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太陽光で危機をしのぐパキスタン―中東発のエネルギー不安の中で進む「静かなソーラー革命」
【パキスタン・カラチIPS=ゾフィーン・エブラヒム】
パキスタンでは、太陽光発電への転換が急速に進んでいる。電力料金の高騰と供給不安を背景に、家庭や企業は国家電力網への依存を減らしつつあり、その拡大は、米国・イスラエルによる対イラン戦争に伴う中東発のエネルギー危機の衝撃を和らげる一因ともなっている。とはいえ、燃料価格の上昇は依然として庶民生活を直撃しており、再生可能エネルギーの恩恵が社会全体に広く及ぶまでにはなお時間がかかる。
エネルギー専門家のワカル・ザカリア氏は、太陽光発電は「非常に合理的な選択」だと語り、自らそれを実践している。過去5年以上にわたり、自宅の屋上に設置した太陽光パネルによって電気料金を大幅に削減し、時には請求額がゼロになることもあった。余剰電力はネットメータリングを通じて売電してきた。
先月、同氏はさらに一歩踏み込んだ。電気自動車(EV)を2台購入し、太陽光パネルの増設と蓄電池容量の倍増によって、国家電力網からのほぼ自立を実現したのである。イスラマバードに拠点を置く環境コンサルティング会社「ハグラー・ベイリー・パキスタン」の最高経営責任者(CEO)である同氏は、「私はもはや彼らの燃料に頼らず、電力も必要としていない」と語った。
「自分の車を走らせているのは『神の手』だと私は呼んでいる」とザカリア氏は語った。
その投資効果もすでに明確だ。「蓄電池の費用を含めても、自家発電した電力のコストは1単位あたり約12ルピー(0.043米ドル)だ。一方、それをイスラマバード電力供給会社に約26ルピー(0.092米ドル)で売ることもできる。」と説明する。ただし、売電収入を得るには煩雑な手続きが必要なため、現時点では申請していないという。
ガソリン車から、1カ月前に購入したEVに乗り換えたことで、コスト差はさらに明確になった。ザカリア氏は、「自宅で発電した電力でEVを走らせた場合、走行1キロ当たりのコストは約2ルピー(0.0071米ドル)にすぎない。これに対し、従来のガソリン車では1キロ当たり27ルピー(0.096米ドル)かかっていた」と語った。
この試算には、ガソリン車で必要となる潤滑油やオイル・エアフィルター、ブレーキ関連などの定期的な整備費用は含まれていない。
「EVはほとんどメンテナンスを必要としない。」と同氏は付け加えた。
もっとも、ザカリア氏のように国家電力網への依存をほぼ断てる家庭は、なお一部にとどまる。
同氏は、電力会社が消費者を「プロシューマー(電力の利用者であると同時に生産者でもある存在)」として取り込む利益配分の仕組みを導入し、あわせて初期費用を支えるマイクロファイナンスを整備しない限り、太陽光発電をめぐる構図は大きく変わらないだろうと指摘する。そのためには、電力事業の民営化が必要だという。
それでも、蓄電池の有無を問わず、太陽光発電は多くの家庭にとって現実的な代替手段になっている。イスラマバードに拠点を置くエネルギー・環境分野のシンク・アンド・ドゥータンク「リニューアブルズ・ファースト」のデータマネジャー、ラビア・ババール氏は、「パキスタンで起きている変化は極めて大きい。電力消費者の国家電力網への依存は着実に低下している。」と語った。
バハール氏によれば、送電網由来の電力需要は、2025会計年度には2022会計年度比で11%減少した。背景には、家庭や企業による太陽光発電への切り替えがある。
「昼間に送電網から供給される電力は大幅に減っている。その結果、ガス火力発電所の稼働も以前より大きく落ち込んでいる。」とババール氏は説明した。
2022年が転機に
エネルギー経済財務分析研究所(IEEFA)のエネルギー金融専門家、ハニア・イサード氏は、人々がより安価な選択肢の必要性を痛感した転機は2022年だったと振り返る。
