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インドのLED化が示す、環境対策を支えるブレンデッド・ファイナンスの力
【インド・ハイデラバードIPS=ステラ・ポール】
ウズベキスタン・サマルカンドで開催される第8回地球環境ファシリティ(GEF)総会を前に、各国政府や開発機関は、急速に拡大する環境対策の資金需要にどう対応するかという、なじみ深い課題に向き合っている。公的予算が逼迫し、生物多様性や気候変動に伴うリスクが高まるなか、注目はブレンデッド・ファイナンスへと集まりつつある。これは、譲許的な公的資金と民間の商業投資を組み合わせ、大規模な資本動員を図る手法である。
支持者は、この仕組みによって投資リスクを軽減し、従来なら資金確保が難しかった事業に民間資本を呼び込むことができると主張する。一方、批判的な見方をする人々は、こうした手法がなお公的支援に大きく依存しており、どの地域でも容易に再現できるとは限らないと指摘する。
インドのハイデラバードでは、世界最大級の自治体LED街路灯整備事業が、ブレンデッド・ファイナンスの実効性を示す代表的な事例として注目されている。
街路灯を気候資金へ転換する
急速に拡大し、気候変動の影響を受けやすい大都市ハイデラバードは、気温上昇とエネルギー需要の増大に対応するため、インドの「街路灯国家プログラム」(SLNP)の下で、街路灯を省エネ型のLEDに改修してきた。
この取り組みは、エネルギー効率サービス社(EESL)が国連環境計画(UNEP)およびアジア開発銀行(ADB)と連携し、GEFの支援を受けて実施した、より広範な「エネルギー効率市場の創出と維持」プログラムの一環である。
同プログラムでは、GEFによる無償資金と4億3400万米ドルを超える協調融資を組み合わせ、省エネ技術の大規模導入を進めた。
「環境資金の不足額は、年間で数千億ドル規模に及んでいる。これは、無償資金や政府開発援助(ODA)だけで埋められる規模ではない」と、GEFのプログラム責任者であるフレッド・ボルツ氏は語る。
「健全な地球環境を維持していくには、民間資本の動員が不可欠である。」
ブレンデッド・ファイナンスは、譲許的融資や保証、無償資金支援などを通じて民間投資家のリスクを抑え、収益の見通しが立ちにくい市場でも事業を実現しやすくする仕組みである。公的資金やフィランソロピー資金がリスクの一部を引き受けることで、再生可能エネルギー、生物多様性、持続可能なインフラなど、リスクが高いと見なされがちな分野にも民間資本を呼び込みやすくなる。
ハイデラバードでは、EESLがLED街路灯の設置費用を先行して賄い、その後に得られる電力費の削減分で費用を回収する仕組みを導入した。これにより、大ハイデラバード市公社(GHMC)は多額の初期支出を避けることができた。
初期段階で45万基を超える街路灯が交換され、その後の拡大によって対象地域は市内全域に及んだ。公共照明に伴う電力消費量はおおむね半減し、年間10億ルピー超(約1200万米ドル)の節約を生むとともに、炭素排出量の大幅削減にも寄与した。
節約分が資産となる仕組み
資金調達の仕組みは、「みなし節約」モデルに基づいていた。自治体は初期費用を支払う代わりに、電力費と維持管理費の削減分を検証したうえで、その削減分を返済原資として投資額を段階的に返済していく仕組みである。
支持者は、こうした仕組みによって、予算制約を抱える都市でもインフラの近代化が可能になると評価する。一方で、分析者は、このモデルが正確な削減予測、信頼できる維持管理、そして十分な行政能力に依存していると警告する。
専門家の間では、ブレンデッド・ファイナンスが最も効果を発揮するのは、公的機関が事業の実施と監督に積極的に関与し続ける場合だとの見方が共有されている。
ハイデラバードの事業には、中央監視制御システム(CCMS)が導入された。これにより、当局は電力使用量を把握し、故障を検知し、設備の稼働状況をリアルタイムで監視できるようになった。
このシステムは運用管理を強化するとともに、独立した検証に基づいて支払いを行う成果連動型の資金調達に必要なデータの蓄積にもつながった。
インド・ハイデラバード東部でLED化された街路灯。LED照明は、従来型照明に代わる費用対効果と省エネ性に優れた選択肢であり、設置地域に安心感をもたらしている。
炭素を超えて――気候資金から日常生活へ
住民にとって、LED化の効果は、財務や技術の言葉で語られるものというより、日々の暮らしや安全に対する実感の変化として受け止められることが多い。
