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国際的緊張が新たな核の脅威を招く
【ブリュッセルIPS=サミュエル・キング】
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が第62回ミュンヘン安全保障会議の開幕に際し、「戦後のルールに基づく秩序は、もはや存在しない」と語ったとき、その認識を裏づける現実はすでに十分に存在していた。イスラエルは国際法を無視してガザでジェノサイドを続け、ロシアは違法なウクライナ侵攻の開始から4年目に入っていた。ロシアと米国の間に残されていた最後の核軍備管理条約も失効し、米国は66の国際機関や国際的枠組みから離脱していた。
会議後には、イスラエルと米国がイランに対する新たな軍事行動に踏み切り、地域全体を巻き込む大規模紛争へ発展する危険が高まっている。一方、国連は深刻な資金難に直面し、職員や事業の削減を迫られている。米国国際開発庁(USAID)の資金に依存してきた市民社会組織もまた、存続の危機に立たされている。
1963年に大西洋横断の防衛会議として創設されたミュンヘン安全保障会議は、いまや国家元首や外相、市民社会、シンクタンク、メディアが一堂に会する、世界で最も重要な年次安全保障会議の一つとなっている。2026年会合は「破壊のただ中で(Under Destruction)」をテーマに掲げ、115カ国以上から1000人超が参加した。60人を超える各国首脳のほか、中国の王毅外相、米国のマルコ・ルビオ国務長官、複数の国連機関トップらも顔をそろえた。
会議の分析的な基盤となったのが『ミュンヘン安全保障報告書2026』である。同報告書は、世界が「レッキングボール(鉄球)政治」の時代に入ったと指摘した。そこでは、改革ではなく破壊を志向する政治勢力によって、1945年以降の国際秩序が打ち壊されつつあると論じている。報告書に盛り込まれた「ミュンヘン安全保障指数」も、その危機の深さを示していた。フランス、ドイツ、英国では、回答者の過半数が、自国政府の政策は将来世代を現在より悪い状況に追い込むと答えた。さらに、多くのBRICS諸国とG7諸国では、米国が「増大するリスク」と受け止められている。
会議を前に、各国の注目はルビオ国務長官の基調演説に集まっていた。前年、J・D・ヴァンス米副大統領は攻撃的な演説を行い、欧州各国政府が言論の自由を抑圧し、政治的過激主義に同調していると非難した。そこに自己矛盾への自覚は見られなかった。これに対し、ルビオ国務長官はより穏当な口調で、欧州を米国にとって「大切な同盟国であり、最も古い友人たち」と表現した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「大いに安心した」と述べ、会場の半数が立ち上がって拍手を送った。
だが、その演説の骨格は、前年にヴァンスが示した路線と変わらなかった。ルビオ国務長官は大西洋横断関係を、共有された民主主義制度や国際法ではなく、「キリスト教の信仰、文化、遺産、言語、祖先」によって定義したのである。この語り口は、グローバルサウスの参加者から強い反発を招いた。そこには、世界の多数派を排除しながら、グローバルノースの文化的・人種的優位を暗に示す含意があったからである。
トランプ政権は、ヴァンス副大統領の対決的な姿勢が裏目に出て、欧州を中国に接近させ、米国主導の構想への支持を得にくくしたと判断したのだろう。そこで政権は、メッセージ自体は維持したまま、より穏当な語り手へと前面を差し替えたのである。
ルビオ国務長官の会議後の日程は、現在の米国の優先順位を端的に示していた。彼はミュンヘンを離れると直ちにブダペストとブラチスラバを訪れ、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相、スロバキアのロベルト・フィツォ首相という2人のナショナリスト指導者と会談した。いずれも親トランプであり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対しても融和的な立場を取ってきた人物である。トランプ政権が欧州における真の同盟相手とみなしているのは、こうした政治勢力なのだ。さらに米国は、欧州各地の右派系シンクタンクや慈善団体への資金提供も計画しており、大陸の政治に公然と影響力を及ぼそうとしている。