「ロシアによるウクライナ侵攻を受けて液化天然ガス(LNG)価格が急騰し、パキスタンはガス不足に陥った。その結果、広範な停電が発生し、電気料金はこの数年でほぼ3倍になった。」と同氏は語る。
その結果、初期費用を負担できる家庭や企業は、高額で不安定な電力を使い続けるのではなく、太陽光パネルへの投資を選ぶようになったという。
独立系クリーンエネルギー・シンクタンク「EMBER」によると、エネルギーミックスに占める太陽光発電の割合は、2020年の2.9%から2025年末には32.3%へと上昇した。
この静かな「太陽光革命」は、いまや中東発のエネルギー危機に対する重要な緩衝役となりつつある。米国・イスラエルによる対イラン戦争でホルムズ海峡が閉鎖される中、今週公表されたリニューアブルズ・ファーストとエネルギー・大気浄化研究センター(CREA)の共同報告書は、その効果を明確に示した。
報告書の共同執筆者の一人であるババール氏は、「パキスタンの太陽光革命は、この国のエネルギー構造を静かに変えつつある。送電網への依存を減らし、LNGへの依存を抑えることで、多くの近隣諸国がなお持ち得ていない、世界市場の変動に対する耐性を生み出している。」と語った。
報告書によれば、パキスタンは太陽光発電の急拡大によって、2020年以降、石油・ガス輸入で120億米ドル超の支出を回避してきた。現在の価格水準が続けば、2026年だけでもさらに63億米ドルを節約できる見通しだ。
CREA共同創設者で主任分析官のラウリ・ミュリーヴィルタ氏は、今回の太陽光ブームが輸入負担を和らげ、湾岸地域からの石油・LNG価格ショックに対する備えになっていると指摘する。
産業界でも太陽光発電への転換が進み、LNG需要は大きく落ち込んでいる。
ババール氏は、「この変化は政府の政策にも直接影響を及ぼしている。パキスタン政府はLNGの長期供給契約の相手先に対し、余剰カーゴを国際市場に回せるよう契約見直しを求めている。国内のガス消費が急減し、国際市場では供給過剰が生じているからだ」と語った。
パキスタンは国内埋蔵量の減少を受け、2015年からLNGの輸入を開始した。用途の中心は電力部門で、国内電力供給の約4分の1を占め、次いで産業部門が続く。
ホルムズ海峡経由でカタールから供給されるLNGは、価格高騰に加え、家庭での太陽光発電への移行が進んでいることから、競争力を失いつつある。紛争前に一部のLNGがすでに到着していたことに加え、影響を受けたカーゴの不足分を国内ガスで補っているため、供給は4月中旬ごろまで維持される可能性があるという。
ババール氏は、「パキスタンはこれまで、変動の激しい国際LNG価格に常に脆弱だった。価格が急騰すれば、外貨準備に大きな圧力がかかる。」と語った。
イサード氏もこれに同意する。「太陽光発電は一定の緩衝役を果たしてきた。電力部門はインドネシアや南アフリカからの輸入石炭にも依存しており、当面は供給逼迫が深刻化する可能性は低い。加えて、季節的な水力発電の増加と穏やかな気候が、LNG火力需要の急増を抑えるだろう。現時点でパキスタンは、南アジアでより大きな打撃を受けているバングラデシュやインドとは対照的に、当面の危機を回避している。」
それでも生活苦は深まる
ただし、太陽光発電の拡大も、原油価格上昇の打撃から国民生活を守ることはできなかった。ガソリンと軽油の価格は、それぞれ1リットル当たり1.15米ドル、1.20米ドルに達し、同国史上最大となる20%の上昇を記録した。輸送コストの上昇は、交通運賃や食料品価格の値上がりに直結している。
ザカリア氏は、この危機が進むべき方向をはっきり示しているとみる。すなわち、EVの普及、ディーゼル依存の低減、そして再生可能エネルギーの拡大である。
「まずは二輪車から始めるべきだ」と同氏は提案する。理想を言えば、パキスタンにはEVを基盤とした大規模な公共交通システムが必要だという。さらに、貨物輸送をトラックから鉄道へ転換すれば、燃料コストは大幅に削減できると述べた。
