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新たな植民地主義の時代
「白人の重荷を担え――お前たちが生み出した最良の者を送り出せ。叫びであれ、囁きであれ、去ることであれ、行うことであれ、黙して不満げな人々は、お前たちの神々を量り――そして、お前たち自身を量るだろう……」―ラドヤード・キプリング「白人の重荷:米国とフィリピン諸島」(1899年)
【ニューヨークIPS=アッザ・カラム】
いま私たちは、世界が「帝国の終焉」を声高に宣言しながら、その構造を別の形で再生産している時代に生きている。これは、植民地時代の絵葉書を懐かしむ話ではない。外交政策、国際統治(国際社会の意思決定の仕組み)、そして世界経済の力学が、真の協力というより、植民地的な論理に近い形で組み替えられつつある、ということだ。
「新しい植民地主義(New Colonialism)」という言葉は、修辞的な誇張ではない。軍事介入やジェノサイド(集団殺害)、外交の場からの撤退、そして「中立」を装いながら不平等や人権侵害を温存する制度。そうした権力の振る舞いは、いまも現実として進行している。
Ⅰ いま、どこにいるのか
「帝国主義とは本質的に地理的暴力の実践であり、世界のほぼすべての空間を探索し、地図化し、最終的には支配下に置く過程にほかならない。」―エドワード・サイード『文化と帝国主義』(1993年)
2026年1月、米国は、ラテンアメリカにおいて過去数十年で最も劇的な対外介入と言える行動に踏み切った。ベネズエラに軍事侵攻し、ニコラス・マドゥロ大統領を連れ去ったのである。ドナルド・トランプ大統領は、米国が「安全で適切、かつ慎重な移行が可能になるまで、国を運営する」と公言した。これは暗号ではない。露骨な支配の宣言である。
政権はこれを、麻薬対策(麻薬密輸の摘発)や法執行(犯罪捜査・逮捕など)として位置づける。しかし批判者のみならず同盟国の一部も、限定的な取締りではなく、20世紀の「政権転覆介入(regime change)」を思わせる、古い覇権の手法の復活だと見ている。メキシコからブラジルに至るラテンアメリカ諸国は、主権侵害として非難した。これは、過去の介入の現代版の鏡像である。
米誌『Foreign Policy』の分析も、この介入がより大きな流れの一部であることを示している。リシ・イエンガーとジョン・ハルティワンガーは、「麻薬テロ(narcoterrorism:麻薬取引と武装勢力・政治暴力の結びつきを、テロとして扱う概念)」との戦いを掲げる一方で、米国が軍の役割を拡張し、麻薬密売人とされる勢力への空爆までを「任務のリスト」に加えてきたと指摘した。安全保障と政治的統制の境界が曖昧になっていく構図である。
こうした動きは、対外政策の軍事化が進み、かつ一方的に実行される傾向を示している。
さらに、この介入は単発の出来事ではない。ベネズエラに対するトランプ政権の動きは、麻薬阻止というより、戦略的な布石と資源確保――とりわけ同国の莫大な石油埋蔵量――をめぐる思惑と結びついているのではないか、という見方が強い。
米国の力が中国やロシアに挑戦されるなか、いわば「世界-1(World-Minus-One:米国の影響力が相対的に低下し、米国抜きでも国際秩序が動き得る、という含意の比喩)」の状況が広がっている。そうした秩序の下で、介入への傾斜は、人道を掲げた事業としてではなく、地政学的な賭けとして再燃している。
植民地主義批判の視点から見れば、「独裁者から救う」という言葉は、キプリングが説いた「道徳的責務」を担えという呼びかけと重なる。だが、かつての正当化が暴力と労働搾取を覆い隠したように、いまのレトリックもまた、地政学的な自己利益を覆い隠している。
米国は「権威主義からの解放」を掲げる一方で、統治と経済インフラへの支配を主張している。これは、「他国はワシントンの指導なしには統治できない」と言い換えるに等しい、21世紀版の植民地的態度である。もたらされるのは解放ではなく、依存だ。依存こそ、植民地関係の典型である。
