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年齢制限なき権利──高齢者の権利条約への期待

【ベルギー・ブリュッセル/ウルグアイ・モンテビデオIPS=サミュエル・キング & イネス・M・ポウサデラ】 世界の人口は高齢化している。世界の平均寿命は1995年の65歳未満から、現在は73.3歳へと大きく伸びた。60歳以上の人は現在11億人に達し、2030年までに14億人、2050年には21億人に達すると予測されている。 この人口動態の変化は、公衆衛生の進歩、医療の発展、栄養状態の改善を反映した「勝利」とも言える現象だ。しかし一方で、人権の観点から新たな課題を突きつけている。 エイジズム(年齢差別)は、高齢者を「負担」と見なす偏見を助長している。家族、地域社会、ボランティア活動などで多大な貢献をしているにもかかわらず、多くの高齢者は差別、経済的排除、サービスの拒否、不十分な社会保障、放置、暴力といった深刻な人権侵害に直面している。 このような状況は、他の理由でも差別を受ける高齢者にとってはさらに深刻だ。高齢女性、LGBTQI+の高齢者、障がいを持つ高齢者、その他社会的に排除された集団の高齢者は、複合的な脆弱性を抱えている。紛争や気候災害が起きた際には、高齢者は特に深刻な被害を受けるが、その実態はあまり注目されず、保護も不十分である。 こうした課題は、日本のような高齢化が進んだ先進国だけのものではない。グローバル・サウス諸国でも、過去の北半球よりもはるかに速いペースで高齢化が進行しており、支援のインフラや社会保障が不十分な社会で老後を迎えるという現実がある。 にもかかわらず、現時点で高齢者の人権を特に保護する国際条約は存在しない。現在の国際法体系は断片的であり、急速に変化する人口構成にはもはや適合していない。 国際的な最初の重要な進展は、2015年に米州機構(OAS)が採択した「高齢者の人権保護に関する米州条約」だった。この画期的な条約は、高齢者を権利の主体として明確に認め、差別、放置、搾取からの保護を規定している。ただし、加盟国間での実施にはばらつきがある。 一方、世界保健機関(WHO)が推進する「2021〜2030年 健康的な高齢化の10年」は、年齢にやさしい環境や医療体制の促進に向けた前進ではあるものの、法的拘束力のない自主的枠組みに過ぎない。真に人権を保障するには、拘束力のある条約が必要だ。 そうした中で、2025年4月3日、国連人権理事会が「高齢者の権利条約の起草に向けた政府間作業部会の設置」を決定したことは、実現への大きな希望となる。地政学的分断が深まる昨今において、全会一致での採択は特に意義深い。 この動きは、2010年に国連総会で設置された「高齢化に関する公開作業部会」による10年以上にわたる粘り強い取り組みの成果である。これまで14回の会合を重ね、各国政府、市民社会、国家人権機関などが議論を重ね、2024年8月には条約起草を求める勧告が出された。AGEプラットフォーム・ヨーロッパ、アムネスティ・インターナショナル、ヘルプエイジ・インターナショナルなど市民団体による国境を越えたキャンペーンや連携も、今回の前進に大きく貢献した。 今後は、原則を法的保護に変える重要な段階が始まる。人権理事会決議は、その具体的な手順を示しており、年内には作業部会の初会合が開かれる予定だ。条文が草案としてまとまれば、国連システムを通じて検討・採択へと進む。採択されれば、1989年の児童の権利条約、2006年の障害者権利条約に続く新たな保護枠組みとなる。 この条約は、高齢者が社会にどう評価されるかを再定義する稀有な機会でもある。宣言から実施までの道のりでは、市民社会による粘り強い監視と働きかけが不可欠となる。まずは、条文に実効性のある保護を盛り込むこと、次に採択後の履行で保護が骨抜きにならないようにすることが重要だ。 その努力が実を結べば、年齢を重ねることが人間の尊厳と権利を損なうのではなく、むしろ高める未来が実現するだろう。(原文へ) サミュエル・キング:EU資金による研究プロジェクト「ENSURED」の研究員。イネス・M・ポウサデラ:市民社会連合CIVICUSの上級研究員、CIVICUS Lensライター、『市民社会の現状レポート』共同執筆者。 INPS Japan/ IPS UN Bureau Report 関連記事: 韓国は高齢化を乗り越えられるか?IMFが描く回復の青写真 |フィジー|看護師が海外流出し、医療サービス継続の危機 世界の人口、2050年までに100億人に到達と予測:SDGsへのあらたな挑戦