またザカリア氏は、政府による石油配給や緊縮策を支持している。
先週、シェバズ・シャリフ首相はテレビ演説で、「地域全体が現在、戦争状態にある。」と述べ、政府職員の週4日勤務制や、3月16日から月末までの学校の春休みを発表した。政府職員の50%は交代制で在宅勤務とし、民間部門にも同様の措置を勧告した。
高等教育機関は燃料節約のためオンライン授業に移行し、連邦・州政府の会議もオンライン化された。政府機関向けの燃料手当も削減されている。
さらに緊縮措置の一環として、連邦・州の閣僚は2カ月分の給与と手当を返上し、国会議員の報酬も25%削減される。閣僚、議員、政府高官の海外出張は必要不可欠な場合に限られ、搭乗クラスもエコノミーに限定された。結婚式は招待客を200人までに制限し、食事も一品料理のみとされた。
庶民に重い「人間的代償」
だが、こうした措置も、サバ・ナスリーンさん一家の苦境を和らげるには至っていない。家政婦として働く52歳の2児の母は、「燃料価格の上昇で、私たちの暮らしは本当にやっていけなくなった。燃料が上がれば食料品の値段も上がる。果物や肉はほとんど買えず、いまでは牛乳や野菜さえ買えない。」と語った。
ラマダン明けを祝うイスラム教の祭りイード・アル=フィトルを目前に控え、ナスリーンさんは「娘たちのためにシアー・クルマを作れないイードは、物心ついて以来初めてだ。」と打ち明けた。シアー・クルマは、南アジアの多くのムスリム家庭で祝祭時に作られる、甘い細麺の伝統的なデザートである。
「ヴェルミチェリの箱は、今年は150ルピー(0.53米ドル)から300ルピー(1.07米ドル)へと値上がりした。」と彼女は話す。さらに、「それに、イランへの攻撃で祝う気持ちも薄れてしまった。心の底からうれしいと思えない。胸が重い。」と続けた。
太陽光革命は、多くの人にとって希望の光となっている。だが、ナスリーンさんのような家庭にとっては、日々の暮らしを守る闘いがなお続いている。(原文へ)
INPS Japan/ IPS UN Bureau Report
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ロシアと中国がホルムズ海峡決議案を否決 バーレーン、拒否権の壁に直面
【国連本部ATN=アハメド・ファティ】
バーレーンは、安全保障理事会に対し、世界で最も重要な海上交通路の一つであるホルムズ海峡における「航行の自由」を守るよう訴えた。だが、そこで改めて浮き彫りになったのは、国連においてなお権力政治が色濃く作用している現実だった。多数の理事国が決議案を支持し、1週間にわたって各国への働きかけが続けられ、文案もほとんど骨抜きになるまで修正された。それでも、常任理事国2カ国は数分でこれを葬ることができる。4月7日、ロシアと中国は、11カ国の賛成を得ていたバーレーン主導のホルムズ海峡の海上安全保障決議案に拒否権を行使した。露呈したのは安保理の機能不全だけではない。地域危機そのものを誰が、どのような枠組みで定義するのかをめぐる、より深い対立でもあった。
否決された今回の採決は、国連本部で繰り広げられた湾岸諸国による集中的な外交攻勢の帰結でもあった。国連関係者によれば、バーレーンのアブドラティフ・アル・ザヤニ外相は約1週間ニューヨークに滞在し、元国連大使でもあるアラブ首長国連邦(UAE)のラナ・ヌセイベ国務相とともに、安全保障理事会の全15理事国と断続的に協議を重ねた。バーレーンは拒否権行使を回避するため、決議案に大幅な譲歩を加えた。当初、「武力行使への道を開く」と懸念されていた文言は削除され、ロイター通信によれば、採決時点の文案には、武力行使の容認はもちろん、拘束力ある執行措置も明記されていなかった。
