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国連は「更新なし・任期7年」の事務総長制に備えがあるのか?

【国連IPS=タリフ・ディーン】 国連事務総長の任期を「更新なしの単一期・7年」とする案(1996年にさかのぼる長年の提案)が、潘基文(パン・ギムン)元国連事務総長によって再び持ち上がった。この原案は、ダグ・ハマーショルド財団とフォード財団が支援した研究の一部であった。同提案によれば、7年任期は「望ましくない圧力から自由な形で、事務総長が踏み込んだ計画に取り組む機会を与える。」 潘氏は、更新を認めない単一期の7年任期は、事務総長職の独立性を強化すると述べている。現行の「5年×2期」という慣行は、潘氏によれば、事務総長を「延長(再任)を得るために安保理常任理事国への依存を過度に強める」結果になりかねない。 エジプト出身のブトロス・ブトロス=ガリ元事務総長は、安保理で15票中14票の支持を得ていたにもかかわらず、米国が唯一の拒否権行使国となり、2期目(2度目の5年任期)を阻まれた。 研究は、「国連の最高の政策決定機関であり、最終的な任命機関でもある総会は、事務総長の任期を単一期7年とすること、および事務総長任命手続の改善に関わる主要要素を包括的に定める決議を採択すべきである」と提言した。 さらに同研究は、更新なしの7年任期という考え方を事務総長だけに限らず、UNDPやUNICEFなど国連の基金・計画、さらにはWHOをはじめとする専門機関を含む、国連システム各組織のトップにも広げるべきだと提言した。研究の題名は『指導力を必要とする世界:明日の国連――新たな評価(A World in Need of Leadership: Tomorrow’s United Nations....

|視点|炎から救われて―2025年の世界(ファルハナ・ハク・ラーマンIPS副総裁兼北米エグゼクティブ・ディレクター)

