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米国は国連の「出口」に向かっているのか?

【国連IPS=タリフ・ディーン】 米国が、国連の条約や国際協定を含む66の国連関連組織から一斉に離脱したことを踏まえると、予測不能なトランプ政権が、将来、国連そのものからも脱退し、1947年の国連・米国本部協定にもかかわらず、国連事務局をニューヨークから追い出す決断に踏み切る可能性はあるのだろうか。 66組織からの離脱に加え、米国は国連人権理事会、WHO(世界保健機関)、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、UNESCO(国連教育科学文化機関)からも離脱した。さらに、正式には脱退していない国連機関に対しても、資金拠出の大幅削減を課している。 では、厳しい批判にさらされている国連は、そう遠くない将来、同じ運命をたどるのだろうか。そうした見方を強めているのが、トランプ大統領と米政府高官による国連への強硬な姿勢である。 国連問題の研究と執筆で知られるスティーブン・ズーンズ博士(サンフランシスコ大学政治学教授)はIPSの取材に対し、国連に最も敵対的だった米大統領でさえ、ロナルド・レーガンやジョージ・W・ブッシュの時代を含め、米国の利益を前進させるうえで国連が果たす重要性を認識していたと語った。特定の事例で法原則に反する行動を取ることがあっても、国連システム全体を維持する意義は理解されていた、という。 同様に米国は、いくつかの政策や、場合によっては組織の使命そのものに同意できない場合であっても、影響力を行使するために、さまざまな国連機関に参加してきたと、ズーンズ氏は指摘する。 しかし同氏は、「トランプ政権は、第二次世界大戦後に築かれた国際法秩序そのものを拒否しているように見える。とりわけベネズエラ攻撃以降の発言は、19世紀の帝国的特権への回帰であり、現代国際法の否定に映る。」と語った。 その結果として、「トランプ氏が実際に米国を国連から脱退させ、国連をニューヨークから追い出す可能性はあり得る。」とズーンズ氏は語った。 トランプ氏は昨年9月の国連総会演説で、「国連の目的は何なのか。潜在力にまったく見合っていない」と発言した。さらに、国連を時代遅れで非効率な組織だと切り捨て、「私は7つの戦争を終わらせ、各国の指導者と直接対処してきた。合意の最終化を手伝うと、国連から電話がかかってきたことは一度もない。」と誇示した。 シートン・ホール大学外交・国際関係大学院のマーティン・S・エドワーズ准学部長(学務・学生担当)はIPSの取材に対し、こうした発言は「非効率の削減」や「多様性との闘い」を掲げながら、トランプ支持層に訴える刺激的な言葉で包まれた「疑わしい言説」だと述べた。 またエドワーズ氏は、外交問題を利用して、なお成果を示せていない国内政策から有権者の関心をそらす狙いもあると指摘した。実際、具体的なフォローアップ文書が国連事務総長のもとに届いていないことが、それを裏づけているという。大統領が最大限の要求を掲げる一方、最終的に得られる成果は限られる――そうしたパターンの繰り返しに当てはまる、と述べた。 ただし問題はそれにとどまらない。エドワーズ氏は、次の二点で深刻だと語る。① この方針は、米国の国連における影響力を高めるどころか、むしろ削り続ける。安定した外交関係は信頼性に基づくが、米国はその蓄えを浪費しており、空白には他国が入り込む。② これは有権者向けのSNS投稿としては響くかもしれないが、実務上は理にかなわない。ホワイトハウスが求めているのは、国連運営のあらゆる項目に対する「項目別拒否権(line-item veto:予算の個別項目ごとに拒否できる権限)」だ。しかし分担金はアラカルト・メニューではない、と同氏は述べた。 さらに、市民社会組織の世界連合CIVICUSの事務局長マンディープ・S・ティワナ氏はIPSの取材に対し、トランプ政権による国際機関からの離脱・後退は、第二次世界大戦の惨禍を乗り越えるため国連創設の枠組みを構想し、米国にニューディール政策をもたらしたフランクリン・D・ルーズベルト大統領の遺産への攻撃だと語った。 「影響を受けた国際機関の多くは、米国人の血と汗と涙によって築かれてきた。そこからの撤退は、彼らの犠牲への侮辱であり、平和、人権、気候変動、持続可能な開発をめぐる数十年の多国間協力を後退させる。」とティワナ氏は述べた。 一方、国連への攻撃は止む気配がない。 