バーレーンが理事会で示した立場は明快だった。これは戦争拡大のためではなく、原則を守るための決議だというのである。採決後、アル・ザヤニ外相は、決議案が採択されなかったのは常任理事国による反対票のためだと述べた。これまでの報道や会合記録によれば、バーレーンは、イランによる海運妨害を「経済的威圧」の一形態であり、国際秩序に対する直接的な挑戦だと訴えてきた。湾岸諸国のメッセージは明確である。世界的な要衝が圧力にさらされているにもかかわらず、安保理が行動できないのであれば、それは自らの無力を公然と示すことに等しい。
米国は、この拒否権行使をさらに厳しい言葉で非難した。マイク・ウォルツ米国連大使は、ロシアと中国の対応を「新たな最低水準」と批判し、イランによる海峡封鎖が、ガザ、スーダン、コンゴなどの人道危機地域向けの医薬品や支援物資の輸送を妨げていると述べた。さらに同大使は、ロシアと中国が「世界経済を銃口の前に置く政権」の側に立っていると非難し、「責任ある国々」に対し、合法的な商取引と人道支援物資の輸送を守るため、海峡の安全確保で米国に加わるよう呼びかけた。米国の論点は明白だった。これは単なる海運問題ではない。安保理が戦略的恫喝を容認するのかどうか、そのこと自体が問われているのである。
フランスはバーレーン案を支持したが、ワシントンほど政治的緊張をあおることは避けようとした。ジェローム・ボナフォン仏国連大使は、この決議案の目的は「厳格に、純粋に防御的な措置」を促し、海峡の安全を確保しつつ、「エスカレーションの連鎖を招かない」ことにあると述べた。これは、ロシアと中国が実際に打ち出す前から、両国の中核的な反対論に先回りして応じたものでもあった。つまり、海上防護の文言が、より広範な軍事行動への法的・政治的な橋渡しとなりかねないという懸念である。フランスが示そうとしたのは、決議案はすでに徹底して防御的な内容にまで絞り込まれており、それでもなお拒否権が行使されたという事実だった。
これに対し、ロシアはバーレーン案を中立的な海上安全保障措置とはみなさず、危険な政治的手段と位置づけた。ワシリー・ネベンジャ国連大使は、国際法および海洋法の上で「危険な前例」を生み、和平努力と安保理の信頼性を損なうような決議は支持できないと述べた。また、提案国側がイランだけを不安定化の源として描く一方で、危機の「根本原因」だとロシアがみなす米国とイスラエルによるイラン領内への違法な攻撃には触れていないと批判した。ロシアの論理は一貫している。たとえ文案が弱められていても、最終的には悪意ある国家が安保理決議を武力行使の口実として利用する余地を残す、というのである。
中国の立場もおおむねロシアと軌を一にしていたが、より強く警戒していたのは全面的な緊張激化の危険であった。ロイター通信によれば、傅聡・中国国連大使は、米国が「文明全体の存続」を脅かしているこの局面で、こうした決議案を採択すれば誤ったメッセージを発することになると述べた。中国外務省もまた、安保理は緊張緩和、戦闘停止、対話再開に向けて機能すべきであり、「違法な戦争行為を追認する場」であってはならず、「火に油を注ぐ」ような対応は避けなければならないと表明した。中国は海峡での混乱そのものを擁護したわけではない。中国が拒んだのは、「海上安全保障」の名の下でイランへの軍事的圧力を正当化しかねない安保理の対応であった。
理事会を分断した本質的な亀裂は、まさにそこにあった。バーレーン、米国、フランスは、差し迫った海上安全保障の論理から主張した。ホルムズ海峡はあまりに重要であり、イランは一線を越えた以上、安保理は対応しなければならない、という立場である。これに対し、ロシアと中国は、順序と合法性の論理から反論した。まず止めるべきは、より大きな戦争そのものであり、その文脈を切り離した海運安全保障決議は、緊張拡大への裏口の承認になりかねない、というのである。結局、浮かび上がったのは国連では見慣れた構図だった。多数派は決議案を支持した。だが、拒否権がそれを退けた。
