Error 404 - not found
We couldn't find what you're looking for. Browse our latest stories or try searching using the form below:
Browse our exclusive articles!
『保護する責任』20年──理念と現実の乖離
【国連IPS=ジェニファー・シンツー・リン・レヴィン】
国連加盟国は今週、ジェノサイド(集団虐殺)、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪の防止に対するコミットメントを改めて表明した。だがこの誓いがなされる一方で、世界の大国はこれらの義務を果たせていない現実が突きつけられている。
「保護する責任(Responsibility to Protect=R2P)」原則の採択から20年を迎えた今週、国連では本原則に関する記念の本会議が開催された。多くの代表がR2Pの予防能力に一定の成果を認めた一方で、各国の一貫性の欠如と二重基準が厳しく批判された。
スロベニア代表は、ジェノサイドや人権侵害に関する議題での安全保障理事会常任理事国の拒否権行使を批判し、「人々の尊厳が脅かされているとき、迅速な対応が必要であるにもかかわらず、拒否権がそれを妨げている」と述べた。さらに、R2Pが関与する事案においては常任理事国による拒否権行使を認めるべきではないと提案した。
この発言は名指しこそ避けたものの、アメリカ合衆国とロシア連邦という、過去1年以内に拒否権を行使した2カ国を暗に批判するものである。米国は中東問題、とりわけパレスチナに関連して、ロシアはスーダンおよび南スーダンをめぐって拒否権を行使している。
こうした批判は今回が初めてではない。「説明責任・一貫性・透明性(ACT)」連合に属する中小規模国グループは、すでに「ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪への対応に関する安全保障理事会の行動規範(Code of Conduct)」を提案しており、R2P公式サイトによれば、この規範は「大量虐殺の防止・阻止を目的とする信頼性ある決議案に対し、安全保障理事会のすべてのメンバー(常任・非常任を問わず)が反対票を投じることを控えるよう求めている」。2022年時点で、121カ国と2つのオブザーバーがこれに署名している。
R2Pは、ルワンダや旧ユーゴスラビアでのジェノサイドに国際社会が適切な対応を取れなかった反省を踏まえ、市民を大量虐殺などから保護することを国家の義務として再定義するために設けられた。
ガンビアやケニアといった地域では、R2Pが調停に成果を挙げた実例もあるが、グテーレス国連事務総長が「保護する責任:原則的かつ集団的な行動への20年の誓約」と題した報告書で指摘したように、シリアやミャンマーのように拒否権の行使によって国連が行動できなかった地域もある。
R2Pの効果を妨げているもう一つの要因は、スロベニアおよびオーストラリアの代表が指摘したように、「国家の責任回避と説明責任の欠如」である。
国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)の判決が軽視され、制裁が科される状況も問題視されている。この批判は、ICCが米国およびイスラエルの軍事行動に関する捜査を開始したことに対し、米国が4人のICC判事に制裁を科したことに対するものとみられる。
米国およびイスラエルはいずれもICCの管轄権を認めておらず、その判決には従わない立場を取っている。
ホワイトハウスの声明でドナルド・トランプ大統領は次のように述べた:「米国はICCの違法行為に関与した者に対して、資産の差し押さえや米国への入国禁止など、具体的かつ重大な結果を科す。我々の国家の利益を損なう恐れがあるため、ICCの職員や家族の入国は許可されない。」
国連総会では、多くの代表が国際裁判所や国際法廷の公正な判断を支持する立場を改めて強調した。影響力の大きい加盟国から言葉による非難や経済的な圧力があっても、その姿勢を貫くべきだと訴えた。
現在、R2Pの原則と実行の間に最も深刻な乖離が見られるのがガザでの紛争である。インドネシア代表は、パレスチナに対するジェノサイドを「R2Pにとって最も緊急の試金石」と呼び、国際法の尊厳を再生し、国連の信頼を回復するよう各国に強く促した。