メルツ首相の現状認識は、歴史的であると同時に憂慮すべき動きを促した。メルツ首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、フランスの「核の傘」を欧州の他国にも拡大する可能性について協議を始めたと明らかにしたのである。ほんの1年前なら想像しにくかった展開である。欧州諸国は長らく、安全保障をNATOと、その集団防衛義務を定めた第5条に依拠してきた。だがトランプ政権は、その第5条を尊重しない可能性を示唆しており、欧州諸国はNATO依存から脱却するための、長く高コストな道を歩み始めている。いまや、その模索は核抑止の代替策にまで及びつつある。
フォン・デア・ライエン欧州委員長はこれを「欧州の目覚め」と呼び、「相互防衛条項」を具体化すべきだと訴えた。英国のキア・スターマー首相は「ハードパワー」と、必要であれば戦う覚悟を持つ必要性を強調した。ポーランドの民族主義的なカロル・ナヴロツキ大統領は、自国が核兵器を持つべきだとまで語った。こうした反応は、多国間秩序の動揺に対応するどころか、戦後秩序がかろうじて支えてきた不拡散と軍備管理の規範そのものをさらに損なう危険をはらんでいる。危機に対して第二の核軍拡競争で応じれば、不安定さはいっそう増すだろう。この点で警鐘を鳴らした欧州首脳は、会議の場ではスペインのペドロ・サンチェス首相ただ一人だった。
会議の総括として示されたのは、国際秩序を守ろうとする者は、今日の現実に即し、人々に対して説明責任を負う新たな制度や連合、枠組みを築かなければならないという認識である。しかし、一見妥当に見えるこの整理は、いくつかの根本的な問いを脇へ退けている。そうした制度は誰の利益に奉仕するのか。新たな設計図が描かれるとき、誰がそこから排除されるのか、という問いである。
欧州諸国が米国との従来の同盟関係の動揺に応答するのであれば、それは新たな核軍拡競争ではなく、人権、真の多国間主義、そして国際法への確固たるコミットメントに根ざすべきである。そのためには、市民社会が交渉の場に対等な主体として参画しなければならない。
旧秩序が壊れていることは、もはや明らかである。人権を擁護し、軍事化と露骨な力の政治に反対する人々は、もはや傍観者でいることはできない。その応答は、より断固たるものであると同時に、より包摂的でなければならない。市民社会を排除し、グローバルサウスを周縁化したまま築かれる新たな国際秩序は、今日の危機に対応できなかった古い構造を、ただ再生産するにとどまるだろう。(原文へ)
サミュエル・キングは、市民社会世界連盟CIVICUSで、ホライズン・ヨーロッパの資金提供を受ける研究プロジェクト「ENSURED(移行期の世界に向けた協力形成)」に携わる研究者である。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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アスタナのナウルズ舞踏会、外交・伝統・再生を鮮やかに体現
【アスタナThe Astana Times=アイマン・ナキスペコワ】
カザフスタンの首都アスタナで3月16日、ナウルズ舞踏会が開催された。カザフスタンの豊かな歴史的遺産、民族の伝統、そして現代の社会発展を紹介しつつ、文化・人道対話の場としても機能した特別行事である。会場には、在カザフスタン外交団のメンバーをはじめ、国際機関や外国の協力機関の代表者らが集った。
テーマ別の展示では、ナウルズが「再生」「調和」「善行」「精神的伝統への敬意」を象徴する祝祭であることが外交関係者らに紹介された。来場者はまた、アルカン・タルトゥ(綱引き)や、羊の膝関節の骨を使った遊びであるアッスィク・アトゥなど、伝統的な遊戯や競技にも参加した。
アイダ・バラエワ副首相兼文化・情報相は、今年のナウルズの祝賀が、国内の大きな政治的出来事の直後に行われたことの象徴的意義を強調した。
「今年のナウルズは、わが国にとって重要な歴史的瞬間と重なった。まさに前日、国民投票が実施され、国民は新しい憲法を選び、国家発展の将来の方向性を定めた。国民は、公正、進歩、教育、科学、そしてイノベーションに基づく未来に票を投じた」と同氏は述べた。
バラエワ氏は、新憲法が社会発展に向けた新たな価値観を打ち立てており、その中には、歴史・文化遺産の保全や民族の伝統への敬意が、国家政策の重要原則として盛り込まれていると強調した。