だが、この物語は否決で終わらなかった。新たな動きとして、ロシアと中国は、海上安全保障を含む中東情勢全体を対象とする代替決議案の回覧に踏み切った。ロイター通信によれば、その文案は、進行中の敵対行為の緩和と外交への回帰を求める内容である。国連外交筋によれば、この決議案は事前協議なしに「ブルー」に載せられたが、7日夜の時点では採決日程は設定されていなかった。この動きは、ロシアと中国が単にバーレーンの枠組みを封じるだけではなく、自らの枠組みへと議論を組み替えようとしていることを示している。
結局のところ、7日の会合は、単なる一つの決議案の否決ではなかった。そこでは、危機をどう定義するのかをめぐって、二つの競合する主張が正面からぶつかった。バーレーンは、この危機を航行の自由と世界経済への攻撃として安保理に位置づけようとした。これに対し、ロシアと中国はそれを拒み、米国とイスラエルの行動が引き起こした、より大きな戦争の帰結として捉え直そうとした。バーレーンは文言を和らげ、各国に働きかけ、11票を集めることもできた。だが、拒否権を越えることはできなかった。安全保障理事会にはなお、外交的勢いと現実の権力を分かつ決定的な一線がある。
Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/bahrain-opens-u-n-presidency-with-iran-warning-but-no-regional-endgame
INPS Japan
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ホルムズ海峡からバグラムまで―米中対立は新たな戦略的前線へ
【イスラマバードLondon Post=ムハンマド・ラシッド】
米国と中国の戦略的競争は、台湾海峡や南シナ海にとどまらず、中東と中央アジアにも新たな前線を広げつつある。イランの原油輸出拠点カーグ島をめぐる緊張、ホルムズ海峡の海上交通、さらにアフガニスタン・バグラム空軍基地をめぐる思惑は、エネルギー安全保障と軍事的優位を軸に、米中対立がより多層的な局面に入ったことを示している。
冷戦後、中国は、かつてソ連、そしてその後のロシアが占めていた地政学的な位置に代わる形で、米国にとって最大の戦略的競争相手として台頭してきた。米国がなお軍事同盟や軍事介入に大きく依存して自国の利益を守ろうとしているのに対し、中国は主として経済的影響力の拡大に力を注ぎ、直接的な軍事衝突を避けてきた。
この対立の複雑さを改めて浮き彫りにしているのが、中東における最近の情勢である。米国、イスラエル、イランを巻き込む現在の紛争は、2026年初頭にイラン国内の複数の軍事施設が空爆を受けたことで激化した。国際社会の関心は、その直接的な被害だけでなく、世界のエネルギー市場や大国間競争に及ぼす影響にも向けられている。
焦点の一つとなっているのが、イラン南岸沖にある同国最大の原油輸出拠点、カーグ島である。同島は、イランの原油輸出の約9割を担う要衝だ。
トランプ大統領や米軍当局者の説明によれば、最近の攻撃は島内の軍事施設を標的としたが、主要な石油インフラは意図的に回避された。攻撃後も、カーグ島はおおむね稼働を維持している。ただ、米国は、イランが戦略的要衝であるホルムズ海峡の海上交通を妨害すれば、さらなる軍事行動に踏み切る可能性があると警告している。ここにエネルギー安全保障が重なり、事態の意味合いはいっそう大きくなっている。
中国は近年、イラン産原油の最大級の輸入国の一つであり、石油輸入全体の推定25~30%をイランに依存してきた。ロシアからの輸入拡大や戦略備蓄の積み増しによって調達先の多様化を図ってはいるものの、イラン産原油はなお中国のエネルギー供給における重要な柱である。今回の紛争を受けて、中国は供給混乱に備えるため、輸入の前倒しと備蓄の拡大を進めている。
一部のアナリストは、この地域における米国の行動、なかでもイラン攻撃へのイスラエルの関与には、中国のエネルギーアクセスを抑え込む狙いも含まれている可能性があるとみている。とりわけ、カーグ島を経由するイランの原油輸出に圧力をかけることで、中国のエネルギー安全保障を揺さぶろうとしている、という見方である。