カヴィタ・ラマヴァトさん(27)と夫のラヴィ・ラマヴァトさん(35)は最近、幼い2人の子どもを連れて、ハイデラバード東部郊外の急成長地域、ウッパル・バガトに移り住んだ。以前は約4キロ離れたウッパル・カランに住んでいた。家賃は安かったが、インフラは十分に整っていなかった。カヴィタさんは家事労働者として働き、ラヴィさんはオートリキシャの運転手をしている。
家賃はほぼ2倍になったが、街路照明の改善は一家の日常を変えた。
「この地域は以前より活気があり、道路も広く、明るく照らされています」と、カヴィタさんは自宅近くの路地に設置されたLED街路灯を指さしながら語った。「以前は、子どもの塾の送り迎えで一人で歩くのが怖かったのです」
今では、子どもたちは夕方になっても以前より長く外で遊ぶことができ、近隣の商店も遅くまで店を開けているという。ラヴィさんも、自宅前にオートリキシャを停めても、盗難や破損を心配しなくて済むようになったと話す。
都市計画の専門家は、公共照明の改善が、人々の移動、インフォーマルな経済活動、公共空間における安全への認識に影響を及ぼし得ると指摘する。とりわけ、女性や子どもにとって、その意味は大きい。
先週、カヴィタさんは自宅前で小さな果物屋台を始めた。明るくなった通りのおかげで、客足が増える日没後も仕事を続けることができる。
彼女の家族にとって、その恩恵は排出削減量や資金調達の仕組みで測られるものではない。公共空間で以前より安心して働き、少しでも収入を増やせるという、日々の生活の変化として表れている。
地元の街路から世界の金融モデルへ
ハイデラバードの経験は、気候変動緩和におけるブレンデッド・ファイナンスの可能性を示しているが、このモデルはエネルギー効率化の分野を超え、より幅広い領域へと広がりつつある。
世界各地では、GEFが支援するブレンデッド・ファイナンス事業が、生物多様性の保全、海洋保護、持続可能なサプライチェーンに投資を呼び込んでいる。これらの事業は、従来は投資を集めにくかった分野において、公的資金がどのように民間資本を引き出し得るかを示している。
例えばブラジルでは、「リビング・アマゾン・メカニズム」が、資本市場を活用した金融手段とフィランソロピー資金を組み合わせ、アマゾン地域の持続可能なサプライチェーンを支えている。この仕組みは、協同組合や地域の生産者を資金につなぐとともに、投資家であり買い手でもある企業ナチュラの参画によってリスクを軽減している。
同様に、IFC・GEF「グリーン・グローバル・サプライチェーン脱炭素化イニシアティブ」のような国際的プラットフォームは、新興市場の製造業者や供給業者に対し、環境目標に連動した長期融資を提供することを目指している。これにより、脱炭素化に向けた大きな障壁である、手頃な資金へのアクセス不足に対応しようとしている。
国家レベルでも、ブレンデッド・ファイナンスは、債務や債券を活用した革新的な金融手法を可能にしている。世界銀行の保証とGEFの譲許的資金によって支援されたセーシェルのブルーボンドは、借入コストを抑えながら海洋保全のために民間資本を調達できることを示した。
ラテンアメリカ・カリブ地域では、米州開発銀行(IDB)とGEFが支援する新たなファシリティが、債務自然保護スワップの拡大にブレンデッド・ファイナンスを活用している。これは、各国がより低いコストで債務を借り換え、その節約分を生物多様性の保全や気候レジリエンスの強化に振り向けることを可能にする仕組みである。
これらのモデルに共通する原則は明確である。公的資本や譲許的資金がリスクを引き受けることで、金融面のリターンだけでは投資を正当化しにくい分野にも、民間投資家が参入しやすくなるという点である。
都市を超えて市場を育てる
ハイデラバードの事業は、自治体インフラにとどまらなかった。インドのUJALAイニシアティブを通じて、EESLは需要を集約し、電球を一括調達することで、家庭向けLED照明の普及も進めた。
この手法により、LED電球の価格は大きく下がり、数百万世帯が省エネ型照明を手頃な価格で入手できるようになった。また、電気料金の請求に組み込む形で少額ずつ支払える仕組みも導入された。
公共インフラと家庭需要の双方に取り組むことで、このプログラムは、省エネ技術を導入するだけでなく、長期的に自立して機能する市場をつくることも目指した。
「環境面の成果を大規模に広げる道筋は、ブレンデッド・ファイナンスを通じて開かれる。公的資本は、民間資本が担わない役割を果たす。過大なリスクを引き受け、教訓を持続的な変化へと転換するための厳格な監視に資金を投じるのである。公的資金を排除すれば、成果もまた排除されることになる」と、ボルツ氏は述べた。
ブレンデッド・ファイナンスの試金石
