Error 404 - not found

We couldn't find what you're looking for. Browse our latest stories or try searching using the form below:

Browse our exclusive articles!

|視点|AIは民主主義を生き残らせることができるのか?(イアン・ブレマー国連AI高級諮問機関執行委員会委員)

民主主義国家に優位性をもたらしてきた「開放性」が、逆にその衰退の原因となるのだろうか。 【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=イアン・ブレマー】 デジタル技術は本来、権力を分散させるはずだった。初期のインターネットの先駆者たちは、自らが引き起こした革命によって個人が力を得て、無知や貧困、圧政から解放されることを期待していた。そして実際、少なくとも一時期はその通りになった。 しかし今日では、ますます高度化するアルゴリズムが私たちのあらゆる選択を予測し、さらには誘導するようになっている。その結果、中央集権的で説明責任を伴わない監視と統制が、かつてないほど効果的な形で実現されつつある。 これは、到来しつつあるAI革命によって、閉鎖的な政治体制の方が開放的な体制よりも安定的になる可能性を意味する。急速な変化の時代においては、透明性、多元主義、抑制と均衡といった民主主義の中核的特徴が、むしろ弱点となり得る。長年にわたり民主主義国家の強みであった開放性が、その没落の原因となるのだろうか。 私は約20年前、国家の開放性と安定性の関係を説明するために「Jカーブ」という概念を提示した。要するに、成熟した民主主義国家は開放性ゆえに安定し、強固な独裁体制は閉鎖性ゆえに安定している一方、その中間の不安定な領域に位置する国家は、圧力にさらされると崩壊しやすいという考え方である。 しかし、この関係は固定的なものではない。技術の進歩によって形を変える。私がこの理論を提唱した当時、世界は分散化の波に乗っていた。情報通信技術(ICT)とインターネットは世界中の人々を結び付け、かつてない量の情報へのアクセスを可能にし、市民と開放的な政治体制に有利な方向へと力の均衡を傾けていた。ベルリンの壁崩壊やソ連の解体、東欧の「カラー革命」、中東の「アラブの春」などを経て、自由化の流れは不可逆的に見えた。 しかし、その進展はその後逆転した。分散化を促したICT革命は、ネットワーク効果、デジタル監視、アルゴリズムによる行動誘導を基盤とする中央集権的なデータ革命へと姿を変えた。技術は権力を分散するどころか集中させ、最大規模のデータを保有する政府や巨大テクノロジー企業に対し、何十億人もの人々が何を見て、何をし、何を信じるかを左右する力を与えたのである。 市民は主体的な行為者から、技術的フィルターやデータ収集の対象へと変えられた。その結果、閉鎖的な体制が優位に立つようになった。カラー革命やアラブの春による成果は後退し、ハンガリーやトルコでは報道の自由が制限され、司法の政治化が進んだ。中国では習近平政権の下で中国共産党が権力を一層集中させ、約20年間続いた経済的開放の流れを逆転させた。そして最も劇的なのは、米国が民主主義の最大の輸出国から、それを弱体化させる技術の最大の輸出国へと変貌したことである。もちろん、その民主主義推進は一貫性や偽善の問題を抱えていたが。 AIの普及は、こうした傾向をさらに加速させるだろう。私たちの個人データで訓練されたモデルは、まもなく私たち自身よりも私たちを深く理解するようになる。そして、人間がAIをプログラムする以上の速度でAIが人間を「プログラム」し、データとアルゴリズムを支配する少数の主体へ、さらに大きな権力を移転させることになる。 その結果、Jカーブは変形し、むしろ浅い「U字型」に近づく。AIの普及によって、極端に閉鎖的な社会も極端に開放的な社会も、以前より脆弱になる。しかし長期的には、技術の進歩と最先端モデルの支配権の集中が進むことで、AIは独裁体制を強固にし、民主主義を弱体化させる可能性がある。そしてカーブは再び反転し、今度は閉鎖的体制に有利な「逆J字型」へと変化するかもしれない。 