こうした手法について批判的な論者は、中国の台頭を鈍らせることを狙った危うい戦略的賭けだと指摘する。しかも、米中の競争は中東だけにとどまらない。南アジアと中央アジアでも、そのせめぎ合いは新たな局面に入っている。
トランプ大統領は最近、アフガニスタンのバグラム空軍基地に米国の拠点を再構築することへの関心を示した。同氏はこの基地について、とりわけ新疆など中国西部における核・軍事動向を監視するうえで戦略的に重要だと述べている。バグラムは中国の主要な核施設から1200マイル以上離れているものの、支持者は、情報収集・監視・偵察能力の強化につながる可能性があると主張する。これに対し、タリバン政権は外国軍のアフガン再展開を認めるいかなる提案も断固として拒否している。
一方、中国は慎重で計算された外交路線を崩していない。米国やその同盟国が関与する軍事紛争に直接踏み込むのではなく、北京は経済拡大と外交的関与を優先してきた。過去20年で中国は世界第2の経済大国へと成長し、「一帯一路」構想をはじめとする大規模インフラ計画や貿易連携を通じて、国際的な影響力を着実に広げてきた。
東アジアでは、南シナ海や台湾をめぐる緊張が依然として高い。米国は、中国の台頭に対抗するため、この地域での軍事展開と同盟強化を進めてきた。しかし中国は、軍事的エスカレーションを最後の手段と位置づけ、直接対決を避ける姿勢を維持している。
この慎重さには、ロシアのウクライナ侵攻から得た教訓もあるとみられる。プーチン大統領の下でロシアは大国としての地位を再主張しようとしたが、結果として長期化する戦争に深く絡め取られた。この紛争がロシアを戦略的に弱体化させたとみる向きは少なくなく、中国は同じ轍を踏むことを避けようとしているように見える。
地域外交の面でも、中国は存在感を強めている。現在、中国はパキスタンとアフガニスタンの緊張緩和を仲介している。国境を越える安全保障上の懸念に加え、とりわけパキスタン・タリバン運動(TTP)をめぐる武装勢力の活動によって、2026年初頭には衝突が激化しているためだ。中国の特使はパキスタンとアフガニスタンの間を行き来し、地域安定の維持に向けて対話と停戦を呼びかけている。
こうした仲介努力の背景には、この地域における中国の経済的利益がある。とりわけ、「一帯一路」構想の重要な柱である中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の安定は北京にとって死活的に重要である。パキスタンが対テロ作戦で強硬姿勢を崩さない一方、中国はどちらか一方に露骨に肩入れすることを避けつつ、緊張緩和を促している。
中東、東欧、アジアで地政学的な火種が相次ぐなか、中国の長期戦略は一段と鮮明になっている。経済成長の勢いを維持し、利益にかなう場面では外交的関与を進める一方で、対米競争というより大きな国家戦略を損ないかねない戦争への深入りは避ける―それが中国の基本姿勢だと言える。(原文へ)
INPS Japan
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いま、中国に目を向けよ
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世界大戦はすでに始まっているのか
【ウクライナ・キーウIPS=ニコライ・カピトネンコ】
近年、世界で深まる緊張と暴力、不確実性を直視せずにいることは、ますます難しくなっている。戦争の数は増え、軍事支出も拡大し、大国の発言は一段と強硬さを増している。中東における最近の緊張激化は、第3次世界大戦の始まりをめぐる議論を再び呼び起こした。イスラエルと米国によるイラン攻撃の影響は、少なくとも原油価格を注視する人々にとって、この地域をはるかに超えて波及している。