米国の国連大使マイク・ウォルツ氏は、ブライトバート・ニュースのインタビューで「国連の支出の約4分の1は米国が負担している。」と述べた。「資金は有効に使われているのか。いまはノーだ。本来の目的ではなく、いわゆる“woke”(進歩派的と批判される多様性・社会正義の政策を指す俗語)的なプロジェクトに使われている。国連が本来やるべきこと、トランプ大統領が求めること、私が求めること――平和に焦点を当てることだ」 歴史的に米国は国連最大の資金拠出国であり、通常予算の約22%、PKO(国連平和維持活動)予算では最大約28%を負担してきた。 それでも皮肉なことに、米国は最大の滞納国でもある。国連総会の第5委員会(行政・予算)によれば、加盟国が未払いとしている義務的分担金は、現行予算期間の総額35億ドルのうち18億7000万ドルに上る。 ニューヨーク選出で、かつて国連大使候補にも挙がったエリーズ・ステファニク前下院共和党会議議長は、「国連について米国人が見ているのは、腐敗し、機能不全で、麻痺した組織であり、憲章にうたわれた平和・安全保障・国際協力という創設原則よりも、官僚主義、手続き、外交上の体裁に縛られている」と述べた。 また国連への間接的な批判として、マルコ・ルビオ国務長官はこう述べた。「私たちが『国際システム』と呼ぶものは、透明性に欠ける国際機関が数百も乱立し、権限が重複し、活動も重複している。成果は乏しく、財務と倫理のガバナンスも不十分だ」 同長官は、かつて有用な機能を果たした機関でさえ、非効率な官僚機構となり、政治化した活動の舞台となり、あるいは米国の国益に反する道具になってきたと述べた。さらに、「これらの機関は結果を出さないだけではない。問題に対処しようとする者の行動を妨げている。国際官僚機構に白紙小切手を切り続ける時代は終わった。」と宣言した。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: 選択は今もなお明白:80周年迎えた国連憲章を再確認する 国連、世界で最も多言語化された組織のひとつ 国連改革に「痛みを伴う人員削減」―帰国強制の恐れも

|スーダン|世界が目を背ける中、集団殺害は続く

【ロンドンIPS=アンドリュー・ファーミン】 衛星画像は、北ダルフール州エル・ファシールで遺体が山のように積み上げられ、集団埋葬や火葬を待っている様子を捉えている。即応支援部隊(RSF)の民兵は、自らの犯罪の規模を隠そうとしているという。RSFが11月にエル・ファシールを制圧して以降、市内では最大15万人の住民が行方不明のままだ。最も控えめな推計でも、6万人が死亡したとされる。アラブ系民兵であるRSFは、非アラブ系住民を都市から排除し、民族浄化を進めたとされる。今回の虐殺は、2023年4月に軍指導者同士の権力闘争をきっかけに始まった、RSFとスーダン国軍(SAF)の戦争における、最新の凄惨な局面である。 残虐行為は双方が行ってきた。処刑、超法規的殺害、性暴力などが報告されている。正確な数字の把握は難しいが、少なくとも15万人が殺害されたとの推計もある。国内避難民は約900万人に達し、さらに約400万人が国境を越えて逃れた。およそ2500万人が飢饉の危機に直面している。 市民社会や人道支援関係者は可能な限り対応しているが、支援に携わる人々自身も危険にさらされている。殺害や暴力、誘拐、拘束の脅威が常につきまとう。非常命令は、市民社会組織に官僚的な制約を課し、支援活動を妨げるだけでなく、集会・表現・移動の自由も制限している。部隊が支援物資の搬入を阻む例もある。 紛争の報道もまた、困難で危険を伴う。放送局や印刷設備などのメディアインフラの多くが破壊され、多くの新聞が発行停止に追い込まれた。さらに双方が記者を標的にしているため、多くが国外へ逃れざるを得なくなっている。大規模な偽情報キャンペーンも、現地の実態を見えにくくしている。その危険を象徴するのが、ザムザム避難民キャンプの報道官モハメド・ハミス・ドゥーダである。国際メディアに状況を伝えるためエル・ファシールに残っていたが、RSFが侵攻した際に行方を捜され、殺害された。 世界は目を背ける スーダンは「忘れられた戦争」と呼ばれることがある。だが、より正確には、世界がそれを「無視することを選んでいる」と言うべきだ。そして、その状況は、いくつかの有力国にとって都合がよい。 アラブ首長国連邦(UAE)は、RSFの最大の支援国だと指摘されている。