Ⅱ 多国間制度からの米国の撤退
「『白人の重荷』は、新たに支配される側に責任を転嫁しながら、真の重荷――体系的・構造的で、ときに暴力を伴う搾取――を認めない。これは帝国の最古の神話である。」――クマーリ・ジャヤワルデナ『白人女性のもう一つの重荷:英領植民地期南アジアと西洋女性』(1995年)
ベネズエラの掌握が古典的な帝国建設に見えるのだとすれば、多国間制度からの撤退は、そうした一方主義を抑えるはずの枠組みそのものから離脱する行為である。
2026年初頭、米国は大統領覚書に署名し、「米国の利益に反する」と見なす66の国際機関について、支援と参加を停止する方針を打ち出した。対象には多数の国連機関や条約枠組み(各国が合意し、守るべきルールを定めた国際約束)が含まれており、国際ガバナンスから距離を置く米国の流れをさらに加速させるものだ。
撤退対象となった組織には、国連の人口関連機関(UNFPA:国連人口基金。母子保健やリプロダクティブ・ヘルス=性と生殖に関する健康を扱う)や、気候交渉の国際枠組み(UNFCCC:国連気候変動枠組条約。各国が温暖化対策を協議する土台)も含まれる。米国はすでに、パリ協定のような主要な気候合意への関与を縮小しており、WHO(世界保健機関)からも正式に脱退した。深い多国間協力よりも、取引的な二国間主義へ回帰する動きと言える。
国連事務総長アントニオ・グテーレスは、この発表に遺憾の意を示しつつ、国連憲章上の法的義務を改めて強調した。国連憲章の下では、通常予算やPKO(国連平和維持活動)予算への分担金(各国に割り当てられる拠出義務)は、米国を含む加盟国すべてに拘束力を持つ。さらに、米国が撤退しても、国連機関は支援を必要とするコミュニティのために活動を続けると強調した。
ただしこの動きは、国連などがすでに深刻な内部課題に直面しているという背景のもとで起きている。批判者は、こうした問題が組織の正当性を損ない、統治(ガバナンス)の欠陥を示していると主張する。例えば、国連平和維持要員や職員による性的搾取・虐待(SEA:Sexual Exploitation and Abuse)をめぐる通報は繰り返し報告され、数百件の事例が記録されてきた。指導部の対応の信頼性にも懸念が示されている。
2024年だけでも、平和維持活動や政治ミッションで100件を超える通報が報告され、職員調査では、不適切行為に対する甘い認識もうかがえた。こうした虐待は偶発的な不祥事ではない。権力格差が搾取やハラスメントを可能にし、透明性と説明責任が後れがちな組織文化が根強いことを、研究者や人権擁護団体は繰り返し指摘してきた。
だからといって、多国間協力という理念そのものが否定されるわけではない。しかし、現行の制度が「公正で有効なガバナンス(統治)」だと言い切れるのかは、確かに問われている。
国際NGO(INGO:International Non-Governmental Organization。国境を越えて活動する民間支援団体)にも、同様に厳しい目が向けられている。援助関係者による性的搾取・虐待の事例や、組織の優先順位が現地のニーズよりドナー(資金提供者)の意向に引きずられやすい構造などが批判の対象だ。2024年の人道支援分野における性的搾取・ハラスメントに関する研究は、権力格差と、ルールを徹底し是正する実効性の弱さが、過少報告と不十分な対応を生んでいることを明らかにした。
国連や人道支援分野におけるこれらの問題は、「被害者や地域社会よりも、組織の評判を守ることが優先されがちだ」という不満を増幅させる。その不満が、一部の米国政策担当者に、これらを「時代遅れで腐敗した組織」と見なさせる土壌になっている面もある。
しかし、だからといって「去る」ことが解決ではない。説明責任を徹底し、検証と是正の仕組みを強化する代わりに見捨てれば、国際ガバナンスを空洞化させたい勢力を利するだけである。
Ⅲ 二人三脚でなければ踊れない
