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フィリピンの先住民族指導者、古来の知恵を世界の舞台へ
【サマルカンド(ウズベキスタン)IPS=キジト・マコエ】
毎年、フィリピンの深い森の上空に黒雲が立ちこめる季節になると、アプライ・カンカナエイ族の56歳、ミニ・バエイエンスは、注意深く空を見守る。
ある日の午後、薬草を採りに森へ入ろうとしていたとき、堂々たるフィリピンワシが樹冠の中から姿を現し、上空を舞った。外部の人々にとっては、それは希少な鳥が飛んでいる光景にすぎなかった。しかし、バエイエンスにとっては、それは「使者」だった。|ENGLISH|
祖父は彼に、自然を注意深く観察することを教えていた。ワシが普段とは異なる時刻に現れることや、飛んでいく方向は、しばしば天候の変化や危険の兆しを示す。
その日、バエイエンスは森へ向かうのをやめた。数時間後、山々は激しい雨に打たれ、洪水と地滑りが相次いで発生し、近隣の集落を襲った。
フィリピンの先住民族は何世代にもわたり、環境破壊によってますます脅かされる土地で生き抜くため、伝統的知識に依拠してきた。
「ワシが現れる時間帯、曜日、月には特定の意味がある。そして、その地域の先住民族コミュニティだけが、フィリピンワシという野生生物が伝えるメッセージを読み解くことができるのです。」フィリピンの先住民族指導者ジョヴァンニ・レイエスは、バエイエンスの体験に基づくこの逸話をこう説明した。
レイエスはIPSの取材に対し、こうした警告は野生生物と人々の間に相互扶助の関係を生み出すと語る。
「ワシが人々に警告を与えると、人々はその見返りとして生息地を守るようになります。」とレイエスは言う。「その生息地を守ることが、結果として領域全体の保全につながるのです。」
ワシの出現が危険を告げることもある、と彼は説明する。
「ワシが現れたことで、大きな嵐が来ると人々は判断します。だから、危険を避けるため、誰も外へ出てはならないと言うのです。」
今週、ウズベキスタンのサマルカンドでは、第8回地球環境ファシリティ(GEF)総会が開かれている。各国閣僚、環境専門家、市民社会の代表らが集まり、地球規模の環境危機に対する資金調達の解決策を探る中、先住民族指導者たちは、バエイエンスのような物語が、しばしば見過ごされてきた真実を示していると訴える。すなわち、先住民族の知識は単なる文化遺産ではなく、生き残るための実践的な手段でもあるということだ。
国際的な環境資金の歴史において初めて、先住民族は保全事業の単なる受益者としてではなく、世界の気候・生物多様性目標の達成に不可欠な知識体系を持つパートナー、助言者、権利主体として、ますます認識されるようになっている。
GEF第9次増資サイクルは、大きな転換点を示している。先住民族は、世界に残された自然生態系を守り、その貢献を地球規模の保全活動に組み込むうえで、重要なパートナーとして正式に認められ、関与していく見通しである。
この転換の中心にいるのが、ジョヴァンニ・レイエスである。彼は、世界最大級の環境資金メカニズムの一つであるGEFに対する先住民族諮問グループ(IPAG)の議長を務めている。
フィリピン北部の山岳地帯コルディリェラ地方のサガダに生まれたレイエスは、カンカナエイ先住民族に属する。彼の権利擁護活動は、先住民族の領域で起きてきた「開発による侵害」を目の当たりにした経験から生まれた。
「先住民族コミュニティのために、そしてその代表として立場を築かなければならないと考えた大きな理由の一つは、私たちの地域で開発による侵害が起きてきたからです。大規模伐採や、コミュニティを水没させかねなかったダム建設も含まれます」と彼は語る。
彼の活動は、山奥の村々から地球規模の環境交渉の場へと広がっていった。そこで彼は、先住民族コミュニティは開発の障害ではなく、生態系の守り手として認識されるべきだと訴えている。
転機となったのは2011年である。レイエスは、フィリピン全土の先住民族の領域を地図化する取り組みに参加した。
先住民族コミュニティにとって、地図化とは単に境界線を引くことではない。何世紀にもわたって口承で受け継がれてきた知識を、政府や制度が認める証拠へと翻訳することを意味する。
