Error 404 - not found

We couldn't find what you're looking for. Browse our latest stories or try searching using the form below:

Browse our exclusive articles!

|視点|グワダルにおける米国の戦略転換(ドスト・バレシュバロチスタン大学教授)

【ケッタ(パキスタン)London Post=ドスト・バレシュ】 ティム・マーシャルは著書『Prisoners of Geography』の中で、「バロチスタンなくしてパキスタンはない」と主張している。また、パキスタンのカマル・ジャベド・バジュワ元陸軍参謀総長も、「パキスタンはバロチスタンなしでは不完全だ」と述べている。インド洋に近いという理由で、バロチスタンの重要性は21世紀にさらに高まるだろう。第一次世界大戦と第二次世界大戦は大西洋と太平洋に端を発している。21世紀はインド洋の世紀であり、インド洋を支配する国がアジアを支配する。中国や米国といった大国は、表向きはバロチスタンに執着している。 こうした中、ドナルド・ブローム米国大使が「港湾運営と開発計画、地域の物流ハブとしての港町グワダルの可能性、パキスタン最大の輸出市場である米国との接続方法について学ぶため」として2023年9月12日にグワダルを訪れた。パキスタン海軍西軍司令部との会談で、ブローム大使は地域問題について話し合い、今後数年間におけるパートナーシップの継続を強調した。 ブローム大使のグワダル訪問は興味深い議論を引き起こした。専門家の中には、今回の訪問はパキスタンにとって、この地域の地政学的状況をポジティブな方向に進めるうえで前向きな動きだと主張する者もいる。一方で、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)(=一帯一路構想で計画される6つの経済回廊の一つ。 中国の新疆ウイグル自治区のカシュガルから中パ国境の標高4693mのフンジュラーブ峠を通り、パキスタンのアラビア海沿岸にあるグワダル港を結ぶパキスタンを北から南まで縦断する全長約2000キロの巨大経済インフラプロジェクト)との関連から中国を苛立たせることになると考える者もいる。今回の訪問には利点も欠点もあるようだ。グワダルが経済ベンチャーであることは間違いない。パキスタンが先進国に投資を呼びかければ呼びかけるほど、国は最大の利益を得ることになる。CPECとグワダルの専門家であるマクブール・アフリディ大佐は、米国はグワダルに投資すべきだと述べている。米中二国間の貿易額は年間7100億ドルを超えている。米中双方がビジネス活動に携わっているのであれば、(パキスタンが)米国にグワダルへの投資を呼びかけることに何の問題もないというわけだ。 「グワダル国際都市を宣言したパキスタンは、先進国に投資を呼びかける必要がある。米国にとってのビジネスチャンスを制限することは、パキスタン経済に損害をもたらすことになる。米中の対立によってパキスタンが苦しむことがあってはならない。米中両国から利益を得ることが国益にかなうのだ。米国のグワダルへの投資は、欧州連合(EU)、日本、韓国、カナダ、オーストラリアからの投資への道を開くだろう。」とアフリディ大佐は付け加えた。パキスタンは、地理的位置、グワダルの潜在力、人的資源、天然資源を含む4つの重要な潜在力に恵まれている。こうした要因が、米中両政府によるパキスタン政府との友好関係構築を促す背景にある。 一方、米国は中国による開発を監視しながら、グワダルでの影響力を加速させようとしている。おそらく米国の要請を受けたサウジアラビアは、グワダルに製油所を設置しようとしたのだろう。米国政府はNGOの協力を得て、同市の教育・社会部門で活動を開始した。