気候資金と生物多様性資金をめぐる国際的な議論が活発化するなか、ハイデラバードは、ブレンデッド・ファイナンスが都市レベルでどのように機能し得るかを示す試金石として、ますます注目されている。
ハイデラバードに拠点を置くコンサルティング会社プロベンチャーのクリーンエネルギー専門家、スリニヴァス・コナ氏はこう語る。「LEDプログラムは、譲許的資金、公的部門による実施、節約分に基づく返済構造が連動することで、自治体による多額の初期支出を伴わずに都市インフラを拡充できることを示した」
同時に、同氏は課題も残ると指摘する。「こうしたモデルを他地域でどこまで容易に再現できるかは明らかではない。特に、歳入基盤が弱く、行政能力も低い小規模都市では難しい可能性がある。」と述べ、一部の設備で維持管理上の問題が報告されていることにも言及した。
それでも、ハイデラバードの経験は、世界的な金融をめぐる議論が、都市の日常生活に目に見える変化としてどのように表れるのかを垣間見せている。
先週、カヴィタ・ラマヴァトさんは、明るいLED街路灯の下、始めたばかりの果物屋台のそばに立ち、夕方の客が通り過ぎるなか、グアバやバナナを並べていた。
果物の販売にはリスクも伴うと、彼女は言う。それでも、その追加収入は、上昇する家賃や子どもの学校関連費を賄う助けになるかもしれない。
カヴィタさんにとって、ブレンデッド・ファイナンスの影響は、投資フローや政策の枠組みで測られるものではない。安全に働ける時間を延ばし、少しでも収入を増やし、子どもたちのためにより安定した未来を思い描けることに、その影響は表れている。
注:第8回地球環境ファシリティ総会は、2026年5月30日から6月6日まで、ウズベキスタン・サマルカンドで開催される。
本特集記事はGEFの支援を受けて掲載された。編集内容についてはIPSが単独で責任を負うものであり、必ずしもGEFの見解を反映するものではない。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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紛争と住民避難が続くコンゴ民主共和国でエボラ流行、国際的懸念高まる
【国連IPS=オリトロ・カリム】
5月16日以降、コンゴ民主共和国(DRC)では、エボラ出血熱の検査確定例および疑い例が大幅に増加している。主な発生地はイトゥリ州で、ウガンダの首都カンパラでも、これとは別系統とみられる症例が確認された。流行は現時点で主にDRC東部に限られているものの、不安定な治安状況、住民の避難、鉱山労働に伴う人の移動と深く結びついている。このため、国際的な保健専門家の間では、十分な監視と対応が講じられなければ、感染がさらに拡大する恐れがあるとの懸念が高まっている。|英語版|
5月17日現在、世界保健機関(WHO)は、DRCおよびウガンダで確認されたブンディブギョ型ウイルスによるエボラ出血熱の流行について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると判断した。一方、米疾病対策センター(CDC)は、この地域での感染拡大を受け、医療従事者や渡航者に対して健康警戒情報を発出している。ただしWHOは、現時点で他大陸への感染拡大リスクは低く、2005年の国際保健規則(IHR)で定義される「パンデミック」の要件には該当しないとしている。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は5月22日、ジュネーブで開かれた国連記者会見で、「リスク評価を改訂し、国家レベルでは『非常に高い』、地域レベルでは『高い』、世界レベルでは『低い』と判断している」と述べた。同氏によれば、DRCではエボラ出血熱の確定症例が82件、死亡者が7人確認されている。しかし実際の感染規模はこれを大きく上回るとみられ、疑い症例は約750件、疑い死亡例は177件に達している。
また、DRCから移動した人に関連する確定症例がウガンダでも2件報告され、そのうち1人は死亡した。さらに、長期間にわたり「高リスク接触」があったとされる米国人2人が、感染の疑いにより欧州へ搬送され治療を受けている。
対応活動は、広範な住民避難と長期化する紛争によって大きく制約されている。国連によると、5月21日にはイトゥリ州の病院が放火される事件が発生した。警察が感染防止上の理由から死亡した感染者の遺体を家族に引き渡すことを拒否したことに対し、親族らが反発したためである。