「私たちは、地形、景観、境界に関する先住民族の知識を翻訳し、それを地図という物理的な形にしなければなりません。」とレイエスは説明する。
その地図は、法的・政治的闘いにおいて強力な道具となった。
「地図化は、私たちが自分たちが何者であるかを口頭で説明できるだけでなく、先住民族自身が作成した地図という形で、その領域を示す証拠を持っていることを政府に示すものです。」
そこから生まれたのは、古来の知識と現代科学との稀有な協働だった。
「そこには、伝統的知識と科学の調和があります。」とレイエスは言う。
今日、この組み合わせは、GPSによる地図作成などの技術を用いて、先住民族コミュニティが森林を監視し、炭素貯蔵量を測定し、生態系の健全性を評価するうえで役立っている。
「伝統的知識と実践を科学と調和させれば、森林の健康状態を判断するための一覧表を作成することができます。」と彼は語る。
しかし、そうした領域を守ることは依然として容易ではない。
レイエスによれば、先住民族が土地と結ぶ深い精神的なつながりは、しばしば開発事業との対立を生む。
「先住民族には、それぞれ聖地や神聖な儀礼の場があります。カトリック教徒や教会にとって大聖堂があるのと同じことです。」
川や小川、森林は、単なる天然資源ではない。それらは、生きた文化的景観の一部である。
「こうした宗教的・精神的価値が、どのような手段を用いてでもこれらの地域を守ろうとする強い意思を形づくってきたのです。」
しかし、抵抗にはしばしば代償が伴う。
「彼らの地域で開発が進められ、文化や精神的価値を理由にそれを拒むと、彼らは犯罪者扱いされ、テロリストと見なされるのです。」
レイエスは、フィリピンの先住民族が直面する闘いは、世界各地の先住民族コミュニティが直面する課題と重なっていると指摘する。
世界的に、土地収奪は先住民族、牧畜民、小規模農民にとって深刻化する課題となっている。とりわけ途上国では、土地保有制度の脆弱さ、所有権に関する文書の不足、統治の失敗により、コミュニティは土地を奪われやすい状況に置かれている。
アフリカからアジア、中南米に至るまで、農地、鉱物資源、保全地域、大規模投資事業への需要の高まりが土地をめぐる競争を激化させ、地域コミュニティを政府や民間投資家と対立させるケースが増えている。
何世代にもわたって土地を占有し管理してきたコミュニティであっても、正式な権利証書を持たない場合が多い。そのため、有力な利害関係者が、疑わしい取引、汚職、法の抜け穴を通じて広大な土地を取得しやすくなっている。
東アフリカのタンザニアには、農業やその他の商業事業のために土地を求める外国投資家から大きな関心が寄せられてきた。しかし、土地保有の安全性が欠如しているため、多くの農村コミュニティが土地喪失の危険にさらされている。分析者によれば、一部の投資家は正式な取得手続きを迂回し、村の当局と直接交渉してきた。このことが紛争を助長し、信頼を損ない、土地収奪との非難を引き起こしている。
伝統的な土地保護の仕組みが弱体化する中、影響を受けるコミュニティは、権利を守り、祖先伝来の土地や共同体の土地に対する法的承認を得るため、裁判、抗議行動、参加型の土地地図化にますます頼るようになっている。
ブラジルでは、先住民族グループがアマゾンで違法伐採、採掘、森林破壊に直面し続ける一方、気候変動と関連する干ばつや火災の激化にも耐えている。
かつてスワジランドと呼ばれたエスワティニでは、農村コミュニティが、繰り返される干ばつ、水不足、農業生産性の低下に苦しむようになっている。
文化的背景には大きな違いがあるにもかかわらず、先住民族は共通の現実を抱えている。彼らは世界で最も生物多様性に富む景観の中に暮らす一方で、環境劣化と気候変動による混乱の最も重い負担を背負っているのである。
レイエスがいまGEF評議会で提起しているのは、まさにこうした懸念である。
「ここでの先住民族の役割は、先住民族コミュニティに影響を及ぼす事項について、評議会に助言することです。」と彼は言う。
重要な課題の一つは、GEFを通じて資金提供される事業が、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の原則を尊重するよう確保することである。