グワダル大学では、米国大使館が研究プロジェクトを立ち上げた。NGOと協力して、米国は社会的・教育的活動を実施している。これはグワダルで初めての新しい試みである。 米国は文化的・教育的イニシアティブに投資し、識字率を高め、バローチ語や様々な現地語の教材を作ろうとしている。また、中国がバロチスタンで安全保障上の課題や好ましくないイメージに苦しんでいる時期を利用して、積極的に自らのイメージを高める戦略を展開している。米国は、中国を権威主義政権と呼び、一帯一路(BRI)の下で債務の罠政策を推進し、新疆ウイグル自治区で人権侵害を引き起こしているとして、いたずらに中国に対するイデオロギー戦争を始めている。米国は、バローチ人が中国に対して良いイメージを持っていないという事実を十分に認識しており、中国に対する否定的な世論を広めようとしている。現地の人々は今、米国が中断を伴いながら様々な支援プロジェクトに関与しているのを見て困惑している。ブローム大使の訪問後、地元の民衆は、グワダル市が米中間の新たな対立の舞台になるのではと感じている。 米国は依然としてCPECに懐疑的で、グワダル港を海軍基地にすることで、中国が軍事利用するかもしれないと考えている。多くの専門家によれば、米国はグワダル港に進出することで、ホルムズ海峡での支配力を強化し、この地域におけるイランの影響力を牽制したいのだという。現在の国際政治では、インド、サウジアラビア、ブラジルといった中堅国が、米中の大国間競争から最大の利益を得ている。これらの当事者は大国間競争を利用し、米国にも中国にも全面的に依存することを避ける傾向にある。パキスタンは、米国大使をグワダルに招くことで、米中の綱引きから最大限の影響力を得ようとする中堅国の道を歩む可能性が極めて高い。 パキスタンはその歴史を通じて、国内の経済発展に取り組むことに失敗してきた。戦争経済の状態が今日も続いている。大国間の対立があるたびに、パキスタンは経済と安全保障の恩恵を受けるためにブロック政治の一部となってきた。安全保障と経済という2つの課題を平行して進めなければならないこの国が、予見可能な課題に対処するのは大変なことだ。パキスタンは従来のアプローチを採用すべきではない。時代は変わり、知識経済、産業化、地域連携の時代となった。政府は、グワダルを含む国内への投資を米国と中国双方に呼びかけ、これらのプロジェクトの発展を支援する計画を立てるべきだ。逆説的だが、もしパキスタン政府が中国の政策に同調すれば、米国はIMF(国際通貨基金)を通じて圧力をかけるだろう。米国政府はIMFを政治的手段として利用している。そのため、パキスタンはア米国の重要性を過小評価することはできない。 現実的に言えば、世界は変貌を遂げ、アジアの世紀となり、パワーバランスはイデオロギー的にも物質的にも、西洋から東洋へと移行しつつある。中国の台頭は驚くべき現象であり、弾丸を発射することなく大国の地位を獲得した唯一の新興大国である。中国政府は援助の代わりに投資を提供し、対立よりも平和を促進しようとしている。最終的な分析によれば、南アジアは、冷戦と、米国に支えられた対テロ戦争に引き起こされた未曾有の荒廃を目の当たりにしてきた。グローバリゼーションの時代に冷戦的な思考を捨て去ることは、世界平和の必須条件である。現在の大国間競争において中立を保つことは、パキスタンにとって唯一かつ最適な選択であり、中国よりも米国を優先することは逆効果である。(原文へ) *著者のドスト・バレシュ博士は、バロチスタン大学クエッタ校で国際関係を教えている。 INPS Japan 関連記事: アフガン・パラドックス:カブール陥落後の 中国、インド、そしてユーラシアの未来 サイクロンとモンスーンの季節に直面するパキスタンで食糧不安の恐れ |パキスタン|「天国」に拾われるのは貧しい若者だけ