今回の流行は、とりわけイトゥリ州と北キブ州で深刻化している。これらの地域は長年にわたり武力衝突と人道危機の中心地となってきた。ここ数カ月だけでも暴力行為によって10万人以上が避難を余儀なくされており、人道支援活動に深刻な支障をもたらしている。
国連人道問題担当事務次長兼緊急援助調整官のトム・フレッチャー氏は、SNS「X」に投稿した声明で次のように述べた。
「私たちが人命救助活動を行っている現場は、世界でも最も厳しい環境の一つである。紛争が続き、人々の移動も非常に活発だ。武装勢力が支配する地域を含め、最前線で活動する対応要員が安全かつ継続的にアクセスできるよう取り組んでいる。対応活動が妨害されてはならない。影響を受けた地域全体において、空路、陸路、水路のすべてへのアクセスが不可欠である。」
ゲブレイェスス事務局長によれば、約400万人が緊急の人道支援を必要としており、200万人が避難生活を送り、1,000万人が深刻な食料不安に直面している。女性は介護、家事労働、最前線のサービス業務を担うことが多く、感染リスクが特に高い。妊婦も極めて脆弱な立場にあり、隔離措置の実施に伴ってジェンダーに基づく暴力の増加も報告されている。
こうした危険性は、最も深刻な被害を受けている北キブ州とイトゥリ州における保健医療システムの崩壊によってさらに悪化している。WHOによると、2025年には両州で150万人以上が基礎的な医療サービスへのアクセスを失った。また、医療施設の約85%が深刻な医薬品不足に直面している。
WHO人道支援活動部門責任者のテレサ・ザカリア氏は次のように語った。
「たとえ体調を崩していても、感染疑いがある人々は医療サービスを受けられず、結果として発見も診断もできない状況にある。流行対応と並行して、両州のすべての住民に対する基本的な保健サービスを確実に維持しなければならない。特に強制的に避難させられた人々や極めて脆弱な立場に置かれている人々への支援が重要である。」
人道支援の専門家らは、今後の流行封じ込めには、支援機関が感染拡大を抑制できるという住民の信頼を回復することが不可欠だと強調している。2013年から2016年にかけて西アフリカで発生したエボラ出血熱の大流行の記憶は今なお根強く、多くの地域社会が深いトラウマと人道支援への不信感を抱えている。
国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のガブリエラ・アレナス氏によれば、一部の住民は治療を求めている一方で、エボラ出血熱そのものを「でっち上げ」と考える人々も存在する。
アレナス氏は次のように語った。
「人々はあの恐怖を覚えている。村々に広がった噂を覚えている。近隣住民が治療センターへ運ばれていったことを覚えている。エボラ流行時には、信頼と地域社会の受容こそが、封じ込め成功と感染拡大の分かれ目となる。」
5月22日、フレッチャー氏は、国連中央緊急対応基金(CERF)から最大6,000万ドルを拠出し、DRCおよび周辺国での封じ込め、治療、監視活動を支援すると発表した。またWHOは、最前線での支援のため国際スタッフ22人を派遣し、緊急対応基金から390万ドルを拠出したことを明らかにした。さらにWHOはアフリカCDCと連携し、現場対応要員の支援と脆弱な地域社会の保護を目的とした大陸規模のインシデント管理チームを設置している。
フレッチャー氏は次のように述べた。
「私たちは過去の流行から得た教訓を生かしている。封じ込めは地域レベルでの迅速かつ連携した対応にかかっている。各国政府との強力な連携と、影響を受けた国々における効果的な早期警戒・検知システムが必要だ。地域社会からの信頼は不可欠である。今後も影響を受けた人々に幅広い人道支援を提供し、彼らのニーズを理解するため緊密に対話を続ける。また可能な限り事前に物資を配備し、軍事的手法による支援提供は避けていく。」
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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フィリピンの先住民族指導者、古来の知恵を世界の舞台へ
【サマルカンド(ウズベキスタン)IPS=キジト・マコエ】
毎年、フィリピンの深い森の上空に黒雲が立ちこめる季節になると、アプライ・カンカナエイ族の56歳、ミニ・バエイエンスは、注意深く空を見守る。
ある日の午後、薬草を採りに森へ入ろうとしていたとき、堂々たるフィリピンワシが樹冠の中から姿を現し、上空を舞った。外部の人々にとっては、それは希少な鳥が飛んでいる光景にすぎなかった。しかし、バエイエンスにとっては、それは「使者」だった。|ENGLISH|