UAEは関与を否定し続けているが、UAEで製造された、あるいは同盟国からUAEに供給されたとみられる武器が、RSF支配から奪還された現場で見つかったと報じられている。こうした支援がなければ、RSFはすでに戦況で不利に追い込まれていた可能性がある。 近年、UAEは複数のアフリカ諸国で影響力の拡大を図ってきた。アフリカ各地で港湾整備を進め、紅海に面するスーダン沿岸にも港を建設する計画があるとされる。スーダンでは大規模な農業投資を行い、同国で採掘される金の多くがUAEに流れているとも報じられている。UAEは、人的犠牲の大きさにかかわらず、RSFが実権を握ることが影響力の確保と利益の維持につながると判断しているように見える。 これに対し、スーダン政府はロシアとの関係強化に動いている。スーダンがロシアに恒久的な紅海海軍基地の整備を認める可能性があるとも伝えられている。 UAEが国際的な圧力をほとんど受けないのは、英国や米国などUAEと緊密な西側諸国が、同国の役割を過小評価しているためだと指摘されている。英国政府は、供与した武器がRSFに移転されていることを認識しながら、UAEへの武器供給を続けているとされる。さらに内部告発者は、UAEを守るために、スーダンでジェノサイドが起きる可能性に関する警告がリスク評価から削除されたと主張している。欧州連合(EU)と英国は、エル・ファシールでの虐殺を受けてRSF幹部4人に制裁を科した。米国も追加制裁を検討していると報じられているが、措置はUAE政府の関係者には及んでいない。 英国がスーダン案件を主導する常任理事国である国連安全保障理事会も、機能不全が続いている。ロシアは、英国が提出する決議案については拒否権を行使すると示唆している。こうした中、英国は6月、非常任理事国として参加するアフリカ諸国から「主導役を引き継ぐ」との申し出を受けながら、これを拒否した。交渉の余地を広げ得た提案だったとみられる。 地域で影響力を持つ国としては、エジプトがスーダン政府を強く支持し、サウジアラビアも一定の支援姿勢を示している。エジプト、サウジ、UAE、米国は「クアッド」と呼ばれる枠組みで協議を行っている。利害は競合するが、9月には一時、希望が見えた。クアッドが「3カ月の人道停戦」と、その後の「9カ月での文民統治への移行」を含む計画を仲介したためである。双方は計画を受け入れたものの、RSFが戦闘を継続したため、スーダン政府は提案を拒否するに至った。 圧力と責任追及 戦闘停止が実現するかどうかは、米国の外交姿勢に左右される可能性がある。ドナルド・トランプ大統領は最近、紛争への関心を強めたように見える。11月にサウジの実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がホワイトハウスを訪問したことが、その背景にあるのかもしれない。 トランプ氏は、ノーベル平和賞を強く意識し、別の紛争を終結させたとアピールしたいのだろう。しかし、米政府がUAEに圧力をかける意思を示さない限り、進展は見込みにくい。圧力の手段としては、トランプ氏が他国との交渉で用いてきた関税がある。実際、現政権はUAEに対し、最も低い税率である10%の関税を適用しており、UAEに対して強い圧力をかけていないことを示している。 活動家たちは、紛争におけるUAEの役割により多くの注目を集めようとしている。分かりやすい焦点の一つがバスケットボールだ。米プロバスケットボール協会(NBA)はUAEと大規模で拡大傾向にあるスポンサー契約を結んでいる。活動家側は、こうした提携がUAEによる「スポーツウォッシング(スポーツを通じたイメージ向上)」の一部になっているとして、NBAに提携終了を求めている。この働きかけが、米国の政策課題の中でスーダンの優先度を引き上げる一助となる可能性がある。 国際社会には殺害を止める力がある。しかし、そのためにはまず、UAEと西側同盟国が結果として暴力を可能にしているという側面を認めなければならない。スーダン国内外の当事者は、狭い自己利益の計算を脇に置く必要がある。UAEとその同盟国、そしてクアッドの他の国々には、実効性のある停戦を仲介するため、より強い圧力をかけることが求められる。停戦を和平への第一歩と位置づけ、交戦当事者に対する影響力を用いて、合意を確実に履行させるべきである。(原文へ) アンドリュー・ファーミンは、CIVICUSの編集主幹であり、CIVICUS Lensの共同ディレクター兼ライター、「State of Civil Society Report」の共同著者である。For interviews or more...