|ルワンダ |荒廃から立ち直った国

【ブラゴエフグラード(ブルガリア)IPS=マージ・エンサイン】 パレスチナのガザ地区やウクライナ、そして報道される機会が圧倒的に少ない世界各地の紛争地帯の先行きが混迷を深める中、荒廃から立ち直った国の驚くべきサクセスストーリーを思い起こすことは有益かもしれない。すなわち ルワンダの事例である。 ルワンダのツチ族に対する大量虐殺(ジェノサイド)は30年前の今週始まった。死者の数は、今日のガザよりも桁違いに多かった。50万人から100万人のルワンダ人が、3カ月足らずの間に虐殺され、集団墓地はいまだに発掘されている。 当時米国は、犠牲者を「戦争の犠牲者」とみなし、「ジェノサイド」という言葉を使うことを拒否した。死者の数が増えるのを傍観していたのだ。これは、今日のガザに関する米国の声明や行動と不穏な共通点がある。実際、米国は殺戮を止めようとする努力を妨害した。国連平和維持軍を排除しようとする動きを主導し、国連による増援の承認を阻止した。ルワンダの人々を運命に委ねる決断を下したようだった。 ジェノサイドの後、何が起こったかは誰も予想できなかった。1994年以降、ジェノサイドを生きのびた人々と攻撃に参加した人々の間の和解が成立した。平均寿命は2倍以上に伸びた。事実、今日ではルワンダの人口の実に98%が健康保険に加入している。 100万人のルワンダ国民が貧困から脱却した。ルワンダは現在、社会経済開発においてアフリカ大陸をリードする国となっている。また、ビジネスや投資のしやすさにおいて、最高位にランクされている。 また、ルワンダは、正義の追求、貧困との闘い、ジェンダーの平等と市民参加を促進するための自国の解決策をモデル化し、アフリカをリードしている。現在、国会では女性が多数を占めている。 これらすべては30年前には想像もできなかったことだ。それがなぜ起こったのか? 殺戮が止むと、ルワンダは正義を求め、新たな指導者にジェノサイド後の進展に対する責任を負わせるための創造的なビジョンと新たな方法を見出した。ルワンダのガカカ法廷(=正義を貫くと同時に、和解に向かうことを目的とした裁判。加害者には自分のしたことを認める機会が与えられ、被害者には自分の愛する人に何が起こったのかを知る機会が与えられる。)による修復的正義のアプローチは、紛争後の正義と和解プログラムとしては世界で最も野心的なものの一つであった。 10年間にわたり、100万人の容疑者がコミュニティベースの法廷で裁かれた。許しと包容力を育みながら戦争犯罪に立ち向かい、地域社会の癒しを可能にした。 ルワンダのイミヒゴ・システム(業績目標契約)は、植民地時代以前の文化的慣習に基づき、かつては高度に中央集権化されていた政府を、分権化された成果主義の統治モデルを用いて改革し、心に傷を負った人々が必要とするサービスを提供した。 地方と国の指導者は、定期的に政策の進展と影響を実証することが求められる。その結果、サービスへのアクセス、人間開発指標、地元の政治参加において、検証可能な改善が見られた。 ジェノサイド以降、ジェンダーの平等はルワンダの憲法と教育制度に組み込まれ、政治、経済、家庭生活を一変させた。今日、ルワンダの女性は先見性のあるリーダーである。大統領閣僚の半数、国会議員の61%が女性である。ルワンダの小学校への就学率は、女子を含めてほぼ全国一律となっている。革新的なIT教育と全国的なデジタルネットワークの普及により、ルワンダは教育進歩のモデルとなっている。 では、戦争と大量虐殺の混乱後の回復力と復興について、私たちはルワンダからどのような教訓を学ぶことができるのだろうか? 第一に、1994年の過ちを繰り返してはならない。米国と国際社会は虐殺を止めるために立ち上がり、食料と医療へのアクセスを確保しなければならない。 殺戮が止まれば、和解こそが再建への道である。中東の敵対勢力を和解させることが絶望的、あるいは不可能に思えるなら、ルワンダを見ればいい。100日間で100万人以上の少数民族ツチ族と、ジェノサイドに立ち向かったトワ族、フツ族がフツ族の民兵に殺害された。 「ルワンダの死者は、ホロコーストにおけるユダヤ人の死者の約3倍の割合で蓄積された。「広島と長崎の原爆投下以来、最も大規模な大量殺戮であった。」 しかしそれでも、敵対する者たちは最終的には一致団結した。それには並外れた政治的意志と、不可能を可能にする信念が必要だった。しかし、それは実現した。ルワンダの人々はともに、共通の問題に対する自国の解決策を考え、実行に移すことができた。 ジェンダー平等を重視し、被害者ではなく、先見性のあるリーダーとしての女性を重視したことも鍵である。調査によれば、女性の権利を促進し、教育や経済的機会へのアクセスを向上させている国は、そうでない国に比べて成長が速く、平和で、不平等や腐敗が少ない。 ルワンダには多くの課題が残されているが、現代において最も印象的な復活を遂げた。カガメ大統領に率いられた指導者たちは、憎しみと分裂、報復の政策を拒否し、灰の中から国を再建した。 このことは、ガザやウクライナ、その他の紛争に見舞われた国々にも可能性があるという希望と証拠を示している。大虐殺から30年後、ルワンダはそれが可能であることを証明している。(原文へ) マーギー・エンサイン教授は、ブルガリアにあるアメリカン大学の学長であり、「ルワンダ:歴史と希望」の著者であり、「ルワンダにおけるジェノサイドに立ち向かう」の共同編集者である。 INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: 〈特別インタビュー〉 アフリカ・ルワンダ共和国 アーネスト・ルワムキョ駐日大使 ルワンダの「ジェノサイド」、フランスの裁判所でついに有罪判決 |ルワンダ虐殺|レイプ被害者のトラウマ、依然強く