国連への信頼が揺らぐ中、加盟国の多くは、人道犯罪への対応を通じて国連の正統性を再確立すべきだとの圧力を感じている。
ある代表はこう述べた―「歴史は私たち全員を裁くことになる。」(原文へ)
INPS Japan/ IPS UN BUREAU
関連記事
ミャンマー、「保護する責任」の履行を世界に訴える
国連事務総長、ルワンダ人と共に「意図的、組織的」なジェノサイドを非難
オランダはいかにしてスレブレニツァ虐殺の責任を逃れたか―歴史書の失われた一章
スーダン各地で飢饉のリスクが高まる
【国連IPS=オリトロ・カリム】
2025年に入り、スーダンにおける食料安全保障の状況は著しく悪化している。スーダン内戦が長期化する中、数百万人の市民が深刻な食料不安に直面しており、飢饉に陥る危険性が高まっている。人道支援の専門家は、スーダンの状況を「現在世界最悪の飢餓危機」と評している。
2年以上にわたる武力衝突により、スーダンでは重要なインフラや無数の生計手段が破壊され、基本的なサービスにアクセスできない人々が急増している。国連世界食糧計画(WFP)は、スーダン人口の約半数にあたるおよそ2,460万人が急性の食料不安に陥っていると推定している。また、約63万8,000人が最も深刻な飢餓レベルにあるとされ、これは世界で最も高い数値だ。
6月12日、WFP、国連児童基金(UNICEF)、国連食糧農業機関(FAO)は、上ナイル州における食料安全保障の現状に関する共同声明を発表した。この地域では武力衝突が激化しており、人道支援の供給が困難になり、食料供給源も壊滅的な打撃を受けている。統合食料安全保障段階分類(IPC)の最新調査によると、上ナイル州の13郡のうち11郡で緊急レベルの飢餓が発生しているという。
とりわけ脆弱な地域はナシール郡とウラン郡で、3月以降、武力衝突と空爆が続いている。これらの地域では住民の避難が急増しており、専門家らは「飢饉が差し迫っている」と警告している。現在、およそ3万2,000人が最も深刻な飢餓(IPCフェーズ5=壊滅的状況)にあり、これは以前の予測の3倍に達している。
WFP南スーダン事務所代表のメアリー=エレン・マクグローティ氏は、「今回も、紛争が食料安全保障に壊滅的な影響を与える様子が浮き彫りになりました」と述べた。「紛争は家や生計を破壊するだけでなく、地域社会を分断し、市場へのアクセスを断ち、食料価格を急騰させます。長期的な平和が不可欠ですが、今は何よりも、上ナイル州の紛争下にある家庭へ、安全に食料を届け、飢饉を防ぐことが急務です」と語った。
上ナイル州だけでなく、戦闘の中心地となってきたハルツーム州周辺地域でも、食料安全保障は著しく悪化している。WFPスーダン事務所代表のローラン・ブケラ氏は、ハルツームおよびその周辺地域について「広範な破壊が進んでおり、複数の地域で飢饉のリスクが極めて高い」と述べた。
「ニーズは極めて大きい」とブケラ氏は言う。コレラの深刻な流行、水・医療・電力の欠如が加わり、状況は悪化しているという。ハルツームの南約40キロに位置するジャバル・アウリヤでは、「飢餓、困窮、絶望の極みにある」と報告している。
またブケラ氏は、ハルツームのような深刻に破壊された危険な地域に、避難民が戻ってくる可能性にも懸念を示している。これは支援活動のさらなる困難につながる恐れがあるという。「我々は急速に支援体制を拡大し、増大するニーズに対応しています。毎月700万人に支援を届けることを目標とし、飢饉に直面している地域や極度の危険下にある地域を優先しています」と語った。
資金不足も事態の悪化を加速させている。命を救うための栄養補給物資は数百万人にとって手の届かないものとなっており、その中には多くの子どもや妊産婦も含まれる。南スーダンで急性栄養不良の危機に直面している子どもの数は、ここ数カ月で230万人に増加し、20万人以上の増加となった。
「最も被害の深刻な地域ではアクセスが困難であり、保健・栄養施設の閉鎖が、早期介入や治療の機会を減らしています。また、コレラの流行がすでに厳しい状況にさらに追い打ちをかけており、多くの子どもたちが生死の境に置かれています」とUNICEF南スーダン代表のノアラ・スキナー氏は述べた。マクグローティ氏も「今こそ、栄養不良の予防と治療のためのサービスを継続・拡充する必要があります」と訴えた。
