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キャロリン・ロドリゲス=バーケット氏、国連事務総長選で「現実的改革」を提唱―小国の視点から実務重視の国連像を提示
【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】
次期国連事務総長選挙に立候補しているガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏は、加盟国との対話会合で、戦争、財政難、そして国連への信頼低下という試練に直面する国連に対し、「実務的な改革」「国連憲章の原則への回帰」「より信頼される国連」の実現を柱とする、慎重かつ現実的なビジョンを示した。|英語版|
ロドリゲス=バーケット氏は、自らを既存秩序を覆す改革派候補として売り込むことはしなかった。
むしろ、「国連は依然として不可欠な存在である。しかし、その役割を果たすためには、より効果的で、より現場に根ざし、自らが何を実現でき、何を実現できないのかについて率直でなければならない」と訴えた。
同氏の主張は三つの柱に集約される。
第一に、国連憲章の原則を改めて重視すること。
第二に、国連の制度改革を進めること。
そして第三に、平和と安全保障、開発、人権という国連の三本柱において加盟国の協力を結集し、成果を上げることである。
これは、小国ならではの現実感覚に裏打ちされたメッセージだった。
ガイアナの国連常駐代表であり、元外相でもある同氏は、多国間主義のルールは「飾り」ではなく「国家の生存条件」であると考える小国の経験を、自らの立候補の土台に据えた。
同氏が繰り返し強調したのは、次の一節だった。
「事務総長が持つべき唯一の偏りは、国連憲章と国際法に対するものである。」
この考え方は、ウクライナ、ガザ、人権問題、安全保障理事会の機能不全など、加盟国から厳しい質問が相次ぐ中で、一貫した回答の軸となった。
今回の対話では、次期事務総長が直面する最大の課題も浮き彫りとなった。
すなわち、国連に求められる役割は拡大し続ける一方で、加盟国の政治的結束、財政、人々の忍耐はいずれも縮小しているという現実である。
「平和は命令できないが、そのための政治的空間はつくれる」
平和と安全保障についてロドリゲス=バーケット氏は、事務総長はより積極的に行動し、「善意の仲介(good offices)」を活用し、紛争当事者と直接対話するとともに、地域・準地域機関との連携を強化すべきだと述べた。
「国連が常に対応が遅い、あるいは存在感がないと思われないためにはどうすべきか」と問われると、同氏は「進展の可能性を常に探り続け、拒絶や失敗を恐れてはならない。」と答えた。
これは、この日の対話でも最も印象的な場面の一つだった。
その発言からは、「事務総長は平和を命じることはできないが、和平への政治的な空間を生み出すことはできる。」という現実を理解している候補者像が浮かび上がった。
第99条には慎重姿勢
一方、国連憲章第99条については慎重な姿勢を示した。
第99条は、事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる権限を定めている。
ロドリゲス=バーケット氏は、この権限を行使する前には、現地から十分な情報を収集し、人道上の影響を評価し、当事者と対話し、利用可能なあらゆる外交手段を尽くすべきだと述べた。
法的には慎重で政治的にも安全な回答だったが、安全保障理事会が機能不全に陥った際には、より積極的に第99条を行使すべきだと考える人々には物足りなく映る可能性がある。
ウクライナ問題では原則論に終始
ウクライナ代表団は、リトアニア、ポーランドとともに、戦争犯罪、民間人への攻撃、子どもの強制移送、性的暴力、さらには常任理事国による拒否権行使について質問した。
ロドリゲス=バーケット氏は、「国連憲章や国際法へのあらゆる違反について、事務総長にはそれを指摘する責任がある。」と述べた。
しかし同時に、「こうした原則はすべての紛争に等しく適用されなければならない。」と付け加えた。
ロシアを直接名指しすることは避けた。
選挙戦としては賢明な対応かもしれない。
しかし同時に、慎重路線の限界も示した。
ガザ問題でも均衡を維持