EmpowerHer フォーラム :女性の起業家精神と世界平和の追求

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】 国連本部で開催されたエンパワーハー・フォーラムが成功裏に終了した後、ATNの取材に応じた同フォーラムの議長を務めるアニ・ホァン氏は、この画期的なイニシアチブを創設した動機と今後の抱負について語った。世界中の女性起業家を鼓舞し、支援することを使命とするエンパワーハー・フォーラムは、エンパワーメントとコラボレーションの象徴である。 https://www.youtube.com/watch?v=Y38SRab1o7g 女性の声に力を: 世界的な女性の団結ホァン氏は、フォーラム設立の意図について、女性起業家のための専用プラットフォームを提供し、イノベーションを促進し、経済的自立を育成することだと説明した。また、起業家精神を通じて女性の自己改革とエンパワーメントを促すというフォーラムのコミットメントを強調した。 変革の触媒:エンパワーハー・フォーラムの内部エンパワーハー・フォーラムが他の女性中心のプラットフォームと異なる点について質問されたホァン氏は、①体験の共有と相互学習に重点を置くユニークなフォーラムであること、さらに、②フォーラムが女性達の業績を紹介するだけでなく、参加者間の協力やリソースの共有を促し、起業の課題を効果的に克服できるようにする役割を担っている点を挙げた。 エンパワーメントへの洞察男女平等を推進する上での女性の役割についての質問に対し、ホアン氏は、①自信をつけること、②継続的に学ぶこと、③社会活動に積極的に参加することを挙げ、セルフ・エンパワーメントの重要性を強調した。また、女性同士の相互支援の重要性を指摘し、進歩の重要な原動力として集団的成長と連帯を提唱した。 未来を描くホァン氏は、エンパワーハー・フォーラムをグローバル・プラットフォームに拡大し、物理的な会合とオンライン交流の両方を活用して、その影響力を最大化するという野心的な計画を概説した。また、世界規模で女性の起業と成長をさらに後押しするため、トレーニング、ワークショップ、資金援助の仕組みを統合する意向を示した。 人間性の調和ホァン氏は、「Let Peace Prevail(平和を勝ち取ろう)」という曲についての議論に移り、この曲が生まれた深い動機について語った。この曲のユニークな音楽的言語と文化的要素の融合は、平和と団結への普遍的な共感を育むことを目的としていると語った。 平和の触媒としての音楽平和を推進する上で音楽が果たすユニークな役割を振り返り、ホァン氏は言語や文化の壁を超える音楽が持つ比類ない力を強調した。また、音楽が紛争を解決し社会の調和を促進する上で極めて重要な役割を果たしてきた歴史的な前例を挙げながら、共感を呼び起こし、相互理解と和解を促進する音楽の能力を強調した。 エンパワーメントと平和のために団結しようという呼びかけホアン氏の洞察は、より公平で調和のとれた世界を形成する上で、エンパワーハー・フォーラムのような取り組みや「Let Peace Prevail(平和を勝ち取ろう)」のような芸術的試みが持つ変革の可能性に光を当てた。エンパワーメントと平和への揺るぎないコミットメントを持つこれらのイニシアチブは、刻々と変化する世界情勢の中で希望の光となっている。(原文へ) INPS Japan 関連記事: 国連未来サミットに向けて変革を求める青年達が結集 世界の女性の10人に1人が極貧状態にある 世界中の人々のための音楽(民音音楽協会)