「私は、自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意を含む一定の権利について評議会に助言しています。どのGEF機関が実施する事業であっても、先住民族の領域に入る事業は、自由意思による事前の十分な情報に基づく同意を経なければなりません。」
GEF内で先住民族に対する認識が高まっていることは、重要な節目である。歴史的に、主要な環境資金機関は主に政府や国際機関によって設計され、先住民族が意思決定に参加する余地は限られていた。
今日では、先住民族代表が正式な助言の役割を担っている。これは、地球規模の環境目標は先住民族による管理なくして達成できないという、より広範な認識を反映している。
実際、レイエスは、先住民族はすでに世界で最も野心的な生物多様性目標の一つを上回っていると主張する。
昆明・モントリオール生物多様性枠組は、2030年までに地球上の陸域と水域の30%を保護することを求めている。
「しかし、それは先住民族によってすでに達成されています」とレイエスは言う。「現在、先住民族が管理している地域は、およそ32%から40%に達しています。」
言い換えれば、多くの先住民族コミュニティは、各国政府がようやく達成を目指し始めた規模で、生態系を守り続けてきたのである。
この成果は、数十億ドル規模のプログラムによって生まれたものではなく、文化、信仰体系、伝統的実践に根ざした何世紀にも及ぶ管理の積み重ねから生まれたものだとレイエスは強調する。
「先住民族の領域は、保護されてきた流域や山々によって、炭素を吸収する能力という点で最も大きな貢献をしています。」とレイエスは言う。
サマルカンドで代表団が資金配分の優先順位、生物多様性目標、気候への野心について議論する中、レイエスは簡潔で力強いメッセージを発している。
「気候であれ、生物多様性であれ、条約の締約国に申し上げたい。先住民族の領域は、地球の心臓を形づくっているのです。」
彼は一呼吸置き、その比喩をさらに広げた。
「人の心臓が破壊され、傷つけられれば、身体は崩壊します。それと同じように、先住民族の領域が傷つけられれば、生態系は崩壊し、生物多様性も崩壊するのです。」
フィリピンの森では、コミュニティが今もワシの導きを仰いでいる。その地では、この真実は長い間理解されてきた。
先住民族指導者たちがいま訴えている課題は、世界の残りの人々がその声に耳を傾けるようにすることである。
第8回地球環境ファシリティ総会は、2026年6月6日までウズベキスタンのサマルカンドで開催されている。本特集記事はGEFの支援を受けて掲載された。編集内容についてはIPSが単独で責任を負うものであり、必ずしもGEFの見解を反映するものではない。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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NPT再検討会議、合意に至らず閉幕――核の「取引」は一段と脆弱に
【国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】
核兵器不拡散条約(NPT)の第11回再検討会議は、最終文書に関する合意に至らないまま国連本部で閉幕した。4週間にわたる外交交渉は、世界の核秩序を支える主要条約がなお存続している一方で、かつてないほど大きな圧力にさらされている現実を改めて浮き彫りにした。|英語版|
4月27日から5月22日までニューヨークで開かれた同会議は、NPTの履行状況を検証する場であった。NPTは、核兵器を持たない国々が核兵器を開発しないことを約束し、核兵器国が核軍縮に取り組み、すべての国が保障措置の下で原子力の平和利用にアクセスできるという、基本的な取引の上に成り立っている。理論上、この条約は現代の国際安全保障において、今なお最も重要な合意の一つである。しかし2026年の再検討会議は、相互不信が深まり、戦争が続き、一部の国々が核兵器を廃絶すべき危険ではなく安全保障上の「保険」とみなす中で、この取引を維持することがいかに困難になっているかを示した。