祖父は彼に、自然を注意深く観察することを教えていた。ワシが普段とは異なる時刻に現れることや、飛んでいく方向は、しばしば天候の変化や危険の兆しを示す。
その日、バエイエンスは森へ向かうのをやめた。数時間後、山々は激しい雨に打たれ、洪水と地滑りが相次いで発生し、近隣の集落を襲った。
フィリピンの先住民族は何世代にもわたり、環境破壊によってますます脅かされる土地で生き抜くため、伝統的知識に依拠してきた。
「ワシが現れる時間帯、曜日、月には特定の意味がある。そして、その地域の先住民族コミュニティだけが、フィリピンワシという野生生物が伝えるメッセージを読み解くことができるのです。」フィリピンの先住民族指導者ジョヴァンニ・レイエスは、バエイエンスの体験に基づくこの逸話をこう説明した。
レイエスはIPSの取材に対し、こうした警告は野生生物と人々の間に相互扶助の関係を生み出すと語る。
「ワシが人々に警告を与えると、人々はその見返りとして生息地を守るようになります。」とレイエスは言う。「その生息地を守ることが、結果として領域全体の保全につながるのです。」
ワシの出現が危険を告げることもある、と彼は説明する。
「ワシが現れたことで、大きな嵐が来ると人々は判断します。だから、危険を避けるため、誰も外へ出てはならないと言うのです。」
今週、ウズベキスタンのサマルカンドでは、第8回地球環境ファシリティ(GEF)総会が開かれている。各国閣僚、環境専門家、市民社会の代表らが集まり、地球規模の環境危機に対する資金調達の解決策を探る中、先住民族指導者たちは、バエイエンスのような物語が、しばしば見過ごされてきた真実を示していると訴える。すなわち、先住民族の知識は単なる文化遺産ではなく、生き残るための実践的な手段でもあるということだ。
国際的な環境資金の歴史において初めて、先住民族は保全事業の単なる受益者としてではなく、世界の気候・生物多様性目標の達成に不可欠な知識体系を持つパートナー、助言者、権利主体として、ますます認識されるようになっている。
GEF第9次増資サイクルは、大きな転換点を示している。先住民族は、世界に残された自然生態系を守り、その貢献を地球規模の保全活動に組み込むうえで、重要なパートナーとして正式に認められ、関与していく見通しである。
この転換の中心にいるのが、ジョヴァンニ・レイエスである。彼は、世界最大級の環境資金メカニズムの一つであるGEFに対する先住民族諮問グループ(IPAG)の議長を務めている。
フィリピン北部の山岳地帯コルディリェラ地方のサガダに生まれたレイエスは、カンカナエイ先住民族に属する。彼の権利擁護活動は、先住民族の領域で起きてきた「開発による侵害」を目の当たりにした経験から生まれた。
「先住民族コミュニティのために、そしてその代表として立場を築かなければならないと考えた大きな理由の一つは、私たちの地域で開発による侵害が起きてきたからです。大規模伐採や、コミュニティを水没させかねなかったダム建設も含まれます」と彼は語る。
彼の活動は、山奥の村々から地球規模の環境交渉の場へと広がっていった。そこで彼は、先住民族コミュニティは開発の障害ではなく、生態系の守り手として認識されるべきだと訴えている。
転機となったのは2011年である。レイエスは、フィリピン全土の先住民族の領域を地図化する取り組みに参加した。
先住民族コミュニティにとって、地図化とは単に境界線を引くことではない。何世紀にもわたって口承で受け継がれてきた知識を、政府や制度が認める証拠へと翻訳することを意味する。
「私たちは、地形、景観、境界に関する先住民族の知識を翻訳し、それを地図という物理的な形にしなければなりません。」とレイエスは説明する。
その地図は、法的・政治的闘いにおいて強力な道具となった。
「地図化は、私たちが自分たちが何者であるかを口頭で説明できるだけでなく、先住民族自身が作成した地図という形で、その領域を示す証拠を持っていることを政府に示すものです。」
そこから生まれたのは、古来の知識と現代科学との稀有な協働だった。
「そこには、伝統的知識と科学の調和があります。」とレイエスは言う。
今日、この組み合わせは、GPSによる地図作成などの技術を用いて、先住民族コミュニティが森林を監視し、炭素貯蔵量を測定し、生態系の健全性を評価するうえで役立っている。
「伝統的知識と実践を科学と調和させれば、森林の健康状態を判断するための一覧表を作成することができます。」と彼は語る。
しかし、そうした領域を守ることは依然として容易ではない。
レイエスによれば、先住民族が土地と結ぶ深い精神的なつながりは、しばしば開発事業との対立を生む。