ガザ地区の戦闘休止を冷却期間に

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。 この記事は、2023年11月25日に「Australian Financial Review」に初出掲載され、執筆者の許可を得て再掲載したものです。 イスラエル人とパレスチナ人は、何とかして過去に終止符を打たなければならない。さもなければ、混乱の未来に直面するだろう。 【Global Outlook=ラメシュ・タクール】 イスラエル人の人質50人とパレスチナ人の収監者150人を交換するため、ガザ地区での戦闘を4日間休止する取り決めは、紛争の動態を再構築するだろう。 ガザにおけるイスラエルの今の戦略には、五つの目標がある。ハマスの解体、人質の返還、イスラエル人兵士へのリスク低減、民間人の犠牲抑制、ガザ地区外への戦闘拡大の回避である。(日・英) ハマスが10月7日に攻撃を仕掛けた目的は、できる限り多くの人を殺害し、レイプし、切断し、燃やし、誘拐すること。つまり、国民を守るイスラエル政府の能力に対する国民からの信頼を損なうこと、大勢の民間人の死者を出し、アラブ人街を炎上させる極めて暴力的な反応をイスラエルから引き出すこと、世界中のムスリムを激怒させ、西側諸国の都市を大勢の抗議者で埋め尽くすこと、イスラエルを国際的に孤立させること、アブラハム合意を解体すること、そして、アラブ諸国との国交正常化プロセスを中断させることである。 イスラエルは、人々が記憶する限り最も困難で緊迫した市街戦のさなかにある。ハマスの軍事力とインフラを削ぐため、数週間にわたって空爆した後、地上攻撃を行い、イスラエルはガザ北部を掌握した。戦闘計画は、ハマスを民間人から分離し、民間人を南部に移動させ、戦闘員を攻撃するというものだった。これは部分的に成功しただけである。なぜなら、ハマスは一般住民の間にあまりにも深く根を張っているからである。 情報戦の進捗状況は、さらにばらつきが大きい。大虐殺のビデオ画像も、継続中の軍事攻撃への支持を引き出すことが徐々にできなくなっている。占領地帯に国際メディアを入れて、戦時国際法に違反しているハマスの罪の証拠を開示し、情報を機密解除し、ビデオ映像や傍受した通信を公開するというイスラエルの戦術は、イスラエルが犯している戦争犯罪は虐殺の域に達するというハマスの宣伝に対抗するという意味では、限定的な成功しか収めていない。 軍事力とナラティブが交錯する戦争において、イスラエルは、反乱勢力が仕掛ける古典的な罠の挟み撃ちに陥っている。イスラエルにとっては勝利しないことが敗北であり、ハマスにとっては生き残るだけでも勝利である。 戦場がガザ地区南部に移行するにつれ、この不均衡はさらに悪化し得る。近隣諸国が受け入れを拒否するなか、民間人はそこからどこへ行けば良いというのだ? イスラエルは、安全なルートを通じた人道援助や支援物資の提供を、より明確に優先する必要があるかもしれない。 また、召集された30万人の予備役は、イスラエルのハイテク経済の崩壊を防ぐために本業に復帰する必要があるため、時間の経過はイスラエルにとって不利に働く。一方、ハマスもイランとヒズボラによる支援には限界があるということを分かっている。 戦闘休止によって、双方が状況を吟味し、短期および長期目標を再調整することが可能になる。 1日あたり十数名の人質解放が可能になるよう停戦が延長されるなら、ハマスは武器や戦闘員を再編成し、再武装し、再配置するための貴重な時間を稼ぎ、イスラエル民間人への攻撃を再開するだろう。 他方、戦闘休止が長引くほどイスラエルにとっては戦闘を再開することが政治的に困難になるだろう。それにより、ハマスのガザ地区における支配力とそこからイスラエルの安全保障を脅かす能力を破壊するという、イスラエルの最大の目的が妨げられる。 