結果は明白だった。合意には至らなかった。ベトナムのドー・フン・ビエット国連大使が議長を務めた会議では、内容を抑えた草案でさえ各国の一致を得られなかった。同大使はAP通信に対し、合意を阻んだ特定の一国があったわけではないと述べたが、主要な争点の一つとなったのは、イランが「核兵器の保有を目指し、開発し、取得することは決してできない」とする文言だった。この一文は単なる技術的な表現の問題にとどまらず、会議全体を貫く政治的亀裂を象徴する焦点となった。
イランは、自国だけが名指しされることに強く反発した。一方、米国などは、イランの核関連義務、透明性、ウラン濃縮、国際原子力機関(IAEA)との協力をめぐり、より強い文言を盛り込むよう求めた。これに対しイランは、自国の核施設への攻撃を指摘し、米国とイスラエルが国際法に違反し、自ら支持すると主張する合意そのものを損なっていると非難した。予想された展開だったとはいえ、会議にとって打撃は大きかった。すべての当事者に説明責任を求めることと、その説明責任が選択的に適用されているとの不信との間にある溝を、会議は埋めることができなかった。
問題はイランだけではなかった。イランは火元のすべてではなく、火花にすぎなかった。より根本的な問題は、NPTが現在、あまりにも多くの未解決の危機を同時に抱えていることにある。ウクライナ戦争と、ザポリージャ原子力発電所をはじめとする核関連施設周辺の危険は、2022年の再検討会議を決裂させる一因となった。
一方、中東における核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の設置に関する1995年の合意は、いまだ履行されておらず、重大な争点であり続けている。AUKUSは、海軍用原子力推進技術と保障措置をめぐる懸念をなお引き起こしている。北朝鮮は核兵器を保有したまま、依然として条約の枠外にある。中国の核戦力拡大、米ロ軍備管理体制の崩壊、そしてすべての核武装国による核戦力の近代化は、軍縮が意味ある方向へ進んでいるとの信頼を損なってきた。
今回の不調が重い意味を持つのはそのためである。NPT再検討会議が合意文書を採択できなかったのは、2015年、2022年に続き、これで3回連続となった。最終的なコンセンサス文書が採択されたのは2010年が最後である。会議の失敗は、ただちに条約の崩壊を意味するものではない。しかし、再検討プロセスそのものの信頼性が損なわれつつあることを示している。外交官たちは、NPTはいまなお世界の核秩序の土台であると言うことができるし、実際その通りでもある。だが、建物が崩れる前に、その土台にひびが入ることはある。
今回の会議から浮かび上がった最大の示唆は、非核兵器国の不満が高まっていることである。多くの国々は、明らかな二重基準が存在すると受け止めている。すなわち、非核兵器国はルールを守り、査察を受け入れ、核兵器を持たないことを求められる一方で、核兵器国は核戦力を近代化し、抑止戦略を拡大し、軍縮を先送りしているという認識である。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のような団体は、現実的な計画が欠如していることを批判し、核兵器国がより踏み込んだ約束に抵抗していると指摘している。こうした批判は、条約が今や核の特権を守る方向に大きく傾いていると考える非核兵器国の政府、とりわけそのような問題意識を持つ国々の間で、強い共感を呼ぶ可能性が高い。
アラブ諸国グループにとっても、今回の結果は中東問題を未解決のまま残すものとなった。1995年の中東決議は、周辺的な問題ではなかった。それは、NPTの無期限延長を可能にした政治的パッケージの一部だったのである。それから約30年が過ぎても、この地域にはなお、非核兵器地帯も、大量破壊兵器のない地帯も、イスラエルを含む合意された地域安全保障の枠組みも存在しない。中東における核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の設置をめぐる、国連決議に基づく年次会議プロセスは続いている。しかし2026年のNPT再検討会議は、アラブ諸国が期待していたような全会一致の支持を示すことはできなかった。この状況は、NPTがこの地域に対し、約束された政治的成果をもたらすことなく、忍耐だけを求めているとの認識をさらに強めるだろう。