武装解除なき「戦後」:シリアのクルド勢力と、戦後政治の破綻

【ロンドンLondon Post=シャブナム・デルファニ】 クルド勢力ダマスカスの新たな統治当局と周辺諸国の関係をめぐっても、調整や接近の動きがみられる。こうした変化は、シリアの最も暴力的な局面が終わったかのような印象を強めている。 しかし、その見方は重要な現実を覆い隠す。シリアの内戦は一部地域では軍事的に区切りがついたとしても、政治的には決着していない。 この政治的な行き詰まりが最もはっきり表れているのが、シリア北部と北東部である。そこではクルド人主導の部隊が今も武装を維持し、戦闘態勢を解いていない。地域の政治的な位置づけも、依然として決まっていないままだ。 クルド人勢力が武装を続けているのは、特別な例外でも、理念の問題でもない。外国勢力の思惑がぶつかり合い、難しい政治的妥協が先送りされてきた結果として生まれた「戦後の不安定な状況」の当然の帰結である。 クルド人問題は、将来のシリアが話し合いによって多様な勢力を取り込む国になるのか、それとも力によって再び中央政府の支配下にまとめられるのかを占う重要な試金石となっている。同時にそれは、中東で外部勢力が進めてきた「安定化」がどこまで機能するのかという限界を示す事例でもある。 シリア戦争におけるクルド人の役割:周縁から中心へ 2011年以前、シリアのクルド人は政治の中心から外されていた。文化的な権利は十分に認められず、人によっては市民権すら与えられないなど、国の制度に実質的に参加できない状況に置かれていた。ところが、反政府蜂起と内戦によって各地で政府の支配が弱まると、この状況は一変する。クルド人地域には自ら統治を担う余地が生まれたが、それは同時に大きな危険も伴うものだった。 2012年、政府の統治がクルド人多数地域で後退すると、クルド側は空白を埋めるため素早く動いた。地域評議会や治安部隊がつくられ、やがて行政の仕組みも整えられていった。これは独立を目指す動きというより、地域社会が混乱の中で生き残るための統治体制づくりだった。さらに2013年以降、いわゆる「イスラム国(IS)」が急速に勢力を広げると、クルド側の支配はより強固になった。クルド民兵が、過激派勢力の進撃を地上で食い止められる数少ない勢力となったためである。 米国が主導した対IS作戦によって、クルド勢力(主にシリア民主軍=SDF)は、単なる地域の武装勢力から、作戦に欠かせない協力相手へと位置づけが変わった。クルドの戦闘員は地上戦の中心を担い、多くの犠牲を払いながら、シリア東部の広い地域で治安維持と支配の確保を担った。 しかし、この協力関係はあくまで軍事的な目的に限られていた。米国政府は当初から、クルド側の政治的な要求を支持することは避け、協力はIS掃討という対テロ作戦に限定されると強調していた。この線引きが、のちに大きな意味を持つことになる。 「ポストIS」シリア:政治移行の欠落 2019年、いわゆる「イスラム国(IS)」の領土支配は軍事的に崩壊した。これは戦争の大きな節目となったが、その一方で、戦後の政治体制をどう築くのかという計画がほとんど存在しないことも明らかになった。クルド側には、自分たちが戦いで果たした役割が、将来の政治的な発言力につながるとの期待があった。正式な約束があったわけではないが、多くの関係者がそう受け止めていた。 しかし、IS掃討作戦の終結とともに、国際社会の関与は急速に縮小した。クルド主導の行政は国際的な承認を得られないまま地域統治を続け、安全の保証がないまま国境の防衛も担うことになった。その結果、次第に不利な立場でダマスカスの中央政府との交渉に臨まざるを得なくなった。自治は実際には存在していても、法律上の裏付けはない。制度ではなく、武力によって維持されている「武装した自治」の状態である。 こうした状況は本質的に不安定である。短期的には武力が外部からの排除を抑えるが、長い目で見れば、かえってさらなる圧力を招きやすい。