Error 404 - not found

We couldn't find what you're looking for. Browse our latest stories or try searching using the form below:

Browse our exclusive articles!

ロシアのLGBTQ+コミュニティに対する組織的な中傷が人々を地下へ追いやる

【ブラチスラバ IPS=エド・ホルト】 ロシアのLGBTQ+当事者が、日常生活の中で自己検閲的な対応を強めざるを得ない状況に置かれていることが、同国最大級のLGBTQ+調査で明らかになった。|英語版| LGBTQ+支援団体「カミングアウト」と「スフィア財団」がロシア各地の6,000人以上を対象に実施した最新の年次調査によると、2025年のコミュニティを取り巻く状況は、大きく改善も悪化もしていなかった。 しかし調査は、LGBTQ+当事者の間で、既存の「適応戦略」がさらに定着していることを示した。具体的には、誰にカミングアウトするかを慎重に選ぶことや、自らの性自認や性的指向が明らかになる可能性のある状況を避ける傾向が強まっている。 また、特にオンライン上での嫌がらせが増加しているほか、暴力の脅迫や恐喝、密告、身近な人々からの圧力が、LGBTQ+当事者の脆弱な立場を日常的に強める要因となっていることも明らかになった。 両団体は、この調査結果について、ロシアのLGBTQ+当事者が今後も長期間にわたり高いリスクと不安の中で暮らさざるを得ない現状を改めて浮き彫りにしたものだと指摘している。ロシアでは近年、LGBTQ+コミュニティを標的とする一連の抑圧的な法律が制定されており、人々は自らのアイデンティティそのものを理由に攻撃や差別の対象となっている。 「私たちのデータが示しているのは、LGBTQ+への弾圧が、特定の行為を理由とした迫害から、その人の存在そのものを標的とする迫害へと変質しているということです。政府に反対したり、人権擁護活動を行ったりしているわけではなく、ただ日常生活を送っているだけの人々に対する法的措置が増えています」 LGBTQ+支援団体「カミングアウト」の事務局長デニス・オレイニク氏はIPSの取材に対し、このように語った。 同氏はさらに、「2025年に私たちが目にしたのは、“惨事の常態化”でした。LGBTQ+の人々は、こうした状況とともに生きることを余儀なくされています。まるでそれが日常の一部になってしまったかのようです。本当に恐ろしいことです。」と述べた。 ロシアのLGBTQ+コミュニティは、この10年以上にわたり差別と社会的排除の強化に直面してきた。 ロシア社会には以前から一定の反LGBTQ+感情が存在していたが、一連の法律制定と政府による敵対的な政策によって、それは大きく深刻化した。 2013年、ウラジーミル・プーチン大統領が政権に復帰して間もなく、「非伝統的な性的関係の宣伝」を18歳未満に対して禁じる法律が施行された。 批判者らが「クレムリンによるLGBTQ+周縁化キャンペーンの始まり」と位置付けるこの法律は、2022年に拡大され、年齢を問わずLGBTQ+の権利擁護や異性愛以外の性的指向を示すあらゆる情報発信や活動が規制対象となった。 さらに同性婚禁止が憲法に明記され、2023年にはトランスジェンダーの人々が法的・医療的に性別変更を行うことを禁じる法律も成立した。 同年、最高裁判所は実在しない「国際LGBT運動」を「過激派組織」と認定した。これにより、「非伝統的な性的関係」を促進していると解釈され得るあらゆる行為について、罰金や刑事訴追が可能となった。 一方で、クレムリンが「伝統的家族の価値観」を推進し、LGBTQ+活動を退廃した西側文化の産物でありロシアへの脅威だと位置付ける中で、同性愛嫌悪的な政治言説も常態化している。 こうした動きは社会の広い範囲でLGBTQ+への敵意を煽り、しばしば暴力的な拒絶反応を生み出している。その結果、多くの当事者が身体的・精神的健康への深刻な不安を抱えている。 ロシアの大都市に住むLGBTQ+学生のグリゴリー氏(仮名)は、自らの性的指向や性自認を明かす相手を慎重に選んでいると語る。