では、協力が壊れ、植民地的な衝動が蘇るこの状況で、米国だけが悪役なのか。結論は、部分的にはそうだ、である。
近年の米国の対外政策が国際規範を傷つけてきたことは否定できない。主権国家への軍事介入、主要条約や国際機関からの撤退、多国間協力を政治問題化して拒む姿勢は、「共有されたリーダーシップ」からの後退を示している。
しかし、多国間制度が本質的に有効で正しく、批判を免れるという前提もまた誤りである。危機対応の遅さ、説明責任の不透明さ、グローバル・サウス(主にアジア・アフリカ・中南米の新興・途上国を指す)の声の弱さ――国際統治の構造的な弱点は以前から指摘されてきた。こうした欠陥は、国際機関が政治的に利用され、機能不全に陥るリスクを高め、解消すべき不平等を温存しかねない。
国連や国際援助の現場(人道・開発支援分野)で起きてきた失敗は、米国だけの責任ではない。そもそも制度の出発点から、西側の資金拠出国(ドナー)を中心とする権力序列が組み込まれてきた、世界システムの問題でもある。
「新しい植民地主義」は、19世紀の征服のような露骨な形では現れない。「国益」「安全保障」「制度改革」といった語りの中に織り込まれている。強大国が人道や「自衛」を名目に軍事力を誇示する場合であれ、小国を守るための合意から離脱する場合であれ、現れる構図は同じである。力は行使可能な場所で自己主張し、多国間の規範は選択的に扱われる。
いま示されているのは、多国間主義を救うために必要なのは放棄ではなく、説明責任の徹底と制度の刷新だという点である。国際協力を掲げる国々は、統治の中に残る植民地の遺産に向き合い、制度の透明性を高め、不正や弊害を検証し是正する仕組みを強化し、意思決定をより民主的なものへ改めなければならない。
同時に、強大国は、共通の制度から撤退したり、それを自国の限定的利益のために利用したりしても、力の不均衡は是正されないことを認識すべきだ。むしろ固定化される。
結局、意味ある国際協力は、一国の事業でも、強者のネットワークによる事業でもあり得ない。必要なのは、共通善(公共の利益)に向けた連帯であり、妥協だけでなく、ときに負担や犠牲を引き受ける覚悟に支えられた、真の公正である。(原文へ)
アッザ・カラムはLead...
|ウクライナ|ロシアの攻撃と致命的な寒波で「生き延びるだけの生活」 家族を追い詰める
【ジュネーブINPS Japan/UN News=ダニエル・ジョンソン】
ウクライナ各地の家族は、ロシアによるミサイルや無人機(ドローン)の攻撃が相次ぐ中で、「常に生き延びるだけの生活(サバイバル・モード)」に追い込まれている。攻撃によって電力が途絶え、集合住宅の一部では数日間にわたり停電が続く一方、気温は命に関わる寒さまで落ち込んでいる。国連児童基金(ユニセフ)が1月16日に明らかにした。
「家族は凍える寒さを少しでも遮ろうと、窓にぬいぐるみのような柔らかい玩具まで詰め込む状況に戻ってしまっている。」と、ユニセフのウクライナ事務所代表ムニル・ママザデ氏は語った。
今回の警鐘は、南部ザポリッジャ州と東部ハルキウ州で電力インフラが攻撃を受けたと報告された、別の夜の事案を受けたものだ。これらの攻撃により、多くの住宅地で電気と暖房が失われたという。
「エネルギー網への攻撃がもたらす致命的な寒さの脅威は、戦争に上乗せされた『国規模の緊急事態』になりつつある。」と、ママザデ氏はジュネーブでの定例記者会見で語った。
同氏は、金曜日のキーウの気温がマイナス15度(華氏5度)に達したことを挙げ、来週はさらに冷え込む可能性があると警告した。国内の何百万人もの家族が、暖房、電気、水の供給なしに暮らしているという。「そのため、子どもと家族は常に生き延びるだけの生活を強いられている。」と語った。
支援の重点が変化
これまで人道支援の焦点は前線地域に置かれてきた。しかし、住宅地を含む都市インフラへのロシアの攻撃が絶えないことで、集合住宅で暮らす人々のニーズが、はるかに複雑であることが浮き彫りになっている。