「国民的アイデンティティーの保持、世代間の継承、そして文化的価値の次世代への伝達は、これらの憲法規範の深い意味を映し出している。文化遺産は単なる過去の記憶ではなく、国家の精神的基盤であり、社会を結びつける価値の土台でもある。カザフスタンは常に、諸民族の友好と文明間対話を重視してきた」と同氏は語った。
アリベク・バカエフ外務次官は、ナウルズが諸国を結びつけ、相互理解を強める文化外交の要素として果たす役割を強調した。
「ナウルズは、自然の再生と生命の刷新を象徴している。2009年には、ユネスコがナウルズを無形文化遺産の一覧に登録し、私たちの共有された遺産の重要な一部として認めた」と同氏は述べた。
バカエフ氏によれば、この祝祭が体現する再生、調和、創造という理念は、国際協力と対話の基盤を成す価値観そのものである。
会場ではまた、全国的に10日間にわたって行われるナウルズ祝祭「ナウルズナマ」の伝統も紹介された。プログラムでは、長い冬の後の挨拶と再会を祝うコリスの日、親切と慈善を重んじるカイリムドゥリクの日、そして文化と民族伝統の日など、祭りを構成するさまざまな日が取り上げられた。
さらに、子どもが初めて歩こうとする節目を祝う伝統儀礼トゥサウケスも披露された。この儀礼では、子どもの足に結ばれた特別なひもを切り、将来その子が優雅に歩み、すばやく走れるよう願いを込める。
国際移住機関(IOM)のセルハン・アクトプラク代表は、ナウルズが今なお文化的アイデンティティーの重要な一部であり続けていると語った。
「ナウルズは、今日そして未来に向けて、私たちを自らのルーツと結びつけてくれる。この祝祭は自然のよみがえりと季節の移り変わりを象徴しており、新たな循環の始まりを祝ううえで大きな意味を持つ」とアクトプラク氏は『The Astana Times』に語った。
同氏はさらに、ナウルズナマの各日にはそれぞれ独自の意味があり、それらが一体となって調和、団結、そして伝統の継承を映し出していると付け加えた。
Original URL:https://astanatimes.com/2026/03/nauryz-ball-in-astana-highlights-diplomacy-tradition-and-renewal/
INPS Japan/The Astana Times
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ベネズエラ、岐路に立つ
【ウルグアイ・モンテビデオIPS=イネス・M・ポウサデラ】
米特殊部隊は1月3日、カラカスの大統領公邸でニコラス・マドゥロ大統領と妻を拘束し、連行した。その過程で、ベネズエラの治安要員少なくとも24人と、キューバの情報要員32人が死亡した。
これを受け、ベネズエラの反体制派の一部は一瞬、希望を抱いた。2024年7月の選挙で敗れながら権力に居座り、民主的移行が阻まれてきた状況を、米国の介入がついに動かすのではないか――との見方が出たためだ。
だが、その期待は数時間で打ち砕かれた。トランプ大統領は、米国が今後ベネズエラを「運営する」と発表し、副大統領のデルシー・ロドリゲスが後任として宣誓就任した。主権は一度ならず二度、踏みにじられた。民意を簒奪した権威主義体制によって、そして国際法を意図的に破った外部勢力によってである。
冷笑的な介入
トランプ政権の下で、米国は民主主義を掲げる建前すら後景に退けた。介入は「麻薬対策作戦」を名目に正当化されたが、トランプはベネズエラの石油埋蔵量やレアアース(希土類)鉱床、投資機会への関心を隠さなかった。優先順位は一貫して、米国の地域覇権である。ベネズエラ国民の自己決定権への軽視も露骨だった。反体制派指導者マリア・コリナ・マチャドについて問われると、トランプは「敬意」や「指導力の器」に欠けるとして退けた。ベネズエラの民主化運動に対し、米国の関心は原則ではなく利害にある――そう受け取らざるを得ない発言であった。
皮肉にも、この介入は、マドゥロが長年の宣伝でも作り出せなかった効果をもたらし、反帝国主義の言説に再び勢いを与えた。ラテンアメリカの権威主義体制は従来、米国介入の脅威を口実に弾圧を正当化してきたが、それは主として過去の歴史に根差す主張でもあった。ところが今回、トランプはその「過去」を現在の現実に変え、独裁者たちに権威主義支配を継続するための格好の口実を与えた。