常に暴力の恐怖を感じているわけではないが、危険を避けるため行動を変えているという。 「夕方になると、声や歩き方などで『典型的なゲイ』と見なされるかもしれない場所を避けることがある。人前で自分のセクシュアリティを隠しているわけではないが、あえて表現もしない。」と話した。 また、「トランスジェンダーの人々は最も深刻な問題に直面している。ロシアでトランスジェンダーとして生きることは本当に大変だと思う。彼らの勇気と強さには驚かされる。」と語った。 調査では、トランスジェンダーの人々は生活の質や福祉、差別経験など大多数の指標で他のLGBTQ+当事者より厳しい状況に置かれていた。特に身体的脅迫や実際の暴力、性的暴力や家庭内暴力を受ける割合が顕著に高かった。 オレイニク氏は、「現在、多くのトランスジェンダーの人々は、宅配サービスや親族・友人の支援があれば、買い物にさえ出かけず自宅だけで生活している。そのようなケースが増えている。」と指摘した。 グリゴリー氏は、直接的な暴力への恐怖よりも、自分たちに向けられた社会的な敵意を感じることが多いという。 「それは間接的に伝わってくる。政府のメディア報道や公共空間での言説、あるいは知人の何気ない発言を通してだ。ロシアのクィアフォビア(性的少数者への嫌悪)は主として政府によって作り出されたものだ。もちろん、こうした法律ができる前から存在していたが、今ほど強くはなかった。法律によってはるかに悪化した。」と語った。 LGBTQ+の権利擁護活動家らは、報告書で示された行動パターンは長年にわたる抑圧を考えれば当然の結果だと指摘する。 欧州のLGBTQ+権利団体ILGA-Europeの副代表兼プログラム・ディレクターであるアナスタシア・スミルノワ氏は、「社会的周縁化や犯罪視が長期間続けば、人々は日常的な危害への曝露を減らす方法を身につける」とIPSに語った。 ただし同氏は、ロシアのLGBTQ+当事者が直面する問題は特有のものであり、国家が厳罰化された法律や烙印を押すような言説を通じて、人権擁護者やLGBTQ+当事者同士を孤立させ、市民社会や異論表明の基盤そのものを解体しようとしていると指摘した。 「これは単なる社会的偏見ではない。国家が進めるプロジェクトであり、その標的は市民社会そのものだ。報告書に記された日々の自己検閲は、そのプロジェクトを生きる人々の現実である」と同氏は述べた。 こうした状況が個人やコミュニティにもたらす影響は深刻だ。孤立が進むことで精神的・身体的健康が損なわれるだけでなく、中には医療機関の受診をためらう人もいる。 スミルノワ氏は、とりわけ子どもたちへの影響を懸念している。学校現場を通じた国家主導の宣伝や、年齢に応じた性と人間関係に関する教育の欠如、さらにLGBTIに関する話題をめぐる恐怖感によって、LGBTI当事者の子どもやLGBTIの家族を持つ子どもたちはもちろん、LGBTIと見なされる可能性のあるあらゆる子どもたちが、深刻な孤立や危険にさらされているという。 報告書によると、多くの指標で前年からの大幅な悪化は確認されず、一部ではわずかな改善も見られた。しかし執筆者らは、この結果を過度に楽観視すべきではないと警告する。調査は、回答者が抑圧の強まる環境の中で機微な情報を提供することを前提としており、実際の差別や暴力の実態は、報告書が示す以上に深刻である可能性があるとしている。 現実の差別水準がどの程度であれ、多くの人々が深刻な苦しみを抱えていることに変わりはない。 グリゴリー氏は現在、ロシアでLGBTQ+として生きる困難に対処するため、心理療法を受けているという。 「コミュニティ内では、自殺願望や自殺未遂はかなり一般的だ。」と同氏は語った。 IPSの取材に応じた当事者や活動家によれば、アルコールや薬物への依存、あるいは抗うつ薬の自己判断による服用も少なくないという。 しかし、こうした問題への支援を求めることも容易ではない。医療従事者による同性愛嫌悪やトランスフォビア、さらには性的指向に関する個人情報漏洩への懸念から、国営医療機関への不信感が根強いためだ。 