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ロシア・米国が並走する核紛争への道

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。 【Global Outlook=ラメッシュ・タクール】 2020年の大統領選で、ドナルド・トランプ大統領の支持者は明白な性格的欠陥よりも国内政策や外交政策の成果に目を向けたが、反対派はいかなる政策的成果を評価するにも彼の性格に目をつぶることはできなかった。ジョー・バイデンが大統領になったのは、米国人のバイデン票と同じぐらい反トランプ票があったからである。しかし、世論調査にはっきりと表れた「購入者の後悔」を見ると、どうやら有権者は、自分が何を望んでいるかを慎重に考えるべきだったよう(原文へ 日・英) 2017年4月18日付「ニューヨーク・タイムズ」紙の論説で、アントニー・ブリンケンはこう書いた。「外国のパートナーが大統領の判断を疑うというのは由々しき事だが、そのパートナーが大統領の言葉を疑うようになったら、そちらのほうがはるかにまずい」。いまや国務長官となったブリンケンが、バイデンの判断と言葉について、また、「自ら招いた信頼性の欠如を克服する」ために助けられるかについて、内心どう考えているのか、われわれは思いを巡らせるのみである。 第1の問題は、トランプに関してブリンケンが語った別の表現を借りるなら、バイデンの「正直さとの困難な関係」である。バイデンの一連の嘘言癖は伝説的である。彼が、作り上げた話には、ネルソン・マンデラに会いに行ったアパルトヘイト下の南アフリカで逮捕された、公民権運動の行進に参加した、法科大学院を上位半分の成績で卒業した、18輪の大型トラックを運転していた、副大統領時代にアムトラックの車掌とおしゃべりをした(その車掌はバイデンが副大統領になる15年前に引退していたというのに)、ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)「ツリー・オブ・ライフ」を2018年の銃乱射事件後に訪れた、イラク戦争には最初から反対していた等々がある。 最後の例は、第2の大きな問題である外交政策通という誇張された自慢を示している。バイデンは、1991年にクウェート解放戦争に反対し、2003年のイラク戦争を支持し、2011年にオサマ・ビンラディン暗殺をやめるようバラク・オバマ大統領に助言した。「物事をダメにするジョーの能力を過小評価」しないほうがいいというオバマの手厳しい評価は、それゆえである。それを裏付けるように、ロバート・ゲイツ元国防長官も、バイデンは数十年にわたる政治家生活の中で、あらゆる重要な外交政策や国家安全保障問題に関して間違っていたと主張した。 大統領選では批判的な見地から厳しい吟味がなされるのが普通だが、トランプを軽蔑する大手メディアや大手テクノロジー企業のおかげで、バイデンはそれを免れた。世界は今、現実が噛みついてきたとき、実際の結果がどれほど深刻になりうるかを見いだしつつある。そこには、米国とロシアの核戦争の可能性が、1962年のキューバ・ミサイル危機以来、かつてないほど現実味を帯びてきたという認識も含まれている。  周到に計画された核攻撃は、まずないだろう。むしろ、どちらの側も望まない戦争のリスクはミスコミュニケーション、誤解、誤算の可能性の方に潜んでおり、それが挑発とエスカレーションのサイクルへと発展して制御不能になる恐れがある。一方で、ウラジーミル・プーチン大統領は、核兵器の保有と使用の威嚇に関する発言を常態化させているという点で、核兵器国の指導者9人の中で最も罪深いまでに無責任である。他方、バイデンの「言葉の失禁」(ジェラルド・ベーカー)と認知機能障害は、ミスコミュニケーションや不用意による発射によって核戦争になる恐れがある。米国の現行プロトコルは、スピードと効率性を高めるよう策定されており、大統領が口頭の命令ひとつで核兵器を発射できるようになっている。 過去10年間、核兵器国の指導者が無責任にも核をちらつかせて虚勢を張るということが幾度かあった。2016年5月、英国のテリーザ・メイ首相は、10万人の命を奪いうる核攻撃を許可する覚悟があると述べた。同年12月には、イスラエルがパキスタンへの核攻撃を示唆したというフェイクニュースに反応し、パキスタンのカワジャ・ムハンマド・アシフ国防相がイスラエルへの核攻撃をすると脅かした。それに続いて2017年、トランプと北朝鮮の金正恩が相互の侮辱と好戦的レトリックの応酬を繰り広げた。2019年2月には、パキスタンのイムラン・カーン首相が核戦争の可能性を警告し、それに対してインドのナレンドラ・モディ首相が同様の発言でやり返した。 このような背景があるにせよ、プーチンによる連続の核の脅しは警戒すべきものである。