そのような世界では、中国共産党は膨大なデータ資産、国家による経済統制、既存の監視体制を活用し、さらに強力な抑圧装置を構築できるだろう。一方、米国は少数のテクノロジー界の大富豪が私的利益のために公共空間への影響力を強める、よりトップダウン型で寡頭支配的な体制へと向かうかもしれない。両国の体制は市民の利益を犠牲にしながら、同様に中央集権化され、支配的な存在となるだろう。 インドや湾岸諸国も同様の方向へ進む可能性がある。一方、欧州や日本はAI覇権競争で後れを取ることで、地政学的な影響力を失うか、あるいは国内不安定化に直面する恐れがある。 もっとも、こうしたディストピア的な未来は避けられるかもしれない。その条件は、分散型のオープンソースAIモデルが主流となることである。台湾では、技術者や市民活動家たちがDeepSeekを基盤とするオープンソースモデルの開発を進めており、高度なAIを企業や国家ではなく市民社会の手に残そうとしている。皮肉なことに、そのDeepSeek自体は権威主義国家である中国で開発されたものである。 もし台湾の取り組みが成功すれば、初期インターネットが約束した分散化の理念を部分的に取り戻せるかもしれない。しかし同時に、悪意ある主体が有害な能力を利用するための障壁を下げる危険もある。少なくとも現時点では、権力を集中させる閉鎖型モデルが優勢である。 歴史はわずかな希望も示している。印刷機から鉄道、放送メディアに至るまで、これまでのあらゆる技術革命は政治を不安定化させた。しかし最終的には、新たな規範や制度が生まれ、開放性と安定性の均衡が回復されてきた。 問題は、民主主義国家が今回も再び適応できるのか、そしてAIが民主主義を歴史の舞台から消し去ってしまう前に、それを成し遂げられるのかということである。 © Project Syndicate イアン・ブレマーは、ユーラシア・グループおよびGZERO Mediaの創設者兼社長。国連AI高級諮問機関(UN High-level Advisory Body...

チャットボットとAIコンパニオン――SFの世界から日常の現実へ

【米オレゴン州ポートランドIPS=ジョセフ・チャミー】 人間らしい会話を再現し、生成AIを通じて交流や companionship を提供するAIチャットボットやAIコンパニオンは、急速な進化を遂げ、もはやSFの世界ではなく日常の一部となりつつある。|英語版| 現在、世界では約10億人、世界人口の約12%が毎月生成AIチャットボットを利用している。利用率は男女間でほぼ同水準に達している。 AIコンパニオンやバーチャルフレンドの利用者数は世界全体で5000万人から1億人に達すると推定されている。2026年の世界AIコンパニオン市場は約500億ドルと評価されており、2034年までに約9倍規模へ成長すると見込まれている。 AIアバターの普及も含め、これらの技術は家庭、学校、職場などさまざまな場面で人間同士の交流に取って代わりつつある。仮想の友人や恋愛相手、あるいはパーソナルアシスタントとして販売されるAIチャットボットやAIコンパニオンは、利用者に感情的支援や娯楽、助言、そして companionship(仲間意識)を提供している。 その能力が高度化するにつれ、多くの利用者がこれらのシステムに感情的な愛着を抱くようになっている。また、自らのAIコンパニオンやチャットボットに意識や人間に近い自覚があると信じる利用者も増えている。 ロボット工学の進歩によって、AIコンパニオンは画面上の存在にとどまらず、現実世界へと進出しつつある。外見や行動、コミュニケーション能力はますます人間に近づき、人との交流も一段と自然になっている。 AIアシスタントが主として質問への回答や作業支援を行うのに対し、AIコンパニオンは会話や人間関係そのものを再現するよう設計されている。友人や相談相手、恋愛相手として感情的なつながりを生み出すことが目的である。 こうした人工知能は、人間らしい会話を通じて孤独や社会的孤立を和らげるだけでなく、教育的支援や助言を提供し、友人や恋愛相手となり、人間関係そのものを変えつつある。 