アラブ・グループは、国際法における二重基準、パレスチナ問題、人道支援アクセス、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への支援について質問した。
ロドリゲス=バーケット氏は、国際人道法の遵守、人道支援の確保、関係者との協力、そして長期的解決を支持すると述べ、安全保障理事会および総会で採択された数多くの決議にも言及した。
ここでも回答は慎重かつ均衡の取れたものだった。
問題の核心は認識していたものの、新たな政治的メカニズムや譲れない一線(レッドライン)は提示しなかった。
その姿勢は終始一貫していた。
国連憲章を軸とし、大げさな約束は避け、外交の余地を残すというものである。
人権は「開発」と不可分
欧州連合(EU)は、人権分野への予算配分が国連の三本柱の中で依然として少ない点について質問した。
これに対し同氏は、「開発や平和・安全保障への投資は、人権への投資でもある」と答えた。
また、自身がガイアナで取り組んできた先住民族教育や先住民族の権利向上の経験を紹介し、人権を基盤とする政策は実際に開発成果を生み出せると説明した。
これは彼女の持ち味が最も発揮された分野だった。
人権を「尊厳」「包摂」「開発」という観点から語ることには説得力があり、グローバル・サウスの多くの国々には共感を呼ぶだろう。
一方、市民社会や一部の欧米諸国は、各国政府による人権侵害に対して、より強い発信力を期待するかもしれない。
最大の強みは開発と気候変動
ロドリゲス=バーケット氏が最も力を発揮したのは、開発資金、気候変動への脆弱性、小島嶼国の課題について語る場面だった。
G77・中国グループは、「2030アジェンダ」、開発資金、地域的代表性、そして国連改革が開発分野を弱体化させる危険性について質問した。
これに対し同氏は、「世界が直面しているのは約束不足ではなく、実施不足である」と指摘し、国際金融機関との連携強化と国際金融システム改革の必要性を訴えた。
また、小島嶼開発途上国(SIDS)、カリブ共同体(CARICOM)、太平洋諸島フォーラム、モルディブなどからは、気候変動への脆弱性、「アンティグア・バーブーダ行動計画」、多次元脆弱性指数(MVI)、気候変動と安全保障の関係について質問が寄せられた。
同氏は、小島嶼国支援は各国が合意した優先課題に沿って進めるべきであり、多次元脆弱性指数などの指標についても国際金融機関への働きかけを強化すべきだと述べた。
さらに、「私は満潮が抽象的な気候変動の話ではなく、現実の脅威である国から来ています」と語り、自身の経験と政策を自然に結び付けた。
「改革」は必要だが、開発機能は削るべきではない
国連改革について同氏は、「UN80」改革プロセスを支持する一方で、「効率化」が最も脆弱な人々への支援を削減する口実になってはならないと警告した。
事務総長は、改革によってどのような影響が生じるか、とりわけ開発成果が後退する危険について加盟国へ明確な情報を提供すべきだと述べた。
これは彼女の最も強力な政治的メッセージの一つだった。
主要拠出国は「よりスリムな国連」を求めている。
一方、途上国は、「近代化」という名の下で開発予算が削減されることを懸念している。
ロドリゲス=バーケット氏は、その中間を目指した。
「組織は改革する。しかし、その原動力まで静かに取り除いてはならない。」
安保理改革では加盟国主導を強調
アフリカ・グループは、安全保障理事会におけるアフリカの常任理事国入りをどう支援するか質問した。
同氏は、安全保障理事会改革の必要性については広範な合意が存在し、アフリカの特別な事情も認識されていると述べた。
しかし、交渉は加盟国の役割であり、事務局はそのプロセスを支援する立場にあると強調した。
「安全な候補」以上になれるか
対話終了後、ロドリゲス=バーケット氏は記者団に対し、自らを「出馬が遅れた候補」とは考えていないと述べた。
選挙戦はまだ続いており、新たな候補者が加わる可能性もあるという。
出馬にあたっては家族とも十分相談したことを明かし、今後は各国首都を訪問して支持を求める考えを示した。
また、「候補者の中に欠けているものがあったから立候補したのか」と問われると、その見方を否定した。
安全保障理事会と加盟国全体にとって、多様な候補がいることは望ましく、ラテンアメリカ・カリブ地域にも優れた人材は数多く存在すると述べた。
今回の対話を通じて、彼女の立候補の特徴は明確になった。
ロドリゲス=バーケット氏は、最も声高な候補としてではなく、小規模な開発途上国出身の現実的な多国間外交官として選挙戦に臨んでいる。
政府での経験、国連外交の経験、そして開発を最優先に据える世界観が、その強みである。
国連外交の現場を熟知し、加盟国の立場を理解し、改革を語っても無謀さを感じさせないことは大きな長所と言える。
一方で、最も政治的に対立の激しい問題については、原則論や手続論にとどまる場面も少なくなかった。
今回、ロドリゲス=バーケット氏は、自らが現在の国連とその置かれた状況を十分理解していることを説得力をもって示した。
今後の焦点は、各国首都が彼女を単なる「安心して任せられる候補」と見るのか、それとも財政は減り、加盟国の結束も弱まり、世界の期待だけが高まり続ける国連を率いるだけの胆力を備えた指導者と評価するのかにかかっている。
INPS Japan/ATN
Original URL:https://www.amerinews.tv/posts/carolyn-rodrigues-birkett-pitches-practical-reform-as-u-n-race-turns-to-small-state-realism
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|視点|人間性を忘れるな(カレン・ホールバーグ教授パグウォッシュ会議事務総長)
【INPS Japan=カレン・ホールバーグ】
米国ニューメキシコ州で実施された世界初の核実験、そして広島・長崎への悲劇的な原子爆弾投下によって幕を開けた「核時代」から80年が経ちました。今日、人類は深刻な存亡の危機に直面しています。その危機は、冷戦期における最も緊迫した対立をも上回るほど、不安定で予測困難なものとなっています。
1955年、核兵器保有国がわずか3か国であり、水素爆弾の開発が始まったばかりの時代に、「ラッセル=アインシュタイン宣言」は人類に対して次のような根源的な問いを投げかけました。|英語版|
「私たちは人類を滅亡させるのか。それとも、人類は戦争を放棄するのか。」
現在では9か国が核兵器を保有し、数千発もの熱核兵器が配備されています。この問いは、いまや人類が直面する究極の選択となっています。
パグウォッシュ会議は、国際秩序が著しく悪化し、外交よりも武力による威嚇や行使が優先されるようになっている現状を深く憂慮しています。核兵器保有国が関与する現在の軍事的対立は、人類文明そのものの存続を脅かす危険を孕んでおり、新たな核拡散の波が起これば、その危険性は飛躍的に高まるでしょう。
米国とロシア連邦の間で締結されていた新戦略兵器削減条約(New START)の失効により、国際社会は、世界最大の二つの核兵器保有国の核戦力を拘束し、検証可能な法的枠組みを持たない時代へと正式に入りました。
1972年の第一次戦略兵器制限交渉(SALT I)以来、50年以上にわたり続いてきた軍備管理の枠組みが初めて失われたことになります。これらの枠組みは、国際社会に管理・安定・予測可能性・透明性をもたらす重要な安全装置として機能し、1980年代半ばに約7万発あった世界の核弾頭数を、現在のおよそ1万2,200発(広島型原爆約14万6,000発分以上の爆発力に相当)まで削減する上で重要な役割を果たしてきました。
しかし、核軍縮において歴史的な前進があったにもかかわらず、現在の動向は、その長年にわたる成果が逆行しかねないことを示しています。核軍拡競争の再燃、国際的緊張の高まり、そして核保有国同士の軍事対立が、その流れを加速させています。
さらに、多くの核保有国が核戦力の近代化と増強を進めており、軍備管理に関する対話が停滞する中で、世界の戦略的安定性に新たな圧力を加えています。こうした動向は、国際安全保障における核兵器の重要性が再び高まっていることを示しており、核不拡散・核軍縮の努力、とりわけ半世紀以上にわたり核兵器の拡散を抑制してきた核兵器不拡散条約(NPT)第6条の履行を著しく困難なものとしています。
その一方で、「核兵器禁止条約(TPNW)」への支持が広がっていることは、多くの国々と市民社会が核兵器の完全廃絶という目標の実現に向けて強い決意を持っていることを示しています。軍縮への具体的な道筋については見解の違いがあるものの、この条約は核兵器廃絶の人道的必要性を改めて国際社会に訴え、「核兵器のない世界」という理念を国際政治の重要課題として維持する上で大きな役割を果たしています。
また、欧州において核抑止の適用対象を新たな非核兵器国へ拡大しようとする議論や、東アジアをはじめとする地域で核武装を支持する政治的主張が台頭していることは、自国の安全保障を理由とした制御不能な新たな核拡散の連鎖を引き起こしかねません。
同様に深刻なのは、一部の核兵器保有国による核実験再開を示唆する無責任な発言です。こうした言説は危険な緊張の激化を招くだけでなく、「包括的核実験禁止条約(CTBT)」の発効を見据えて長年維持されてきた核実験モラトリアムを損なう恐れがあります。同条約は、依然として主要国による批准を待っている状況です。
現在の状況は極めて重大な課題を突き付けています。しかし、それらはいずれも直ちに取り組むべき課題です。
核兵器保有国は、2022年1月に発表した「核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する共同声明」を改めて確認し、国際安全保障における核兵器の役割を縮小する政治的意思を明確に示すべきです。それは同時に、核軍拡競争の終結と核軍縮に向けた誠実な交渉を義務づけるNPT第6条の履行を改めて確認することにもなります。
核兵器保有国は、共通の利益を見いだす責任を自覚し、多国間軍備管理交渉の再活性化に向けて真摯な外交努力を行わなければなりません。
すべての核兵器保有国は、核爆発実験のモラトリアムを維持するとの自主的な約束を改めて表明するとともに、CTBTの早期発効に向けて必要な措置を講じるべきです。核実験の再開は、新たな軍拡競争と戦略的不安定化への危険な一歩となります。
核兵器保有国は、非核兵器国に対して核兵器を使用せず、その使用を威嚇しないことを改めて確認するとともに、「先制不使用(No First Use)」政策を採用し、これらの安全保障上の保証を法的拘束力のあるものへと発展させる努力を進めるべきです。
国際原子力機関(IAEA)の検証・監視機能を一層強化し、非核兵器国を含む国際的な核不拡散体制において、透明性・信頼性・遵守を確保していくことが不可欠です。
核兵器のない地域(非核兵器地帯)をさらに拡充するとともに、1995年および2010年のNPT運用検討会議で合意された中東非核兵器地帯の設立を実現すべきです。
これらの措置は、信頼醸成と核リスク低減のための現実的な一歩となり、世界の安定を高めるとともに、制御不能な「核拡散の連鎖(nuclear breakout)」を防ぐことにつながります。
さらに、それらは、人工知能、量子技術、極超音速兵器、ミサイル防衛、宇宙空間の軍事利用、自律型兵器システムなど、新たな安全保障上の課題に対応できる、より協調的で包括的かつ現代的な国際安全保障体制への橋渡しともなり得るでしょう。
核兵器が人類の存続に及ぼす危険について、市民と政治指導者双方の理解を深めることは極めて重要です。ノーベル賞受賞者会議による最近の宣言でも、次のように呼びかけています。
「私たちは、科学者、研究者、市民社会、そして宗教共同体に対し、世界の指導者が核リスク低減のための措置を実行するよう促すために必要な世論を築くことを呼びかける。」
その責任は、私たち一人ひとりにあります。
最後に、ラッセル=アインシュタイン宣言の結びの言葉を、改めて胸に刻みたいと思います。
「私たちは、人間として、同じ人間である皆さんに訴えます。人間性を心に刻み、それ以外のことは忘れてください。」
この文章は、INPS Japanが創価学会インタナショナルと推進している核廃絶メディアプロジェクトの報告書(2025年4月~26年3月までに配信されたプロジェクト記事をまとめたもの)の序文として寄稿されたものである。
INPS Japan
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腐ったトマトからAIへ―ウガンダのコモンウェルス青年賞受賞者がアフリカの飢餓に挑む
【ロンドン/ダルエスサラームIPS=キジト・マコエ】
ウガンダのシフラ・アイノムギシャ氏が、2026年の「コモンウェルス・ヤング・パーソン・オブ・ザ・イヤー(Commonwealth Young Person of the Year)」に選ばれた。受賞はロンドンで開かれた2026年コモンウェルス青年賞授賞式で発表され、同氏はアフリカ地域最優秀賞もあわせて受賞した。|英語版|
しかし、彼女が「イノベーター」と呼ばれるようになるずっと前から、その原点はすでに形づくられていた。
人工知能(AI)が農業の文脈で語られるようになる前、太陽光発電を利用した低温貯蔵施設や「持続可能な開発」という言葉に出会う前から、シフラ・アイノムギシャ氏は、「食料が失われていく」という現実を身をもって知っていた。
夜明けになると、彼女はバケツを手に、西ウガンダにある家族のトマト畑へ向かった。
そこには、市場に届く前に失われていく収穫物があった。
遠目には健康そうに見えるトマトも、市場へ運ばれる前に柔らかくなり、割れ、腐ってしまうものが少なくなかった。
それが、彼女にとっての「食品ロス」の現実だった。
「毎朝、腐ったトマトを拾い集めて捨てながら、少しでも売れるものを救おうとしていました。」
彼女はそう振り返る。
こうして、家族の収穫のほぼ半分が失われていた。
それでも農作業は終わらない。
両親は懸命に働き続けた。
季節は巡り、畑には作物が実る。
しかし、収入はなかなか安定しなかった。
「それなのに、私たちは学費を払うことにも苦労していました。」
「学校の休暇中は家族総出で畑仕事をしていたにもかかわらず、学校を辞めざるを得なかった子どももいました。私たちは食料を生産していたのに、教育を受け続けるためのお金さえ十分に得られなかったのです。」
「なぜ食べ物を作る人が飢えるのか」
豊かな収穫が無駄になり、どれほど働いても暮らしが良くならない――。
そんな幼少期の体験が、後に彼女の人生を決定づける使命となった。
その取り組みは、2026年コモンウェルス青年賞において、SDG2「飢餓をゼロに」部門のアフリカ地域最優秀賞として高く評価された。
同賞には、コモンウェルス加盟56か国から約1,000人が応募した。57人の審査員による二段階審査を経て、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に革新的な取り組みで貢献した19人のファイナリストが選出された。
そしてアイノムギシャ氏は、その中から最高賞である「2026年コモンウェルス年間最優秀青年」にも選ばれた。
授賞式では、コモンウェルス事務総長のシャーリー・ボッチウェイ氏が賞を授与した。
ボッチウェイ事務総長は、ファイナリスト全員を称え、次のように語った。
「皆さんはすでに勝者です。56か国の中から選ばれたこと自体が、皆さんの勇気と創造性を物語っています。皆さんはコモンウェルスの誇りであり、困難に直面しても粘り強く挑戦し、制約の中でも革新を生み出してきました。」
さらに、
「今日は単なる表彰の日ではありません。新たな前進の出発点です。個人の卓越性を称えるだけではなく、共に前進する日でもあります。私たちは今後も、コモンウェルス青年プログラムを若者育成の中核事業としてさらに発展させていきます。」
と述べた。
「誰も飢えで命を落としてはならない」
しかし、アイノムギシャ氏にとって、この歩みは賞を目指したものではなかった。
すべては、幼い頃から抱き続けてきた一つの疑問から始まった。
「なぜ食べ物を育てる人たちが、なお飢えているのか。」
「誰も飢えで命を落としてはなりません。」
彼女はIPSにそう語る。
「私たちはそのために活動しています。農家が農業を続けられ、食品ロスを減らせれば、飢餓との闘いにつながります。それが私たちが取り組むSDGsなのです。」
現在、アイノムギシャ氏は社会的企業ソラファム・ウガンダ(Solafam Uganda Ltd)の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)を務めている。
同社は、太陽光発電と人工知能を活用し、小規模農家の収穫後損失を減らし、生産性と所得の向上を支援している。
事業の柱は三つある。
太陽光発電による低温貯蔵施設、太陽光灌漑システム、そしてLean AIと呼ばれるAI農業アドバイザーである。
Lean...