今回の会議はまた、核施設への攻撃という問題にも改めて注目を向けさせた。これはもはや単なる技術的な安全上の問題ではない。今や、根本的な不拡散上の問題である。ウクライナやイランの核施設周辺での軍事活動は、NPT体制が容易には対処できない懸念を引き起こしている。核施設が戦闘における通常の攻撃対象となるなら、原子力の平和利用を保障するという約束を守ることは、はるかに困難になる。
一方、AUKUSが今回の会議を決裂させたわけではない。しかし、それはインド太平洋の将来にとって、引き続き重要な争点である。非核兵器国への原子力潜水艦技術の移転は、保障措置、先例、信頼をめぐる複雑な問題を提起している。オーストラリアは、NPTを完全に順守し続けると述べている。だが中国などは、そこに懸念すべき抜け穴を見ている。この問題は消えない。次の再検討サイクルでは、さらに重要性を増す可能性がある。
第三の教訓は厳しいが重要である。NPTは、ほぼすべての国がその枠内にとどまっているため、なお意義を持っている。しかし、その根底にある政治的取引は、ますます大きな圧力にさらされている。条約が存続しているのは、代替案がより悪いからである。だが、存続していることと健全であることは同じではない。
2026年再検討会議は、NPTを終わらせたわけではない。むしろ、外交上の言葉と戦略的現実との間に横たわる深い溝を浮き彫りにしたのである。各国は演説ではなお、この基本的な取引を称賛している。しかし、多くの国の行動は、核兵器の価値が以前にも増して高まっているかのように見える。そこに、この危機の核心的な矛盾がある。
結論を最も簡潔に言えば、NPTはなお存続しているが、それを支える信頼は失われつつある、ということだ。世界はニューヨークを後にするにあたり、より強固な核秩序を手にしたわけではない。残されたのは、もう一つの警告である。すなわち、軍縮、不拡散、地域安全保障が、選択的に取り上げられる論点ではなく、相互に結びついた義務として扱われなければ、次回の再検討会議はさらに厳しい問いに直面することになるだろう。それは、各国が文書に合意できるかどうかではない。そもそも各国が、NPTの根底にある取引をなお信じているのか、という問いである。
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札束外交、見返り、豪華クルーズ――かつて国連選挙を汚した舞台裏
【国連IPS=タリフ・ディーン】
2026年は、国連にとって節目の多い年になりそうだ。9月中旬に第81回国連総会を正式に主宰する新たな国連総会議長(PGA)が選出されるほか、現職のアントニオ・グテーレス事務総長(SG)が10年に及ぶ任期を終えて2027年1月に退任するのに伴い、新たな事務総長の選出と任命も行われる。|英語版|
国連加盟国が安全保障理事会や各種国連機関の理事国入りを目指して選挙戦を繰り広げたり、票の獲得を図ったりしていた1960年代から70年代にかけて、投票はしばしば「札束外交」によって大きく汚された。世界の貧しい国々への援助拡大を約束する一方で、その多くには厳しい条件が付けられていたのである。
1950年代から60年代には、特に委員会室では挙手による投票が行われていた。しかしその後は、総会議場の高い位置に設置された、より高度な電子掲示板によって票数が集計されるようになった。安全保障理事会や国際司法裁判所の選挙では、秘密投票が行われた。
はるか昔、激しい選挙戦となったある投票では、石油に潤う中東のある国が、票の見返りとして、国連外交官らに高級なスイス製腕時計や、当時世界最大級の石油会社だった旧アラビアン・アメリカン石油会社の株式を配っているとの噂が流れた。
そして委員会室で投票の時間になると、右利きの代表も左利きの代表も手を挙げたが、石油に恵まれた候補への賛成票として最も多く掲げられた手には、スイス製腕時計が光っていたという。
逸話として語られるこの話は、国連を含む政府間機関の投票にかつてはびこっていた腐敗を象徴している。おそらくそれは、世界各国の多くの国政選挙と大差なかったのかもしれない。
重要な選挙を目前に控え、ある西欧の国は票の見返りに地中海の豪華クルーズを無料で提供した。また別の国は、総会議場で堂々と、高価なスイス製チョコレートのギフトボックスを配った。