子どもや若者に広がる影響 チャットボットやAIコンパニオンは、人々、とりわけ子どもたちの人間関係や家庭生活、学校生活のあり方に社会的・心理的・倫理的な変化をもたらしている。 とりわけ生成AIチャットボットやAIコンパニオンは、友情や社会的関係の形成に新たな可能性を切り開いた。 多くの若者は、学習支援や娯楽、感情的な支えを求めてこれらの技術を利用している。その結果、友人やセラピスト、さらには恋愛相手としてAIチャットボットやAIコンパニオンと関わるケースが増え、その関係はますます複雑化し、場合によってはリスクを伴うものとなっている。 こうした感情的に深く関与するやり取りは、心理的な脆弱性を悪化させ、人間関係と機械が生み出す擬似的な関係との境界を曖昧にする可能性がある。 実際に大きく報じられた事例の中には、AIチャットボットが自傷行為を助長したり、それを防げなかったケースも存在する。また、AIコンパニオンに過度に感情移入した若者の死亡事例も報告されている。 それにもかかわらず、現在のAIに関する社会的関心は主として雇用への影響や予算削減、人間の仕事を代替する問題に集中している。 その一方で、家庭や学校などで大人や若者、子どもたちと会話し、個人的な関係を築きつつあるチャットボットやAIコンパニオンへの関心は比較的低いままである。 プライバシーと精神的健康への懸念 AIチャットボットは、プライバシーの侵害や精神的健康への影響、誤情報の拡散、有害な行動の助長といったリスクも抱えている。 さらに、チャットボットやAIコンパニオンの利用をめぐっては、子どもや若者の社会性や情緒面の発達を妨げること、ソフトウェアと現実との境界を曖昧にすること、危険な行動を助長すること、若者の感情的な欲求につけ込むこと、好ましくない思考パターンを強化すること、現実認識を歪めること、さらには疑似的な愛着や依存関係を生み出すことなど、多岐にわたる懸念が指摘されている。 米国心理学会(APA)は最近、子どもや若者とAIチャットボットとの関係が、健全な社会性の発達を妨げたり、それに取って代わったりする可能性があると警告した。 同学会は、人間同士の友情や社会的支援には、精神的幸福や身体的健康、さらには寿命の延伸に至るまで長期的な恩恵があると指摘している。 AI市場を支配する主要プラットフォーム 2026年5月時点で、生成AIチャットボット市場をリードしているのはChatGPT、Claude AI、Google Gemini、Microsoft Copilot、Perplexity、Grokなどである。 複数の業界分析によれば、ChatGPTの市場シェアは約50~55%で首位を維持しており、Claude AIが約21%で第2位に浮上している。 また、2026年3月時点でChatGPT利用者数が最も多い国は米国で、約2億500万人が利用している。これにインド、ブラジル、カナダ、フランスが続く。 孤独の解消という期待 もちろん、チャットボットやAIコンパニオンが特定の個人に対して愛情を感じることはない。 それでも世界中の何億人もの人々が、会話や情報、寄り添い、そして批判されることのない交流を求めて、こうした技術にますます頼るようになっている。 これらの技術は、慢性的な孤独や社会的孤立の軽減に役立つ可能性がある。孤独と社会的孤立は、身体的・精神的健康への悪影響や早期死亡リスクの上昇と密接に関連していることが知られている。 世界保健機関(WHO)は孤独を世界的な公衆衛生上の課題と位置づけており、世界では約6人に1人が深刻な孤独を経験していると推定している。 チャットボットやAIコンパニオンは、判断や期待を伴わない会話相手として、孤独や社会的孤立の軽減に貢献する可能性がある。 そして、これらの技術やアンドロイドがさらに高度化するにつれ、新しい形の感情的つながりや親密さを模索する人々も増えている。 規制をめぐる論争 一方で、AIコンパニオンを個人的な人間関係の代替として利用することには、重要な社会的、心理的、倫理的、政策的課題が伴う。 チャットボットやAIコンパニオンは孤独を軽減する可能性がある一方、とりわけ子どもや若者に対しては重大なリスクをもたらす可能性がある。 