻撃は2023年もほぼ記録的な水準で推移し、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は世界中で99人のジャーナリストの死亡を記録し、2015年以来の最高総数となった。CPJはまた、12月1日に発表した年次監獄センサスの中で、320人のジャーナリストが職務のために投獄されたことを記録しており、これは史上最も多かった昨年の360人に迫る勢いである。 イスラエル・ガザ戦争は、2023年10月7日のハマスによるイスラエル襲撃を受けてイスラエルがハマスに宣戦布告して以来、ガザのジャーナリストにかつてない犠牲者を出している。2024年7月1日現在、CPJの予備調査によると、戦争が始まって以来、38,000人以上の死者の中に少なくとも108人のジャーナリストとメディア関係者が含まれている。32人のジャーナリストが負傷、2人のジャーナリストが行方不明、51人が逮捕されたと報告されている。 ロシア・ウクライナ戦争では18人、2014~15年のドンバス戦争では7人、22年のロシアによるウクライナ全面侵攻では10人のジャーナリストやメディア関係者が殺害された。 リベイロ代表は2024年6月13日の報告書で、ギリシャのジャーナリスト、ジョルゴス・カライバズ氏、スロバキアのヤーン・クシアク氏、モンテネグロで20年前に殺害されたドゥシュコ・ヨバノビッチ氏の暗殺について、不処罰の悪循環を断ち切り、完全な説明責任を確保する努力を再開する必要性を強調した。 「セルビアでのジャーナリスト、スラフコ・クルヴィヤの殺害事件での不幸な無罪判決が引き起こした後退についても深く懸念しています。法治社会の真の試金石は、特に自由な報道の価値を守るために危険を冒す人々にどのように正義をもたらすかです。マルタでのジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリジア、オランダでのピーター・R・デ・フリースの暗殺事件の司法プロセスも注視し続けます。昨日、オランダの裁判所が調査報道記者デ・フリースの殺害について複数の容疑者を有罪としたことを聞いて安心しました」とリベイロ代表は、2024年6月の報告書で強調した。(原文へ) *OSCE(欧州安全保障協力機構)の人的次元の補完会議は、OSCEの枠組みの中で行われる重要な会議で、人権、民主主義、法の支配といった「人的次元」に関する問題を議論する場である。これらの会議は、OSCE参加国、OSCE機関、国際組織、市民社会、メディア、およびその他の関係者が一堂に会し、これらのテーマに関する進展や課題、政策の実施状況を検討し、改善のための具体的な行動を話し合うためのフォーラムを提供している。 INPS Japan This article is brought to you...

「変革は今始まる」: 英国選挙でスターマー労働党が勝利 ウクライナ支援継続を誓う

【ロンドンINPS Japan/London Post】 英国の総選挙で労働党が地滑り的勝利を収め、14年にわたる保守党支配に終止符を打った。この歴史的勝利は英国政治の転換を告げるもので、サー・キア・スターマー氏が新首相に就任することが決まった。しかし、国内経済問題や生活費危機への新たなアプローチを公約に掲げたにもかかわらず、スターマー政権は、ロシアとの紛争が続くウクライナに対する前政権の強力な軍事・外交支援路線を維持する意向を示している。 労働党は欧州連合(EU)に対してより融和的な姿勢をほのめかす一方、北大西洋条約機構(NATO)やその他の同盟国に対しては、英国がロシアを欧州にとって重大な脅威と見なし続けることを確約している。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの継続を歓迎し、退任する保守党に感謝の意を表し、次期労働党政権の「選挙での圧勝」を祝福した。 「ウクライナと英国は、これまでも、そしてこれからも、強い絆で結ばれた信頼できる同盟国であり続けるだろう。我々は、生命、自由、ルールに基づく国際秩序という共通の価値観を守り、前進させ続けるだろう。」 61歳の元弁護士で、4年前に労働党の党首に就任したスターマー氏は、バッキンガム宮殿を訪れてチャールズ国王に謁見し、正式に首相としての任期を開始する予定だ。 責任への委任 夜明けに支持者を前に演説したスターマー党首は、このような職務権限に伴う責任を強調した。退任する保守党のリシ・スナク首相は、NATOとウクライナの強固な支持者であり、戦車やストームシャドウ・ミサイルの供与、ウクライナ人パイロットへのF-16訓練など、在任中の「揺るぎない支援」と「共通の成果」に感謝の意を表した。 新外務大臣に就任するデイヴィッド・ラミー氏は、労働党が政権に復帰すれば「進歩的リアリズム」の外交政策がもたらされるだろうと語った。労働党は欧州諸国とのつながりを取り戻し、気候変動に対処し、グローバルサウスとの関わりを深めることを目指している。 国防に関しては、スターマー氏と労働党は、大西洋横断安全保障におけるNATOの役割へのコミットメントを「揺るぎないもの」としている。また、軍事的、財政的、外交的、政治的支援を含むウクライナへの「揺るぎない」支援と、ウクライナのNATO加盟への道を約束した。 外交政策におけるコンセンサス チャタムハウスのU.K.イン・ザ・ワールド・プログラムのディレクター、オリビア・オサリバン氏は、外交政策、特にウクライナに関する労働党と保守党の意外なコンセンサスについて、「労働党の外交政策の立場は、保守党とそれほど異なるものではありません。」と指摘し、ウクライナを支援するという共通のコミットメントを強調した。 エストニアのカラ・カッラス首相は、欧州連合(EU)の外交トップに就任する見込みだが、スターマー氏の勝利を祝福し、共通の安全保障に対する英国のコミットメントを称賛した。「私たちの素晴らしい協力関係は、今後もますます発展していくことでしょう。」と付け加えた。 スターマー新首相は、ゼレンスキー大統領と早い段階で会談する意向を示しており、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「ウクライナにおける侵略者」と評している。彼は、ウクライナ支援における統一戦線の重要性を強調した。この姿勢は、7月9日〜11日にワシントンで開催されるNATO75周年記念首脳会議と、7月18日にブレナム宮殿で開催される欧州政治共同体首脳会議で試されることになる。 国内の課題 英国の有権者は、新型コロナウィルス感染症のパンデミックとロシアのウクライナ侵攻に続く経済的苦境と停滞からの救済を求めて労働党を支持した。労働党が勝利したことで、下院の過半数獲得に必要な326議席を超え、保守党がさらに多くの議席を失う中、200議席以上を獲得した。 スナク氏は譲位演説で労働党の勝利を認め、スターマー氏に祝辞を述べた。右派ポピュリストの改革党党首ナイジェル・ファラージ氏も初めて議席を獲得し、最近の欧州議会選挙における右派の躍進を反映している。 スターマー新政権は、国内の経済問題に対処する一方で、英国の強い国際姿勢(特にウクライナ支援)を維持するという二重の課題に直面している。今後数週間の新政権の行動は、そのリーダーシップを確固たるものにし、国内と世界の両方の課題に対処する上で極めて重要である。(原文へ) INPS Japan/London Post 関連記事: