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才能の浪費:タリバンの制約下で「適応」を迫られるアフガンの高学歴女性たち

※筆者はアフガニスタン在住の女性ジャーナリスト。タリバン復権前にフィンランドの支援を受けて研修を受けた。安全上の理由から身元は非公表。 【カブールIPS=匿名女性記者】 アフガニスタンの首都カブールでは、若い女性たちが市場の屋台で刺繍や仕立て、ビーズ細工の制作・デザインなどに従事している。コンピューター・ソフトの開発や報道など、学んだ専門分野で働くはずだった女性も多い。だが、そうした分野での就労機会が閉ざされたためだ。 タリバンが2021年に権力を奪還して以降、高学歴の女性は公的職から排除され、正式な雇用の多くから締め出されてきた。生活を維持し、失業による精神的負担を避けるため、専門とは無関係の仕事に就く女性が増えている。 女性の就労は厳しく制限され、ほとんどの女性がオフィス勤務やメディアなど、教育や職歴に直結する分野で働くことを禁じられている。 「専門の仕事が見つからない」——IT卒業生のリダ リダ(仮名)はコンピューターサイエンスの学位を持ち、以前は経済省でIT担当として6年以上勤務し、安定した収入を得ていた。だが現在は、カブール南東部で仕立て仕事をしながら小さな店を営んでいる。 夫は地方開発省に勤務していたが、10年前にカブールで起きた爆発事件で死亡した。リダは5人の子どもを抱え、兄の家族と同居している。生活は厳しく、家計を支えるため、息子の1人は路上でビニール袋を売っている。下の息子は学校に通っているが、娘の教育はタリバンの布告によって中断されたままだという。 「タリバンが戻ってきたとき、私は職場を追われました」とリダは語る。「この4年間、専門の仕事は見つからず、店で働くしかありませんでした。」 仕事を求め、多くの女性がカブールの非公式経済(インフォーマル部門)に流入しているが、機会は限られ競争も激しい。女性が働ける場は、女性向け衣料や化粧品を扱い、女性客を対象とする店舗にほぼ限られている。 さらに、女性が店を運営するためには、男性の家族や代理人が先に営業許可を取得しなければならない。そのうえで女性が販売員や助手として働く形となり、給与は固定給か歩合制で支払われるのが一般的だ。 「仕立ての工房で働くのは非常につらいです」とリダは言う。「せめて、自分の専門に近いコンピューター関連の仕事ができればと思います。」 「記者ではなく店番に」——報道を学んだムルサル ムルサル(仮名、27歳)も同じような境遇にある。ジャーナリズムを学び、8年間、複数のメディアで記者として働いた。タリバン復権前は、ジャーナリスト支援の団体に勤め、収入や福利厚生にも恵まれていた。 だが今、ムルサルは店を営む側に回った。民間メディアには多くの女性を吸収する余力がなく、ニュースを伝える代わりに、女性向けの伝統衣装や関連商品を売って生計を立てている。 「最初は、自分がとても安く見られているように感じました。」とムルサルは言う。「周囲の視線も気になりましたし、家族も、私がこの仕事をしていることをあまり快く思っていませんでした。」 アフガニスタンでは、女性が店を切り盛りするのは一般的ではない。ムルサルはカブール南西部で女性用衣料を売り、両親と暮らしている。両親は元政府職員だが、現在は失業している。 「姉妹が6人、弟が1人います」とムルサルは話す。「姉妹たちが自立するまで、私は結婚できません。家族を支える責任が私にあるからです。」弟はまだ10歳だという。 ムルサルの月収は約1万アフガニ(約127ユーロ)ほど。家族が何とか暮らすにも十分とは言いがたい。それでも、就労環境はさらに厳しさを増している。 ムルサルによれば、「勧善懲悪省」の職員が週に3回、店を訪れ、一日中マスクの着用を徹底させる。息苦しいだけでなく、女性用の寝間着に印刷された写真や図柄を隠す、あるいは撤去するよう命じられることもある。 「商品を隠したら、お客さんは何を選べばいいのか分かりません。」とムルサルは訴える。 逆境のなかの「抵抗」 彼女たちは、積み重ねてきた学びが生かされない現実に苦しみながらも、店を続けることで、権利侵害に屈しない姿勢を示している。家族を支える収入は必要だが、痛みの核心は、技能と夢が専門の場で封じられている点にある。 それでも、厳しい制約下で働き続けることは、生計のためだけではない。社会から姿を消すことを拒み、できる形で関わり、貢献し続ける—その営み自体が、静かな意思表示になっている。 タリバンの制約は機会を狭めても、志や変化への意欲まで奪うことはできない。アフガンの女性たちは沈黙せず、公共空間にとどまり続ける。自分たちは「見えない存在」ではないと示している。(原文へ) INPS Japan/IPS UN Bureau Report 関連記事: タリバンの布告がアフガン女性の危機を深刻化、NGO活動を全面禁止へ アフガニスタンにおける戦争犯罪の影響 タリバンの悲惨なアフガニスタン統治が1年を迎える

「誰も被爆者であってはならない」 若き日本人活動家、被爆証言を伝える移動式ミュージアム構想

日本の若い平和活動家が、被爆者の証言を語り継ぐ移動式ミュージアムの設立を通じて、世界の核軍縮を後押ししようとしている。 【INPS Japan/ 国連ニュース】 広島とともに第二次世界大戦末期に原子爆弾が投下された長崎出身の中村涼香さんは、被爆者の体験を広島と長崎の外にも伝えることを目指している。 被爆者である祖母を持つ中村さんは、2025~2026年の「SDGsヤング・リーダーズ」17人の一人に選ばれた。毎年3月5日に記念される「軍縮・不拡散に関する意識向上のための国際デー」を前に、UN Newsの取材に応じた。 中村さんは、「世界には1万2000発を超える核兵器が存在しており、誰もが原爆の被害者となり得る」と危機感を示した。 また、高校時代に平和活動を始め、地元・長崎で署名活動や被爆者との交流に取り組んできたと振り返った。 中村さんは、原爆の残酷さと恐ろしさを自らの体験に基づいて伝え続けてきた被爆者に深い敬意を示し、「人は歴史を忘れがちだからこそ、この街の悲劇と、人々が経験したことを記憶し続けなければならない」と語った。 その一方で、こうした活動の多くがボランティアによって支えられている現状に触れ、「どのように継続していくかが課題だ」と指摘した。その上で、若い世代が関心を持ち、参加したくなるような新しい形の活動が必要だとの考えを示した。 移動式原爆ミュージアム 中村さんは大学進学後、若者が核兵器廃絶に向けて取り組むことのできるコミュニティーづくりを始めたという。 現在は、核兵器廃絶の重要性を伝えるため、移動式原爆ミュージアムの構想を進めている。 中村さんは、被爆者が設立した反核団体日本被団協が2024年にノーベル平和賞を受賞して以降、広島や長崎を訪れて学ぼうとする人が増えたと述べた。 その一方で、「広島と長崎以外には、この問題について学べる場がほとんどない。」と指摘。日本各地、さらには世界へと巡回できる移動式ミュージアムが実現すれば、平和や人権など、社会にとって不可欠な課題について対話を広げる機会になるとの見方を示した。 被爆者から受け継ぐ教訓 中村さんはまた、国連について「世界中の人々が集い、今後どのように生きていくべきかを話し合い、決定するための不可欠な場だ。」と評価した。 SDGsヤング・リーダーとして活動することで、各国の若者や関係者とのネットワークを築き、多様な考え方に触れることができるとしている。 https://www.youtube.com/watch?v=c27kknNcK1M さらに、核軍縮を直接掲げる特定のSDGs目標は存在しないものの、この問題はすべての目標に関わる横断的課題だと強調し、「核兵器が存在する限り、持続可能な世界は実現できない。」と訴えた。 被爆者から学んだ最も大きな教訓の一つは「忍耐」だという。 中村さんは、「この問題は非常に大きく、自分の生きている間に解決できないかもしれない。それでも活動を止めないためには忍耐が必要だ。私たちは続けなければならない。前に進み続けなければならない」と語った。(原文へ) Origiinal URL: https://news.un.org/en/story/2026/03/1167101 INPS Japan 関連記事: 「グローバル・ヒバクシャ:核実験被害者の声を世界に届ける」(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー) |カザフスタン|核兵器の危険性について若者に議論を促す展示 |視点|人生ががらりと変わる経験だった(イリヤ・クルシェンコCTBTO青年グループメンバー)

高市首相訪米へ イラン戦争の余波の中で問われる日米同盟の代償

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】 高市早苗首相は来週、イラン戦争をめぐりドナルド・トランプ米大統領と「率直な協議」を行う構えでワシントンを訪れる。しかし、中東にエネルギーを依存し、安全保障では米国に依拠する日本にとって、「率直さ」は掲げるほど容易なものではない。日本の主要メディアは、3月19日の首脳会談を、戦争の経済的代償が日本に及ぶなかで、日本政府がどこまで本音を語れるのかを測る試金石と位置づけている。(毎日新聞) 日本政府の立場は、意図的に慎重に整えられている。高市首相は、この紛争は日本の安全保障関連法制上の「存立危機事態」には、なお該当しないとの認識を示している。この線引きは、国内政治の文脈で重い意味を持つ。経済的打撃が生じていても、それが直ちに、より正式な安全保障上の関与へと転化する事態を避けるためである。言い換えれば、日本政府は、戦争が日本の法的枠組みの内部に入り込むことを防ごうとしているのであり、現時点で顕在化しているのは、あくまで経済的衝撃である。(ジャパンタイムズ) しかも、その経済的衝撃は抽象論ではない。ル・モンドは、ホルムズ海峡の航行がほぼ停止状態に陥ったことで、アジア向けの石油輸入が直接圧迫されていると報じ、高市首相が安定的なエネルギー供給の確保に向けて「あらゆる可能な措置」を講じると述べたと伝えた。フィナンシャル・タイムズによれば、原油輸入の大幅な減少が見込まれるなか、日本政府は備蓄放出によって「先手を打つ」方針だという。日本は8カ月を超える備蓄を保有しているが、それは時間を稼ぐ手段ではあっても、脆弱性そのものを消し去るものではない。(Le Monde.fr) 国際市場全体の動揺も、各国に対応を迫る水準に達している。国際エネルギー機関(IEA)は3月11日、加盟32カ国が緊急備蓄から計4億バレルを市場に供給することで合意したと発表した。これは、IEA史上最大の協調放出である。アラブ・ニュースはこの決定を引用し、戦争と湾岸地域からのエネルギー供給混乱によって引き起こされた価格急騰を抑え込むため、各国政府が対応を急いでいると報じた。(IEA) 日本にとってこの展開が重い意味を持つのは、主要経済国のなかでも、日本がとりわけ選択肢の限られた国の一つだからである。中国は既存ルートを通じてイラン産原油へのアクセスを維持しており、インドも、すでに航行中の一部ロシア産石油貨物について、米国から一時的な制裁免除を受けている。これに対し日本政府は、ロシア産原油に関する免除措置の活用を検討しつつも、それをG7との協調や外交上の代償と慎重に天秤にかけている。ロイターは金曜日、日本政府がこの選択肢を検討しているものの、それは広範なエネルギー安全保障上の判断の一部にとどまると報じた。(ロイター) もっとも、高市首相が手ぶらでワシントンに向かうわけではない。ロイターによれば、日本は今回の首脳会談で、米国主導のミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」への参加を表明する見通しである。これは、戦争が日本経済を圧迫するなかでも、日本政府がなお対米戦略協調を深める意思を持っていることを示す。今回の訪米が緊張を帯びるのはこのためである。日本は、エネルギー面での負担軽減を求める局面で、防衛面ではさらに重い責任を引き受けようとしている。忠実な同盟国であることは依然として期待されているが、安価な燃料がその見返りに含まれているわけではない。(ロイター) 日本の報道は、この板挟みの構図を比較的率直に伝えている。毎日新聞は共同通信を引用し、高市首相がトランプ大統領に対し、イラン問題を率直に提起する意向だと報じた。ジャパンタイムズは、日本政府の対応ににじむ法的・政治的慎重さに着目し、政府が同盟管理と自動的なエスカレーションとをいかに慎重に切り分けようとしているかを浮かび上がらせている。これは反米的な姿勢ではない。むしろ日本政府は、戦略的連帯には相応の代償が伴うという現実を、ワシントンに伝えようとしているのである。(毎日新聞) この首脳会談の焦点は、高市首相が率直に語るかどうかではない。