弁護士から活動家へ──児童婚根絶の運動を率いたブワン・リブー氏が表彰される

【ニューデリーIPS=ステラ・ポール】 ブワン・リブー氏は、もともと子どもの権利活動家になるつもりはなかった。しかし、インドで数多くの子どもたちが人身売買され、虐待され、児童婚を強いられている現実を目の当たりにし、沈黙を選ぶことはできなかった。 「すべては“失敗”から始まりました。」とリブー氏は語る。「助けようとはしていましたが、問題を止めることはできなかった。そのとき気づいたのです──この問題は社会正義ではなく、刑事司法の問題なのだと。そして、解決には包括的で大規模なアプローチが必要だと。」 現在、リブー氏は世界最大級の子どもの権利保護ネットワーク「ジャスト・ライツ・フォー・チルドレン(Just Rights for Children)」を率いている。児童婚や人身売買と闘い続けてきた功績により、同氏はこのたび世界法曹協会(World Jurist Association)から名誉勲章を授与された。授与式は、ドミニカ共和国で開催された世界法律会議(World Law Congress)にて行われた。 しかし、リブー氏にとってこの賞は「栄誉」ではなく「責任の証」だ。「この賞は、世界が注目していること、そして子どもたちが私たちに希望を託しているということの証なのです」と、授賞後初のインタビューでIPSにの取材に対して語った。 原点─1つの会議が人生を変えた 弁護士としての訓練を受けたリブー氏の道のりは、長く困難ながらも輝かしいものだった。そのきっかけは、インド東部ジャールカンド州で開かれた小規模なNGOの会合だった。ある参加者が発言した──「私の村の少女たちがカシミールへ連れて行かれ、結婚相手として売られています。」 その一言が、リブー氏の心を強く打った。 「そのとき気づいたのです──州境を越える問題を、1人や1団体で解決するのは不可能だと。」そこで全国的なネットワークづくりを始めた。 こうして「児童婚のないインド(Child Marriage-Free...