2014年にロシアがクリミアを併合した後、西側の敵意ある批判を浴びたプーチンは、「ロシアは最も強大な核兵器国の一つだ」とあからさまに述べた。2017年2月にトランプ大統領が米国は「[核兵器保有国の]グループの頂点」に立ち続けると主張したとき、プーチンはロシアの抑止力で同様のことをする必要性があると述べた。2018年3月、プーチンは新しい無敵の核兵器を誇った。プーチンは、2022年2月19日に弾道ミサイルの発射演習を実施し、23日に核戦争をほのめかし、27日にロシアの核抑止戦力を「特別警戒態勢」に置いた。そのメッセージがまだワシントンで受け止められていない段階で、クレムリンの報道官が「存亡の危機」が迫った場合ロシアは核兵器を使用すると述べた後、3月29日、「デイリー・メール」紙(英国)がプーチンとその最高司令部はすでに極秘の核シェルターに身を隠していると報道した。その目的は、単に核戦争のサインにいっそうの切迫性を持たせることだったかもしれない。NATOの東方拡大が侵攻を正当化する主な口実であったことを考えると、ロシアにとってあいにくなことは、米国の核兵器が、数ある場所の中でもとりわけロシア西方のポーランドと東方の日本に配備されるという結果になり兼ねないことである。 一方バイデンは、同盟国に呼びかけてウクライナの決意を後押しするために近頃欧州を訪問した際、三つの危険な失言を放った。3月24日にブリュッセルで記者会見を行い、ロシアがウクライナで化学兵器を使用した場合について質問されたバイデンは、「それは同様の対抗措置をもたらすだろう」と述べた。翌日、ポーランドに駐留する米軍を前に演説した際、米軍兵士はウクライナに行くだろう、すでに一部は現地にいたと示唆した。3月26日にワルシャワで行った演説では、「何としてもこの男を権力の座に留めてはならない」と述べて、ロシアの体制転換を訴えた。これはプーチンのパラノイアをいっそう刺激し、ロシア国内の戦争反対派の信用を落としやすくしただけであろう。これに対してモスクワからは激しい反発があり、また、バイデン政権の高官や同盟国の指導者からも反論が出た。バイデンの三つの発言が失言であるなら、憂慮すべきことである。もしそれらが失言でないなら、失言の積み重ねが核戦争に至るという恐ろしいリスクを思い起こさせるものである。その後、体制転換に関する記者の質問に対し、台本にないことを口走らないよう用意された「カンニング・ペーパー」に厳密に従って答える姿が捉えられた。 ハンター・バイデンのラップトップ・スキャンダルが真実であることは、「ニューヨーク・ポスト」紙が提供した情報源と内容の詳細さを踏まえれば、最初から明白だった。「ニューヨーク・タイムズ」紙ですらそれを認めた今、次の重要な問題は、ウクライナ危機の今後に重要な役割を果たす中国、ロシア、ウクライナとの怪しげな取引に大統領が関与していた場合の影響について、ここから何が分かるかということである。ウクライナの腐敗ぶりに目をつぶらなくても、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が思いがけず発揮した英雄的リーダーシップは称賛できるだろう。トランスペアレンシー・インターナショナルが2022年1月25日に発表した2021年腐敗認識指数によれば、ウクライナのスコアは100分の32で、180カ国中122位、欧州では文句なしに最も腐敗した国である。EUの平均スコアは100分の66である。 ロシアは20年以上にわたり、ウクライナを巡るレッドラインを示してきたが、西側はあっさりとそれを無視した。これは、「フィナンシャル・タイムズ」紙でエドワード・ルースが指摘する通り、なぜウクライナに関する反ロシア的コンセンサスが西側諸国に限られ、世界規模ではないかを説明する一つの理由である。インドのシブシャンカル・メノン元国家安全保障顧問(2010〜14年)は、「フォーリン・アフェアーズ」誌に、ウクライナにおけるロシアの戦争は欧州の地政学的情勢を変容させるだろうが、それは独裁主義と民主主義の超越的対立でもなく、世界秩序を再編するものではなく、インド太平洋にとっては限定的な関連性しか持たないと書いている。中国の持続的台頭のほうが、地政学的な面でも規範的な面でも新たな世界秩序を再構成するうえで、ロシア帝国の最後のあがきよりはるかに重要な意味を持っている。クリミア、ドンバス、そしてウクライナの確かな安全保障を伴った何らかの中立的状態に関して、今後行きつくかもしれない条件のもと、ウクライナにロシアとの和解を勧めるのであれば、その際、不道徳的な宥和と慎重な現実主義との間の線引きはどこにあるのだろうか? ラメッシュ・タクールは、国連事務次長補を務め、現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長を務める。近著に「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of...