圧力が強まる中、多くのLGBTQ+当事者は国外移住以外に選択肢がないと感じている。 年次報告書には、2025年および過去数年間に国外へ移住した数百人の回答も含まれている。 移住理由として最も多かったのは深刻な不安や心理的苦痛(66%)であり、続いて検閲強化(59%)、身の安全への懸念(57%)、社会におけるホモフォビアやトランスフォビアの拡大(57%)が挙げられた。 また、移住者の63%がロシアへの帰国を選択肢と考えておらず、前年より8ポイント増加した。 コミュニティの多くは、今後何年も状況改善の見込みがないと感じている。 オレイニク氏は、「ここ数年で世界は大きく変わった。ロシアだけでなく、世界各地で極右勢力が勢いを増し、LGBTQ+の権利は各地で攻撃を受けている。ロシア国内で今後5年から10年の間に良い変化が起きるとは期待していない」と語った。 一方、スミルノワ氏は、だからこそロシア国内外のLGBTQ+当事者や支援団体による連帯と活動の継続が重要だと強調する。 「ロシアにおける民主主義の後退が近い将来に反転する見込みが乏しいことを認めるのと、その間は何もできない、あるいは何もすべきではないと結論づけることは全く別の問題です。豊富な資源とあらゆる抑圧手段を背景としたロシア国家の力は現実のものであり、過小評価することはできません。しかし、人権団体や活動家を支援する立場から私たちが目にしているのは、諦めではなく、現実を直視したうえでの強い意志です。」 そして、「人々は今も活動を続けています。将来を見通すことは難しく、その活動の価値を測る尺度も他国とは異なるかもしれません。しかし、市民参加や批判的思考、そして連帯の可能性を絶やさないこと自体が、重要な抵抗の形であり、長期的な意義を持っています。」と述べた。 オレイニク氏もまた、ロシアのLGBTQ+当事者への支援を続ける決意を示した。 「私たちは活動と支援を続けなければなりません。ロシアのLGBTQ+の人々が私たちを必要としているからです。今は前向きな変化の兆しがほとんど見えないかもしれません。しかし、それは私たちが活動をやめる理由にはなりません。」 ※グリゴリーは安全上の理由から仮名。

これはウクライナだけの問題ではない―ロシアによる占領地での犯罪を常態化させる世界的危険性

【キーウ(ウクライナ) IPS=ミハイロ・サヴァ、オレフ・マルティネンコ】 ロシアによるウクライナ侵略戦争は、しばしばドローンやミサイル、変化する前線、領土問題といった観点から語られる。しかし、この戦争にはもう一つの側面がある。それは人間の問題である。|英語版| 現在、9万人を超えるウクライナ人が「特別な事情のもとで行方不明」とされている。これは公式統計に基づく数字である。その一部は現在もロシアに拘束されている。そこには捕虜となった兵士だけでなく、民間人も含まれる。民間人の多くは、自らが暮らしていた地域がロシア軍の占領下に置かれたことで拘束された人々である。 2026年3月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米メディアAxiosとのインタビューで、ドナルド・トランプ米政権はドンバス全域をロシアに引き渡す以外に戦争を終結させる道はないとみていると語った。 しかし重要なのは、これは単なる領土の問題ではなく、そこに暮らす人々の問題でもあるということだ。そして、占領は決して平和ではない。 「迫害の連鎖」 民間人への恐怖支配は、ロシアがウクライナとの戦争で用いている戦術の一つである。占領当局が定めた規則に従わない者に対する処罰として、拘束と投獄が常態化している。 この仕組みの中核にあるのが、「迫害の連鎖」と呼ぶべきシステムである。このパターンは、すべての占領地域で繰り返されている。 第1段階:標的の特定 地方公務員、教師、ジャーナリスト、ボランティア、さらにはごく普通の住民であっても、わずかでも親ウクライナ的な考えを示せば占領当局の監視対象となる。 時には、偶然聞かれた会話やSNSへの投稿だけで十分である。 ロシアは2014年以降、この手法を用いてきた。まず占領下のクリミアで試し、その後すべての占領地域へと拡大した。 例えば2026年3月、クリミアのアルプカ在住の男性が、メッセージアプリへの投稿を理由に「テロ行為を正当化した」としてロシア治安当局に逮捕された。 第2段階:強制失踪 拘束された人々は公式に登録されない。 その所在は隠されるか、あるいは当局によって否定される。家族は何の情報も得られないまま取り残される。 これは、その後に起こるすべての出来事を家族の管理や監視の及ばないものにするため、意図的に行われている。 第3段階:残虐な扱い 拷問は例外ではなく、組織的に行われている。解放された人々は、殴打や電気ショック、模擬処刑、長期間にわたる食料や水の剥奪について証言している。性的暴力もまた、男女を問わず行われている。 「彼らは人を廊下へ連れ出した。そこには監視カメラがなく、周囲にいるのは皆、彼らの仲間だった。誰一人として止めようとはしなかった。そして彼らは気の済むまで殴り続けた。スタンガンも使った。そこには10人から12人、あるいはそれ以上の人間がいた。彼らはこう言った。『人生を少し味わえただろう。それでもう十分だ。どんなものかは経験したのだから、もう二度と味わうことはできない』と。」 そう語るのは、2022年9月25日、両親の自宅から占領当局によって連行された教師のヴィクトリア・アンドルシャ氏である。 家宅捜索の際、彼女の携帯電話からロシア軍の装備移動に関する通報ボットとのやり取りが見つかった。 ヴィクトリア氏は「スパイ行為」の容疑をかけられ連行された。まず隣村ノヴィ・ビキウのボイラー施設内に設けられた臨時拘束施設に収容され、その後、ロシア・クルスク州の勾留施設へ移送された。 彼女が解放されたのは2023年10月であった。 第4段階:見せかけの裁判 拘束者はしばしば遠方へ移送される。 こうした移送によって地域社会とのつながりは断たれ、所在の把握は困難となり、法的保護を受ける権利もさらに損なわれる。 その後に行われるのが「裁判」である。しかし、それは法的正当性を装った見せかけにすぎない。 民間人は、過激主義やテロリズム、スパイ活動といった捏造された罪で起訴される。 例えば、テレグラム・チャンネル「メリトポリはウクライナだ(Melitopol Is Ukraine)」の管理者ヤナ・スヴォロワ氏は、約2年間にわたる不法拘束の後、2025年10月23日、ロストフ・ナ・ドヌーの南部管区軍事裁判所から一般収容所での14年の刑を言い渡された。 第5段階:収監 人々は監視がほとんど、あるいは全く及ばない拘禁施設のネットワークに収容される。 施設の環境はしばしば非人道的であり、家族との連絡は厳しく制限されるか、完全に禁止される。 多くの人々にとって、この段階は終わりの見えないものとなる。 これを止められなかった場合、世界は何に直面するのか これらの各段階は、それぞれが人権と国際規範に対する重大な違反である。 しかし、それらが組み合わさることで、さらに深刻なものとなる。すなわち、人道に対する罪が連続的に発生し、互いを補強し合う一つのシステムが形成されるのである。 迫害、不法拘束、強制移送、強制失踪、拷問、性的暴力、投獄――これらは個別に起きている事件ではない。 それらは、統合され、意図的に構築された一つの抑圧システムを構成する要素なのである。 このシステムの目的は、占領地域に対する支配を強化し、恐怖を植え付け、人々に法制度、行政制度、教育制度を通じて押し付けられたルールへの服従を強いることにある。 そのメッセージは明白だ。人々には従順であることが求められている。 実際には、占領統治そのものが犯罪的な支配体制へと変質しつつある。 ここで国際社会は一つの問いを突き付けられる。もしこのような仕組みが何の責任も問われることなく機能し続けることを許せば、それは将来の紛争にどのような前例を残すことになるのだろうか。 「迫害の連鎖」を常態化することは、こうした手法を現代戦争の手段として定着させる危険をはらんでいる。 そして、その支配モデルはウクライナの国境をはるかに越えて広がっていくだろう。 したがって、責任追及の問題はウクライナだけの問題ではない。 課題は複雑だ。しかし、法は明確である。 