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ベレンに響く地球規模の警鐘
エネルギー多角化、気候資金、カーボンクレジット―COP30でネパールが優先課題を提示
【カトマンズNepali Times/INPS Japan=ソニア・アワレ】
ベレンで火曜日に開幕した第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)の全体会合で、ネパールはヒマラヤ水系の深刻な脆弱性を訴えた。ネパール代表として登壇したラジェンドラ・プラサド・ミシュラ外務省事務次官は、ブータン、バングラデシュと共に、適応資金を2015年比で3倍(年間1,200億ドル)に拡充し、国別貢献(NDC)実施に伴う資金アクセス手続きを大幅に簡素化するよう求めた。
「ブータンはすでに後発開発途上国(LDC)を卒業し、バングラデシュとネパールも近く卒業段階にあります。しかし、卒業は気候脆弱性の解消を意味しません。発展の成果を守るための支援規模は依然として不可欠です」とミシュラ氏は述べた。
損失と被害(Loss & Damage)基金が始動し、各国は500万〜2,000万ドル規模の申請が可能となったものの、災害と気候変動との因果関係立証は依然として課題が残る。
「200MW規模の発電所喪失はネパール経済に深刻な影響を与える。1MWの建設に2,000万ドルを要することを考慮すれば、氷河洪水による損壊は電力基盤全体に波及する」とエネルギー企業家クシャル・グルン氏は指摘した。
COP30はパリ協定10周年にあたる。最新分析では、各国がNDCを完全履行しても、2035年の排出削減は12%に留まり、1.5℃目標達成には40%削減が必要となる。「4℃上昇が見込まれた世界は2.5℃水準まで低下したが、さらなる削減努力は不可欠だ」とClimate Analytics South Asiaのマンジート・ダカール氏は述べた。
ネパールの第3次NDCは温室効果ガス純排出17.1%削減(2035年時点で26.8%)を掲げるが、費用は737億4,000万ドルに達し、国際気候資金への依存は避けられない。米国の再離脱や欧州資金の縮小傾向は、気候資金環境に追加的制約を生じさせている。
一方、中国とインドは再生可能エネルギー投資を拡大しており、中国は太陽光・風力・電動車(EV)製造で世界を主導し、ネパールもその供給網を活用している。氷河湖決壊洪水(GLOF)で脆弱性を露呈した水力偏重からの脱却は急務である。太陽光発電は432GWと水力の約10倍の潜在力を有し、年間300日超の発電可能日数が期待されるが、変動性電源であることから、大規模蓄電や揚水式貯蔵が不可欠となる。
7月の氷河洪水でボテコシ川沿いの発電所・変電所4か所が損壊し、昨年9月の洪水では国内総発電量の半分が一時停止するなど、水力依存のリスクはすでに顕在化している。電動車(EV)普及や家庭・公共部門の電化は排出削減に加え、年間3,000億ルピー規模の燃料輸入削減効果が見込まれる。
国連交渉の場では、単独での影響力確保は難しく、LDC卒業後はG77や山岳・氷河国連合など、目的を共有する協力枠組みの構築が鍵となる。「LDC特権が失われる一方、カーボンクレジット市場の透明性確保は国内で即時に進められる分野だ。」とグルン氏は述べた。(原文へ)
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ネベ・シャローム/ワーハト・アッサラーム:知られざるユダヤ人とアラブ人の共同社会の物語
【エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】
ネベ・シャローム/ワーハト・アッサラーム(ヘブライ語とアラビア語で「平和のオアシス」)は、イスラエルにおけるきわめて独自の共同体である。ユダヤ人とアラブ系市民が、完全な平等、共同所有、そして文化と教育を共有する生活を基盤に暮らす、世界で唯一の“計画的に築かれた”混住コミュニティだ。地域で最も多く研究され、象徴的意義の大きい共存プロジェクトとして広く知られている。
イスラエルの社会構成とアラブ系市民の役割
イスラエル中央統計局(CBS)が2025年9月末に発表したデータによると、人口1,000万人のうち、ユダヤ人は約776万人(78.5%)、アラブ系イスラエル市民は約213万人(21.5%)を占める。アラブ系の大多数はムスリムで、キリスト教徒は6.9%。
アラブ系市民は、弁護士、医師、薬剤師、教師だけでなく、建設業、農業、小売・卸売、運輸、サービス、観光など幅広い分野で働いている。また、国会議員(クネセト議員)や最高裁判事も存在する。
イスラエルには複数の混住都市があるが、ユダヤ人とアラブ人が平等な条件で共同体を“意図的に作った”例は、この村が唯一である。
それが ネベ・シャローム/ワーハト・アッサラームである。エルサレムから車でわずか20分の小さな村だが、その歴史は極めて特異である。この共同体は、“行政上の偶然”ではなく、あえて共に暮らすことを選んだユダヤ人とアラブ人の生活共同体として創設された。
SDGsとの関連
この村の理念と実践は、複数の国連持続可能な開発目標(SDGs)と密接に結びついている:
SDG 4:質の高い教育
SDG 10:不平等の是正
SDG 11:住み続けられるまちづくり
SDG 16:平和と公正、強い社会制度
SDG 17:パートナーシップ
1.始まりは“ひとりの修道士のビジョン”(1970年代初頭)
この共同体の発想者は、ユダヤ人の出自を持つドミニコ会修道士 ブルーノ・フッサール師であった。イスラエル・アラブ紛争に心を痛めていた彼は、1967年の六日戦争後、ユダヤ人・ムスリム・キリスト教徒が...