国際社会の反応も同様に示唆に富むものだった。国家主権を最も強く擁護したのは、中国、イラン、ロシアといった権威主義国家である。自国民の権利を日常的に侵害しているにもかかわらず、これらの国々は「ベネズエラの人々との連帯」を表明し、国際法の擁護者を自任した。戦後(1945年以降)の国際秩序の基礎原則を公然と踏みにじったのはトランプであり、その結果、世界でも最も抑圧的な体制の指導者たちが、相対的に理性的な存在に見えてしまう状況が生まれた。こうしてラテンアメリカ全域で政治議論の焦点も大きく移り、いまや問われているのは「ベネズエラの民主主義をいかに回復するか」ではなく、「次なる米国の軍事介入をいかに防ぐか」となっている。
権威主義は続く
一方で、ベネズエラの権威主義体制は崩れていない。マドゥロはニューヨークの法廷に立っているかもしれないが、彼を支えた構造――腐敗した軍、キューバ情報機関の浸透、恩顧主義のネットワーク、抑圧装置――は手つかずのままだ。ロドリゲスは選挙を避けるため、「マドゥロがいつでも戻り得る」との含みを口実に時間を稼ぎつつ、米企業との石油取引を水面下で進め、権威主義的支配の再強化を図る可能性が高い。ロドリゲスにとってもトランプにとっても、民主主義は資源権益の確保にとっての障害に映る。
ベネズエラの市民社会にとって、これは深刻なジレンマである。宣誓就任の場でロドリゲスは、自身を権力の座に押し上げた作戦を非難し、ベネズエラは「いかなる帝国の植民地にも二度となることはない」と誓った。国旗を前面に掲げ、体制の継続を「西側帝国主義への愛国的抵抗」と位置づけたのである。
この構図では、かねて民主化のための国際的圧力を訴えてきた反体制派の活動家は、外国勢力と結託する「反逆者」として描かれやすくなる。だがその一方で、ロドリゲス自身は、キューバ情報機関の関与やイランの石油関係者、ロシアの軍事顧問を受け入れてきた体制の中枢にいた人物でもある。しかも今や米国との石油取引を交渉し、民間投資を可能にする法改正まで約束することで、自ら掲げた「越えてはならない一線」を踏み越えつつある。
ベネズエラのためのベネズエラの解決策
ただし、体制には綻びの兆しもある。マドゥロの不在によって、与党内の摩擦が表面化した。たとえば、800人を超える政治犯の釈放要求にどう応じるかをめぐり、対応方針の対立が見えている。これは民主化勢力にとって、状況を動かし得る余地になり得る。
いまこそ民主的反体制派は、主導権を取り戻すべきだ。介入直後、政治犯の家族は収容施設の前で夜通しの抗議行動を行い、釈放を求めた。政府が応じたのは一部にとどまっている。市民社会はこうした声を増幅し、移行に必要なのは単なる「顔ぶれの交代」ではなく、抑圧装置の解体であることを明確にしなければならない。
市民社会組織の幅広い連合は、民主的移行への道筋を示す10項目の要求を発表した。求めているのは、政治犯の即時・無条件の釈放、不正規武装集団の解体、人権監視団と人道支援の制約のない受け入れ、そして何より、国際監視団の下での自由で公正な大統領選挙である。これらは石油契約の条件としてではなく、ベネズエラを代表すると名乗るいかなる政府にとっても譲れない最低条件として、国際社会が支持すべき要求である。
ベネズエラの民主勢力の前には、二つの道がある。トランプとロドリゲスが資源を切り分けるのを傍観し、周縁化を受け入れるのか。あるいは、この混乱の局面を利用して、真にベネズエラ自身の民主化の課題を前に進めるのか。必要なのは、マドゥロの権威主義とトランプの介入の双方を退け、ロドリゲス政権が主張するいかなる正統性も、米軍や石油契約ではなく、有権者の意思からのみ生まれるべきだと突きつけることである。だが、機会の窓は急速に閉じつつあるかもしれない。問われているのは、民主化運動がその瞬間をつかみ、長く希求してきた国を築けるのか、それとも他者に運命を委ねる「観客」にとどまるのか、である。(原文へ)
イネス・M・ポウサデラはCIVICUS(シビカス)調査・分析部長。CIVICUS Lens共同ディレクター兼ライターで、「市民社会報告書(State of Civil Society Report)」の共著者でもある。ウルグアイのオルト大学(Universidad ORT Uruguay)で比較政治学教授を務める。取材・問い合わせ:research@civicus.org
INPS Japan/IPS...