戦争、熱波、エネルギー危機がクリーンエネルギーへの転換を加速させる
【ロンドン/パキスタン・カラチIPS=ゾフィーン・エブラヒム】
過去30回にわたる国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)でもなし得なかったことを、米国とイスラエルによる対イラン戦争の3か月間が成し遂げたのかもしれない。それは、世界が化石燃料にいかに依存し、いかに脆弱であるかを浮き彫りにしたことである。|英語版|
世界が過去10年で最大規模のエネルギーショックに直面する中、クリーンエネルギーへの投資を加速させる必要性は、これまでになく説得力を増している。
さらに欧州が深刻な熱波に見舞われる中、英国気象庁は「生命に危険が及ぶ恐れがある」と警告を発し、ロンドン気候行動週間(LCAW)の開催期間中にも、店舗やオフィス、学校の閉鎖に加え、交通機関の混乱が生じている。こうした状況を受け、エネルギー転換を求める声は一段と高まっている。
高まる危機感
「政策立案者、投資家、企業経営者の間で、そうした危機感は確実に高まっています。」
そう語るのは、パキスタンの起業家であり、同国を拠点とするテクノロジー、データ分析、アドバイザリー企業「サスティナディリティ(Sustainadility)」の共同創業者兼パートナーを務めるファラズ・カーン氏(MBE)である。同氏は25年以上にわたり、官民連携による投資や、環境・持続可能性・ガバナンス(ESG)に関する枠組みづくりに携わってきた。現在は、気候資金とエネルギー転換の将来を議論するためLCAWに参加している。
6月28日に閉幕するLCAWの傍ら、IPSの電話取材に応じたカーン氏は、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行は喫緊の課題であり、その実現には投資家と企業の関与が不可欠だと強調した。
カーン氏はLCAWの雰囲気について、「慎重さを伴いながらも楽観的だ」と表現した。また、パキスタンへの国際的な注目が高まっていることを歓迎し、「わが国は、米国とイラン・イスラム共和国との和平合意『イスラマバード覚書』の仲介に尽力したことが高く評価されました」と述べた。
ルール作りから投資へ
カーン氏は、6月8日から18日までドイツ・ボンで開催された気候変動会議とLCAWとの違いについて、次のように説明する。
ボン会議は外交交渉や気候政策のルール作りが中心だった。一方、2019年から毎年開催されているLCAWは、持続可能性やESG分野への民間投資を呼び込み、それを商業ベースで拡大することに重点を置いている。
「LCAWは、より企業や民間部門に焦点を当てた場です。」
こう語るカーン氏は、社会的インパクト投資を行うパキスタンの団体「シードベンチャーズ(SeedVentures)」の創設者でもある。
その一方で、同氏は次のようにも指摘した。
「物事には二つの側面があります。米・イラン和平とホルムズ海峡の再開によって、石油が依然として世界経済に不可欠であることが改めて示されました。しかし同時に、多くの国々は化石燃料への依存が自国の利益にならないばかりか、安全保障上のリスクにもなり得ることを認識しています。」
地政学的対立によって、石油の生産、貿易、輸送がいかに脆弱であるかが明らかになった。そのため、代替エネルギーへの投資は今後さらに加速すると見込まれている。
カーン氏が出席したCOP31議長主催の民間セクター会合では、循環型経済、電化(エレクトリフィケーション)、気候資金が主要な議題となった。ブラックロック、世界銀行、国連工業開発機関(UNIDO)、国際金融公社(IFC)、さらには各種業界団体など、世界の気候変動分野を代表する組織が一堂に会した。
「まさに気候変動分野のオールスターが集まった会議でした。」とカーン氏は笑顔で語る。
「私たちもその場に加われたのです。」
しかし一方で、意思決定の場に女性がほとんどいなかったことは残念だったという。ただし、トルコのCOP31チームについては、「知的水準が高く、会議での存在感も圧倒的だった。」と高く評価した。
「交渉」から「実行」へ
カーン氏によれば、会議の構成だけでなく議論そのものにも変化が見られた。
会場では、交渉中心の議論から、実施・投資・具体的行動へと重点を移す新たな流れをつくろうという強い意志が共有されていた。
「政府は制度や環境を整えることができ、国連はルールを示すことができます。しかし最終的に変化を実現するのは、投資家、投資可能な事業、そして大企業なのです。」