クルド側は分権的な枠組みの中でシリア国家の一部にとどまると繰り返し主張しているが、それでも分離独立を目指しているとの疑いを向けられやすい状況が続いている。 米国:戦術的協力と戦略的後退 政策面で、この帰結を形づくった最大の要因の一つが米国である。米国のシリア関与は、作戦効率の追求と戦略的ミニマリズムによって特徴づけられた。主要目的―ISの領土支配の破壊―は比較的低コストで達成した。しかし、避けたのは、シリアの「戦後政治の設計」というより複雑な課題だった。 とりわけ2019年以降、米国がシリアへの関与を段階的に縮小したことは、味方にも敵対勢力にもはっきりしたメッセージとなった。クルド勢力は、米軍の駐留が無条件のものではなく、状況次第でいつでも撤退し得ると理解した。 一方、トルコは、米国が強く反対しない姿勢を、自国の安全保障上の優先事項を事実上認めたものと受け止めた。またダマスカス政府とそれを支える国々は、譲歩しなくても、時間をかけて圧力を強めればクルド自治を弱体化させられると判断した。 こうした動きは、米国の中東政策が、紛争そのものを解決するよりも、危機を管理し拡大を防ぐことを優先してきた傾向を示している。シリアでも、ISの再興を防ぐための最小限の軍事的関与は続けながら、トルコとの対立や複雑な政治交渉への深い関与は避けるという姿勢が取られてきた。 その戦略コストは大きい。地域の協力相手に対する信頼性を損ない、シリアの長期的な帰結に対する米国の影響力も弱めた。 トルコと「クルド問題の地域化」 クルドの将来を最も大きく左右してきたのはトルコである。アンカラの対シリア・クルド政策は、国内のクルド問題と切り離せない。トルコ政府は、国境の南側にどのような形であれクルドの自治が成立すれば、たとえ穏健で調整的な政治路線であっても、自国の安全保障への直接の脅威とみなしてきた。 こうした認識が、北部シリアへの繰り返しの軍事介入につながった。その結果、支配地域は細かく分断され、住民の移動や住民構成の変化が起き、クルド側の行政運営も継続しにくくなった。これらの作戦は「対テロ」として正当化されてきたが、実際にはクルドの政治的な選択肢を狭め、自治の拡大に歯止めをかける効果を持った。 こうしてクルド問題は、シリア国内の統治課題にとどまらず、国境をまたぐ安全保障問題へと広がった。トルコの強い反対が外交的な解決の余地を狭め、クルド側にとって武装を維持することが、生き残るための現実的な選択肢になっている。 イスラエル、イラン、そしてシリア分断の構図 イスラエルは、クルド勢力とシリア中央政府との対立に直接関わっているわけではない。しかし、イスラエルが続けてきたイラン関連勢力への攻撃は、シリア政府が国内の統治を再びまとめ直す力を弱め、国内の分断状態を長引かせる結果をもたらしてきた。イスラエルにとって、シリアが分裂した状態にあることは、イランの地域での影響力を抑え、国境周辺での脅威を減らすことにもつながる。 イランの影響が及びにくいクルド支配地域は、この状況と結果的にかみ合う面がある。ただし、これはあくまで状況によるもので、シリア全体の長期的な安定には結びつきにくい。 一方、イランはクルド自治の広がりに強い警戒感を抱いている。自治が定着すれば、自らの影響力が制限されるだけでなく、シリア国内での物資や人員の移動にも支障が出る恐れがあるためだ。その結果、イスラエルがイランの影響力を抑えようとする動きと、イランがシリアでの立場を維持しようとする動きがぶつかり合い、包括的な政治解決は進まず、対立が続く状況が生まれている。 クルド統治:成果と限界 厳しい状況に置かれながらも、シリア北東部のクルド主導の行政は、国内の他の地域と比べて一定の成果を上げてきた。比較的安定した治安を保ち、多くの避難民を受け入れて管理し、宗派対立による暴力も抑えてきた。国家の制度が崩れた地域が多い戦後のシリアにおいて、こうした成果は決して小さくない。 