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|中東|核の火種となり得る地域:戦略力学と核リスク
【エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】
中東は、世界で最も不安定な地域の一つとしばしば形容される。長期化する紛争、根深いイデオロギー対立、脆弱な地域安全保障枠組み、そして大国の関与が重なり、核リスクが高まりやすい構造を抱えている。
この地域で核兵器を保有していると広く信じられている国は一国に限られるが、核能力の獲得を目指した、あるいは目指していると疑われる国は複数ある。こうした力学が地域の対立と結びつくことで、中東は核の火種(flashpoint)となり得る。|ENGLISH|RUSSIAN|
中東で核兵器を保有しているのはどこか
イスラエル
イスラエルは中東で唯一、核兵器を保有していると広く見られている。ただし政府は、保有の有無を公式に肯定も否定もしていない。この「核の不透明性(nuclear opacity)」政策は数十年にわたり維持されてきた。
専門家の推計では、核弾頭数はおおむね80~200発とされる。運搬手段としては、航空機、地上配備ミサイル、潜水艦発射能力を組み合わせた「核の三本柱(トライアド)」を備えるとみられている。
イスラエルにとって核兵器は、敵対的な地域環境における究極の抑止力であり、国家の存立を脅かす事態を防ぐための最終手段と位置づけられている。現時点で、イスラエル以外の中東諸国が運用可能な核兵器を保有しているとの評価は、一般的ではない。
中東で核兵器保有を目指す(と見られる)国々
イラン
中東の核拡散をめぐる議論の最大の焦点はイランである。イランは核兵器開発の意図を否定し、計画は民生目的だと主張している。しかし実際には、先進的なウラン濃縮能力を発展させる一方、時期によっては国際原子力機関(IAEA)による査察・監視への協力を制限してきた。
同時にイランは、長距離弾道ミサイル計画の高度化も進めている。これらのミサイルは、理論上は核弾頭を搭載し得る。
多くの分析者は、イランが核の閾値(threshold)――政治的な意思決定さえ下されれば、比較的短期間で核兵器を製造し得る段階――に近づいているとみる。イランの核武装の可能性は、地域の軍拡競争を誘発する主要因とされ、周辺国の政策判断にも連鎖的な影響を及ぼし得る。
サウジアラビア
サウジアラビアは近年、原子力計画の推進姿勢をいっそう鮮明にしている。公式には民生用のエネルギー需要を軸に説明されるが、地域の安全保障上の懸念と強く結びついており、軍事・抑止上の含意も帯びる。
サウジ側は、原子力発電がエネルギー構成の多様化、石油依存の低減、そして「ビジョン2030」の下で増大する国内電力需要への対応に不可欠だと主張する。
一方でサウジ指導部は繰り返し、イランが核兵器を獲得すればリヤドも同等の能力を求めると警告してきた。この点が、同国の原子力計画を安全保障上きわめて敏感な案件にしている。
サウジは原子炉建設を視野に入れつつ、国内のウラン資源開発や燃料サイクル関連研究の拡大を進め、米国、中国、韓国、ロシアなどとの原子力協力の枠組みも模索してきた。
ワシントンとの最大の争点は、ウラン濃縮と再処理に厳格な制限を受け入れることに対するサウジの消極姿勢である。濃縮と再処理は国際的に、核兵器能力へ至り得る潜在的な「経路」と見なされやすい。
トルコ
トルコはNATO加盟国であり、NATOの核共有(nuclear sharing)をめぐる枠組みの下で、米国の核兵器が自国内に配備されていると指摘されている。トルコの指導者は機会あるごとに、「ある国は核兵器を持てるのに、なぜ他国は持てないのか」との趣旨で疑問を呈してきた。
NATO加盟と国際的コミットメントは現時点でトルコの選択肢を制約しているが、こうした発言は長期的な不確実性を示唆している。
エジプト
エジプトは過去に核研究を進めた経緯があり、中東を大量破壊兵器のない地域にする構想(WMDフリー・ゾーン)を長年提唱してきた。だが現在は、公式には不拡散体制を支持する立場をとっている。
またエジプトは、イスラエルの核能力とイランの核計画を、地域の安全保障上の不均衡要因として注視している。