タンザニアの学校、クリーン・クッキング推進へ「エネルギークラブ」を設立
【タンザニア・ドドマIPS=キジト・マコエ】
白いコック帽に色あせたエプロン姿のマリア・ジョセフさんが、タイル張りの厨房の床にしっかりと足を踏ん張る。巨大なアルミ鍋から立ちのぼる湯気のなか、彼女は両手で木製のへらを握り、鍋底で焦げつきかけた米を力強くかき返していく。|英語版|
手首を返すたび、鍋底の米が上へと返され、規則正しく混ざり合っていく。米はやわらかな波のように揺れるが、鍋の縁からこぼれることはない。額には汗がにじみ、湯気が顔を包む。それでも彼女はひるまない。鍋の縁に沿ってへらを走らせ、正確な手つきで丁寧にこそげ取っていく。
だが、少し前まで、タンザニアの首都ドドマにあるブンゲ女子中等学校のこの厨房は、煙に包まれていた。空気は目を刺し、喉を締めつけた。昼になる頃には、パチパチと燃える薪の前に何時間も立ち続けたせいで、彼女の声はかすれていた。
「煙が本当にひどかったです」と彼女は語る。
「しかも、食事の準備にとても時間がかかっていました。」と振り返る。
その安堵の表情は、厨房の外へと広がる、より大きな物語を物語っている。
生徒たちによる働きかけ
ブンゲ女子中等学校は、クリーン・クッキング・エネルギーの普及を進めるより広範な取り組みの一環として、生徒主導の「エネルギー・クリーン・クッキングクラブ」を立ち上げた。これは、汚染をもたらす燃料からの脱却を目指す国の取り組みの中で、10代の女子生徒たちをその担い手の前面に据える試みである。この取り組みは、日々の暮らしの経験と政策改革を結びつけるものであり、持続可能な開発目標(SDGs)の理念とも密接に結びついている。
手頃でよりクリーンな燃料の普及を通じて、このクラブは目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を後押ししている。毎年数千人のタンザニア人の命を奪っている室内空気汚染に取り組むことで、目標3「すべての人に健康と福祉を」にも貢献する。また、薪集めや煙にさらされる負担が女性や少女に偏っている現状を和らげることで、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を支えている。
さらに、学校生活の中にエネルギー・リテラシーを取り入れることは、目標4「質の高い教育をみんなに」の達成にもつながる。木炭への依存を減らすことは、森林破壊の抑制を通じて目標13「気候変動に具体的な対策を」と目標15「陸の豊かさも守ろう」に資する。政府、学校、民間の連携によって進められている点で、この取り組みは目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」も体現している。
このクラブの際立った特徴は、これまで省庁の会議室で語られてきたクリーン・クッキングの議論を、10代の少女たち自身の実践へと移した点にある。
バイオマス依存の高い代償
リチャード・ムサナ校長は、旧来の方式がもたらしていた負担をよく覚えている。
「薪を使っていた頃は、わずか3カ月で1050万タンザニア・シリング(約4000米ドル)を支出していました。学校にとって大きな負担でした」と彼は語る。
負担軽減を求めて、学校は改良型木炭へと切り替えた。煙はやや減ったが、費用は依然として高かった。
「改良型木炭でも、毎月約275万3334タンザニア・シリング(約1000米ドル)かかっていました」とムサナ校長は言う。「それでも高すぎました。」
転機となったのは、政府のクリーン・クッキング推進策であった。エネルギー省の支援を受けた官民連携により、学校は液化石油ガス(LPG)システムを導入した。現在では、1トンのガスで2カ月間まかなえるという。
「ガスを使うことで、月々の費用は275万3334シリングから135万5300シリング(約500米ドル)にまで減りました」とムサナ校長は話す。「大きな節約になっています。このエネルギーは利用者に優しく、特に調理師たちにとって助かっています。」
改修された厨房の内部では、すすで黒ずんでいた壁がきれいにされ、鍋はパチパチと燃える炭火ではなく、制御された青い炎の上で煮立っている。
再びコンロの前に立つマリアさんは、鍋のふたを持ち上げ、さらに勢いよく立ち上る蒸気を逃がした。