UNAIDSの早期閉鎖で脆弱層が苦境に陥る恐れ
【ブラチスラバIPS=エド・ホルト】
「すでに燃えている火に油を注ぐようなものです。」アディティア・タスリム氏はそう語る。
「私たちは年初の米国の資金削減による打撃から、いまだに回復できていません。国連合同エイズ計画(UNAIDS)が閉鎖されることになれば、状況はさらに悪化します。特に、薬物使用者を含むハイリスク層や、しばしば刑事罰の対象とされる集団にとって深刻です」と、国際薬物使用者ネットワーク(INPUD)のアドボカシー責任者であるタスリム氏はIPSの取材に対して語った。
こうした懸念は、世界のHIV活動家の間で広く共有されている。国連改革の進捗報告の中で、アントニオ・グテーレス国連事務総長が、国連の主たるHIV/AIDS対策機関であるUNAIDSを翌年に閉鎖する方針を9月に初めて示したためだ。
これまで、UNAIDSと理事会に参加する市民社会組織、専門家、各国政府は、2030年の現在のHIV目標の終了時をめどに、UNAIDSを段階的に移行させる「トランスフォーメーション計画」を進めてきた。にもかかわらず、なぜ2026年での閉鎖案が突然浮上したのかについて、いまも多くの関係者が説明を得られずにいる。
「現時点で混乱が大きいのは事実です。なぜ2026年が選ばれたのか、私たちにも判断材料がありません。すでに移行プロセスが進行していたことが影響している可能性はあります」と、UNAIDSプログラム部副事務局長のアンジェリ・アクレカル氏はIPSの取材に対して語った。
しかし、この提案は強い反発を招いている。UNAIDSプログラム調整委員会(PCB)のNGO代表団は、事務総長あてに見直しを求める書簡を提出し、これには1000を超えるNGOが賛同した。
これまでの成果が損なわれ、命が危険にさらされる恐れがある
多くの市民社会団体は、早期閉鎖が実施されれば、HIVとの闘いで積み重ねてきた前進が危機にさらされ、場合によっては不必要な死が生じると警告している。
「もし閉鎖されれば、予防と治療の効果は大きく低下し、完全に予防・治療可能な病気で人々が命を落とすことになります。UNAIDSの閉鎖は、HIV感染と死亡の増加につながるでしょう。」と、オランダのAidsfondsの戦略顧問ジュリア・ルコムニク氏はIPSの取材に対して語った。
1996年に活動を開始したUNAIDSは、国連機関の中でも特異な存在だ。理事会に市民社会組織が参加しており、現場で患者やハイリスク層を支援する団体が政策策定や実施に直接関与してきた。治療プロジェクトだけでなく、UNAIDSは多くの国で政府、地域当局、NGO、コミュニティを結ぶ重要な架け橋として機能してきた。
「もし2026年にUNAIDSが閉鎖されれば、影響は甚大です。特にベトナムのように、コミュニティ主導の組織がデータ、技術ガイダンス、調整、政策形成の場としてUNAIDSに依存している国では深刻です。」と、ベトナム最大級のLGBTQ+団体のひとつ、LighthouseVietnamのドアン・タイン・トゥン事務局長は語った。
多くの国でHIVとともに生きる人々(PLHIV)や、HIV流行の影響を強く受ける主要集団が差別や犯罪化に直面するなか、UNAIDSは人権擁護の中心的役割を果たしてきた。同機関は、性的少数者、薬物使用者、セックスワーカーなどの権利保護を支援し、各国で画期的な法律の制定にも寄与してきた。
「UNAIDSが存在しなければ、こうしたコミュニティは迅速に周縁化され、犯罪化の動きが加速するでしょう。UNAIDSが繰り返し示してきたとおり、権利侵害はHIV感染の増加を招きます。性的マイノリティやトランスジェンダーの人々を犯罪化すれば感染は拡大し、セックスワーカーを犯罪化すれば感染は拡大し、安全な薬物使用支援サービスを禁止すれば感染は拡大します」と、ルコムニク氏は語った。