敵対行為によりスーダン全土でアクセスが制限されているものの、国連は現在、月間400万人以上に支援を届けており、これは2024年初頭の4倍に相当する。以前は支援が届かなかったハルツームのような地域でも、制限が緩和され、人道支援の提供が可能となりつつある。WFPは、制限のさらなる緩和により、700万人への支援を目指している。
とはいえ、この支援体制は非常に不安定である。ブケラ氏によれば、WFPは今後6カ月間の「緊急食糧および現金支援」に向けて、5億ドルの資金を緊急に必要としている。また、間近に迫った雨季は、洪水による感染症の拡大やインフラ被害のリスクを高め、支援物資の供給にもさらなる負担を強いると見られている。
さらに、人道支援従事者に対する攻撃の増加が支援活動に深刻な脅威をもたらしている。「人道支援関係者および物資に対する無差別で容認しがたい攻撃がエスカレートしています。先週も、WFPとUNICEFの合同車列が、包囲下の北ダルフール州エル・ファシールに到着する数時間前に攻撃を受けました」とブケラ氏は述べた。「4月には、ザムザム難民キャンプ近郊で戦闘が激化し、複数の支援従事者が命を落としています」
この危機に持続的な終止符を打つには、恒久的な敵対行為の停止が不可欠である。WFP、FAO、UNICEFの共同報告では、暴力の程度が低い地域では食料安全保障が改善されていると指摘されている。そうした地域では農作物の生産が安定し、人道支援も円滑に行われているためであり、平和が確立されれば状況が好転する可能性を示している。(原文へ)
INPS Japan/IPS UN Bureau
関連記事:
人道支援団体、スーダンの避難民への支援に困難直面
「生存の種」:紛争下のスーダン、農業の未来を守るための闘い
スーダンの紛争があなたのコカコーラに影響?
希望を届ける放送―アフガンの10代少女、女性の声ラジオで未来を取り戻す
著者は、タリバンによる政権奪還前にフィンランドの支援を受けて訓練を受けた、アフガニスタン在住の女性ジャーナリストです。安全上の理由により、名前は伏せられています。
【カブールIPS=匿名記者】
メーラギズは、アフガニスタン北東部バダフシャーン州出身の16歳の少女です。ルビーなどの宝石で知られるこの地は、「愛と美の地」としても親しまれています。
2021年にタリバンが政権を奪還して以降、女性たちの自由は厳しく制限され、将来への希望を断たれた生活を強いられるようになりました。その影響で、女性の間では精神的な危機や自殺が急増しています。
そんな中、メーラギズは「女性の声ラジオ」との出会いによって、人生を取り戻すことができたと語ります。以下は、彼女自身の言葉による体験談です。
かつて10年生の私は夢と希望に満ちていました。毎日、昨日よりも努力して、将来達成したい目標のために勉強を重ねていました。私の村には電気がなかったため、灯油ランプのそばで夜遅くまで勉強していたのです。いつか夢が叶うと信じて。
ある日、庭で日記を書いていると、クラスメートの叫び声が聞こえました。「もう学校に通えない、勉強できない」と。私は呆然とし、声も出せませんでした。
日が経つにつれ、「この状況は一時的なものだ」と信じ、勉強を続けました。世界の他の地域の少女たちのように成功したい、その一心で。
しかし、ついに私の中の何かが折れました。少女たちはいつ学校に戻れるのか?その問いに、答えは永遠にないかのようでした。私は戦う意欲を失い、不眠と食欲不振に陥り、夢見た世界は真っ黒に染まっていきました。
日々はどんどん苦しくなり、もう耐えられないと思いました。怒りと絶望のあまり、ある日、私はすべての教科書を燃やしてしまったのです。
その後は、未来のことを考えないように、家事や身体を動かすことに没頭しました。もう勉強しようとは思いませんでした。
ある日、母と買い物に出かけた帰りに、人生を変える出会いが訪れました。女性専用レストラン「ケドバヌ」で昼食を取っていたとき、バダフシャーンで最も人気のあるラジオ局「サディー・バノワーン」で医師がうつ病について語っていたのです。
その語り口に私はすっかり引き込まれ、食事の手を止めて耳を傾けました。母に目配せをして伝えると、彼女も真剣に耳を澄ませました。医師の言葉、そしてまるでアフガンの少女たちの苦しみを理解しているかのような司会者の質問に、私たちは釘付けになりました。
放送終了後、私はラジオ局に電話をかけ、個別に相談ができるか尋ねました。すると、喜ばしいことに、医師に直接相談できると教えてもらいました。