残されているのは、行動する意思だけだ。 もしその意思が欠如すれば、このような行為は例外ではなく常態となる。 その代償を支払うことになるのは、現在獄中にいる人々だけではない。 国際法そのものの根幹が、その代償を負うことになるのである。 INPS Japan/ IPS UN Bureau Report 関連記事: ウクライナ、戦禍で妊産婦死亡が急増 助けられるなら、助けよう。―ウクライナ人支援に立ちあがったイスラエル人ボランティアたち(2)ダフネ・シャロン=マクシーモヴァ博士、「犬の抱き人形『ヒブッキー(=抱っこ)』を使った心のケアプロジェクト」 |ウクライナ|ロシアの攻撃と致命的な寒波で「生き延びるだけの生活」 家族を追い詰める

マリア・フェルナンダ・エスピノサ氏、国連事務総長選に名乗り

「予防外交」と制度改革を掲げる実務派候補 【国連ATN=アハメド・ファティ】 マリア・フェルナンダ・エスピノサ氏が国連事務総長選への出馬を表明した。その人物像は外交官たちにとって馴染み深く、同時に軽視し難いものである。危機対応で名を上げたスター候補でもなければ、既存秩序を揺さぶる異端の挑戦者でもない。むしろ国連が直面しているのは「目的の危機」ではなく「実行の危機」だと訴える、経験豊富な多国間外交の実務家である。|ENGLISH| これは華々しい主張ではない。しかし、決して軽い主張でもない。 加盟国と市民社会との約3時間に及ぶ対話セッションと、その後の短時間の記者会見で、エスピノサ氏は自らを「予防」「実行」「組織運営の規律」を重視する候補者として位置づけた。エクアドル元外相、元国連大使、第73回国連総会議長としての経験を強調しながら、国連は必要な原則をすでに備えているにもかかわらず、それを現場での迅速かつ一貫した行動へと結び付けることにしばしば失敗していると繰り返し訴えた。 この主張によって、同氏の立候補は他の候補者とは異なる位置づけを得た。 ミチェル・バチェレ氏が人権と正統性を掲げる候補、ラファエル・グロッシ氏が危機対応の実務家、レベカ・グリンスパン氏が制度戦略家、マッキー・サル氏が政治的橋渡し役だとすれば、エスピノサ氏はまた別のタイプの候補として浮かび上がる。予防重視の理念を掲げる組織改革派であり、次期事務総長の役割は新たな理想を語ることではなく、まず国連という機構をより効果的に機能させることにあると考えている。 それは会場を熱狂させるような主張ではないかもしれない。しかし、資金不足、分断、そして制度疲労に苦しむ国連にとって、それは極めて現実的な選択肢でもある。 冒頭演説でエスピノサ氏は、その構想の全体像を示した。 同氏は、国連は依然として不可欠な存在である一方で、しばしば対応が遅く、組織が断片化し、支援対象である人々の日常的なニーズから乖離していると指摘した。そして、より信頼性が高く、効果的な組織への改革を訴えた。より早く行動し、より耳を傾け、その評価はニューヨークで開催した会議の数ではなく、現場で何を変えたかによって測られるべきだと述べた。 また、次期事務総長には指導力と同時に傾聴力も求められるとし、自らの立候補を「信頼」「成果」「実行力」の上に位置づけた。そして、国連は関連性や予算を競い合う諸機関の寄せ集めではなく、「一つの組織」であるべきだと強調した。 この考え方は、加盟国から寄せられた多くの質問とも共鳴した。 アフリカ諸国は、安全保障理事会改革、国連とアフリカ連合の協力公約の履行、気候資金、開発政策、人材登用の地域的公平性について質問した。 欧州連合(EU)は、人権が国連システムの中でどのような位置を占めるべきか、また人権分野への予算配分が極めて少ない現状について問いかけた。 小島嶼国や太平洋諸国は、国連総会の役割や気候危機への対応をめぐり、多くの小国にとって多国間主義は選択肢ではなく生存のための手段であることを国連が理解しているのかと問い質した。 アラブ諸国グループは、パレスチナ問題、人道法、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、そして国際法の一貫した適用について明確な立場を求めた。 また、途上国グループは繰り返し、流動性危機、債務問題、開発資金の確保、そして国連改革が効率化の名の下に開発分野を弱体化させることにならないかについて懸念を示した。 エスピノサ氏の回答は派手さこそなかったが、一貫していた。 人権については、国連の三本柱である平和、安全保障、開発、人権は切り離して考えることはできないと述べた。平和なくして開発はなく、開発なくして人権はなく、人権なくして平和もないとし、人権分野への資金配分不足を問題視した。 パレスチナ問題と中東情勢については、二国家解決を支持し、民間人保護の重要性を強調するとともに、UNRWAの任務継続を支持した。また、国連事務総長は総会と安全保障理事会の取り組みを対立する政治的路線として扱うのではなく、より緊密に連携させるべきだと述べた。 開発問題に関しては、グローバル・サウス諸国の不満や課題に最も寄り添う姿勢を示した。 開発政策はニューヨークで設計されるべきではなく、各国自身が主導し、それぞれの現実に根ざしたものでなければならないと主張した。また、画一的な制度モデルではなく、各国の事情に即した支援が必要だと強調した。 さらに、財政的余地の拡大、国際金融システム改革、気候資金へのアクセス改善、債務再編、そして構造的制約に直面する国々への実践的支援の必要性を繰り返し訴えた。特に、小島嶼開発途上国(SIDS)、後発開発途上国(LDCs)、中所得国が抱える資金や技術へのアクセス格差について深い理解を示した。 しかし、彼女の主張の中で最も特徴的だったのは「予防」の概念であった。 エスピノサ氏は、事務総長室に直属する「早期警戒・早期対応ハブ」の創設を提案した。これは新たな巨大官僚機構ではなく、24時間体制でリスクを監視し、より迅速な政治的対応を可能にする仕組みだという。 また、シャトル外交、静かな外交(quiet diplomacy)、そして加盟国、とりわけ安全保障理事会との継続的な対話の重要性を繰り返し強調した。 その語り口は、危機が表面化してから注目を集める調停者というよりも、世界が危機を認識した時には国連はすでに手遅れになっていることが少なくないと確信する実務家のそれであった。 記者会見では、その考え方がさらに明確になった。 アントニオ・グテーレス現事務総長との違いを問われると、エスピノサ氏は再び「実行力」の問題に立ち返った。 国連は優先順位を明確にし、業務を合理化し、成果重視の文化を築く必要があると述べ、自らを「行動する人間」であり、「結果を出す人間」であると表現した。候補者がしばしば使う表現ではあるが、彼女の場合、それはこれまでの発言内容とも整合していた。 また、「初の女性事務総長誕生」の可能性について問われると、「80年も経ったのだから、なぜ今でないのか」と答えた。ただし、それは単に女性であればよいという意味ではなく、「正しい女性」であり、「正しいリーダー」でなければならないと付け加えた。 この回答は、彼女の強みと限界の双方を象徴していた。 エスピノサ氏は信頼性があり、経験豊富で、国連制度を熟知している。組織の仕組みを理解し、改革や公平性、実施能力について加盟国がどのように考えているかも把握している。 さらに、見過ごされがちな政治的強みも持つ。特定の陣営にとって明確なイデオロギー上の挑発者として映らない点である。 一方で、他の候補者がそれぞれの得意分野で見せたような圧倒的存在感を示したわけでもなかった。 グロッシ氏の危機対応能力、バチェレ氏の規範的な影響力、グリンスパン氏のより洗練された制度改革論に比べれば、エスピノサ氏の魅力はより堅実で着実なものだ。 彼女が訴えているのは、次期事務総長には組織運営を立て直し、実行重視の文化を強化し、次の危機が深刻化する前に「予防」を実際に機能する仕組みへと転換できる人物が求められているということである。 それだけで十分かどうかは分からない。 しかし少なくとも今回の選挙戦において、それは単なる「つなぎ」の主張ではない。 そして彼女の立候補が投げかける本質的な問いはここにある。 財政的、政治的、そして戦略的な圧力にさらされる国連は、次の指導者として「道徳的な声」を求めるのか、「危機管理者」を求めるのか、「地政学的仲介者」を求めるのか。それとも、国連の使命そのものは正しいと信じながら、その実行力の立て直しに取り組む「規律ある制度改革者」を求めるのか―。 INPS Japan/ATN Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/maria-fernanda-espinosa-enters-the-u-n-race-as-a-process-reformer-with-a-prevention-pitch 関連記事: 次期国連事務総長が重要である理由 次期国連事務総長は「選ばれる」のではない―「合意される」のだ |国連ハイレベル会合|完全核軍縮への支持、続々と

エベレストの麓まで到達した蚊たち

気候変動により、デング熱を運ぶ蚊とウイルスがネパールの山岳地帯へ拡大 【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=ユーリ・セガレルバ】 ネパールでは近年、かつては存在しなかったヒマラヤの高地の谷間へとデング熱が広がりつつあり、深刻な懸念が高まっている。 2025年には、国内16の高地郡のうち15郡で感染が報告された。これは、デング熱を媒介する蚊とウイルスが標高2,400メートルを超える地域まで到達した前例のない事態である。トリブバン大学の研究では、ジュムラ(標高2,438メートル)でネッタイシマカ(Aedes aegypti)とヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、およびその幼虫の存在が確認された。|英語版| ソルクンブ郡では体系的な科学調査はまだ実施されていないものの、渡航歴のない住民の感染例が報告されており、エベレストの麓にも媒介蚊が生息している可能性が示唆されている。 蚊が2,438メートルへ つい最近まで、これらの蚊が確認されていたのは標高2,100メートル以下に限られていた。しかし過去2年間でデング熱はほぼ全国へ拡大し、2024年から2025年にかけて77郡中76郡で感染が確認された。 疫学・疾病管理局(EDCD)によると、2024年1月以降の感染者数は42,647人に達し、19人が死亡している。ただし、実際の感染者数はこれを大きく上回るとみられている。 ネパール保健研究評議会(NHRC)はベルギー・アントワープ熱帯医学研究所と協力し、蚊のサンプルを採取。温暖化への適応や殺虫剤耐性の獲得状況を分析している。研究者たちは採集した標本を観察、撮影、分類し、生存や分布、耐性のパターンを記録している。 高地で生き延びる蚊を追う研究 カトマンズのNHRC研究所では、サントス・パンデイ氏、プラティマ・バンダリ氏、サンギタ・チャン氏らが顕微鏡で媒介蚊を観察している。昆虫学部門では実体顕微鏡を用いてネッタイシマカとヒトスジシマカの微細な違いを識別し、疾病リスクの評価や監視対策に役立てている。 顕微鏡下の雌のネッタイシマカでは、幼虫と成虫の色や形状の変化を調べることで、殺虫剤耐性や高地環境への適応の兆候を探っている。すべての標本は分析とデジタル保存のため撮影される。 2024年、シュクララジ熱帯感染症病院で治療を受けたスシラ・デヴィ・シャーさん(38)は、激しい筋肉痛や眼痛、頭痛、発熱に苦しんだ。これらはデング熱の主な症状であり、治療が遅れると重症化する恐れがある。 NHRCのシヴァ・ラジバンシ氏は蚊や幼虫を捕獲し、生息域を調査している。この研究は、気温上昇によって蚊が生息・繁殖できる地域の拡大を把握し、予防対策につなげることを目的としている。 気候変動が生む新たな脅威 専門家らは、デング熱がネパールの山岳地域へ広がった最大の要因として地球温暖化を挙げる。気温上昇によって、かつて感染リスクが低いと考えられていた高地でも蚊が生存・繁殖できるようになったためである。 デング熱を媒介する蚊は主に早朝と夕方に活動し、人々を吸血する。 さらに、道路網の整備による国内移動の活発化や国際的な人の往来の増加も、ウイルス拡散を後押ししている。その結果、医療体制が脆弱なヒマラヤの集落にも感染が及ぶようになった。 