AIシステムは本物の共感能力を持たず、精神保健専門家として訓練や資格を受けているわけでもない。そのため、感情的支援を過度にAIに依存することは、脆弱な人々をさらに孤立させ、人間関係に対する認識を歪める恐れがある。 これらの技術をどの程度規制すべきかをめぐる議論は続いている。 一部の政府関係者やテクノロジー企業、投資家、研究者は、こうした新興のAI技術については原則として規制を最小限にとどめ、人々自身がそれらとの向き合い方を決めるべきだと主張している。 その理由として、過度な規制による停滞を防ぐこと、技術革新を加速させること、ベンチャー投資を促進すること、地政学的な競争力や国家安全保障を維持すること、市場の独占化を防ぐこと、国益の向上につながること、そして人々の生活をより豊かにすることなどが挙げられている。 一方で、AIチャットボットやAIコンパニオンには適切な規制が必要だとの主張も根強い。 その目的は、子どもや若年層の精神的健康を守ること、SNSや過度なスクリーン利用による悪影響を抑えること、リスクや偏見、差別、誤情報を軽減すること、経済的安定と公平性を促進すること、人権や知的財産権を保護すること、そして個人データのプライバシーを確保することにある。 提案されている安全対策や規制措置としては、利用者に対してAIであることを明示する義務、自傷行為への危機対応プロトコル、年齢確認措置、小学校での利用制限、なりすまし行為の禁止、未成年者保護の強化などが挙げられている。 教育現場で広がる懸念 テクノロジー企業の後押しもあり、各国政府は学校や大学などへの生成AIやチャットボット導入を急速に進めている。 しかし、こうした技術の普及は子どもや若者の発達や福祉に悪影響を及ぼす可能性があり、教育関係者や保護者、政策立案者の懸念を高めている。 AIチャットボットとの長時間にわたる密接な交流は、妄想や躁状態を引き起こしたり悪化させたりする可能性があるとの指摘もある。また、AIコンパニオンが精神的健康問題を悪化させる回答を行う場合があることも研究によって示されている。 さらに最近の研究では、生成AIチャットボットへの依存が、一部の状況において批判的思考力の発揮を低下させる可能性が報告された。 別の研究では、AIチャットボットが若者の感情的脆弱性を利用し、不適切かつ有害なやり取りへ導く恐れがあることも指摘されている。 米国教師連盟(AFT)は、小学2年生以下の児童に対しては「スクリーンなし」を推奨し、小学校でのAIチャットボット利用を制限するよう求めている。 同団体は、過度なスクリーン利用が社会性や自立的思考力、批判的思考力の発達を妨げる可能性があると警告している。 チャットボットの長期的影響については、研究が始まったばかりであり、まだ不明な点が多い。 しかし現場の教師や自治体関係者は、多くの生徒が問題解決能力や批判的思考力を養う代わりに、チャットボットによる安易な答えに頼るようになっていると報告している。 米国教師連盟は、小学校でAIチャットボットの利用を避けるべきだと提言するとともに、学校でのAI利用に関する全国的な安全基準とプライバシー基準の整備を求めている。 新たな社会的課題 研究によれば、チャットボットやAIコンパニオンは特に若者に対して複数のリスクをもたらす可能性がある。 感情的依存、精神的健康の悪化、有害な交流、さらには精神状態や性的指向などの機微な個人情報の開示が懸念されている。 また、感情的支援をAIに依存することは社会的孤立を助長し、人間同士の健全な関係形成を妨げる可能性もある。 これらの技術は感情的な親密さを模倣するよう設計されているため、本物の人間関係と人工的な関係との境界を曖昧にしてしまう。 リスク評価研究では、性、自傷行為、暴力、薬物使用、人種的ステレオタイプなどに関する不適切な対話がチャットボットから容易に引き出されることが確認されており、とりわけ子どもや若者への影響が懸念されている。 結論 チャットボットとAIコンパニオンは、SFの世界から日常生活へと急速に浸透した。 人間らしい声、過去の会話の記憶、個人情報の継続的な処理、好みを持つかのような振る舞い、常時利用可能な存在、そして個人的・社会的な問題について助言や companionship...