モルディブの元国連大使で、後に同国外相を務めたファトゥラ・ジャミール氏は、国連によって小島嶼開発途上国(SID)に分類される資源の乏しい島国が、インフラ事業の資金支援を豊かな国々に求めていた当時のことを、IPSの取材に応じて語った。
少なくとも伝統的な援助国であるアジアの豊かな国の一つが、真っ先に、しかも寛大に応じたという。その事業は全額無償で支援されることになった。文字通り、ただで、無償で、何の負担もなく―ただし条件が一つあった。
「国連で投票が行われ、それが貴国の国益に関わらない場合には、貴国の票をいただきたい。」
その国の外務省は、そう伝えてきたという。
おそらくそれは、半永久的な約束を意味していた。しかも、その「期限」は、海面上昇に脅かされ、地球上から消滅しかねない島国そのものが存続する限り、ということだった。この申し出は、巧妙な政治的見返りを伴うものだった。表向きには、何の条件も付いていないように見える開発援助である。
国連で最高の政策決定機関である総会の議長が、同数票の末にくじ引きで選ばれた例も少なくとも一度ある。
アジア・グループが単一候補の擁立に失敗したため、政治的に記憶されるこの争いは、1981年の第36回国連総会を前に行われた。議長職を争ったのは、イラクのイスマット・キッターニ、シンガポールのトミー・コー、バングラデシュのカワジャ・モハメド・カイザーの3人である。この選挙は、キッターニ、コー、カイザーの頭文字にちなみ、「3人のKの戦い」と呼ばれた。
第1回投票では、キッターニが64票、カイザーが46票、コーが40票を獲得した。しかしキッターニは、投票した加盟国総数に基づく必要多数には届かなかった。第2回投票では、キッターニとカイザーがそれぞれ73票を獲得し、同数となった。当時、出席し投票した加盟国は146カ国だった。
この同数を解消するため、退任する総会議長は、議長選出手続に関する第21条に基づき、くじを引いた。この手続は『国連総会実行集』にも記録されている。
そして、まったくの偶然に左右された前例のない総会議長選挙で、くじ運はキッターニに味方した。ただし当時出回っていた冗談によれば、勝者はコイン投げで決まったという噂もあった。もっとも、その投げられたコインは、どうやら表が二つで裏がなかったらしい。
しかし近年では、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ、そして西欧その他グループ(WEOG)を含む地域グループの間で、事実上の「停戦」が成立している。各グループは地理的ローテーションに従って順番に候補を立て、対立候補なしで選出されるようになった。
とはいえ、国連が担う広範で重大な使命の重みは、時折、イースト川沿いの「ガラスの館」を笑いに包む軽妙な瞬間によって和らげられてきた。国連は逸話の宝庫である。その中には実話もあれば作り話めいたものもあり、国連総会(UNGA)が主役を務め、安全保障理事会(UNSC)が政治的な脇役を演じる。
国連大使や各国代表が、投票の時間に広大な総会議場に集まるとき、選択肢は三つある。賛成、反対、棄権である。
しかし、最も興味深いのは第4の選択肢である。突然、トイレに駆け込みたくなることだ。席を空け、結果として「欠席」とみなされようとする慌ただしい動きは、問題が政治的に敏感である場合に起こる。
代表たちが自らの良心に従って投票できないとき、主に西側の援助国の怒りを買いたくないとき、あるいは本国から具体的な指示を受けていないまま不意の投票に直面したとき、彼らは席を離れ、トイレへ向かうのである。
マンハッタンのパーク・アベニューに隣接するタウンハウスで開かれた記者向け昼食会で、鋭いユーモア感覚を持つイタリアのフランチェスコ・パオロ・フルチ大使は、この第4の選択肢を、国連投票における「トイレ要因」と表現した。
この邸宅について、同大使は「ここはかつてグッチの所有だったが、今はフルチのものだ」と冗談を飛ばした。
さらに同大使は、この問題を解決する唯一の方法は、総会議場の後方に仮設トイレを設置することだと冗談めかして提案した。そうすれば代表たちは、便座に座って考え込みながらでも投票できるというわけである。だが当然ながら、この案に賛同する者はいなかった。