「この近代的なコンロで料理するのが好きです」と彼女は言う。「煙が出ないし、もう目がかゆくなりません。」
国家目標
クラブ発足式で、サロメ・マカンバ・エネルギー副大臣は政府の目標を明らかにした。
「私たちの目標は、2030年までにすべての家庭とすべての施設がクリーン・クッキング・エネルギーを利用するようにすることです」と彼女は述べた。「クリーン・クッキング・エネルギーの利用率は、2021年の6.9%から、2025年現在では23.2%にまで伸びています。」
この取り組みは、まさに時宜を得たものである。2024年に開催された「アフリカ・クリーン・クッキング・サミット」では、汚染燃料からの転換を加速させるため、世界の指導者たちが過去最高となる22億米ドルの拠出を約束した。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界では依然として推計23億人が汚染燃料で調理している。サハラ以南アフリカでは、バイオマスへの依存が依然として支配的であり、森林破壊、室内空気汚染、炭素排出の増加を招いている。
タンザニアでは、施設部門の遅れが際立っている。学校、病院、刑務所など、1日100人以上に食事を提供する3万を超える大規模施設のうち、クリーン・クッキング・システムを導入しているのはわずか1136施設にすぎない。残る施設の多くは、依然としてバイオマスに頼っている。
教科書から台所へ
学校の中庭では、エネルギー・クリーン・クッキングクラブのメンバーたちが日常的に集まっている。ノートと計量カップを手に、木炭とガスでの沸騰時間を比較し、家庭で木炭にかかる費用を計算し、換気の悪い厨房で煙がどのようにたまるかを示す図を描いている。
「両親は、ガスは高すぎると思っています」と話すのは、5年生のレヘマ・マリヤさん。「でも、毎週木炭にいくら使っているのかを見せると、考え方が変わり始めます。」
16歳のリリアン・マサウェさんにとって、この問題は個人的な意味を持つ。
「もし祖母がもっと良い調理用コンロを使っていたら、毎晩せき込むこともなかったはずです」と彼女は言う。
政府統計によれば、タンザニアでは伝統的な調理法に起因する家庭内空気汚染によって、年間推計3万3000人が命を落としている。最も大きな影響を受けるのは女性と子どもたちである。
薪集めは、女性や少女を暴力の危険にさらす。母親の背中におぶわれた乳児は、換気の悪い台所で有害な煙を吸い込む。多くの家庭にとって、木炭は好みではなく、貧困と限られたインフラによって選ばざるを得ない現実なのである。
転換を支える資金調達
当局者らは、鍵となるのは手ごろな価格だと指摘する。マイクロクレジットや従量払い方式を通じて、各家庭は改良型コンロやLPGシステムを、初期費用の全額を一度に支払うことなく導入できる。
この転換はまた、特に女性にとって、クリーン・クッキング技術の販売や整備に携わる経済的機会とも見なされている。
「クリーン・クッキングへの移行は、政府だけの事業ではありません」と、クラブ発足後にマカンバ副大臣は語った。「市民、学校、宗教団体、地域の指導者たちの参加が必要です。」
一歩を踏み出す世代
再び学校の中庭。午後のベルが鳴っても、議論は続いていた。
「エネルギーは、単なる電気のことではありません」と、ある生徒は言う。「健康や森林、気候、そして私たちの母親たちに関わることなのです。」
クラブのメンバーたちは各家庭からデータを集めており、その結果を地元当局に提示する計画である。多くの生徒にとって、この活動は極めて個人的な意味を持つ。
「煙がなぜ危険なのかを母に説明すると、母はこれまでとは違う受け止め方をしてくれます」と、クリーン・クッキング推進役の一人であるスザンナ・キボナさんは話す。
タンザニアのクリーン・クッキングへの移行は、単にコンロを置き換えることではない。それは、習慣を変え、知識を広げ、日々の暮らしを形づくる意思決定への参加を広げることでもある。
ブンゲ女子中等学校では、かつて政策決定者だけのものだった議論に、10代の少女たちが加わり始めている。彼女たちは、台所の煙を気候変動への公約と結びつけ、家庭の支出を国家の改革へとつなげている。
「私たちは、明日のより良いリーダーになるための準備をしています」とマリヤさんは語った。
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