しかし一方で、外部の支援への依存、経済的な孤立、そして法的な地位がはっきりしないことが、この統治体制の将来を不安定なものにしている。国際的な正式承認もなく、シリア国家の制度の中に組み込まれてもいないため、行政の基盤は脆いままだ。武力による抑止は制度の弱さを一時的に補うことはできても、政治的な正当性の代わりにはならない。 崩壊のリスク クルド側の統治が崩れても、そこにシリア中央政府の実効支配がすぐ戻るとは限らない。むしろ、地域ごとに支配勢力が入り乱れ、武装勢力同士の争いが起き、治安の空白が生まれる可能性が高い。こうした状況は過去にも、過激派が勢力を立て直し、混乱が国境を越えて広がる土壌になってきた。 地域の安全を考えると、力ずくで再統合しても得られる利益より、統治の崩壊による混乱の方が大きくなる恐れがある。それでも現実的な解決策がないまま、このリスクは放置されたままである。 政策の含意:米国と欧州に突きつけられた課題 米国にとってクルド問題は、今の状況をそのまま管理し続けるのか、それとも将来を見据えて関与の仕方を見直すのかという選択を迫る課題である。安定につなげるには、シリアの主権を前提に、地方の自治をどこまで認めるのかという方針をはっきりさせ、クルド側とシリア中央政府双方と外交的な対話を進めることが欠かせない。 また米国は、トルコに対して今も一定の影響力を持っている。安全保障面での協力を通じて、シリアでの軍事行動を抑えるよう働きかけることができれば、停滞している交渉を再び動かすきっかけになる可能性がある。 欧州連合(EU)も、人道支援にとどまらず、政治面での関与を強める必要がある。EUは復興支援や関係正常化をめぐる議論で資金面の影響力を持っており、その支援を、多様な勢力が共存できる統治の仕組みづくりと結びつけることができる。欧州外交には、地域の安全保障対立から比較的距離を置きやすい立場を生かし、仲介役として動ける余地もある。 結論:武装による安定は、平和ではない シリアでクルドの武装勢力が残っているのは、反抗心の表れではない。政治の場から十分に受け入れられてこなかったことの結果である。それは、戦場での勝ち負けを優先し、政治的な決着を先送りしてきた「戦後」のあり方を映している。 クルドの自治が正式に認められず、いつでも覆され得る不安定な状態のままである限り、武力はクルド側にとって最も重要なよりどころであり続ける。シリアの長期的な安定は、力で領土を取り戻すことではなく、地域ごとの統治の形を交渉によって国家の仕組みに組み込み、共存できる形に整えることにかかっている。 クルド問題は、シリアの将来を左右する重要な課題である。話し合いによる共存の道を選ぶのか、それとも力による統制に戻るのかが問われている。この問いに答えが出ない限り、武装は解かれず、シリアの平和は未完成のまま続く。(原文へ) INPS Japan 関連記事: トルコにおけるクルド人武装勢力との紛争終結への努力、シリア情勢が試練に シリアの脆弱な移行期、深刻な援助不足と誘拐増加で脅かされると国連が警告 アサド政権崩壊:誤算が招いた連鎖的危機

核意思決定における人工知能の影響

【国連IPS=タリフ・ディーン】 人工知能(AI)が、政治、経済、社会、文化を含む人間生活のほぼあらゆる側面に影響を及ぼしかねない勢いで拡大するなか、AIの軍事化が進む危険も高まっている。ある報告書によれば、核指揮・統制・通信(NC3)システムへのAIの統合に加え、軍事意思決定への活用は、世界の安全保障に深刻で前例のないリスクをもたらす。主な負の影響としては、意思決定が「機械の速度」にまで加速し、人間の判断の余地がほとんど失われること、サイバー攻撃への脆弱性が高まること、そして戦略的安定性が損なわれることが挙げられている。 『原子力科学者会報』(Bulletin of the Atomic Scientists)によれば、核兵器の指揮統制は、誤りを防ぎつつ、極度の緊張下でも信頼性を確保できるよう設計された、繊細で複雑な仕組みである。 