|ナイジェリア|ウォーレ・ショインカ、婦女子の殺害が常態する現状打破を訴える

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】 米国では少数民族、年長者、子供、移民等を無作為に狙った銃乱射事件が相次ぎ、再び銃規制を巡る議論が高まっているが、太平洋を隔てた西アフリカのナイジェリアでも、無辜の老若男女が無作為に殺害される銃撃事件が頻発して社会問題になっている現状に焦点を当てた記事。 ナイジェリアでは、北西部と中部で農耕民と牧畜民が土地を巡って衝突してきた歴史があり、その一部が「盗賊団」と化して、殺人や略奪、身代金目当ての誘拐を繰り返している。また、ボコハラム等のイスラム過激派も、(カザフィ政権の崩壊に伴う)リビアから流出した大量の武器を入手して、ナイジェリア国内で襲撃を繰り返している。これに対してナイジェリア政府は有効な対策を打ち出せないでいる。こうした状況に、同国のノーベル文学賞作家ウォーレ・ショインカ氏が、国民が一致団結して、襲撃問題に対処する啓発するキャンペーンを開始した。 ナイジェリアでは2022年の1週間(4月10日から16日)、武装した「盗賊団」が様々な攻撃で少なくとも215人を殺害し、最も死者が多い週となった。今回の集計以前には、2022年の最初の3週間で少なくとも486人が殺害され、今年最悪の犠牲者数を記録している。(原文へ) INPS Japan https://www.youtube.com/watch?v=ZgYxadjTsLI 関連記事: |視点|少女らにとって教育は進歩への扉を開ける鍵(ネンナ・アグバ:ファッションモデル) |サヘル・西アフリカ|2700万人が空前の食料・栄養危機に直面 テロ防止の鍵を握る持続可能な開発

|アーカイブ|非合法でありながら存在し続ける核兵器

*本日からオーストリアのウィーンで核兵器禁止条約締約国会議が開催される。IDNでは核なき世界を目指してICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の国際メンバーとして活動している創価学会インタナショナルと2009年以来、核軍縮・廃絶をテーマとしたメディアプロジェクト「核なき世界に向けて」を推進している。今回は、アーカイブの中から、ヒバクシャの声を取材した記事を掲載します。 【IDNシドニー=ニーナ・バンダリ】(11.03.2012 にIDNから配信) 森本順子さんは、米国が彼女の故郷広島に最初の原爆を投下したとき13歳の少女だった。1945年8月6日の当日、彼女は腹痛を訴え学校を欠席していたことから、爆心地から1.7キロ離れた自宅で被爆した。もし市の中心部に位置していた広島女学院高等女学校に登校していたら360名の同窓生とともに命を失っていただろう。森本さんは手術が不可能な脳腫瘍を患っており、その影響によりバランス感覚が不自由である。原爆投下から70年近くが経過したが、日本の人々は今でも、放射能が環境や世代を超えて人体に及ぼした恐るべき後遺症とともに日々の生活を送っている。  「広島と長崎への原爆投下は私たちに2つの教訓をもたらしました。一つは、私たち人間が地獄をこの世に作り出す能力を手に入れてしまったということ。そしてもう一つは、私たちは、その恐ろしい能力を実際に使ってしまうほど、あまりにも愚かで、信用できない、つまらない存在だということです。」と、森本さんは語った。彼女は1981年にオーストラリアに移住し、今は著名な絵本作家・画家として活躍している。今年の7月8日は、国際司法裁判所(ICJ)が核兵器の威嚇・使用の合法性に関する画期的な勧告的意見を出してから15周年にあたる。ICJの15人の判事全員一致の見解として、「各国政府は、厳格かつ効果的な国際的管理のもと、あらゆる分野にわたる核軍縮につながる交渉を誠実におこない完了させる義務が存在する。」と述べた。7月5日、メルボルン市庁舎で核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)とオーストラリア赤十字の共催のもと、公開討論会が開催され、「核兵器のない世界」実現を求める人々が、会場を埋め尽くした群集の前で演説を行った。たんなるオプションではないこの公開討論会に登壇した自由党のマルコム・フレーザー元首相は「核軍縮はたんなるオプションではありません。国際法で義務付けられたものなのです。