例えばキーウ在住のスヴィトラーナは、10階の部屋で3歳の娘アディナの世話を何とか続けている。「彼女は、暖房も電気も3日以上ない状態が続いたと話してくれた。それは混乱の最初の週のことで、私たちはすでに2週目、あるいは3週目に入ろうとしている。いまも多くの家族が、供給なしの生活を続けている。」と、ママザデ氏は語った。
ウクライナ政府からのこうした懸念に呼応し、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のハイメ・ワー氏は、これまでハルキウやオデーサへの攻撃後は「数日で」電力が復旧してきた一方、首都の状況はより厳しく見えると語った。ジュネーブの記者たちにビデオで語りながら、寒さで手をこすり合わせていたワー氏は、「キーウでは停電が長期化し、影響を受ける人口も多い状況に直面している。」と語った。
ロシアの全面侵攻開始から間もなく4年となるが、「子どもの生活はいまも、生存のことばかりに支配され、子ども時代ではなくなっている」と、ユニセフのママザデ氏は警告した。2025年に確認された子どもの死傷者は、前年に比べて11%増加したという。
ユニセフは、ウクライナの都市部で脆弱(ぜいじゃく)な人々を支えるため、大型の共同テントを支援している。そこでは体を温められるほか、ゲームや玩具で遊ぶこともできる。
「スヴィトラーナは、アリナを入浴させることも、温かい食事を用意することもできない。そこで娘に何枚も衣類を重ね着させ、暗い階段を10階分下って、ウクライナ国家非常事態庁が外に設置したテントに向かう」と、ママザデ氏は説明した。「そこでは暖を取り、温かい食事を得て、端末を充電し、心理士と話すこともできる。あるいは、ただ暖かい場所に座っていられる」
ユニセフは、暗闇の中で生活し、凍える寒さに耐えることが、身体面と精神面の双方で子どもにとってとりわけ深刻な影響を及ぼすと警告する。こうした状況は恐怖やストレスを強め、「呼吸器疾患などの健康問題を引き起こしたり、悪化させたりする恐れがある。」という。
「最も幼い子どもたちが最も脆弱だ」と、ママザデ氏は語った。「新生児や乳児は体温を急速に失い、低体温症や呼吸器疾患のリスクが高まる。十分な暖かさと医療ケアがなければ、こうした状態は急速に命に関わるものになり得る。」(原文へ)
INPS Japan/UN News
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「グローバル・ヒバクシャ:核実験被害者の声を世界に届ける」(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー)
ファクトチェック:フェイクニュースへの反撃
|ウクライナ危機|国連の3機関が、医療に対する攻撃を停止するよう求める
|タジキスタン|国際水準と低コストを両立 医学教育の新たな留学先
【ドゥシャンベLondon Post=ラザ・サイード】
タタジキスタンは近年、医学教育の進学先として注目が高まっている。教育の質、費用の手頃さ、文化的な親和性に加え、政府の後押しもあり、とりわけ南アジアの学生にとって有力な選択肢になりつつある。同国は、イブン・シーナー(アヴィセンナ)の遺産に連なる医学の伝統を持つ。その土台の上で国際水準に沿った近代化を進めながら、学生本位でコストを抑えた学習環境を維持してきた。
南アジア――とりわけインド、パキスタン、バングラデシュでは、限られた医学部定員をめぐる競争が激しいうえ、私立校の学費も高騰している。結果として、多くの学生が海外に活路を求めるようになった。こうした状況の中で、タジキスタンは旧ソ連型の厳格な教育を基盤に改革を進め、世界水準の医学教育を比較的低い費用で提供している点が評価されている。文化的に馴染みやすく、自然景観にも恵まれた環境も、学びの場としての魅力を後押しする。