多くの場合、77カ国グループ、ラテンアメリカ・カリブ諸国、アフリカ連合(AU)、西欧その他グループ(WEOG)など、さまざまな地域グループや連合体は、投票に先立って非公開の場で方針を決め、合意に基づいて投票した。
1970年代から80年代にかけて、116カ国が加盟する非同盟運動(NAM)は、国連で最大かつ最も強力な政治連合の一つだった。NAMは1961年にベオグラードで創設され、ユーゴスラビア、インド、エジプト、ガーナ、インドネシア、ザンビア、キューバ、スリランカなどの国々が主導した。
原則として、116カ国は国連総会決議において足並みをそろえて投票し、隊列を乱すことはめったになかった。あるスリランカ大使は、コロンボの外務省から送られてきた、新任代表向けのある指示を振り返った。その文面はこうだった。
「予定外の突然の投票に直面し、外務省からの指示がない場合は、右を見てユーゴスラビアがどう投票しているかを確認し、左を見てインドがどう投票しているかを確認せよ。もし両国の大使が席を立って走り出したのが見えたら、そのまま彼らの後についてトイレへ向かえ。」
本稿には、IPS通信のシニアエディターであるタリフ・ディーン氏の著書『No Comment – and Don’t Quote Me on That』からの抜粋が含まれている。同氏は、かつて国連総会会期に参加したスリランカ代表団の一員であり、ニューヨークのコロンビア大学でジャーナリズム修士号を取得したフルブライト奨学生でもある。また、国連記者協会(UNCA)が毎年授与する国連報道優秀賞の金メダルを、2012年と2013年の2度にわたって共同受賞している。同書はAmazonで入手可能である。著者のウェブサイト経由のAmazonリンクは以下の通りである。
INPS...
大迂回路:サウジアラビアの紅海構想がホルムズ海峡の優位性に挑む
【イスラマバードINPS Japan/London Post=モハマド・ラーシド】
世世界の目がホルムズ海峡に注がれるなか、サウジアラビアは紅海経由の代替ルートを静かに整備し、MSCとの提携を進めるとともに、巨大な東西パイプラインを最大限に活用していた。イランにとって最強の切り札は、いまや大きく弱体化している。|英語版|
ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まるなか、イランは長年、世界の石油・LNGのおよそ5分の1が通常通過するこの重要なチョークポイントの支配を、決定的な戦略カードとみなしてきた。テヘランは、封鎖や通航妨害を行えば、世界はイランの優位を認めざるを得ず、譲歩を迫られると考えていた。
しかし、国際社会の関心が同海峡に集中する一方で、サウジアラビアは代替ルートの整備を静かに進め、ホルムズ海峡を威圧の手段として使う有効性を大きく低下させていた。危機下において主流メディアの報道ではほとんど見過ごされてきたこれらの動きは、エネルギーと貿易の流れに重要な迂回手段を提供している。サウジアラビアは、世界のサプライチェーンの冗長性と強靭性を高める3つの主要施策を実行した。
紅海海運ネットワークの拡充
サウジアラビアは、ヤンブー、ジッダ、キング・アブドラ港など、紅海沿岸のインフラ整備と活用を加速させてきた。NEOMのような野心的なプロジェクトも、その一環である。これにより、輸出入のための実用的な西側回廊が形成され、貨物は紅海を経由し、可能な場合にはスエズ運河、あるいは南方ルートへと振り向けられる。
紅海ルートにも、バブ・エル・マンデブ海峡周辺におけるフーシ派の脅威など、固有のリスクはある。それでも、一定量の貨物についてはペルシャ湾を完全に迂回できる戦略的な代替手段となっている。
世界最大のコンテナ船会社MSCとの提携
世界最大のコンテナ船会社であるMediterranean Shipping Company(MSC)は、2026年5月、欧州・紅海・中東を結ぶ新たなエクスプレスサービスを開始した。この海陸複合輸送による「ランドブリッジ」ルートでは、船舶がスエズ運河を通過し、サウジアラビアの紅海側の港湾であるジッダ港とキング・アブドラ港に寄港する。その後、貨物はサウジ国内をトラックで輸送され、湾岸側のダンマームへ運ばれ、そこから他の湾岸拠点へフィーダー輸送される。