外交の文法に照らせば、首相はおそらく十分に率直であろう。真に問われているのは、米国の最も緊密なアジアの同盟国の一つである日本が、ワシントンの安全保障戦略を支持しながらも、中東戦争の経済的余波によって深刻な打撃を受け得るという現実に、トランプ氏がどこまで耳を傾けるかである。もし日本が、防衛協力の拡大だけを持ち帰り、エネルギー不安に対する十分な安心材料を得られないまま帰国するなら、その教訓は重い。この同盟では、率直な対話が許容されても、負担を引き受ける覚悟の方が、なお強く求められていることを示すことになる。(毎日新聞) Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/japan-pm-sanae-takaichi-candid-test-in-washington INPS Japan 関連記事: 勝利ではなく持久―イランの消耗戦略が鮮明に 勝利なき戦争―イラン・イスラエル対立が世界の利害を支える構造 神権政治家と治安主義者―イラン・イスラエル間エスカレーションの危険な構造的論理

豪州の継続的課題―ブッシュファイア

【メルボルンLondon Post=マジッド・カーン】 2026年初頭、オーストラリア南東部ビクトリア州は、大規模なブッシュファイア(山火事)に再び見舞われた。気温が45度を超える熱波が続いた後、ロングウッドとウォルワ周辺で発生した火災が急速に拡大し、広い地域に被害が及んだ。ジャシンタ・アラン州首相が「災害状態(state of disaster)」を宣言したことは、危機の深刻さを物語っている。今回の火災は、2019~2020年の「ブラック・サマー」以来、州にとって最大級の災害と位置づけられている。火勢がいったん弱まり、当面の危険が後退するにつれ、焦点は長期にわたる復旧・復興へと移った。 復旧とは、焼け焦げたがれきを片づけ、建物を再建するだけではない。経済、環境、社会の回復を同時に進める、多面的な課題である。気候変動によって災害が激しさを増す中、ビクトリア州が復旧・復興をどのように進めるのかに国際的な関心が集まっている。 可燃物の蓄積が進む中、突風を伴う強風が重なり、2026年1月初旬に発生した火災は急速に拡大した。1月10日に「災害状態」が正式に宣言された時点で、焼失面積はすでに30万ヘクタールを超えていた。この宣言により、緊急サービス当局は住民避難や資源配分について特別な権限を得て、対象は18の地方自治体区域に及んだ。ストラスボギーやトウォングなどでは状況が急速に悪化し、数千人が避難を余儀なくされた。住民は炎に追われ、持ち物や生活の基盤を残したまま退避することになった。 赤く染まった空と、森林から立ち上る煙柱の映像は、豪州で自然災害が激化している現実を改めて印象づけた。避難した住民の多くは、衝撃が冷めやらぬ中、救援センターで開かれた復旧に向けた初期会合に参加した。これらの会合は、政府と住民の情報共有や連絡体制を整え、被害状況について公式に説明する場となった。「災害状態」の宣言は、被災地域が復旧や生活再建を進めるための法的・財政的な支援枠組みを確保する意味も持っていた。 現場の安全が確認されると、エマージェンシー・リカバリー・ビクトリア(Emergency Recovery Victoria)と各自治体のチームが被害査定に着手した。衛星画像と地上調査を組み合わせ、900棟を超える建物の被害が確認され、その中には数百棟の住宅も含まれている。復旧の最初の課題は、電力、水道、通信といった基幹インフラの回復だった。火災の最盛期には3万世帯以上が停電し、地域によっては灰や消火薬剤の影響で安全な飲料水の確保が難しくなった。公益事業者は数百人規模の技術者を投入し、防護柵や道路標識、さらに数千キロに及ぶ送電線の修復を進めた。大きく景観が変わった地域でも、住民の日常生活をできるだけ早く取り戻すことが目標とされた。 2026年の火災による経済的打撃を受け、州政府と連邦政府は迅速に財政支援を実施した。共同の災害復旧資金手当制度(Disaster Recovery Funding Arrangements)のもとで、食料や衣類、医薬品など生活必需品の購入を支援する給付が開始された。 農業被害も深刻で、最初の1週間だけで1万5000頭を超える家畜が失われた。