多くの大国の利害が交錯するなか、第三国も次の一手を見極めようとしながら、相次いで立場を表明している。核兵器がある以上、第3次世界大戦は起こり得ないという見方から、すでに始まっているという認識まで、意見は大きく割れている。では、実際に何が起きているのか。
ジャーナリズムと学術のあいだにある概念
歴史家が「世界大戦」と語るとき、それは過去の二つの特異な戦争を指す。規模の大きさ、多数の国家を巻き込んだ点、戦闘の激烈さ、そしてその後に及ぼした影響の性質が、これらを他のあらゆる戦争とは一線を画すものにしている。
こうした戦争が他とどう異なるのかを理解するには、20世紀の各武力紛争における人的被害、防衛支出、あるいは破壊の規模を示す図表に目を通せば十分である。
もっとも、歴史家の見方は一様ではない。政治家としての方が知られるウィンストン・チャーチルはかつて、七年戦争を世界大戦と表現した。この18世紀の長期戦は、当時の主要列強の大半を直接戦闘に巻き込み、戦場はヨーロッパ、北米、大西洋、インド洋にまたがり、深刻な地政学的帰結をもたらした。これを世界大戦と呼んでも不思議ではない、という発想である。
これに対し、より保守的な歴史家であれば、こう反論するかもしれない。それは工業化国家同士による総力戦ではなく、戦闘の規模も、動員された軍隊の数も比較的限られていた。結果は重大だったとしても、体制そのものを組み替えるような性質のものではなかった、と。
過去数年、世界の武力紛争の数は増加を続けており、2024年は第2次世界大戦後で最も多い年となった。
「世界大戦」という言葉は、ジャーナリズム上の概念であると同時に、学術的概念でもある。効果を高め、注目を集め、あるいは比喩的な類推を行うために、第1次・第2次世界大戦以外の出来事にも用いられることがある。たとえば17世紀の三十年戦争、19世紀のナポレオン戦争、さらには冷戦さえも、世界大戦と呼ばれる場合がある。
その論理に従えば、今日ですら世界大戦の一部の要素を見ることはできる。ここ数年、武力紛争の件数は増え続けており、2024年は第2次世界大戦後で最悪の年となった。ある推計によれば、この年には36カ国で61件の武力紛争が記録され、過去30年の平均を大きく上回った。
世界の軍事支出も増加している。現在、その規模は世界経済の2.5%に達し、2011年以降で最高水準となり、2021年以降は上昇傾向が続いている。もっとも、これは依然として冷戦期の水準、すなわち通常3~6%だった時代に比べればかなり低い。こうした数字を見れば、近年、世界の安全保障環境が悪化していることは明らかである。だが、それはどれほど深刻なのか。
より学術的な立場からいえば、世界大戦とは、主要大国の大半が関与し、地球規模の広がりと総力戦としての性格を持ち、莫大な損失と破壊を生み、その終結によって世界そのものを大きく変えてしまう戦争である。そこでは、大国同士の直接的かつ大規模な武力衝突が不可欠の条件となる。
そして、これこそが「第3次世界大戦はすでに始まっている」という見方に対する最大の反論である。現代世界の不安定化がどれほど進もうと、大規模な地域紛争がどれほど激化しようと、国家がどれほど軍備に資金を投じようと、それだけでは世界大戦とはならない。必要なのは、大国が関与する大規模な軍事作戦である。
それは杞憂にすぎないのか
そうした事態は、長く起きていない。第2次世界大戦後から今日までの期間は、第1次世界大戦と第2次世界大戦の間隔をはるかに上回っている。その背景で中心的な役割を果たしてきたのが核兵器である。核兵器は戦争の代償をあまりにも高く引き上げたため、大国はあらゆる手段でそれを回避するようになった。この抑止の仕組みは80年以上にわたり機能しており、今後もしばらく続くとみられる。
平和、より正確に言えば、大国間戦争の不在は、現在の国際秩序を支える中心的要素の一つであり続けている。国際機関や制度が崩壊したり弱体化したり、地域戦争が勃発したりすることはあっても、大国間戦争の可能性は依然としてきわめて低い。