この海上輸送と陸上輸送を組み合わせたモデルは、コンテナ貿易においてホルムズ海峡を事実上迂回するものであり、欧州と中東地域全体の物流網の接続性を高めている。
東西原油パイプライン(ペトロライン)の最大活用
サウジアラビアが講じた最も有力な手段は、全長1200キロに及ぶ東西パイプライン、通称ペトロラインの稼働を拡大したことである。同パイプラインは、東部の湾岸油田地帯にあるアブカイク周辺を起点に、アラビア半島を横断し、紅海側の輸出拠点ヤンブーまで原油を輸送する。
このパイプラインは、もともと1980年代のイラン・イラク戦争時に同様の目的で建設されたものだが、現在の危機下で輸送能力は日量700万バレルまで引き上げられている。これにより、サウジ産原油、さらには将来的には他の湾岸諸国の原油も、ホルムズ海峡を通過せずに紅海経由で国際市場へ届けることが可能になった。
同パイプラインの持続的に運用可能と確認された輸送能力は大きいものの、危機以前にホルムズ海峡を通過していた地域全体の原油輸送量、歴史的には日量2000万バレル超と比べれば限界がある。また、攻撃や物流上の制約にも直面しており、イラン、イラク、クウェートなど、同海峡への依存度がはるかに高い湾岸輸出国にとって、完全な代替手段とはなり得ない。紅海ルートにも、フーシ派の脅威といった新たな脆弱性が伴う。
それでも、ホルムズ海峡が大きく混乱するなかで、サウジアラビアのこれらの取り組みが相当量の原油輸送を継続させてきたことは明らかである。
サウジアラビアの動きから利益を得る国と関係者
サウジアラビア自身は、信頼できるエネルギー供給国としての地位を強化するとともに、Vision 2030および国家交通戦略に沿って物流ハブ化を進め、イランからの圧力に対する脆弱性を低下させている。
欧州、インド、中国、日本、韓国などの主要石油輸入国にとっては、サウジ産原油、さらには迂回ルートで輸送される湾岸産原油へのアクセスが維持されることで、国際的な価格と供給の安定につながる。これにより、エネルギー価格の世界的な急騰を招きかねない供給不足を緩和できる。例えばインドは、代替輸送ルートという選択肢を得ている。
エジプトは、スエズ運河、SUMEDパイプラインとの接続、関連する紅海回廊を通じた通航量の増加によって恩恵を受け、物流ハブとしての役割を高めている。
UAE、バーレーン、カタール、クウェート、オマーンなど他の湾岸諸国も、MSCのランドブリッジ、共通インフラの強靭化、代替的な輸出入経路への潜在的なアクセスを通じて、間接的な利益を得ている。UAEもまた、フジャイラを活用した独自の迂回ルートを有している。
世界の海運・貿易においては、MSCをはじめとする事業者が新たな実用的ルートを確保し、サプライチェーンの安定化を通じて各国の産業を支えている。
欧州にとっても、バルト海沿岸などの港湾と中東地域をサウジアラビアの拠点経由でより迅速に結ぶ新たなMSCサービスから、直接的な恩恵を受けることができる。
これらのサウジアラビアの取り組みは、より大きな構造変化を示している。ホルムズ海峡はいまなお極めて重要であるものの、代替性を備えたインフラを構築するという戦略的先見性が、その「武器化」の効果を鈍らせている。情勢が変化するなか、パイプライン、港湾、複合輸送回廊へのさらなる投資は、中東におけるエネルギーと貿易の地図を恒久的に塗り替える可能性がある。
戦略的・地政学的影響
イランの影響力低下:イランはもはや、ホルムズ海峡の封鎖によってサウジアラビアを麻痺させ、国際社会から即時の譲歩を引き出せると前提にすることはできない。サウジアラビアの動きは代替手段の存在を示し、イランの「優位性」というナラティブを切り崩している。
世界市場の強靭化:代替ルートは供給の全面的崩壊を防いできた。ただし、価格はなお急騰し、在庫も大幅に取り崩されている。
長期的な変化:これらの取り組みは、サウジアラビアのVision 2030に掲げられた物流分野の目標を前倒しで進めるとともに、パイプライン、鉄道、将来的なランドブリッジ、紅海インフラへの追加投資を促している。その結果、ホルムズ海峡の優位性は恒久的に低下する可能性がある。
INPS Japan
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