【トロントIPS=ファルハナ・ハク・ラーマン】 例年の「年末総括」記事は、この1年に起きた世界的災害や危機を重たい調子で振り返り、IPSのパートナーや寄稿者の取り組みを紹介したうえで、最後はやや明るい結びで締めくくられるのが通例である。だが今回は、比喩にもなる個人的な出来事から始めたい。 11月20日、ブラジル・ベレンで開かれていた国連気候会議COP30では、化石燃料ロビーに翻弄されながら各国代表が最終文書をめぐって駆け引きを続け、会期延長も避けられない様相を呈していた。そのさなか、会場のコンベンションセンターで火災が発生した。場内は炎と混乱に包まれ、緊張が走った。 数千人が出口を求めて動くなか、若いバングラデシュ人外交官が私に気づいた。彼は我先にと人波に加わるのではなく、混み合う群衆の間を縫って私を安全な場所へと導いてくれた。危機の瞬間、人は思いがけない形で助け合える。そのことを示してくれたアミヌル・イスラム・ジサンに感謝したい。 幸い死者は出なかった。協議は再開され、締約国会議(COP)のプロセスも、気候危機の抑制に向けた小さな前進と解釈し得る最終文書の採択という形で、ひとまず持ちこたえた。もっとも、危機の主因である化石燃料についての言及は、なお婉曲な表現にとどまった。 COPの存続は盤石ではなかった。ドナルド・トランプ大統領が米国の不参加を指示し、9月の国連総会演説で気候変動を「史上最大のペテン」と切り捨てたためである。 だがベレンへの不参加は、国際的地位という点で、むしろ米国自身により大きな損失をもたらした。トランプがヨハネスブルグで並行開催されていたG20協議も回避したことで、米国の評判はさらに傷ついた。その「傷口に塩を塗る」形となったのが、G20議長国のシリル・ラマポーザ大統領の落ち着いたリーダーシップである。米国の反対をよそに、気候危機を含む世界的課題に取り組む宣言の採択へと議論を導いた。 振り返れば、この1週間が「米国の時代」に静かに終止符を打ったのかもしれない。予測不能、混乱、暴力、そして制度化された残酷さ―それらは、2025年に一段と進んだ単独主義と保護主義への劇的な転回を告げる兆候である。 10月11日に米国仲介のイスラエルとハマスの「停戦」が始まって以降、子どもを含む数百人のパレスチナ人が殺害された。ロシアによるウクライナの民間人を標的とした空爆も続き、就任初日に戦争を終わらせられると豪語したトランプの、場当たり的な終戦工作をあざ笑うかのように、被害を積み重ねている。 トランプが1月に命じた米国援助の大幅削減は、「世界的な人道的大惨事を助長した」と、国連人権理事会が7月31日の声明で指摘した。貧困、食料、人権に関する2人の独立専門家の見解を引用し、理事会はこう述べた。「援助削減に起因する死者は、すでに35万人以上と推計され、そのうち20万人以上が子どもである。」 西スーダンの紛争で飢饉は拡大し、資金不足は南スーダン向けの重要な国連支援の削減にもつながった。ミャンマーでは「忘れられた内戦」が続くなか、国連世界食糧計画(WFP)は資金不足を理由に、100万人以上への救命支援を打ち切った。 市民社会の国際ネットワークCIVICUSは、紛争、気候危機、民主主義の後退といった複合危機が、国家が解決できない、あるいは解決しようとしない問題に対応するための国際機関の能力を超えつつあると警告する。米国が国際機関から距離を置く動きは、国際協力の危機をさらに深刻化させかねない。 しかし、CIVICUSの「2025年版 市民社会の現状報告書」が示すように、市民社会は国連を「人々を中心に据える」ことで立て直すための構想を持っている。COP30では、オープン・ソサエティ財団のビナイフェル・ノウロジー総裁がこの方向性に賛同し、先住民やアフロ系コミュニティの声を可視化し、人権を気候行動の中核に据え直したとして、ブラジルの民主的リーダーシップを評価した。 急速に揺れ動く世界秩序のなかで、ノウロジーは、尊厳と公正、そして地球の保護に根ざした新たな発想とビジョンを携え、グローバル・サウスが前面に出つつあるとみる。 COP30でまとまった合意のなかで、最も重要なのは「公正な移行メカニズム(Just Transition Mechanism)」だろう。世界のグリーン経済への移行を公平に進め、労働者、女性、先住民を含むすべての人々の権利を守ることを目的とする。 太平洋共同体(SPC)の気候変動・持続可能性ディレクター、コーラル・パシシはCOP30で、気候変動の影響が急速に深まる島嶼国にとって事態がいかに危機的であるか、そしてベレンで実質的な前進がいかに切実に求められていたかを強調した。損失と損害(Loss and Damage)への先進国の資金支援を強化する必要性も訴えた。 南アジアやアフリカで政権を揺さぶったZ世代のデモも、より公正な将来像を掲げて存在感を強めている。抗議の矛先は、既得権化したエリート層における縁故主義と腐敗である。昨年バングラデシュでは、デモ隊が銃弾にさらされた。9月に政権が退陣に追い込まれたネパールでも、タンザニアでも、同様の暴力が報告され、タンザニアでは数百人が殺害されたとも伝えられた。今年はインドネシア、フィリピン、モロッコでも、Z世代の抗議が政治情勢を揺らした。 スウェーデンの研究者ヤン・ルンディウスはIPSにこう記した。「これらの抗議行動は、個別の出来事が引き金となったとしても、根底には深刻な富の格差、蔓延する縁故主義、際限のない腐敗という、長年にわたり共有されてきた不満があった。とりわけ若者は、富裕で信用を失った政治エリートを支える権力世襲の有力者に抗議したのである。」 紛争と気候災害が重なれば、子どもの教育には長期的に深刻な影響が及び得る。IPSが支援する「Education Cannot Wait(ECW)」や「学校の安全に関する宣言(Safe Schools...