「権利侵害が深刻化する中で、最も強力に人権を擁護してきた国連機関を閉じれば、権利侵害もHIV感染も増加を招くことになります」と述べた。
「UNAIDSがなくなれば、HIV流行の影響を強く受ける主要集団へのアドボカシーを誰が担うのか。政府に対して課題を明確に提起できる主体はどこに残るのか」と、UNAIDSアジア太平洋・東欧・中央アジア地域支援チーム長のイーモン・マーフィー氏は語った。
アクレカル氏もこう強調する。「私たちの重要な役割のひとつは、コミュニティの声を代弁することです。この声は地域・国家・世界レベルで守られなければなりません。」
さらにUNAIDSは、各国政府以上にコミュニティの状況を把握できる立場にあり、精密なデータ収集と分析を通じて、効果的な政策形成や目標設定を支えてきた。
「UNAIDSが提示した国際エイズ対応目標は、各国が戦略計画を策定し、実証に基づく介入を展開するための基盤となりました。」と、Pan African Positive Women’s Coalition – Zimbabwe(PAPWC)のカントリーディレクター、テンデイ・ウェスターホフ氏は語った。
「UNAIDSは各国の取り組みを監視する『Global Aids Programme』報告書を作成してきました。閉鎖されれば、各国の進捗監視に大きな空白が生じます。」
今年初め、国際HIV/AIDS対策資金の73%を担っていた米国が拠出を停止し、多くの現場組織が活動停止や閉鎖に追い込まれている。
UNAIDSの試算によれば、この資金削減により2029年までに新規HIV感染が約660万件、エイズ関連死が約420万件増加する可能性がある。
こうした状況下でUNAIDSを閉鎖すれば、特に資金逼迫に直面する国やコミュニティでは、HIV対応の持続性が一層損なわれる恐れがある。
「米国の突然の資金削減は、ハームリダクション(減害)サービスに深刻な打撃を与え、薬物使用者ネットワークの活動停止を招きました。UNAIDSまで閉鎖されれば、政府がサービスや支援を縮小する口実として利用されかねません。」と、タスリム氏は指摘する。
「低・中所得国では、薬物使用者を含む主要集団向けサービスの多くが国際支援に依存しています。UNAIDSを早期に閉鎖すれば、こうしたサービスは国家政策における優先度を大幅に失う可能性があります。」
トゥン氏も警鐘を鳴らす。「世界のHIV資金が縮小する中でUNAIDSを終結させれば、国際・地域間の連携やコミュニティ主導の参画が弱まり、データシステムの脆弱化を招き、長年の成果が失われる恐れがあります。」
とはいえ、活動家らは、この提案はまだ確定ではないと強調している。
「2026年にUNAIDSの機能を終結させる案は事務総長が提示したものですが、最終的な決定権はPCB(UNAIDSプログラム調整委員会)にあります。」と、ルコムニク氏は語った。
UNAIDS側は、機関自身がすでに抜本的改革プロセスを進めていた点を指摘する。PCBは2025〜27年の再編計画を承認し、2027年に進捗評価を実施し、2030年までに主要機能を国連諸機関および他のアクターに段階的に移管する構想を有していた。
その初期段階として、今年UNAIDSは世界の職員および事務所を50%以上削減する大規模な組織再編を開始した。
アクレカル氏はこう語る。「私たちの改革は、資金の不安定化に対応するためでもありますが、同時に、それ以前から不可欠とされていたものです。2030年以降、HIV対応が各国で持続的に担われる体制へ移行するためにも、機関の在り方を再設計する必要がありました。」
「グテーレス事務総長の提案が撤回されるかは現時点では不透明です。ただし、私たちが進めてきた改革計画と整合させる道は依然存在すると考えています。UNAIDSは変化そのものを恐れてはいません」と述べた。
もし閉鎖が現実化した場合、UNAIDSは他の国連機関や地域組織が役割を引き継ぎ、対策を維持することに期待を寄せている。