「先住民族には、それぞれ聖地や神聖な儀礼の場があります。カトリック教徒や教会にとって大聖堂があるのと同じことです。」
川や小川、森林は、単なる天然資源ではない。それらは、生きた文化的景観の一部である。
「こうした宗教的・精神的価値が、どのような手段を用いてでもこれらの地域を守ろうとする強い意思を形づくってきたのです。」
しかし、抵抗にはしばしば代償が伴う。
「彼らの地域で開発が進められ、文化や精神的価値を理由にそれを拒むと、彼らは犯罪者扱いされ、テロリストと見なされるのです。」
レイエスは、フィリピンの先住民族が直面する闘いは、世界各地の先住民族コミュニティが直面する課題と重なっていると指摘する。
世界的に、土地収奪は先住民族、牧畜民、小規模農民にとって深刻化する課題となっている。とりわけ途上国では、土地保有制度の脆弱さ、所有権に関する文書の不足、統治の失敗により、コミュニティは土地を奪われやすい状況に置かれている。
アフリカからアジア、中南米に至るまで、農地、鉱物資源、保全地域、大規模投資事業への需要の高まりが土地をめぐる競争を激化させ、地域コミュニティを政府や民間投資家と対立させるケースが増えている。
何世代にもわたって土地を占有し管理してきたコミュニティであっても、正式な権利証書を持たない場合が多い。そのため、有力な利害関係者が、疑わしい取引、汚職、法の抜け穴を通じて広大な土地を取得しやすくなっている。
東アフリカのタンザニアには、農業やその他の商業事業のために土地を求める外国投資家から大きな関心が寄せられてきた。しかし、土地保有の安全性が欠如しているため、多くの農村コミュニティが土地喪失の危険にさらされている。分析者によれば、一部の投資家は正式な取得手続きを迂回し、村の当局と直接交渉してきた。このことが紛争を助長し、信頼を損ない、土地収奪との非難を引き起こしている。
伝統的な土地保護の仕組みが弱体化する中、影響を受けるコミュニティは、権利を守り、祖先伝来の土地や共同体の土地に対する法的承認を得るため、裁判、抗議行動、参加型の土地地図化にますます頼るようになっている。
ブラジルでは、先住民族グループがアマゾンで違法伐採、採掘、森林破壊に直面し続ける一方、気候変動と関連する干ばつや火災の激化にも耐えている。
かつてスワジランドと呼ばれたエスワティニでは、農村コミュニティが、繰り返される干ばつ、水不足、農業生産性の低下に苦しむようになっている。
文化的背景には大きな違いがあるにもかかわらず、先住民族は共通の現実を抱えている。彼らは世界で最も生物多様性に富む景観の中に暮らす一方で、環境劣化と気候変動による混乱の最も重い負担を背負っているのである。
レイエスがいまGEF評議会で提起しているのは、まさにこうした懸念である。
「ここでの先住民族の役割は、先住民族コミュニティに影響を及ぼす事項について、評議会に助言することです。」と彼は言う。
重要な課題の一つは、GEFを通じて資金提供される事業が、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の原則を尊重するよう確保することである。
「私は、自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意を含む一定の権利について評議会に助言しています。どのGEF機関が実施する事業であっても、先住民族の領域に入る事業は、自由意思による事前の十分な情報に基づく同意を経なければなりません。」
GEF内で先住民族に対する認識が高まっていることは、重要な節目である。歴史的に、主要な環境資金機関は主に政府や国際機関によって設計され、先住民族が意思決定に参加する余地は限られていた。
今日では、先住民族代表が正式な助言の役割を担っている。これは、地球規模の環境目標は先住民族による管理なくして達成できないという、より広範な認識を反映している。
実際、レイエスは、先住民族はすでに世界で最も野心的な生物多様性目標の一つを上回っていると主張する。
昆明・モントリオール生物多様性枠組は、2030年までに地球上の陸域と水域の30%を保護することを求めている。
「しかし、それは先住民族によってすでに達成されています」とレイエスは言う。「現在、先住民族が管理している地域は、およそ32%から40%に達しています。」
言い換えれば、多くの先住民族コミュニティは、各国政府がようやく達成を目指し始めた規模で、生態系を守り続けてきたのである。
この成果は、数十億ドル規模のプログラムによって生まれたものではなく、文化、信仰体系、伝統的実践に根ざした何世紀にも及ぶ管理の積み重ねから生まれたものだとレイエスは強調する。