翌日、私はラジオ局の門の前に立っていました。期待と不安が入り混じった気持ちで。
アフガニスタンでは皆が自分の問題に追われており、私のような少女の悩みに耳を傾けてくれる人などいないのでは…そう思っていました。
けれど、あの放送で心を動かされた同じ医師に直接会い、相談できたことで、私は生きる力を取り戻すことができました。
「魂を傷つけたり、家族を苦しめたりするのではなく、別の生き方を探しましょう。神を信じましょう」と彼女は私に語ってくれました。
彼女の助言は、私の人生への姿勢を変えてくれました。困難に立ち向かう力をくれたのです。
友人に会いに出かけること、オレンジや赤、黄色のような明るい色の服を着ること、楽しいことを見つけること。そういった前向きな行動を促されました。
これまでに4回の無料心理療法を受け、精神状態は約30%改善しました。以前とは違い、今の私は、人生に鮮やかな色彩を見出せるようになったのです。
女性の声ラジオ:制限の中の灯火
「女性の声ラジオ」は2010年から放送を開始し、バダフシャーンの女性たちの間で特に愛されてきた人気番組です。現在は24時間体制で放送され、男女問わず多くの聴取者に向けて情報を発信しています。
しかし、2021年以降のタリバン政権下で、この女性専用ラジオ局にも厳しい制限が課されました。政権発足当初、広告に数秒の音楽が含まれていたという理由で23日間の閉鎖措置を受けたこともあります。
それでも放送再開後は、「マクタブ(学校)」という新番組を立ち上げました。これは、7年生から12年生までの少女たちのために、教師や専門家がカリキュラム教材をラジオで提供するものです。
また、心理療法番組「サイコセラピー」では、家に閉じ込められた多くの女性たちの心の支えとなるよう、専門医がうつ病やストレスへの対処法を紹介しています。将来的には、こうしたニーズに応えるために、大規模な心理療法センターの設立も計画されています。
さらに「女性の懐に抱かれた芸術」は、創造性と勇気にあふれた女性たちの取り組み―ビジネスや投資など―を紹介する番組で、他の女性たちにとってのロールモデルとしても機能しています。
新たな章の始まり
そして今、私は幸運にも「女性の声ラジオ」で働く機会を得ました。ここでの勤務は3カ月目に入りました。
初日に迎えてくれた仲間たちの笑顔と温かいハグは、今でも忘れられません。
私はここで「困難を乗り越えること」「他者を支えること」という、人生で最も大切なことを学んでいます。
世間にとって「女性の声ラジオ」はただの放送局かもしれません。でも、私にとっては“人生の大学”―幸せに生きる術を学ぶ場所なのです。
私は今、小さくても力強い家族の一員なのです。(原文へ)
INPS Japan/IPS UN Bureau
関連記事:
キルギスの地域社会を世界につなぐラジオ
|ボリビア|先住民をつなぐコミュニティーラジオ
|バングラデシュ|コミュニティーラジオが切り開くジェンダー平等
安全保障理事会に亀裂、地域は緊張状態:イスラエルとイランの衝突で外交力が試される
「イスラエルがイランを攻撃、国連安全保障理事会は危機的な事態の激化に直面―各国首脳は自制と外交を呼びかけ」
【ニューヨーク国連本部ATN=アハメド・ファティ】
イスラエルによるイランの軍事および核関連施設への空爆が行われた数時間後、国連安全保障理事会は緊急会合を招集し、中東地域での戦争拡大の危機に直面する中、冷静さと自制を求める切迫した訴えが相次いだ。
空爆は現地時間午前3時15分頃に開始されたとされ、標的となったのはイランのナタンズ濃縮施設、イスラム革命防衛隊の本部、レーダー施設など、核関連インフラの要所だった。イスラエル政府はこれを「差し迫った実存的脅威」への「精密かつ先制的な措置」と位置づけた。
イランは直ちに報復を開始し、100機以上の無人機をイスラエルに向けて発射、会合開催時点でもミサイルを発射しているとの報告がなされた。周辺諸国は空域を閉鎖し、軍の警戒態勢を強化。イエメンのフーシ派もこの衝突に加わり、イスラエルへのミサイル攻撃を行ったとされ、地域全体に戦争の火種が広がる恐れが高まっている。
世界的懸念と核の恐怖
国連の政治問題担当トップであるローズマリー・ディカルロ氏は冒頭の報告で、今回の危機が地域にとどまらず世界的な安全保障をも脅かすと警告。「この火種が拡大する事態は、なんとしても避けなければなりません」と強調した。