2025年を振り返って

「エベレストの国」として知られるネパールは、2025年、若者主導の政権転覆と結び付けて語られるようになった。 【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】 年初は大きな出来事もなく始まったが、年末は騒乱と先行きの不確実性の中で幕を閉じた。ただし緊張は、年初から水面下でくすぶっていた。 2月、ネパールはマネーロンダリング対策の不備を理由に、金融活動作業部会(FATF)の「グレーリスト」に入った。米国国際開発庁(USAID)の停止で、保健、気候、栄養分野の多くの事業が止まった。混乱のさなか、5月にはインドとパキスタンが戦争に突入した。全面的な核戦争には至らなかったものの、この衝突を経てドナルド・トランプ大統領とナレンドラ・モディ首相の関係は決定的に悪化した。 3月28日、カトマンズでは、債務不履行で知られるドゥルガ・プラサイが率いた親王政集会が開かれ、機動隊によって解散させられた。支持者が放火と略奪に走り、テレビ記者を含む2人が死亡した。年後半の混乱を予告する出来事だった。 モンスーンは例年通りの被害をもたらした。今回はボテ・コシ川で国境を越える氷河湖決壊洪水が発生し、中国との主要貿易ルートが押し流された。気候リスクを改めて突きつける出来事となった。 8月、カトマンズの政界・メディア関係者の間では、K・P・オリ首相がインド政府から公式招待を得られるかどうかが取り沙汰されていた。招待が実現しないと、オリは9月3日、北京で開かれた戦勝記念パレードに出席するという物議を醸す訪中を強行した。第二次世界大戦における日本の敗戦80周年を掲げる式典である。 会場にはウラジーミル・プーチン大統領、習近平主席、金正恩第総書記が居並んだ。だがオリは帰国から6日後、首相の座を追われた。抗議者が首相公邸に火を放つ直前、オリはネパール軍のヘリコプターで救出された。 この年を通じ、UML(ネパール共産党・統一マルクス・レーニン主義)とNC(ネパール会議派)の連立は、言論の自由を狭める法案を相次いで準備していた。印刷・出版法の改正、ソーシャルメディア法案、対諜報法案、さらに社会福祉評議会(Social Welfare Council)の改組である。導火線に火をつけたのは、9月5日に26のソーシャルメディア・プラットフォームを禁止した措置だった。 インドネシアで起きた若者主導の反汚職抗議に触発され、ネパールのGenZ(Z世代)が動いた。社会政治の空気は乾き切っており、殺害事件への怒りが抗議の拡大を促した。 GenZが9月8日、汚職と悪政に抗議する集会を呼びかけたとき、事態が制御不能に陥るとは(若い抗議者自身も含め)誰も想像していなかった。8日、武装警察部隊(APF)の発砲により、デモ参加者19人が死亡した。 流血はソーシャルメディアで無検閲のまま拡散された。翌日、衝撃が癒えぬ若者たちのさなかで、さまざまな不満を抱えた人々が放火と略奪に走り、標的は住宅、官公庁、学校、事業所に及んだ。9日午後10時にネパール軍が外出禁止令を出すころには、多くが焼け落ちていた。 その後、GenZはスシラ・カルキを首相に選出したが、彼女に不満を抱く強硬な一派もいる。混乱に拍車をかけているのが、打倒されたUMLとNCの指導者たちである。彼らは失脚を受け入れられず、下院(代議院)の復活を狙う。オリはUMLの党首に再選され、退く気配はない。かつての連立相手であるシェール・バハドゥル・デウバにも踏みとどまるよう働きかけている。 ただ、両党には選挙に踏み切る以外の選択肢がない。にもかかわらず、長年の失政に対する民衆の怒りに向き合うための党改革は十分に進んでいない。 3月の選挙実施は不透明とみられていたが、ラーム・チャンドラ・パウデル大統領が今週、UML、NC、NCPの各党を招集し、カルキとの初会合を開いたことで情勢が動いた。RSPもカトマンズ市長バレン・シャーとの協議に乗り出し、総選挙はにわかに現実味を帯びてきた。結果がどうであれ、2026年は既成政党の優位が新たな勢力に挑まれ、ネパール政治の進路を変える年となるだろう。 それが透明性、民主主義、説明責任という新たな政治文化につながるのか。あるいは大衆迎合と権威主義へ傾斜するのか。その兆しが見え始めるのが2026年である。(原文へ) ソニア・アワレ(ネパリ・タイムズ編集者/保健・科学・環境担当):気候危機、防災、開発、公衆衛生を長年取材し、それらの政治・経済的な相互連関を追ってきた。公衆衛生を学び、香港大学でジャーナリズムの修士号を取得。 INPS Japan 関連記事: 新年の革命──王政復古を求める穏やかなデモにカトマンズの支持者が集結 ここに太陽が:洪水で水力発電所が破壊され、太陽光発電に注目が集まる Z世代抗議の余波で問われる「誰がネパール人なのか」