「先住民族の領域は、保護されてきた流域や山々によって、炭素を吸収する能力という点で最も大きな貢献をしています。」とレイエスは言う。
サマルカンドで代表団が資金配分の優先順位、生物多様性目標、気候への野心について議論する中、レイエスは簡潔で力強いメッセージを発している。
「気候であれ、生物多様性であれ、条約の締約国に申し上げたい。先住民族の領域は、地球の心臓を形づくっているのです。」
彼は一呼吸置き、その比喩をさらに広げた。
「人の心臓が破壊され、傷つけられれば、身体は崩壊します。それと同じように、先住民族の領域が傷つけられれば、生態系は崩壊し、生物多様性も崩壊するのです。」
フィリピンの森では、コミュニティが今もワシの導きを仰いでいる。その地では、この真実は長い間理解されてきた。
先住民族指導者たちがいま訴えている課題は、世界の残りの人々がその声に耳を傾けるようにすることである。
第8回地球環境ファシリティ総会は、2026年6月6日までウズベキスタンのサマルカンドで開催されている。本特集記事はGEFの支援を受けて掲載された。編集内容についてはIPSが単独で責任を負うものであり、必ずしもGEFの見解を反映するものではない。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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NPT再検討会議、合意に至らず閉幕――核の「取引」は一段と脆弱に
【国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】
核兵器不拡散条約(NPT)の第11回再検討会議は、最終文書に関する合意に至らないまま国連本部で閉幕した。4週間にわたる外交交渉は、世界の核秩序を支える主要条約がなお存続している一方で、かつてないほど大きな圧力にさらされている現実を改めて浮き彫りにした。|英語版|
4月27日から5月22日までニューヨークで開かれた同会議は、NPTの履行状況を検証する場であった。NPTは、核兵器を持たない国々が核兵器を開発しないことを約束し、核兵器国が核軍縮に取り組み、すべての国が保障措置の下で原子力の平和利用にアクセスできるという、基本的な取引の上に成り立っている。理論上、この条約は現代の国際安全保障において、今なお最も重要な合意の一つである。しかし2026年の再検討会議は、相互不信が深まり、戦争が続き、一部の国々が核兵器を廃絶すべき危険ではなく安全保障上の「保険」とみなす中で、この取引を維持することがいかに困難になっているかを示した。
結果は明白だった。合意には至らなかった。ベトナムのドー・フン・ビエット国連大使が議長を務めた会議では、内容を抑えた草案でさえ各国の一致を得られなかった。同大使はAP通信に対し、合意を阻んだ特定の一国があったわけではないと述べたが、主要な争点の一つとなったのは、イランが「核兵器の保有を目指し、開発し、取得することは決してできない」とする文言だった。この一文は単なる技術的な表現の問題にとどまらず、会議全体を貫く政治的亀裂を象徴する焦点となった。
イランは、自国だけが名指しされることに強く反発した。一方、米国などは、イランの核関連義務、透明性、ウラン濃縮、国際原子力機関(IAEA)との協力をめぐり、より強い文言を盛り込むよう求めた。これに対しイランは、自国の核施設への攻撃を指摘し、米国とイスラエルが国際法に違反し、自ら支持すると主張する合意そのものを損なっていると非難した。予想された展開だったとはいえ、会議にとって打撃は大きかった。すべての当事者に説明責任を求めることと、その説明責任が選択的に適用されているとの不信との間にある溝を、会議は埋めることができなかった。
問題はイランだけではなかった。イランは火元のすべてではなく、火花にすぎなかった。より根本的な問題は、NPTが現在、あまりにも多くの未解決の危機を同時に抱えていることにある。ウクライナ戦争と、ザポリージャ原子力発電所をはじめとする核関連施設周辺の危険は、2022年の再検討会議を決裂させる一因となった。
一方、中東における核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の設置に関する1995年の合意は、いまだ履行されておらず、重大な争点であり続けている。AUKUSは、海軍用原子力推進技術と保障措置をめぐる懸念をなお引き起こしている。北朝鮮は核兵器を保有したまま、依然として条約の枠外にある。中国の核戦力拡大、米ロ軍備管理体制の崩壊、そしてすべての核武装国による核戦力の近代化は、軍縮が意味ある方向へ進んでいるとの信頼を損なってきた。