そしてそれは、核兵器禁止条約-いかなる国家による核兵器保有も禁止し、定められた期間内に全ての核弾頭の廃絶を完了させる法的メカニズムを打ち立てる包括的な条約-の発効を通じて最も望ましい形で実現できるのです。」と語った。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が6月に発表した世界の軍備動向に関する2011年の年次報告書によると、現在8カ国或いは9カ国の兵器庫に合計20,000発を超える核兵器が保有されている。米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエルの8カ国は合計で20,500発以上の核兵器を保有している。その内、5,000発以上が実戦配備されており、内約2000発は高度な「即応態勢」に置かれている。 核兵器廃絶を目指す世界的な運動組織「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」は、向こう10年間に世界で核兵器に費やされる金額は1兆ドルを上回ると予測している。核兵器保有国は今年だけでも核兵器プログラムに総額で約1000億ドルを費やす予定である。「政治指導者たちは、核兵器がいかなる人の安全にも寄与しないということを理解すべきです。彼らは世界をかえってより危険なものにしているのです。益々多くの国々が核兵器を製造する方法を習得しています。もし核軍縮に向けた努力が今よりもはるかに真剣な形で進められなければ、核兵器の保有を目指す国々は益々増え、故意か事故に関わらず、核戦争が勃発する危険性はより大きなものとなるでしょう。」とフレーザー元首相はIDNの取材に応じて語った。2010年4月、世界の備蓄核兵器の95パーセントを保有する米国とロシアが、控えめな規模の核軍縮に合意する新戦略兵器削減条約(新START)を締結した。しかし、米露両国とも、現在新たな核兵器運搬手段の配備を進めるか、或いはそのような計画がある旨を発表している。一方、インド、パキスタン両国は、引き続き核弾頭を搭載可能な弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発を続けている。フレーザー元首相は、こうした兵器を一刻も早く廃絶する重要性を強調して、「核兵器を廃絶するための多国間協議プロセスが、実質的に存在していないという現状を深く憂慮しています。とっくに発効してしかるべき核兵器禁止条約も、未だ実現していません。オーストラリアは、核廃絶に向けた実質的な協議が進められるよう国際的な圧力をかけていくべきです。」と語った。オーストラリアのジュリア・ギラード首相は、核廃絶を国会決議とするよう、国会に動議を上程する意向を示している。ギラード首相は、この核廃絶決議を超党派のものにしようと、トニー・アボット自由党党首に協力を呼びかけた。核問題を党派対立から遠ざける 「これは政府にとって、核と軍縮の問題を、より党派間対立が少ない非政治的な領域に持っていくことで、むしろ人道的な問題に転換する絶好の機会なのです。」と、ICANオーストラリアのティルマン・ラフ議長はIDNの取材に応じて語った。オーストラリアは、興味深い立ち位置にある。なぜなら、オーストラリアは国家としては核兵器を保有していないが、同盟間にある米国の核の傘(拡大核抑止)理論に賛成している立場をとっているからである。「オーストラリアが安全保障を米国の『核の傘』に依存している限り、いかに核軍縮を唱えても説得力に欠けるものがあります。米国の大統領が核軍縮という大義を支持している今こそ、オーストラリアが核兵器に依らない国防体制を採択するとともに、核軍縮に向けた重要な貢献を開始する理想的な時期のように思います。」とフレーザー元首相は語った。オーストラリアは、ウラン埋蔵量が全世界の約40%を占め、主要なウラン輸出国である。「我が国のウラン輸出は、確かに軍縮を進める上で一つの障害となっています。たとえオーストラリア産のウランを輸入する国々との保障協定が結ばれていたとしても、それらのウランが軍事用に使われたり、或いはその代わりに国内の備蓄ウランが同様の目的で使われたりするリスクが常にあるのです。」と、ICANオーストラリア核廃絶国際キャンペーンディレクターのティム・ライト氏はIDNの取材に応じて語った。各国の政府や一般市民は、福島第一原発の危機を見て、発電のための核技術に本来的に備わっている危険性を認識し警戒するようになった。