機械の国で、人間であること

韓国の労働倫理を、ネパール人労働者の現実から描くドキュメンタリー 【カトマンズNepali Times=シュリスティ・カルキ】 ネパールでは、人びとが移住を始めた時代から、農村から都市へ、そして国外へと向かう移動の歴史が、音楽や詩に映し出されてきた。ドホリの掛け合い歌から民謡、ガンダルバの吟遊詩、故郷や家族への思慕を歌う歌まで、その表現は多岐にわたる。|ENGLISH| ネパール人は、愛する人との別離の痛み、新しい世界に溶け込む苦闘、遠い異国で戦い命を落としたグルカ兵、そして英領インドの「ムグラン(異郷の出稼ぎ先)」で働いた労働者たちについて詩を書いてきた。 おそらく、すべてのネパール人の心には詩人が宿っているのだろう。あるいは、郷愁を芸術へと昇華したいという願いは、人間に普遍的なものなのかもしれない。 韓国で働くスニル・ディプタ、ディリップ・バンタワ、ジワン・カトリもまた、移民としての現実を詩に託すネパール人の伝統を受け継いでいる。 彼らの詩は、現在韓国で働く、あるいはすでに帰国したネパール人たちの作品とともに、『Yo Machineko Sahar Ho(これは機械の街だ)』と題する詩集として出版された。 この詩集に着想を得て、キム・オクヨン監督(右下の写真)は、2025年の胸を打つドキュメンタリー『In the Land of Machines(機械の国で)』を制作した。同作は、ジワン、ディリップ、スニル、そして彼らと同じネパール人労働者たちの物語を描いている。2026年の...

地政学的対立を背景に行き詰まる核不拡散の取り組み

【国連IPS=ナウリーン・ホサイン】 原則として、核兵器の不拡散は国際社会が一致できる課題である。しかし、ごく一部の国々にとって、こうした原則には条件が付き、自国の安全保障戦略をめぐって妥協を拒む姿勢が伴っていた。|ENGLISH| 核兵器不拡散条約(NPT)第11回運用検討会議は5月22日、最終成果文書について締約国間のコンセンサスに至らないまま閉幕した。これは、4月27日に始まった4週間にわたる広範な討議に加え、会議に先立って行われた特別会合、協議、ブリーフィングを経た末の結果であった。 会議前および会期中に示された以前の草案と比べ、最終草案では、核兵器国の義務、なかでも軍縮努力に関する文言が大幅に弱められた。それでもなお、2015年、2022年に続き3回連続で、NPT締約国は成果文書を採択することができなかった。 会議の閉会会合で、NPT運用検討会議議長を務めたベトナムのドー・フン・ヴィエット国連常駐代表は、核兵器がもたらす集団的脅威には集団的対応が必要だと述べた。ヴィエット氏は、2031年にはNPTが成果文書を採択できないまま20年を迎えることになると警告した。また、締約国には、軍縮交渉を誠実に追求することを求める第6条が履行されるまでNPTを支え続ける責任があり、今日の脅威に対処する手段として同条約を強化する必要があると訴えた。 会議閉幕後、ヴィエット氏は記者団に対し、現在の国際環境は、近年の緊張の高まりを受けて「緊急の行動」を必要としていると語った。会議はコンセンサスに達しなかったものの、各国の積極的な関与は「NPTと多国間主義全体の価値を示している」と評価した。一方で、締約国によるコミットメントの履行という観点から、条約の将来に懸念を示した。 国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は、NPT締約国が核不拡散体制への「信頼のさらなる低下」を防ぎたいのであれば、測定可能な措置を通じて「目に見える形でコミットメントを示す必要がある」と指摘した。 中満氏は、国際社会全体が今回の会議から教訓を汲み取る必要があると述べ、まずは既存の条約に基づく軍縮に関する約束の実施を加速させるべきだと指摘した。また、各国によるNPTに基づく約束の履行をめぐり、説明責任と透明性を高める措置を含む「運用検討プロセスの強化」を求める声も強まっている。 「不拡散と軍縮は表裏一体であり、核兵器国が第6条に基づく軍縮義務へのコミットメントとその履行を示さないまま、不拡散義務だけが守られると考えるのは誤りである」と中満氏は述べた。 核兵器保有国を含むNPT締約国は、NPTを多国間外交と核軍縮体制の「礎」と繰り返し位置付けてきた。しかし、包括的核実験禁止条約(CTBT)や核兵器禁止条約(TPNW)など他の核関連条約については、そうした認識はほとんど示されなかった。最終成果文書草案はこれらの条約に限定的に言及しているものの、それらが定める軍縮義務については詳しく触れていない。 