今回の不調が重い意味を持つのはそのためである。NPT再検討会議が合意文書を採択できなかったのは、2015年、2022年に続き、これで3回連続となった。最終的なコンセンサス文書が採択されたのは2010年が最後である。会議の失敗は、ただちに条約の崩壊を意味するものではない。しかし、再検討プロセスそのものの信頼性が損なわれつつあることを示している。外交官たちは、NPTはいまなお世界の核秩序の土台であると言うことができるし、実際その通りでもある。だが、建物が崩れる前に、その土台にひびが入ることはある。
今回の会議から浮かび上がった最大の示唆は、非核兵器国の不満が高まっていることである。多くの国々は、明らかな二重基準が存在すると受け止めている。すなわち、非核兵器国はルールを守り、査察を受け入れ、核兵器を持たないことを求められる一方で、核兵器国は核戦力を近代化し、抑止戦略を拡大し、軍縮を先送りしているという認識である。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のような団体は、現実的な計画が欠如していることを批判し、核兵器国がより踏み込んだ約束に抵抗していると指摘している。こうした批判は、条約が今や核の特権を守る方向に大きく傾いていると考える非核兵器国の政府、とりわけそのような問題意識を持つ国々の間で、強い共感を呼ぶ可能性が高い。
アラブ諸国グループにとっても、今回の結果は中東問題を未解決のまま残すものとなった。1995年の中東決議は、周辺的な問題ではなかった。それは、NPTの無期限延長を可能にした政治的パッケージの一部だったのである。それから約30年が過ぎても、この地域にはなお、非核兵器地帯も、大量破壊兵器のない地帯も、イスラエルを含む合意された地域安全保障の枠組みも存在しない。中東における核兵器およびその他の大量破壊兵器のない地帯の設置をめぐる、国連決議に基づく年次会議プロセスは続いている。しかし2026年のNPT再検討会議は、アラブ諸国が期待していたような全会一致の支持を示すことはできなかった。この状況は、NPTがこの地域に対し、約束された政治的成果をもたらすことなく、忍耐だけを求めているとの認識をさらに強めるだろう。
今回の会議はまた、核施設への攻撃という問題にも改めて注目を向けさせた。これはもはや単なる技術的な安全上の問題ではない。今や、根本的な不拡散上の問題である。ウクライナやイランの核施設周辺での軍事活動は、NPT体制が容易には対処できない懸念を引き起こしている。核施設が戦闘における通常の攻撃対象となるなら、原子力の平和利用を保障するという約束を守ることは、はるかに困難になる。
一方、AUKUSが今回の会議を決裂させたわけではない。しかし、それはインド太平洋の将来にとって、引き続き重要な争点である。非核兵器国への原子力潜水艦技術の移転は、保障措置、先例、信頼をめぐる複雑な問題を提起している。オーストラリアは、NPTを完全に順守し続けると述べている。だが中国などは、そこに懸念すべき抜け穴を見ている。この問題は消えない。次の再検討サイクルでは、さらに重要性を増す可能性がある。
第三の教訓は厳しいが重要である。NPTは、ほぼすべての国がその枠内にとどまっているため、なお意義を持っている。しかし、その根底にある政治的取引は、ますます大きな圧力にさらされている。条約が存続しているのは、代替案がより悪いからである。だが、存続していることと健全であることは同じではない。
2026年再検討会議は、NPTを終わらせたわけではない。むしろ、外交上の言葉と戦略的現実との間に横たわる深い溝を浮き彫りにしたのである。各国は演説ではなお、この基本的な取引を称賛している。しかし、多くの国の行動は、核兵器の価値が以前にも増して高まっているかのように見える。そこに、この危機の核心的な矛盾がある。
結論を最も簡潔に言えば、NPTはなお存続しているが、それを支える信頼は失われつつある、ということだ。世界はニューヨークを後にするにあたり、より強固な核秩序を手にしたわけではない。残されたのは、もう一つの警告である。すなわち、軍縮、不拡散、地域安全保障が、選択的に取り上げられる論点ではなく、相互に結びついた義務として扱われなければ、次回の再検討会議はさらに厳しい問いに直面することになるだろう。それは、各国が文書に合意できるかどうかではない。そもそも各国が、NPTの根底にある取引をなお信じているのか、という問いである。
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