核の「能力」を持つ(ただし兵器化を公言していない)国々
中東には、現時点で核兵器開発の意思を公言せず、国際的な監視・検証の枠組みの下で、エネルギー、研究、医療、産業などの民生目的に焦点を当てる国もある。
最も明確な例がアラブ首長国連邦(UAE)である。UAEは、濃縮・再処理を行わないという厳格な不拡散コミットメントの下で、バラカ原子力発電所を運用している。
ヨルダンは、訓練、医療用同位体、科学研究に用いる小型研究炉を運転している。エジプトは、長期的なエネルギー戦略の一環としてロシア支援の下でエル・ダバア原発を建設中であり、核不拡散条約(NPT)体制内にとどまる立場を示している。トルコは、エネルギー構成の多様化を目的にアックユ原発を開発しているが、燃料サイクルに関わる機微技術の追求は掲げていない。
北アフリカでは、モロッコとアルジェリアが、科学研究や医療用途など民生目的の研究炉をIAEA保障措置の下で運用している。これらの計画は技術的知見と基盤を提供し得る一方、公式には平和利用と透明性が強調され、核兵器化への意図は示されていない。
中東における主要な核リスク
1)地域的な軍拡競争イランが核の閾値を越えれば、サウジアラビアを中心とする地域大国が追随する可能性がある。不安定な地域で核保有国(あるいは核能力を持つ国)が増えれば、核兵器を求める動きが他国にも波及しかねない。
2)低い信頼と脆弱な意思疎通冷戦期の米ソ対立と異なり、中東の対立関係には、危機管理の仕組みやホットライン、軍備管理合意といった安全弁が十分に整っていない。誤算や偶発的衝突のリスクは高い。
3)先制攻撃の誘惑競合国が核能力の獲得に近づいているとの認識は、核関連施設への先制攻撃を促し得る。攻撃は短期間でエスカレートし、地域諸国に加え域外大国を巻き込む広域戦争へ発展する恐れがある。
4)非国家主体の存在中東では、強力な非国家武装組織の存在感が際立つ。核兵器が国家の管理下にとどまるとしても、核施設への攻撃や核物質の奪取を狙う試みが生じるリスクは、より安定した地域より高い。
5)通常戦からのエスカレーション中東の多くの紛争は、全面戦争の一歩手前で継続している。核が絡む環境では、通常戦の衝突が、指導者が国家の存立に関わる危機を恐れる局面で、より急速に拡大し得る。
6)国際不拡散体制の弱体化中東で核拡散が進めば、国際的な不拡散体制は弱体化し、他地域でも同様の動きを誘発しかねない。(原文へ)
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援助予算が歴史的低水準に、2026年に数百万人が危機に
【ニューヨークIPS=オリトロ・カリム】
2025年は、人道支援活動にとって特に混迷を極めた年となった。世界の援助予算が記録的な規模で減少し、紛争、環境災害、経済危機が激化するなかで、最も脆弱な人々が不均衡に深刻な影響を受けている。一方で、緊急対応に充てられる国際的な資金は、急増するニーズに遠く及ばない状況にある。
人道機関は、資金不足が拡大し続ければ、2026年にはさらに多くの人々が命を守るために不可欠な支援を受けられなくなると警告している。これを受け、国連(UN)とパートナー機関は、12月12日に開催される中央緊急対応基金(CERF)設立20周年記念の年次誓約会合に向け、国際社会に対し、支援拡大を強く呼びかけている。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「人道システムの燃料タンクは空になりかけており、数百万人の命が危機にさらされている。」と述べた。「より多くを求められながら、使える資源はますます少なくなっている。これは明らかに持続不可能である」。
国連人道問題調整事務所(OCHA)の数値によると、国連は来年、8,700万人の命を救うことを目標としており、そのためには約230億ドルの資金が必要とされる。さらに、50か国で実施される23の国別人道支援事業に加え、難民や移民に特化した6つの追加事業を通じて、1億3,500万人を支援するため、約330億ドルの資金調達を目指している。
しかし、支援拡大の必要性がかつてなく高まる一方で、人道支援アピールへの資金拠出は過去数十年で最も急激に落ち込んでいる。2025年に1,200億ドルを求めた支援要請では、前年より約2,500万人少ない人々しか支援できなかった。