膨大なデータが重大な結果を左右する環境では、人工知能の導入はごく自然な検討対象となってきた。 同誌はこう問いかける。「急速に進化する技術の統合は、責任、データの質、システムの信頼性をめぐる根本的な問題を提起する。たった一つの誤りが取り返しのつかない結果を招きかねないとすれば、これまで人間の判断と監督に依拠してきたシステムに機械学習を組み込むにあたり、どうすれば信頼性を確保できるのか。」 「どのような安全策を維持すべきなのか。国際協力と合意形成の余地はどこにあるのか。」 ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)で保障措置・安全保障政策部門の責任者を務めたタリク・ラウフ氏はIPSの取材に対し、人工汎用知能(AGI)の役割とその統合は、現代における最も重大な問いの一つを突きつけていると語った。 AGIを核指揮・統制・通信(NC3)システムに組み込むことは、単なる工学上の課題ではない。文明のあり方そのものに関わる問題である。 「機械の速度」がもたらす問題 ラウフ氏によれば、AGIをNC3システムに統合するうえで最も憂慮すべきなのは、意思決定の時間が「機械の速度」にまで圧縮されることである。核戦略はこれまで、熟慮に基づく人間の判断に依拠してきた。つまり、意思決定者が立ち止まり、不確かなデータを見極め、助言を求め、圧力や攻撃の下にあっても自制を選ぶ力である。 一方、AGIは人間には到底及ばない速度で情報を処理し、応答するよう設計されている。危機のさなかには、ここに危険な逆説が生じる。AGIを魅力的にしているその速度こそが、実質的な人間の監督をほとんど不可能にしてしまうのである。 「もしAGIシステムがセンサーの異常を飛来するミサイルと誤認すれば―それは1983年のソ連の誤警報事件が示すように、人間が運用するシステムでも実際に起きたことだが―訂正に残された時間は、数分から数秒へと縮むかもしれない。」 核意思決定における誤りの余地は、もともと不穏なほど狭かった。AGIはそれを完全に消し去る危険がある、とラウフ氏は警告した。 データの質とシステムの信頼性 AGIをめぐっては、データの質と完全性が根本的な懸念事項である。機械学習システムの信頼性は、訓練に用いられたデータの信頼性を超えることはできないからだ。 ラウフ氏はこう語る。「核をめぐる環境は、特有のきわめて複雑な課題を抱えている。そこでは、発生頻度は低いものの結果は極めて重大な事象を扱わなければならず、利用できる過去データも限られている。さらに、敵対的な主体が意図的に誤情報をセンサーネットワークに流し込む可能性があり、地政学的状況も、訓練データが捉えられる速度を上回って変化していく。」 核をめぐる状況で、AGIシステムが改竄されたデータを正しいものと受け取り、それに基づいて行動すれば、誤った前提に基づくエスカレーションを招きかねない。さらに深刻なのは、多くの機械学習モデルが抱える、いわゆる「ブラックボックス問題」である。なぜその出力が生成されたのかを、システム設計者でさえ説明できない場合があり、ましてそれをリアルタイムで修正することは容易ではない。 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)で大量破壊兵器計画の研究員を務めるウラジスラフ・チェルナフスキフ氏はIPSの取材に対し、AIと核の接点をめぐる各国の既存の対応は、核意思決定において人間の統制を維持するという原則ではおおむね一致しているものの、それをどう定義し、実際にどう運用するかについては合意がないと語った。 そのうえでチェルナフスキフ氏は、核保有国がこの原則を正式に認め、この文脈における「人間の統制」の定義と、それが核兵器分野でどのように具体化されるのかを明確にすることが、リスク最小化に向けた第一歩の一つになり得ると指摘した。 