ハイチ中部県で武装ギャングの支配拡大

【国連IPS=オリトロ・カリム】 2025年3月下旬、ハイチ中部県のミルバレ(Mirebalais)およびソードー(Saut d’Eau)で発生した一連の凄惨な衝突の後、現地のギャングが両コミューンを掌握し、住民の避難と治安悪化が深刻化している。これは、ポルトープランス首都圏以外にも武装勢力の支配が拡大し続けていることを示しており、ハイチにおける人道状況の悪化が続いている証左である。 5月2日、ホワイトハウスは「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansamn)」および「グラン・グリフ(Gran Grif)」という2つのギャング組織をテロ組織に指定し、ハイチの問題の根幹にはこれらのグループの活動があると断定した。マルコ・ルビオ米国務長官は、「これらのギャングは、違法取引やその他の犯罪活動が自由に行われ、国民を恐怖に陥れる“ギャング国家”の樹立を最終目標としている」と述べ、こうした指定は対テロ対策として極めて重要であり、彼らへの支援や取引には、ハイチ国民のみならず米国永住者や米国市民も制裁の対象となる可能性があると警告した。 国連児童基金(UNICEF)は4月29日、首都圏および中部県の状況に関する報告書を発表した。それによると、4月初旬に発生した襲撃で、ミルバレの刑務所から515人以上の囚人が脱走。民間人の死者が相次ぎ、略奪や警察署の破壊も確認されている。4月25日には、中部県の治安回復を目指して法執行機関による作戦が実施され、8名の武装者が死亡、3丁の銃が押収されたが、ギャングの根絶には至らなかった。 さらに、ハイチ当局は、ヴィヴ・アンサムがラスカオバス(Lascahobas)と接するデヴァリュー(Devarrieux)地区の掌握を試みていると警告している。UNICEFによると、中部県でのギャング活動の激化により、人道支援団体の活動にも深刻な支障が出ており、ヒンチェ(Hinche)とミルバレ、ラスカオバス、ベラデール(Belladère)を結ぶ道路の一部が封鎖されている。一方で、ヒンチェとカンジュ=ブーカン=カレ(Cange-Boucan-Carré)間は比較的安全とされ、支援物資の輸送が許可されている。 国際移住機関(IOM)の統計によると、2023年に敵対行為が激化して以来、国内避難民は100万人を超えた。中部県ではおよそ5万1千人が避難しており、そのうち2万7千人が子どもである。また、IOMの報告では、ドミニカ共和国によるハイチ人の国外追放が大幅に増加しており、ベラデールおよびオアナミンテ(Ouanaminthe)といった国境地域で、2025年4月だけで2万人以上が送還された。これは今年最大の月間記録である。 人道団体は、女性、子ども、新生児など、特に脆弱な立場にある人々が多く含まれていることから、これらの強制送還に懸念を示している。IOMのエイミー・ポープ事務局長は「ハイチの状況は日に日に悪化しており、強制送還とギャングによる暴力が、すでに脆弱な現地社会をさらに悪化させている」と述べた。 また、避難所の状況も深刻で、IOMによると、現在1万2500人以上が95ヵ所に設置された避難所に分散しているが、その多くには食料、水、医療といった基本的なサービスすら行き届いていない。ミルバレでのギャング活動の激化により、ベラデールは事実上、他地域から孤立した状態にある。IOMハイチ代表のグレゴワール・グッドスタイン氏は、「これは首都圏を超えて拡大する複合的な危機であり、国境をまたぐ追放と国内避難がベラデールのような地域で収束している。支援活動の関係者自身も、救援を必要とする人々と共に閉じ込められてしまっている。」と危機感を示した。 ハイチの医療制度も、暴力の激化により崩壊寸前である。米州保健機関(PAHO)によると、首都ポルトープランスでは42%の医療施設が閉鎖中であり、国民の約5人に2人が緊急医療を必要としている。 さらに、性的暴力も蔓延している。国連の統計によれば、これまでに333人以上の女性や少女がギャングによる性暴力の被害を受けており、その96%が強姦である。人身売買や少年兵への強制徴用もポルトープランスで頻発している。 複数の分野にわたる資金不足が、ハイチの人々が生き延びるために必要な資源へのアクセスを困難にしている。構造的な障壁や社会的タブーのために、加害者が処罰されることは少なく、暴力の多くが見過ごされている。 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ハイチの2025年人道支援計画に必要な9億0800万ドルのうち、実際に集まったのはわずか6100万ドルで、支援充足率は7%未満にとどまっている。国連およびパートナー団体は、急速に悪化するこの危機への対応のため、各国に緊急の支援拠出を呼びかけている。(原文へ) INPS Japan 関連記事: 移民の国が多数の難民と庇護申請者を強制送還 |ハイチ|報告書が明らかにする震災後の「サバイバルセックス」の実情 国連は80年の歴史で最大の危機に直面しているのか?