タジキスタンが医療の高度化に取り組む背景には、独立後に掲げたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の国家ビジョンがある。世界保健機関(WHO)の指針に沿い、欧州連合(EU)など国際パートナーの支援も得ながら、政府は「国家保健戦略(2030年まで)」と「2024~2026年行動計画」を進めている。重点は、一次医療(プライマリ・ヘルスケア)の強化、非感染性疾患への対応、都市と農村の格差縮小である。
具体策として、2025年にはスグド州でパイロット事業が始まり、自己負担の軽減とサービスの質の向上を狙う新たな財源・支払いの仕組みが導入された。こうした改革は国内の医療課題への対応にとどまらず、医学教育機関の対外的な信頼性と存在感を高め、費用面の壁なく高度な訓練を求める南アジアの学生にとっての魅力を強めている。
この体系の中核にあるのが、首都ドゥシャンベのアヴィセンナ・タジク国立医科大学(Avicenna Tajik State Medical University=ATSMU)である。1939年創設で、ペルシャの博学者イブン・シーナー(アヴィセンナ)にちなんで命名された。ATSMUは、規律と臨床重視を特徴とする旧ソ連型の教育モデルを基盤にしつつ、シミュレーション施設、研究センター、家庭医療(総合診療)のカリキュラムなど、現代的な教育要素も取り入れている。
ATSMUでは、一般医学(MD/MBBS)や歯学、公衆衛生などを英語で学べるプログラムを用意し、提携する15の関連教育病院を通じて早期から臨床実習の機会が得られるとしている。留学生は500人を超え、近年はパキスタン出身者が約450人に上るとされるほか、インドやバングラデシュからの学生も多い。
このほか、ダンガラのハトロン州立医科大学やタジキスタン医療社会研究所などが、学際的な教育やシミュレーション実習、卒後研修を提供し、ATSMUを補完している。卒後教育は、卒後教育研究所(Institute of Postgraduate Education)を通じた研修・専門教育として位置づけられている。
学位の扱いについては、各国の関連機関の要件や国際的な枠組みに照らし、卒業後にインドのFMGE/NExT、米国のUSMLE、英国のPLABなど各種ライセンス試験を目指せる点が強調されている。理論と実践の双方で通用する力を育み、国際的な医療制度への接続を視野に入れた教育である、という位置づけである。
南アジアの学生にとって、タジキスタンの大きな魅力は費用負担の軽さにある。英語による5年制MBBSの授業料は年4,000~5,000ドル程度が一般的で、寮費や生活費を含めた総費用は在学期間全体で、インド・ルピー換算で約16~22ラーク(約160万~220万ルピー)、パキスタン・ルピー換算で約140万~150万PKR程度に収まるとされる。インドやパキスタンの私立医大で学費が高額化し、寄付金が上乗せされる例もある現状と比べれば、負担は相対的に小さい。
入学は成績重視で手続きが比較的明確であり、一般に高校相当課程で理科(物理・化学・生物)の成績50~60%が求められる。インド人学生はNEET合格が必要で、いわゆる「キャピテーション・フィー(裏口入学金)」はないとされる。生活費も月150~200ドル程度と比較的抑えられ、学内の学生寮ではハラール食や南アジア向けの食事を提供する学生寮の食堂(メス)が整い、同じ文化圏の仲間と支え合える環境があるという。
教育費の高騰と世界的な医療人材不足が同時に進む中、タジキスタンは「手頃な費用で質の高い教育機会を提供する」という方向性を強めている。文化的背景にも配慮した訓練環境を整えることで、人材流出の圧力を和らげ、卒業生が母国で貢献する道と国際的に活躍する道の双方を開く狙いがある。改革が進み、パイロット事業の成果が全国展開されれば、同国は医師養成にとどまらず、包摂的な医療を担う人材育成の拠点としての存在感を高める可能性がある。南アジアの志願者にとって、タジキスタンは学位取得を超えたキャリア形成の選択肢になりつつある。(原文へ)
INPS...