ヒュームおよびゴールバーン・バレー地域の農家にとって、これは経済的損失だけでなく精神的にも大きな打撃となった。牧草地やフェンス、飼料保管施設が焼失し、生き残った家畜も厳しい環境に置かれている。被災農地に緊急の飼料や水を届けるため、大規模な支援輸送が行われた。 この危機に対応するため、最大7万5000ドルの一次生産者向け復旧助成金が設けられた。がれき撤去や農業経営の再建に必要な費用を支援するもので、家畜の適切な処理、農場インフラの再構築、牧草地の回復などが対象となる。長期的には、土壌の健全性回復とともに、焼失地で広がりやすい外来雑草の侵入対策も重要な課題となる。 火災は交通網にも大きな混乱をもたらした。危機の最中、多くの地域が事実上孤立し、ヒューム・ハイウェイやマレー・バレー・ハイウェイなど主要道路が火災接近や倒木の危険により閉鎖または通行制限された。復旧チームにとって道路の再開は最優先事項だった。道路は救援物資や復旧資材の輸送、避難者の帰還を支える重要な交通路だからである。 環境被害も甚大だった。ローソン山やウォナンガッタを含む広大な森林や州立公園が深刻な被害を受け、野生生物の犠牲は数百万に達すると推計されている。火の回りが速く強度も高かったため、移動の遅い動物は逃げることができなかった。現在、環境修復が進められており、灰の流出から水源を守る対策や、未焼失地に生き残った動物への給餌・給水支援が進められている。 火災後の水質悪化も懸念されている。植生が失われることで土壌侵食が進み、豪雨時に土砂が河川や貯水池へ流れ込む危険が高まる。これは水生生物の生息環境だけでなく、飲料水の安全性にも影響を与える可能性がある。 一方で、物理的な被害以上に深刻なのが心理的影響である。避難の恐怖や住居の喪失、環境破壊の目撃は、長期にわたり不安や悲しみを残す。被災者の心の回復は、復興の重要な課題の一つとなっている。 復旧が再建段階へ移る中、ビクトリア州民が直面するのは、安全で持続可能な形で地域をどう再建するかという課題である。今回の火災は、極端な気象条件にさらされる地域の都市計画や建築基準をめぐる議論を再び活発化させた。保険料の急騰や新たな火災危険度基準への対応など、土地への帰還を望む住民には大きな負担がのしかかっている。 州政府は、より耐災害性の高い住宅の整備を検討している。賃貸住宅供給を目的とした「ビルド・トゥ・レント」方式や耐火素材を用いた住宅開発、さらに地域単位で電力供給を維持できるマイクログリッドの整備などが進められている。しかし、その費用負担をどう抑えるかが引き続き課題となっている。 一部地域では、長期的に危険度が高い地域から移転する「管理された撤退」という選択も議論されている。災害の頻発は、都市・地域計画の見直しを迫っている。今回の復旧は単なる元通りの再建ではなく、自然環境の中でどのように暮らすのかを改めて考える機会でもある。再建の各段階に回復力を組み込むことで、ビクトリア州は火災多発地域に向けた新たなモデルを示そうとしている。 豪州では大規模火災のたびに政策の見直しが行われる。今回も計画的焼き払いの有効性や国立公園での燃料管理をめぐり、さらなる調査を求める声が上がっている。高温と乾燥が常態化する中、従来の手法だけでは不十分だとの認識が広がり、先住民の火入れの知見を現代技術と組み合わせる動きも検討されている。 政策面では、観光業や農業など地方経済の脆弱性も浮き彫りになった。政府は、自然災害の影響を減らす気候対応型の取り組みを通じ、産業の持続性を高める方策を検討している。復旧から得られた教訓を生かし、より柔軟で先を見据えた政策体制の構築を目指している。 ビクトリア州の復旧の取り組みは、豪州を超えて国際的な関心を集めている。気候変動による災害が世界各地で増える中、ここで得られる教訓は多くの地域にとって参考となる。暮らし、経済、環境のバランスをどう取るかという課題に対し、ビクトリア州の経験は重要な示唆を与えるだろう。さらに、豪州が2026年のCOP31気候会議の開催を目指していることも、国内政策への注目を高めている。復旧の行方は、もはや州だけの問題ではなく、世界が共有する課題となっている。(原文へ) INPS...

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