コストと利益が不均等であるということは、イスラエルに対して猛攻撃を加えることができるというメッセージとしてハマスに10月7日の再現を煽るものである。イスラエルは報復しようとしても、それを果たす前に停戦を強いられるだろう。 これを阻止する唯一の方法は、以前から存在していた二重の抑止力を再構築すること、すなわち、イスラエルの優れた情報活動と報復能力によってハマスの攻撃を抑止し、米国による介入という脅威によって地域のハマス同盟国を抑止することである。 そのためにイスラエルはまず、情報活動の失敗、国境の物理的障壁、10月7日のイスラエル軍の初動までの時間という、三つの疑問に答える必要がある。 また、ユダヤ人に対するホロコースト以来最悪の攻撃が加えられた日に国家の舵を取っていたビンヤミン・ネタニヤフが現職に留まるとは考えにくい。パレスチナ自治政府に対抗してハマスの強化に加担したのではないかという疑惑が調査で裏付けられようものなら、なおさらである。 また、イスラエルは2007年からガザ地区の陸路、海路、空路を封鎖し、230万人の住民に壊滅的な人道的影響を及ぼしており、封鎖を解除するよう圧力を受けるだろう。だからこそ、国連がガザ地区を「占領されたパレスチナ領域」と呼ぶのである。封鎖を解除しなければ、世界最大の天井のない監獄というガザ地区のナラティブが言われ続けるだろう。 ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の継続的拡大にも、終止符を打たなければならない。イスラエルの国内政治における内部的緊張を緩和しようとすると、外交政策において余りにも高い代償を強いられることになる。願わくは、イスラエルが再び、サウジアラビアのような主要アラブ諸国との国交正常化を模索して欲しい。 その一方で、イスラエルは国際的な支持基盤が縮小しつつあるという新たな常態に二つの面で適応しなければならない。西側世界では、若者たちがイスラエルに背を向けてパレスチナの大義に転向し、明白な世代間の分断が生じている。 また、西側世界が世界情勢に関するナラティブを支配する能力を徐々に失うなか、西側諸国とイスラエルは、イスラエル・パレスチナ関係の歴史がどのように見られているかを受け入れなければならなくなるだろう。 多くの人は、罪悪感に駆られたキリスト教西側諸国がユダヤ人に対し、ホロコーストの償いをパレスチナという通貨で支払ったと考えている。パレスチナを分割してイスラエルを建国することを賛成33、反対13で承認した国連総会決議181号(1947年)は、その時点で西側諸国に支配されていた。反対票の数を見れば、植民地独立後の世界における国連加盟国のバランスがいっそうよく分かる。 実際問題として、これは、イスラエルが世界唯一のユダヤ人の祖国として存在する権利を認めると同時に、パレスチナ人の彼ら自身の国に対する権利を認めるということを意味している。ハマスの軍事的破壊は必要かもしれないが、双方の最大限の要求には及ばないまでもそれぞれの最低限のニーズを満たす外交と交渉を伴わなければ、十分ではない。 われわれの誰もが、過去を振り返り、被害者意識と不満に満ちたナラティブを固定化し、内面化することがあるだろう。脱植民地化のイデオロギーが染み込んだ昨今の社会正義概念の基準を用いて歴史をさかのぼろうとすれば、人類がこれまで知る中で最も不安定で暴力的な時代が必ずや訪れるだろう。 そうではなく、われわれは未来に目を向けて、歴史的な不正義に終止符を打ち、力を合わせて許容可能な共存の未来を切り開くこともできる。 ラメッシュ・タクールは、元国連事務次長補。現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長、および戸田記念国際平和研究所の上級研究員を務める。「The Nuclear Ban Treaty :A...

去るも残るも苦渋

2024年国際女性デー