ニューデリーの危険な賭け:変動する地域秩序の中でタリバンを迎え入れること
【ニューデリーLondon Times=ヌーラルハク・ナシミ】
歴歴史的な展開として、10月9日、インド政府はタリバン暫定政権のアミール・カーン・ムッタキー外相を受け入れた。2021年8月にタリバンが権力を掌握して以降、初の高官級訪問である。時期の選定は偶然ではない。ロシアがタリバンを正式承認し、中国も関与拡大の姿勢を示す中、地域の力学は変化し、アフガニスタンにおけるインドの伝統的影響力は相対的に弱めつつあった。
昨年7月、ロシアは、タリバンが2021年に政権を再掌握して以来、同暫定政権を正式に承認した最初の国となった。あわせて、事実上の政権を「テロ組織」指定リストから外した。これは場当たり的な外交判断ではなく、段階的に進めてきた関与の延長線上にある。ロシアは米軍撤退後もカブールの大使館を閉鎖せず、2022年には石油・ガス・小麦をめぐる合意を結ぶなど、タリバン指導部との関係を着実に深めてきた。
ロシアの決定が「ドミノ効果」を生み、他の地域大国が追随するのではないかとの観測は、以前から強まっていた。その有力候補として浮上したのが中国である。中国はロシアの判断を速やかに歓迎し、外務省の毛寧報道官は「アフガニスタンを国際社会から排除すべきではない」と述べた。この発言は儀礼的な域にとどまらず、明確な戦略的意図を示すシグナルと受け止められた。
中国が重視するのは、アフガニスタンの鉱物資源に加え、戦略的要衝としての地理的位置、そして新疆への過激派脅威を抑える安全保障上の緩衝地帯としての価値である。中国がタリバン暫定政権を正式承認すれば、北京—モスクワ—イスラマバード—カブールの連携が固定化し、地域の新たな経済・安全保障の枠組みの中でインドが周縁化される可能性がある。
こうした構図のもと、インド政府は二重のジレンマに直面する。ロシアの承認と中国の関与拡大は、地域連結性プロジェクトや安全保障調整からインドを排除する方向に働き得る。さらに、ロシアと中国の外交的後ろ盾のもとでタリバン—パキスタン協力が進めば、アフガニスタンに活動拠点(いわゆる安全地帯)を得た反インド武装勢力が勢いづく恐れもある。他方で、タリバンのムッタキー外相を受け入れることは、インドが道義的立場を損ない、人権や民主主義の原則より現実主義(リアルポリティクス)を優先したと受け取られかねない。
それでも、インドが地域的影響力を守り、過激主義の脅威がさらに根を張ることを防ぐのであれば、傍観者でいる余地はない、という指摘には一理ある。
ただし、その際には、関与が事実上の統治当局(タリバン暫定政権)への正統性付与と受け取られないための具体的な枠組みが欠かせない。たとえば、人道支援を継続しつつ、現地のNGOや信頼できる国際機関と連携して支援を届ける方法がある。国外にいるアフガニスタンの女性や少女に対して大学奨学金を拡充することも可能だ。さらに、タリバンの制限を回避する手段として、オンライン学習プラットフォームやデジタル教室の整備を支援する選択肢もある。世界有数のIT大国であるインドには、こうした分野で独自に貢献できる余地がある。
戦略面では、タリバン暫定政権とのいかなる関与においても人権を中心に据え、同政権に代わり得る政治的選択肢を育てる視点が重要となる。筆者はこの5年ほど、ロンドンの慈善団体「Afghanistan and Central Asian Association(ACAA)」の創設者兼ディレクターとして、タリバンに対抗し得る組織的な政治的反対勢力の必要性を訴えてきた。亡命下であれ国内であれ、民主主義原則と人権に根差す代替ビジョンを提示できる反対勢力は、タリバンが国際社会で「アフガン国民唯一の声」と見なされることを防ぐうえで、重要な対抗軸になり得る。
その例の一つが、ダリウス・ナシミ(ACAAの資金調達・パートナーシップ責任者)が設立した「Afghanistan Government in Exile(AGiE)」である。AGiEは、人権、民主主義、安定を掲げる包摂的連合であり、タリバンへの対抗軸として機能し得る。
一般のアフガン市民の苦境は、すでに深刻である。パキスタンとイランから数千人規模が強制送還され、タリバンが十分な保護や生計支援を提供できない状況下のアフガニスタンへ戻されている。国内人口の3分の2が支援を必要としている一方、人道支援の財政と体制は逼迫し、医療も崩壊の瀬戸際にある。国際的な「ドナー疲れ」、米国の支援凍結、国際社会の関心の移行を背景に、人道資金は急減している。送還された人々は逮捕や拷問、さらには処刑の危険にさらされている。教育、就労、移動の自由を奪われた女性と少女もまた、権利を剥奪された生活へと送り返されている。
状況をさらに悪化させ得る要因として、英国はARAPとACRSの終了を発表した。両制度は、NATOや英軍に協力し、タリバンによる迫害から逃れるアフガン人にとって、英国での再定住に向けた数少ない合法的ルートだった。英国国防省の個人情報流出を受け、情報が流出した対象者は現在も危険にさらされている。ACAAはこの発表を受け、ARAP終了の是非を争う司法審査(judicial...