「UNAIDSはHIV対応の唯一ではなく一角を担う存在であり、他のアクターにも重要な役割があります。今後も国際的な連帯を維持し、最も重要な領域と当事者コミュニティを守っていかなければなりません」とアクレカル氏は語った。(原文へ)
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カヤックと朝日―共有経済が育むソチミルコの新しい水辺の風景
カヤックは、ソチミルコ(=メキシコシティ南部にある水郷地帯で、アステカ時代の「湖上都市」の面影を残す世界遺産)の運河を巡る際の従来のトラヒネラ(=カラフルで派手な装飾が施された平底舟)に代わる手段として広がりつつあり、地域社会で共有型経済モデルの重要な役割も果たしている。このモデルは、適正な雇用を生み出し、経済成長にも寄与している。
【メキシコシティINPS Japan=ギレルモ・アヤラ・アラニス】
夜明け前のソチミルコでは、運河が昼と夜の境界にそっと浮かんでいるかのようだ。薄い霧が水面を覆い、差し込み始めた陽光を受けて淡く光る。先住期から続くチナンパ(浮畑)が織りなす静かな景観の中、沈黙を破るのはカヤックのパドルが水を押す柔らかな音だけ。色鮮やかなトラヒネラ(平底舟)が動き始めるずっと前、この静かな時間帯に、環境に優しい新たな観光の形が静かに広がっている。
カヤックは、ソチミルコをより親密に、そして環境に配慮して楽しむ手段として人気が高まっている。小型で静か、かつ環境負荷が低いという特性が、共有経済モデルに基づく地域の取り組みと結びつき、若いガイドやチナンパ農家、生物保全の団体、家族経営の小規模事業者らが協力して世界遺産ソチミルコを守り、再生しようとする動きを後押ししている。
古層の景観を新たに体験する方法
何世代にもわたり、ソチミルコ観光といえばトラヒネラが主役だった。しかし近年、カヤックが独自の存在感を高めている。騒音やごみを出さず、大型船が入れない浅瀬や細い水路にも容易に入れる点が評価されている。地元住民にとっても、伝統的な観光を補完し、地域の収入源を多様化する持続可能な選択肢となりつつある。
この動きを先頭で導くのがロドリゴ・ナバである。仲間たちと立ち上げた「カヤック・アドベンチャーズ」は、わずか2年で地域屈指のガイドネットワークへと成長した。
「私たちの願いは、人々が自然や水、太陽とのつながりを取り戻すことです。」とロドリゴは語る。「ここで迎える朝日は、体験してはじめてその意味がわかります。静かな時間の中で、自分が景色の一部になったように感じられるのです。」
彼らのボートは安定感に優れ、操作もしやすい。初心者でも安心して参加できるよう工夫されている。また、安全面だけでなく、地域文化への敬意や環境意識を育むこともツアーの大切な柱となっている。
都市のストレスから逃れるために
参加者のひとり、メキシコシティ在住の医師リズベスは、貴重な休日を使って日の出ツアーに参加した。カヤックの上から望むイスタクシワトル火山の稜線は、刻一刻と光に染まっていった。
「都市の生活は混沌としていて、日々のストレスが当たり前になります」と彼女は話す。「でも、水面に昇る太陽を見ると、自然に感謝の気持ちが湧いてくるんです。」
同行した同僚のエスメラルダは「魔法のような朝だった」と振り返る。「4時に起きるのは大変ですが、それだけの価値があります。」
カヤック・アドベンチャーズの評判は国外にも広がり、キューバ、コロンビア、米国、ベネズエラなどから観光客を受け入れている。ガイドの中には英語や日本語を話せるスタッフもいる。初心者や水に不安を抱える参加者にも丁寧に寄り添い、安心して楽しめるようサポートしている。
「沈むのが怖いという方も多いですが、最初から最後まで支えます。」とロドリゴは話す。「長く抱えてきた恐怖を乗り越える人もいて、本当にやりがいを感じます。」
水上から広がる持続可能な発展