ボン会議が制度設計を議論する場だったのに対し、LCAWは気候資金や実際の投資案件を議論する場だったと同氏は説明する。
さらに、「今年11月にトルコ・アンタルヤで開催されるCOP31では、『言葉だけではなく資金を投入する』ことが最大のテーマになります。実現可能なプロジェクトへ資本を投じ、協調的な投資スキームを構築して気候変動対策を本格的に拡大していくことになるでしょう。」と語った。
民間部門が主役に
またカーン氏は、中国がクリーンエネルギー投資の世界的リーダーとして頻繁に言及されていたことにも触れた。
「さまざまな会議を通じて、再生可能エネルギーへの投資意欲が非常に強まっていることを実感しました。この流れは今後さらに加速すると確信しています。」
公正なエネルギー移行を実現するには、大企業や大規模な組織の役割が決定的に重要だという。事業規模が大きく、地域社会とのつながりも深いため、社会全体へ大きな変化をもたらす力を持っているからだ。
こうした電化と脱化石燃料への取り組みは、COP31議長国トルコも重視している。
今月、ボン会議の会場で英紙『ガーディアン』の取材に応じたトルコのムラト・クルム環境相は、「35%目標」はCOP31議長国として最も重要な課題の一つになると語った。
「交通、建築物、産業など日常生活のあらゆる分野を電化することで、家庭や企業をエネルギー価格の乱高下から守ることができる。」と同相は述べている。
パキスタンに訪れた好機
カーン氏は、パキスタンにはこのエネルギー転換の最前線に立つチャンスがあると考えている。
同国は気候災害の被害国として取り上げられることが多い。世界の温室効果ガス排出量に占める割合は1%未満であるにもかかわらず、大きな被害を受け続けている。
しかし同氏は、世界が太陽光発電に注目する中、パキスタンで静かに進行している「ソーラー革命」にも目を向けるべきだと訴える。
「パキスタンは、太陽光発電の普及がいかに急速に進み得るかを示す世界的な成功例となっています。それに伴い、太陽光パネル製造や蓄電池産業にも大きな投資機会が生まれています。」
一方で、送電網の近代化や大規模蓄電システムの整備は、ますます重要な課題となっている。
自然への投資
カーン氏は、再生可能エネルギーだけでなく、「自然への投資」にも大きな可能性を見いだしている。
マングローブ林、森林、湿地、草原、山岳生態系など、パキスタンの豊かな生物多様性には莫大な投資余地があるという。民間資本は、こうした自然資産の保全と再生の両方に貢献できる。
パキスタン経済において農業は大きな割合を占める一方、生物多様性の喪失を招く要因にもなっている。
そのため、企業は再生型農業、アグロフォレストリー(森林農業)、持続可能なコメや綿花の生産などへ投資することで、自らの持続可能性目標を達成すると同時に、新たな「生物多様性クレジット市場」にも参入できる。
「カーボンクレジットがあるように、生物多様性クレジットもあります。これは食料安全保障や農業と密接に結びついています。」
農業が国の基幹産業であるパキスタンは、生物多様性クレジット分野でも大きな潜在力を秘めているという。
「これは本当に画期的な分野になるでしょう。莫大な投資機会が広がっています。」
投資拡大への課題
しかし現実には、投資家はまだ十分に集まっていない。
カーン氏は、海外から大規模な気候投資を呼び込む最大の障害は、依然としてパキスタンの高いカントリーリスク(国家リスク)だと指摘する。
一方で、「パキスタン・グリーン・タクソノミー」、グリーンバンキング指針、ESG基準など近年の政策改革は、投資家の信頼向上につながっているという。
また、投資に適した「バンカブル・プロジェクト(採算性や信用力があり、資金調達が可能な事業案件)」が不足していることも課題だ。本来は堅実な事業基盤を持つにもかかわらず、国際投資家を十分に惹きつけられていない案件も少なくない。
それでも、投資の潜在力は極めて大きいとカーン氏は強調する。
ただし、時間的猶予は限られているかもしれない。
最近の中東情勢の混乱が、世界の化石燃料依存の脆弱性を露呈したのであれば、それは同時に、クリーンエネルギーへの転換を加速させる必要性を浮き彫りにしたことにもなる。
パキスタンにとって、その機会は極めて大きい。
しかし、その潜在力を現実のものにできるかどうかは、必要な民間投資を呼び込める環境を整えられるかにかかっている。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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