こうした遠隔地では、多くの住民が今もチベット伝統医学「ソワ・リグパ(Sowa Rigpa)」に頼っている。地域社会で厚い信頼を集めるアムチ(伝統医)が長年にわたり医療の担い手となってきた。 伝統医療とデング熱 標高2,743メートルのジョムソムでは、乾燥期のさらなる乾燥化と激しいモンスーン嵐など、異常気象が目立つようになっている。平均気温も上昇しており、蚊媒介感染症にとって好条件が整いつつある。2025年にはムスタン郡で9件のデング熱感染が報告された。 アムチのケドゥプ・ローデン・グルン氏は、脈診や尿・舌の観察、患者との対話を通じて診断を行う。ソワ・リグパは病原体そのものではなく、人間全体のエネルギーバランスに着目するため、「デング熱」に相当する概念は存在しない。 伝統的な手法で作られるソワ・リグパの薬草薬。乾燥・加工された薬草は手作業で粉砕され、受け継がれてきた伝統処方に従って調合される。その後、代々伝承されてきた技術と簡素な道具を用いて、粉末薬や丸薬、塗り薬へと仕上げられる。薬は患者に渡される前に、宗教儀礼に基づく加持が施される。 ジョムソムの診療所で若い患者を診察するケドゥプ・ローデン・グルン氏。仏教僧院文化を背景とするアムチ(チベット伝統医)の多くは、治療を慈悲と奉仕の行為と位置づけ、営利目的ではなく天職として医療に従事している。 インドのアーユルヴェーダや仏教思想の影響を受けたソワ・リグパは、身体・精神・環境・霊性を相互につながったものとして捉える包括的な医療体系である。 予防こそ最大の武器 デング熱の拡大を防ぐため、ネパール保健当局は蚊よけ剤や蚊帳の利用、家庭周辺の環境整備、停滞水の除去、媒介蚊監視の強化などを柱とする予防戦略を進めている。 気候変動の影響を受けやすくなった地域社会が、新たな健康危機に迅速に対応できる能力を高めることが目標だ。 デング熱には主要な2系統に対するワクチンが存在するものの、高価で副作用もあるため、現時点では予防と媒介蚊管理が最も有効な対策とされている。 標高2,413メートルのファプルにあるソルクンブ郡立病院。高地に位置するこれらの医療施設は、限られた医療資源を活用しながら、地域住民のさまざまな医療ニーズに対応している。 デング熱が疑われるナラ・マヤ・カトリさん(87)から、迅速診断検査用の血液サンプルを採取するビジャイ・シン・クシュワハ氏。近年、この地域でも同様の症例が増えており、病院ではこうした患者への対応が日常的なものとなりつつある。 NHRC研究所では、スニタ・バラル氏らが蚊の研究を続けている。 昨年、NHRCの蚊の繁殖地でデータロガーを設置するプラモド・シュレスタ氏。気温と湿度をリアルタイムで測定し、蚊の発育や生存、卵のふ化に影響を及ぼす環境条件を追跡している。ネッタイシマカやヒトスジシマカなどの媒介蚊は限られた気候条件で繁殖するため、こうしたデータは気候変動への適応状況を把握する上で重要な手掛かりとなる。 アナプルナ山群へと流れ上るポカラ盆地の霧。デング熱を媒介する蚊もまた、山岳地帯へと分布域を拡大している。気温上昇と季節外れの降雨は蚊の繁殖に好条件をもたらし、より高い標高での生存を可能にしている。デング熱の拡大を防ぐには、住民への啓発と予防対策が引き続き重要となる。 高地へ拡大する蚊 地球規模の気温上昇により、ヒマラヤでは蚊がこれまで以上に高い標高でも生息・繁殖できるようになっている。その結果、デング熱、マラリア、日本脳炎、ジカ熱などの蚊媒介感染症は、分布域の拡大と感染拡大の両面で深刻化している。 低地では蚊は一年を通じて繁殖するが、高地では侵入種の蚊は季節的に出現し、在来種と共存している。ネパールでは、デング熱を媒介する蚊はこれまで夏季に標高2,000メートル以下でのみ確認されていた。しかし近年、ジュムラでは標高約2,500メートル地点で媒介蚊とその幼虫が確認されており、ソルクンブにも分布が広がっていることを示す証拠が見つかっている。 昨年、ネパールの77郡のうち75郡でデング熱患者が報告された。その背景には、気候変動、都市化、住民の認識不足に加え、国内外における人や物の移動の活発化がある。 INPS Japan