OCHAは、この資金不足がもたらした即時的な影響として、世界的な飢餓危機の悪化、崩壊寸前まで追い込まれた保健医療体制、重要な教育プログラムの衰退、長期化する武力紛争から逃れた脆弱な避難民に対する保護サービスの大幅な後退を挙げている。一部の地域では援助関係者の安全も著しく悪化し、今年だけで320人以上が殺害された。国連当局者は、これを「戦時国際法に対する完全な無視」と表現している。
国連人道問題担当事務次長兼緊急救援調整官のトム・フレッチャー氏は、「最も力を必要とされているときに、警告灯が点滅している。」と述べた。「これは単なる資金ギャップではなく、運営上の緊急事態である。CERFが揺らげば、世界の緊急対応サービスそのものが揺らぐ。そうなれば、私たちに頼る人々が苦しむことになる。」
資源が極端に不足するなか、国連とパートナー機関は、ある命を救う支援を優先するため、別の支援を縮小せざるを得なくなっている。その結果、差し迫った人道危機の多くが深刻な資金不足に陥っている。こうした戦略的配分により、国連は「人類の苦しみの震源地」とも形容されるスーダン・ダルフール地方から逃れる多くの避難民を、十分に支援できていない。
フレッチャー氏は、「ご存じの通り、私たちが直面している苛烈な削減は、苛烈な選択を強いている。人間の生存をめぐる冷酷なトリアージである」と語った。「これは、連帯や思いやりよりも力を優先したときに起きる現実である」。
国連当局者はまた、CERFの極めて重要な役割を強調した。同基金は2006年以降、110か国以上で総額100億ドルを超える支援を提供し、数十年にわたり脆弱な人々の命綱となってきた。CERFは「迅速かつ戦略的」な資金源として、他の支援が届く前に危機下の市民に到達し、数え切れない命を救ってきた。
グテーレス事務総長は、「多くの地域で、CERFは命を救う支援があるか、全くないかの分かれ目となってきた。」と述べている。今年初め、ガザ地区で人道活動が再開された際には、CERFが病院への重要な燃料供給、水・衛生システムの復旧、その他の不可欠な救命サービスの強化を支えた。
2025年には、CERFが資金不足の危機下にある支援活動を維持するため、約2億1,200万ドルを拠出した。国連はまた、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国、マリ、ハイチ、ミャンマー、モザンビーク、シリアなどで、女性や少女のニーズを含む緊急課題に対応するため、追加で1億ドルを割り当てたと発表した。
これまでにCERFは、総額4億3,500万ドルの拠出を通じ、30の国と地域で数百万人を支援してきた。これらの資金は、停戦後のガザにおける人道支援の拡大を可能にし、ダルフールでの武力紛争から逃れる人々への重要な支援も提供している。
こうしたCERFの取り組みは、国連が2026年に向けて構想する「人道リセット」の中核を成すものである。フレッチャー氏は、「だからこそ人道リセットが重要なのだ。単なるスローガンではなく、私たち全員への挑戦である。」と述べた。「それは使命であると同時に、私たちの活動と、支援を必要とする多くの人々にとっての生存戦略でもある。より賢く、より速く、地域社会により近づき、直面する厳しい選択についてより正直になること。支援を受ける人々のために、1ドル1ドルの価値を最大化することが求められている。」
国連にとって2026年最大の単独人道対応計画は、占領下パレスチナ地域に焦点を当てたもので、壊滅的な暴力と破壊を経験した約300万人を支援するため、約41億ドルが必要とされる。これに続き、世界最大の避難民危機を抱えるスーダンでは2,000万人を支援するため29億ドル、シリアでは860万人を支援するため28億ドルが必要とされている。
CERFへの拠出額は、過去10年以上で最も低い水準に落ち込むと予測されており、国連は10億ドルを目標に、加盟国への資金要請を開始する。各国にはまた、民間人や人道支援従事者の保護強化、武力行使の加害者に対する説明責任メカニズムの強化に向け、自国の影響力を行使するよう求められている。