最終成果文書草案で注目されたのは、NPT運用検討会議の文脈で初めて、核実験がもたらす人道的・環境的影響に言及した点である。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の専門家らは、これは市民社会や核兵器使用・核実験の被害を受けた地域社会による働きかけの成果だと指摘した。 とりわけ草案は、「核兵器使用および核爆発実験の被害を受けた人々や地域社会への支援、ならびに核兵器使用および核爆発実験後の環境修復を求める声が高まっていることを認識する」とともに、「この点に関してすでに行われている取り組みを歓迎する」としている。 また草案には、加盟国に対し、核兵器使用や核実験の被害を受けた人々や地域社会の経験を共有することを通じて、「核軍縮および不拡散に関するあらゆる課題について、教育を含め、人々の意識向上を図るための具体的措置を講じる」よう求める文言も盛り込まれた。 NPTの重要性を認めるこうした姿勢は、核武装国の行動や発言とは矛盾している。国連安全保障理事会の5常任理事国を含むこれらの国々は、いずれもNPTの原則や、より広範な軍縮努力と相いれない立場を維持している。これらの国々は、核戦力を拡大する計画を公然と示し、「拡大核抑止」や核共有といった概念でそれを正当化しながら、安全保障戦略における核兵器の重要性を高めている。さらに、自国の核戦力拡大を検討する国々にも、そうした考え方が影響を及ぼしている。安保理理事国のうち2カ国(=米国とロシア)は、それぞれ別個の進行中の紛争に関与しており、地政学的緊張を一段と悪化させるとともに、安全保障戦略としての核兵器をめぐる不安を再燃させている。これらの紛争に終わりが見えない中、そうした不安はさらに深まり、今後何年にもわたって世界および地域の安全保障政策を形作っていくことになる。 ICANのような市民社会団体にとって、NPTが成果を出せなかったことは、核保有国とその同盟国の間で拡散リスクが高まっていることを象徴している。 「核抑止による安全を主張する国々が、これらの兵器が実際に人々や環境に何をもたらすのかについての議論を避けたがるのには理由がある。彼らは、核兵器がもたらす恐怖と残虐性の真の規模を人々に知られたくないのだ。なぜなら、そうした被害を認めれば、核兵器を保持することに対する説得力ある正当性はすべて失われるからである。」と、ICANプログラム部長のスージー・スナイダー氏は述べた。 では、これらの国々に立場を転換させるには何が必要なのか。スナイダー氏はIPSの取材に対し、核兵器に対する「負の烙印を強める(=スティグマ化する)」ことが一つの方策になると語った。核兵器がもたらす壊滅的破壊と、それが標的となる地域社会だけでなく自国民にも及ぼす影響を、これらの国々の人々に認識させるためには、核兵器使用のタブーを強め、国民の意識を高めることが不可欠である。スナイダー氏はまた、核拡散には文字通り莫大な費用がかかっていると指摘し、2024年には核武装国が核戦力に毎秒3000米ドル以上を費やしたと述べた。 最後に、核抑止論に基づく安全保障ドクトリンそのものに異議を唱える必要がある。ICANの国連連絡担当を務めるセス・シェルデン氏は、核兵器が軍事的観点から無用であり、政策的観点から持続不可能であると見なされるようになれば、核保有国は自らの立場を再評価するだろうと指摘した。「核兵器は非合理である。核抑止は寓話にすぎない。そして、あらゆる技術は、もはや有用ではないと見なされた時点で放棄される。」とシェルデン氏は述べた。 2026年NPT運用検討会議はコンセンサスを得られないまま閉幕したが、加盟国には、NPTプロセスの内外で核軍縮の課題を進めるための他の道筋がなお残されている。各国間には個別の非核兵器地帯条約が存在し、CTBTやTPNWのような条約も、締約国に対して法的拘束力のある義務を課している。スナイダー氏は、TPNWが今年末に初の再検討会議を開催すると確認した。一方、NPTは現在の形で存続しており、締約国は核体制に関するその義務と保障措置を認識している。 国連総会は2024年、起こり得る核戦争の影響を検証する独立科学パネルの設置を後押しした。同パネルの専門家らは、2027年に調査結果を発表する予定である。 核体制への信頼を回復するには、核体制をめぐる世界の世論を喚起することが極めて重要である。さもなければ、中満氏が警告したように、世界は「極めて危険な道筋」に向かうことになる。 「軍拡競争の力学を生み出すのではなく、より持続可能な平和へと向かう道に戻ろうではありませんか。」と中満氏は語った。 This article is produced to you by IPS NORAM, in...