第3次世界大戦説の支持者たちはしばしば、大国間の全面戦争がなくとも、別の形の対立はすでに進行していると指摘する。たとえばハイブリッド戦争、サイバー攻撃、代理戦争などである。たしかにそれは事実である。だが、こうした衝突はいずれも、破壊力という点では世界大戦より何段階も下にあり、総力戦としての性格も持たない。
歴史を通じて国家は、代理勢力を使って戦ったり、情報戦や通商戦、宗教戦争を繰り広げたりしてきた。だが、そうした戦争を、象徴的な意味を別にすれば、私たちは世界大戦とは呼ばない。
体制転換をもたらす戦争は、必ずしも世界大戦ではない
2003年のイラク戦争と異なり、今回のイラン攻撃が行われているのは、米国の覇権の下ではなく、少なくとも二つの力の中心が複雑に競い合う世界である。このことが新たな含意を生み、他国にも直接・間接に対応を迫っている。たとえば武器や情報の提供、どちらか一方への支持表明などである。
しかし、それによってこの戦争が世界規模のものになるわけではない。武器供与は地域紛争の大半で見られる常態的な慣行であり、同盟国やパートナーによる外交的・財政的支援も珍しくない。たとえ米軍が、ウクライナ製ドローンに見られるように、パートナーの技術や専門知識を利用したとしても、それはウクライナがこの戦争に引き込まれていることを意味しない。ロシア・ウクライナ戦争における米国の対ウクライナ武器供与が、米国自身の参戦を意味しなかったのと同じである。
世界大戦と呼ぶには、なお一つ決定的な要素が欠けている。すなわち、大国間の直接対決である。だが、世界大戦以外にも「システム戦争」と呼びうるものがある。そこでは重要なのは規模そのものよりも、その戦争がもたらす国際秩序の変容である。
先に挙げた三十年戦争、ナポレオン戦争、第1次・第2次世界大戦はいずれもシステム戦争だった。これらの戦争の後には、国際政治のルールが書き換えられ、講和会議や国際会議を通じて新たな秩序が打ち立てられた。システム戦争は、必ずしも世界大戦である必要はない。
覇権の危機、そして覇権をめぐる争いの始まりは、常に新たな戦争、軍拡競争、緊張激化の危険を伴う。
現在の不安定化と多様なリスクの増大は、主として将来の国際秩序をめぐる争いと結びついている。米国と中国は、ほとんど「トゥキュディデスの罠」に近づいている。これは、紀元前5世紀のペロポネソス戦争を引き起こしたのと似た戦略的論理である。当時、覇権国と挑戦国との力の差が縮まったことが、スパルタを予防戦争へと踏み切らせた。
今日では、米国覇権の衰退、中国の台頭、そして二極世界への接近が、超大国間の直接的な武力衝突の可能性を大きく高めるのではないかという、十分に根拠のある懸念が存在する。
控えめに言っても断固たる米政権の行動は、ワシントンがなお優位を保っているうちに、中国の地位を戦略的に弱めようとする予防的措置とみることもできる。こうした覇権危機の時期と覇権争いの始まりは、常に新たな戦争、軍拡競争、緊張激化の危険をはらんでいる。
私たちは、まさにそのような危機のただ中にいる。それは、世界各地の地域紛争が単に増えているというだけではなく、地球規模で影響力と権力が再配分されていることの表れであるという意味で、システム的危機である。この再配分は国際秩序の変化を伴わざるを得ない。なぜなら、ゲームのルールは力の均衡と結びついているからである。
もしある時点で、主要国の指導者たちが、戦争のリスクを取り、その代償を払うに値すると判断すれば、このシステム的危機は世界大戦へと転じるだろう。だが、スパルタ人自身の言葉を借りれば、それはあくまで「もし。」の話である。
ニコライ・カピトネンコ氏は、キーウ国立タラス・シェフチェンコ大学国際関係研究所の准教授であり、国際関係研究センター所長。
INPS Japan / IPS UN Bureau Report
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