フレッチャー氏は、「人道資金が厳しいこの瞬間にこそ、十分に資金が確保されたCERFがもたらし得る次の20年を想像しなければならない。」と語った。「国連をより速く、より賢く、より費用対効果が高く、より環境に配慮し、より先取り型で、より包摂的にする基金である。地域社会の声を増幅し、連帯が今も機能することを証明する基金だ。その連帯を信じる市民の運動に支えられて。」(原文へ)
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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|視点|新国連事務総長を待ち受ける困難な課題(クル・C・ガウタム元国連事務次長、元ユニセフ副事務局長)
【カトマンズIPS=クル・C・ガウタム】
次期国連事務総長の選出は、国連が各国から迂回され、多国間主義――その中核にある国連そのもの――が、世界の最も強大な国家や指導者の一部から強い挑戦を受ける中で、2026年という極めて不利なタイミングで行われる。
2027年に就任する新事務総長は、前例のない財政危機と、国連を存続させるためだけでも大規模な制度改革を迫られるという重い遺産を引き継ぐことになる。一見すると、これは新事務総長が大胆な構想を打ち出すには最悪の状況に映る。とりわけ、真の多国間主義の強化には消極的で、むしろ自らの勢力圏を守るための多極的秩序を好む強国の指導者たちの支持を得ることは容易ではない。
しかし歴史を振り返れば、最も大胆な理念は、戦争や革命、世界的危機といった激動の時代にこそ生まれてきた。先見性ある新たな国連指導者が、これまでにない発想を打ち出し、規範に基づく国際秩序を再生するための種をまく可能性は、決して否定できない。
今日の最も強大な指導者たちの多くが多国間主義に対して消極的である一方、世界の一般市民――とりわけデジタルに精通した若い世代――は、グローバルな相互依存を強く実感している。
彼らは自らを「地球市民」と捉え、国境のない世界で生きることを望み、21世紀の現実に即した国連改革という先進的な提案を受け入れる素地を備えている。
有望な出発点の一つは、国連初の女性事務総長の選出であろう。さらに不可欠なのは、国連の財政制度を改革し、少数の富裕で強大な国家の意向に過度に左右されない、より広範で持続可能な資金基盤を築くことである。
資金不足に陥っている国連の巨大で分散した組織構造については、現事務総長が進める「UN80イニシアティブ」の下で、すでに一定の統合が始まっている。新事務総長はこの流れを加速させ、批判者や懐疑論者からの支持をも取り付けることができるかもしれない。
とはいえ、いかに活力と構想力に富んだ事務総長であっても、加盟国の後押しなしに改革を進めることはできない。現状では、拒否権を持つ常任理事国(P5)をはじめとする強国の指導者たちは、国連のトップ外交官を真のグローバル・リーダーとして十分に力づけることに消極的であるように見える。
多くの啓発された世界市民――特にZ世代――が、大胆で人々を鼓舞する指導者を国連のトップに期待しているのに対し、主要国は、戦略的で強い「ジェネラル(総長)」よりも、従順な「セクレタリー(事務官)」を望んでいるのかもしれない。
グローバル・サウスの台頭や、BRICS+、G20といった枠組みの拡大により、特にソフトパワーの面で、国連創設から80年を経た現在、主導的立場にあった国々から力の重心は移りつつある。この変化する国際環境が、国連の強化と多国間主義の再活性化につながることが期待される。
気候変動、戦争と平和、パンデミック、拡大する不平等、そしてAI革命がもたらす深遠な機会とリスク――こうした地球規模の課題に対処する唯一の現実的な手段は、今なお多国間主義である。
いかなる国であれ、どれほど富み、どれほど強大であっても、これらの問題を単独で解決することはできない。世界はいま、より効果的な国連を切実に必要としている。各国指導者が自国民の願いに耳を傾け、新たな事務総長を選び、その人物に十分な権限を与えて、現在そして未来の世代のために、より平和で繁栄した世界を築くことを期待したい。(原文へ)
クル・ガウタムは、元国連事務次長、ユニセフ副事務局長であり、著書に『Global Citizen from Gulmi: My Journey from the Hills...