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシー事務局長は、ナタンズの地上施設が破壊され、ウラン濃縮が停止したことを明らかにした。地下の遠心分離機施設は無傷とみられるが、停電による内部機器への損傷が懸念されている。外部への放射線漏れは確認されていないが、施設内部の汚染は「管理可能だが憂慮すべき」と述べた。
「はっきり申し上げます。核施設が攻撃されてはなりません」とグロッシー氏は強調。IAEAは24時間体制の緊急監視チームを稼働させ、追加の査察官を派遣する用意があると述べた。
理事会の反応:一致と分裂の両面
理事会では全体として事態の沈静化を求める声が上がったが、責任の所在をめぐって意見が割れた。
ロシアのワシリー・ネベンジャ大使は、イスラエルの行動を「軍事的冒険主義」と非難し、2015年のイラン核合意を崩壊させたとして米国を、また英国がキプロスの基地を通じて関与したと指摘。これに対し、英国代表は「ナンセンスで無責任な偽情報」と強く否定した。
パナマは今回の攻撃を「予見されていた死」と表現し、連鎖的な不安定化の一環と警告。中国、アルジェリア、シエラレオネ、パキスタンも、国連憲章違反となる一方的な武力行使を非難。「倫理的にも戦略的にも許されない」とし、オマーンでの米・イラン間の核協議再開が予定されていた中での攻撃を問題視した。
アルジェリアとイランの代表は、未申告の核保有国であるイスラエルが、核拡散防止条約(NPT)に加盟する非核保有国イランを攻撃するという「皮肉」を指摘。「先制攻撃が防いだものがあるとすれば、それは平和だ」とアルジェリア代表は皮肉を込めた。
イスラエルは正当防衛を主張、イランは「戦争」だと非難
イスラエルの代表は、「イランが核兵器級のウラン濃縮を進め、我が国の滅亡を公言している以上、脅威は現実であり、昨夜は行動を起こす時だった」と述べ、自衛権の行使であると主張。IAEA査察の妨害や外交の停滞を挙げて正当性を訴えた。
一方、イランの代表は激しく反発し、「戦争犯罪」だと非難。「核施設への無謀な攻撃で数百万の命を危険にさらした」と述べ、イスラエルを「世界で最も危険でテロ的な体制」と呼んだ。
米国の微妙な立場
米国はイランの核開発に強い懸念を表明しつつも、「イランが核兵器を持つことは決して許されない」としながら、今回の空爆には関与していないと説明。ただし事前に情報は得ていたと述べた。
さらに、イランに対し米国人や米国関連施設への報復攻撃を行わないよう警告し、外交交渉への復帰を求めた。
地域全面戦争のリスク
イラクとクウェートは主権侵害を非難。イラクはイスラエルによる自国空域の侵害を主張。クウェートは湾岸協力会議(GCC)を代表して発言し、「これ以上のエスカレーションは過激勢力の台頭を招く」と警告した。
韓国とフランスも外交の重要性を強調。ギリシャは「自衛権」を認めつつも、「持続可能な安全保障は外交と交渉によってのみ達成される」とバランスを取った発言を行った。
議長国ガイアナの訴え
安保理の議長国であるガイアナは、閉会にあたり強い調子で訴えた。「今は瀬戸際外交や責任の押し付けをしている場合ではありません。今こそ責任を果たす時です」
分析:決定的な分岐点に立つ中東
今回の空爆は、長年にわたるイスラエルとイランの対立が新たな段階に入ったことを意味する。外交の水面下の再開が報じられる中での攻撃は、かすかな信頼を打ち砕いた。
安保理が異例の一致で「緊張緩和」を訴えた背景には、単なる核不拡散だけでなく、地域戦争への拡大、ひいては大国や代理勢力を巻き込む国際紛争への発展を警戒する思惑がある。
IAEAが放射能漏れの監視を続けるなか、外交の糸は今にも切れそうな状態にある。事態が破局へと向かうか、踏みとどまれるかを左右するのは、“数日”ではなく“数時間”なのだ。(原文へ)
INPS Japan/ ATN
Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/security-council-divided-region-on-edge-diplomacy-tested-amid-israel-iran-clash
関連記事:
|視点|忠誠か、駆け引きか? トランプがマスクを見限る中、湾岸諸国が再考する賭け(アハメド・ファティATN国連特派員・編集長)
|視点|イランと核不拡散体制の未来(ラザ・サイード、フェレイドン)
トランプ政権のイラン核合意から離脱が裏目に出る