AIによる「情報汚染」から選挙を守れという呼びかけ

【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】 人工知能(AI)の普及は、情報の流れやアクセスのあり方を変化させており、表現の自由にどのような影響が及ぶかという点で、広範な影響をもたらしている。国家レベルおよび地方レベルの選挙では、AIが有権者や選挙キャンペーンに与える影響の大きさと、悪用される脆弱性が顕在化しやすい。人々が制度や情報に対して懐疑的になる中、政府やテック企業は、選挙期間中における表現の自由を守る責任を果たす必要がある。 今年(2025年)の「世界報道自由デー」(5月3日)は、AIが報道の自由、情報の自由な流通、そして情報と基本的自由へのアクセスに与える影響に焦点を当てた。AIは誤情報・偽情報の拡散や、オンライン上のヘイトスピーチの助長といったリスクを伴い、選挙の文脈では、言論の自由やプライバシーの権利を侵害しかねない。 同時に開催された世界報道自由グローバル会議2025の関連イベントでは、国連教育科学文化機関(UNESCO)と国連開発計画(UNDP)が共同で発表したブリーフィングペーパーが紹介され、AIの影響と、選挙における表現の自由を巡るリスクと可能性について論じられた。 UNDP人間開発報告室のペドロ・コンセイソン所長は、情報アクセスに影響を与える「レコメンド・アルゴリズム」の役割について、「その仕組みは極めて複雑で、かつ新しいものであり、さまざまな利害関係者の視点を集める必要がある」と述べた。 選挙が信頼性と透明性を持って実施されるには、表現の自由の保障が不可欠である。この自由と情報アクセスがあることで、市民の関与や討論が可能になる。各国は国際法上、表現の自由を尊重し保護する義務を負っているが、選挙期間中にはその責務の実行が困難になる場合もある。AIへの投資が拡大する中で、選挙に関わるさまざまな主体がAI技術を利用している。 選挙管理機関は、有権者に投票方法などを伝える責任があり、SNSなどを通じて情報を迅速に届けるためにAIを活用することがある。また、AIは広報戦略や意識啓発、オンライン分析・リサーチの分野でも用いられている。 ソーシャルメディアやデジタルプラットフォームでは、親会社が生成AIの統合を進めており、コンテンツモデレーションにもAIが使われている。しかし、利用者の滞在時間やエンゲージメントを優先するあまり、情報の健全性が損なわれているリスクもある。BBC Media Actionのシニア・リサーチマネージャーであるクーパー・ゲートウッド氏は、「特に若者はソーシャルメディアを主な情報源としている」と述べた。 ゲートウッド氏が紹介したインドネシア、チュニジア、リビアでの調査では、偽情報・誤情報に日常的に触れていると答えた人はそれぞれ83%、39%、35%にのぼった。一方で、「拡散のスピードが真偽より重要」と考える傾向もチュニジアやネパールで見られたという。 「こうした調査結果は、選挙や人道危機、情報の入手が困難な状況下において、AI生成の偽情報が迅速に拡散されることで、深刻な被害をもたらす可能性があることを示しています」とゲートウッド氏は警鐘を鳴らした。 AIは選挙の健全性に複数のリスクをもたらす。まず、技術基盤が国によって大きく異なること。特に開発途上国では、AIの活用も、その規制や対応にも限界がある。UNESCOの『デジタル・プラットフォームのガバナンスに関するガイドライン』(2023年)や『AI倫理に関する勧告』(2021年)は、人権と尊厳の保護を軸とした政策的指針を提供している。 UNESCO報道の自由・ジャーナリストの安全担当の選挙プロジェクトオフィサー、アルベルティナ・ピテルバーグ氏は、「デジタル情報を白黒つけるように単純化して語るのはますます難しくなっている」と語り、「マルチステークホルダー・アプローチの重要性」に言及した。政府、テック企業、投資家、学術機関、メディア、市民社会などが協力し、キャパシティビルディング(能力構築)を通じて共通認識を築く必要があるという。 「私たちはこの課題に、人権尊重に基づき、平等な方法で取り組む必要があります。どの選挙もどの民主主義も重要です。商業的な利益やその他の私的利益よりも、それを優先すべきです」とピテルバーグ氏は語った。 チリ選挙管理委員会のパメラ・フィゲロア委員長は、AIによる「情報汚染」が政治参加における非対称性を生み出し、制度や選挙プロセス全体への信頼を損なうリスクを指摘した。 情報の複雑さはAIによってさらに増しており、「ディープフェイク」をはじめとするAI生成コンテンツが、候補者の信用失墜や政治的混乱に使われている。こうした技術は一般市民にも容易にアクセス可能となっており、その悪用が懸念される。 AIモデル自体が人間の偏見や差別を反映することもある。特に女性政治家は、性的に描写されたディープフェイクなどの嫌がらせやサイバーストーキングの被害を受けやすく、それが政治参加を阻む要因にもなっている。 とはいえ、AIは表現の自由を促進する機会も提供している。ブリーフでは、情報の健全性を保つための多様な利害関係者の関与と、戦略的コミュニケーションの必要性が指摘された。信頼できる選挙のためには、メディア、市民社会、テック企業が連携し、メディア・リテラシーの強化に取り組むことが求められている。 デジタルプラットフォームにも、選挙文脈でAIに対する保護措置を講じる責任がある。たとえば、選挙期間に適したコンテンツ監視への投資、選挙関連情報の推薦アルゴリズムの公共的利益の優先、リスク評価の公開、正確な情報の推進、選挙管理機関や市民団体との協議などが挙げられる。 AI、表現の自由、選挙の相互作用には、複数の立場からの連携と理解が不可欠であることが今回明らかになった。選挙に限らず、AIを人類のために活用するための方策として、今後の指針となる可能性がある。 UNDPで技術と選挙を専門とするアジャイ・パテル氏は、「AIツールはすでにすべての人のスマホに入り、ある意味で“無料”です。では、それがどこへ向かうのか?何が起こるのか?善にも悪にも、どんな革新が生まれるのか?」と問いかけた。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: 国連、新型コロナ関連の情報汚染と闘うためのグローバルイニシアチブを始動 国連事務総長、誤った議論や嘘を正すべきと熱心に訴える