アジア太平洋地域、新たな災害リスク時代への備え

【バンコクIPS=UNESCAP】 サイクロン「ディトワ」と「セニヤール」は、例外的な事象ではなく、災害リスクの地形(リスクスケープ)が変化しつつあることを示している。両者はいずれも、これまでの歴史的なパターンを破った。ディトワは、スリランカ沿岸を異例なほど南下した後、ベンガル湾へとループし、24時間で375ミリを超える豪雨をもたらして地滑りを引き起こした。 一方、セニヤールは、マラッカ海峡で観測された史上2例目のサイクロンで、赤道付近で発達した後にスマトラ島上空に停滞し、アチェ州および北スマトラ州の洪水被害を深刻化させた。 拡大する人的・経済的被害 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の報告書『アジア太平洋災害報告書2025:上昇する熱、拡大するリスク』によると、アジア太平洋地域は、海洋熱波や海面水温の上昇により極端気象が激化し、連鎖的なリスクが拡大する時代に突入している。 これまで比較的低リスクとされてきたスリランカ中部丘陵地帯やタイ南部沿岸も、いまや気候リスクのホットスポットとなった。 同報告書は、南アジアおよび南西アジア地域だけでも、洪水による年間平均損失額が、歴史的な470億ドルから570億ドルに増加する可能性があると予測している。 インドネシア、マレーシア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナムでは、2025年11月下旬の一連の暴風雨により、1,600人以上が死亡、数百人が行方不明となり、1,000万人を超える人々が影響を受けた。 広範な洪水と地滑りは120万人を避難に追い込み、基幹サービスを寸断し、多くの地域社会を孤立させた。必要とされる対応規模の大きさと、今後見込まれる深刻な経済的影響を浮き彫りにしている。 備えの価値 早期警報の改善により、過去数十年と比べて犠牲者数は減少している。しかし、今回の災害は、被害そのものがより破壊的になっている現実を示した。 影響ベースの予測によって大規模な避難が促され、地域訓練により多くの家族が安全を確保できたのは事実である。それでもなお、数千人が取り残された。 警報は発せられたが、現場での実施が不明確で、避難路がすでに冠水している例もあった。公式システムが機能しない場面では、ソーシャルメディアが命綱となった。 傾向は明らかである。信頼と訓練を伴わなければ、技術だけでは命は救えない。警報は、人々が「何をすべきか」を理解し、行動に移せるときに初めて機能する。 ESCAPの「津波・災害・気候レジリエンス多国間信託基金」は、備えへの投資が何倍もの成果をもたらすことを示している。2025~26年の提案募集は、次の暴風期が到来する前に、沿岸レジリエンスの強化、科学技術の統合、地域主導の行動を制度に組み込む機会を各国に提供している。 学ぶべき教訓 ・信頼される地域ネットワークと、十分に整備された地域主導の備えが、警報を意味あるものにする 早期警報には限界がある。多くの地域で警報が発出され、ホットラインも開設されたが、急激な増水により家族は取り残され、救助隊やボランティアに頼らざるを得なかった。これらの事例は、情報があっても、移動制約や家庭ごとの備えの格差が行動を妨げることを示している。 2004年のインド洋大津波後に推進された地域主導の取り組みは、地域知と定期的な訓練が意思決定を改善することを実証してきた。20年を経たいま、社会的結束はレジリエンスの指標となっている。 例えば、7万6,000人のボランティアを擁するバングラデシュのサイクロン備えプログラムは、戸別訪問による警報伝達と避難誘導によって、サイクロンによる死者数を大幅に減少させてきた。 ・リスクを考慮しない都市成長は、災害被害を増幅させる ディトワとセニヤールは、リスクを織り込まない急速な都市化が被害を拡大させる現実を露呈した。コロンボでは湿地の40%が消失し、ハートヤイでは排水能力が限界を超えた。 スマトラ島で大きな被害を受けた町の多くは、既知の地滑り危険区域に位置しており、病院や交通網、地域経済に深刻な混乱をもたらした。 自然の緩衝帯が失われると、かつてはゆっくり排水されていた雨水が、数時間で都市を水没させる。都市のレジリエンスは、湿地の保全、ゾーニングの徹底、排水・治水インフラへの投資など、開発計画にリスクを組み込めるかどうかにかかっている。 インフラは量だけでなく、極端事象に耐えうる設計が不可欠である。自然システムを守り、レジリエンスを計画に組み込む都市こそが、将来の暴風に耐え、経済活動を守ることができる。 ・地域連帯と共有解決策は命を救う アジア太平洋地域は、暴風がモンスーン災害を増幅させ、地滑りへと連鎖し、脆弱なインフラによって被害が拡大する複合リスクに直面している。地域協力はもはや選択肢ではなく、世界で最も災害の影響を受ける地域におけるレジリエンスの基盤である。 2025年11月には、インドネシア、スリランカ、タイなど8か国が「国際災害チャーター(宇宙・大規模災害)」を発動し、緊急対応計画のための迅速な衛星画像提供が行われた。共有システムの有効性が実証された。 地域全体で洪水が拡大するなか、ESCAP防災委員会の参加国は、国境を越える災害に対応するため、地域早期警報システムと予測行動へのコミットメントを再確認した。 アジア太平洋地域のレジリエンスは、人と備えの文化への投資、地域連帯、極端事象を前提とした都市計画、自然緩衝帯の保全、そして最終段階の行動指針をすべての世帯に届けることにかかっている。 高まり続けるリスクを管理できる世代と社会を築くことこそ、安全な未来への最も賢明な投資である。(原文へ) INPS Japan/IPS/ESCAP 関連記事: 減災には弱者に配慮した救援計画が不可欠 宗教が防災と出会うとき |日中韓シンポジウム|困難な状況下でのNGOの役割を強調