カヤックは単なる流行ではなく、家族の生計を支え、環境を守り、SDG8「働きがいも経済成長も」に沿う共有経済エコシステムの柱となっている。文化的価値と環境保全を調和させながら、地域に根ざした雇用を生み出している。
この協力的なモデルは、観光事業者、チナンパ農家、生態系保全団体、飲食店などを結びつけ、ソチミルコの繊細な環境を損なうことなく地域経済を強化する。
アホロートルを守る地域の取り組み
ソチミルコの象徴ともいえるのが、絶滅危惧種アホロートル(メキシコサンショウウオ)だ。再生能力の高さと神話的意味を持ち、古くから地域文化に根付いてきた。現在は運河環境の健全性を示す指標にもなっている。
生息地保全の中心を担うのが、アレハンドロ・コレア家が25年前に立ち上げた「アホロタリオ・アパントリ」だ。繁殖、研究、教育を通じてアホロートルの保全に取り組んでいる。
「先住文化にとって象徴的な存在です」とアレハンドロは語る。「かつては食用や薬としても利用されていましたが、長い間、人々の記憶から消えていました。今では保全活動のおかげで、再び注目され、保護の必要性が広く認識されるようになりました。」
自宅の上階にある選択繁殖センターでは、黒、ピンク、白化型、黄金色のザントフォア型まで、さまざまな系統のアホロートルを研究している。カヤック利用者の多くはこの施設を訪れ、エコツーリズムと教育的取り組みが直接結びついている。
食と農と協働の力
日の出ツアーとアホロートル見学を終えた多くの人々が向かうのが、カレン・ペレスの小さなレストランだ。メニューには、近隣チナンパで育てられたトウモロコシ、ビーツ、ニンジン、ホウレンソウ、ウチワサボテンなど、地域の恵みが並ぶ。
カレンは、共有経済モデルの効果を実感している。
「以前は皆が個別に働いていました。でも、協力した方がずっと良いと気づいたんです。花の生産者とも、カヤックのガイドとも連携し、みんなが行き来することでグループ全体が強くなります。」
彼女の店は、結婚式や誕生日会などの会場にもなり、カヤックで訪れたカップルのロマンチックなデートやプロポーズの舞台にもなっている。
外部からの悪質開発に立ち向かう
共有経済型の持続可能な観光が広がりつつある一方で、ソチミルコには外部投資家による開発圧力が高まっている。安価で買い取られたチナンパが大規模農地に転換されたり、騒音やごみの発生源となるレクリエーション施設に変わる事例が増えている。
こうした開発は、SDG8はもちろん、SDG11「住み続けられるまちづくりを」、SDG15「陸の豊かさも守ろう」にも深刻な悪影響を及ぼす。生態系の破壊、生物多様性の喪失、伝統農業の衰退など、影響は計り知れない。
その対極にあるのが、地域主体で運営される共有経済モデルである。文化と自然の両方を守りながら、雇用と地域の自立を持続的に支える仕組みとして注目されている。
協働と若い力が形づくる未来
この動きを特筆すべきものにしているのは、若い世代の主体性だ。カヤックガイド、代々チナンパを守る農家、地域密着型の事業者などが協力し、「外からの開発」に依存しない持続可能な経済モデルを築いている。
彼らは、大規模投資こそが発展の道という従来の考え方に異議を唱え、地域の英知と協力こそが未来をつくることを証明している。
カヤックは、その入口にすぎない。そこから広がるのは、共有の繁栄、文化継承、環境保全というより大きなビジョンである。
未来世代のために、夜明けを守る
ロドリゴにとって、日の出ツアーの仕事は単なる案内役ではない。毎朝、太陽が運河を照らし、チナンパが姿を現す瞬間に立ち会うことが、ソチミルコを守る意義を改めて感じさせてくれる。
訪問者にとっても、自然が静かに、しかし力強く語りかけてくるような時間だ。そのひとときに、ガイド、農家、研究者、飲食店主らの努力が結びつき、遺産と未来を両立させる持続可能な成長モデルが形となって現れる。(原文へ)
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