国連が目指すAIガバナンス 先月ニューデリーで開かれた「AIインパクト・サミット」で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、AIの未来は一握りの国や一部の億万長者の気まぐれによって決められるべきではないと述べた。 グテーレス事務総長によれば、国連総会は昨年、二つの重要な一歩を踏み出した。第一に、人工知能に関する独立した国際科学パネルを設置したこと。第二に、すべての国が民間部門、学術界、市民社会とともに参加できる、国連の枠組みの下でのAIガバナンスに関するグローバル対話を立ち上げたことである。 同氏はサミット参加者に対し、真のインパクトとは、人々の暮らしを向上させ、地球を守る技術であると語った。そして、人間の尊厳を基礎に据えた、すべての人のためのAIを築くよう呼びかけた。 ステファン・デュジャリック国連事務総長報道官は先月、記者団に対し、事務総長は国連がAIを統括すべきだと主張しているのではない、と説明した。そうではなく、すべての国が議論の場に参加できるよう、加盟国の協力を得て、そのための枠組みを構築してきたのだという。 そのうえでデュジャリック報道官は、次のように述べた。「AIはこれからも、そしてすでに、私たちすべてに影響を及ぼしている。技術を持たない国々にも発言権が確保され、科学と公正がAIの中心に据えられることが極めて重要である。」 責任と説明責任 さらにラウフ氏は、AGIによる勧告や自律的行動が破滅的な結果につながった場合、説明責任の所在が極めて曖昧になると分析する。 従来の指揮命令系統では、あらゆる意思決定の段階で、人間の責任の所在は明確だった。だが、AGIの導入はその明確さを曖昧にしかねない。誤算の責任を負うのは、ソフトウェア開発者なのか、軍の指揮官なのか、そのシステムを配備した政府なのか、それともアルゴリズムそのものなのか―と同氏は問いかける。 明確な責任の枠組みが欠けていることは、法的・倫理的な問題にとどまらない。誰が統制し、どのような判断原理が適用されているのかを、敵対国も同盟国も理解する必要がある以上、それは戦略上の問題でもある。 サイバー攻撃への脆弱性 AGIで強化された、あるいはAGIに依存するNC3システムは、敵対勢力にとって新たな攻撃の余地を広げる。AGIの出力を操作することを狙った敵対的入力を含む高度なサイバー攻撃によって、こうしたシステムが欺かれたり、機能を麻痺させられたりする可能性がある。そして、その異常に気づいたときには、すでに手遅れになっているおそれもある。 ラウフ氏によれば、AGIの統合は、従来の核システムには存在しなかった新たな不安定要因を生み出すのである。 国際協力の必要性 こうした深刻な課題がある一方で、リスクを管理する有力な手段として国際協力が考えられる。信頼醸成措置や共通の技術基準、さらに核システムにおけるAGIの自律性の限界を定める二国間または多国間の「拘束力のある」合意は、戦略的安定性の維持に資する可能性がある。 軍備管理の歴史が示しているのは、生存という共通の利益にかなうルールであれば、敵対国同士でも合意できるということである。ラウフ氏は、その伝統をAGI対応型NC3システムにも拡張することが急務だと訴える。技術が外交を追い越してしまう前に、である。 ラウフ氏はこう述べた。「AGIの核システムへの統合は、技術的には避けられないのかもしれない。だが、それを賢明に管理できるかどうかは政治的かつ道義的な選択の問題であり、依然として開かれている。しかし、それは今日の文民・軍事の『指導者』たちの知的・道徳的・倫理的な判断能力を超えているようにも見える。」(原文へ) This article is brought to...

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