ICANは、放射能は、原子炉からのものであろうが核爆弾由来であろうが、出発物質(化学反応の原料)は同じであり、もたらされる影響も完全に無差別かつ同質のものであると指摘している。「原発用の原子炉級ウラン濃縮を行えるいかなる国も、実はウランを兵器級まで濃縮するために必要なものをすべて手に入れているのが実情です。すなわち、両者は不可分なのです。現在、ウラン濃縮についても、プルトニウム抽出のための使用済核燃料処理についても、制限が設けられていません。これらの物質は、核兵器の原材料である核分裂性物質の元ですが、各国によるこうした物質へのアクセスを制限する国際規制は現在のところないのです。このような現状は、『核兵器のない世界』の実現或いは維持という理想とは、相矛盾するものです。」とラフ議長は語った。核不拡散から核廃絶へ核兵器ゼロの支持者は、ラメッシュ・タクール元国連事務次長補が述べたように、議論の焦点が核不拡散から核廃絶へと移ることを望んでいる。タクール元国連事務次長補は、「私たちには、以下のような優先順位に基づく具体的なステップを踏まえた核廃絶へのロードマップが必要である:①核兵器の保有と使用を分けるより強固な保護システムを導入する、②既存核弾頭の更なる大胆な削減と中期的な計画に基づく核分裂性物質の生産凍結を実現する、③私たちが生存している間に、確固たる検証体制の下で全ての核兵器の破棄を義務付ける核兵器禁止条約(NWC)を発効させる。」と語った。タクール元事務次長補は、NPTに加盟していない核保有国(インド、パキスタン、イスラエル)が、非核保有国としてNPT加盟を余儀なくされる事態は可能だと考えるのは、現実的ではないと見ている。核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)によると、今日地球上に存在する核兵器の総破壊力は、広島に投下された原爆の15万倍に相当する。ラフ議長が言うとおり、世界の核兵器のほんの僅かな量が、比較的小さな地域に使用されたとしても、その影響は、極めて深刻かつ前例のない地球規模のものとなる。米国科学アカデミーは、核爆発の影響を確実に防ぐ方法はないと明確に結論付けている。核兵器と気候変動は、現在生きている人類のみならず、人類の未来や複雑な生態系を支える地球の能力に対しても、かつてない脅威を及ぼす。従って、核兵器をゼロにするまで、一刻も早くもっていくことが緊急に求められているのである。 オーストラリア赤十字は、核兵器の違法性を確認するさらなる法律の必要性を訴えるうえで、国際的に指導的な役割を果たしている。オーストラリア赤十字の国際法、戦略顧問であるヘレン・ダーラム博士は、IDNの取材に応じ「国際法は極めて断片化された体系となっており、すべてを包含した一つの方法を見出してものごとを前進させるというわけにはいかないのが現状です。しかし世界各国の政府は、自国の市民がこの問題について関心を持っているということを理解する必要があると思います。」と語った。オーストラリア赤十字は、核兵器の使用が人道的にどのような結果をもたらすか、その惨禍について人々が本当に理解できるよう、公共教育キャンペーンを実施する予定である。「私たちは様々なイベントを実施していきます。また11月初旬には、若者の関心を引き寄せる目的でインターネット上の教育プログラムを開始します。これは全ての人々が立ち上がって、このような兵器は決して受け入れられないと声を上げるべき問題なのです。」とダーラム博士は語った。(原文へ)翻訳=IPS Japan 関連記事: |日本|核兵器禁止条約加盟を求める圧力が高まる |視点|あるパレスチナ人の回想(平和・人権活動家マーゼン・クムスィーヤ) 和田征子氏の被爆証言を収録(Vaticn Conference on Nuclear Disarmament)

核兵器の近代化が進む中、さらなる核兵器の脅威にさらされる世界

Photo: U.S. Air Force Staff performing a simulated missile reduction in accordance with the New Strategic Arms Reduction Treaty on Minot Air Force Base, N.D., 2011. Credit: Flickr/US Air Force