キラーロボット:アルゴリズム戦争の恐るべき台頭
【ウルグアイ・モンテビデオIPS=イネス・M・ポウサデラ】
良心を持たない機械が、人間の生死を分ける判断を一瞬で下している。これはディストピア小説ではない。現実である。ガザでは、アルゴリズムによって最大3万7000人に及ぶ「殺害対象リスト」が生成されてきた。
自律型兵器はウクライナでも使用されており、最近では中国の軍事パレードでも披露された。各国は、なお制御可能であると信じ、こうした兵器を自国の軍備に組み込む競争を加速させている。しかし、その前提が誤りであれば、結果は破滅的になりかねない。
人間が引き金を引く遠隔操作ドローンとは異なり、自律型兵器は自ら致死的判断を下す。一度起動されると、顔認識、熱探知、行動パターンなどのセンサーデータを処理し、事前に設定された標的プロファイルと一致すると自動的に発砲する。そこにためらいはなく、道徳的省察もなく、人命の価値を理解することもない存在である。
高速性と躊躇の欠如は、紛争を急速にエスカレートさせる危険性をはらんでいる。さらに、これらのシステムはパターン認識と統計的確率に基づいて作動するため、致命的な誤認を引き起こす可能性が極めて高い。
イスラエルによるガザ攻撃は、AIが大量殺戮に組み込まれた最初の兆候を示す事例となった。イスラエル軍は複数のアルゴリズム標的選定システムを投入している。ラベンダーや「ゴスペル」と呼ばれるシステムは、ハマス構成員と疑われる人物を特定し、人間の標的リストや爆撃対象のインフラを生成する。また「ウェアズ・ダディ(Where’s Daddy)」は、標的が家族と共に自宅にいる時間帯を追跡し、その瞬間を狙って殺害を実行するためのシステムである。
イスラエルの情報当局者は、約10%の誤認率が存在することを認めながらも、それを「織り込み済み」とし、アルゴリズムが特定した下級戦闘員1人につき民間人15〜20人、司令官の場合は100人以上の民間人死者を容認している。
暴力の非人格化は、責任の空白も生み出す。アルゴリズムが誤って人を殺した場合、誰が責任を負うのか。プログラマーか、指揮官か、使用を承認した政治家か。法的な曖昧さは、加害者を責任追及から守る構造として組み込まれている。生死の判断が機械に委ねられるとき、「責任」という概念そのものが、制度の中で溶解していく。
こうした懸念は、AIが市民空間や人権に与える影響をめぐる、より広範な警戒の流れの中に位置づけられる。技術が安価になるにつれ、AIは戦場にとどまらず、国境管理や警察活動にも用いられるようになっている。AI搭載の顔認識技術は監視能力を飛躍的に強化し、プライバシー権を侵食する。アルゴリズムに埋め込まれた偏見は、性別や人種などに基づく排除を再生産する。
技術が急速に発展する一方で、国際社会は10年以上にわたり自律型兵器を議論してきたにもかかわらず、拘束力ある規制を生み出せていない。2013年、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)を採択する国々が議論開始に合意して以来、進展は極めて遅い。2017年以降、致死的自律型兵器システムに関する政府専門家会合(GGE)が定期的に開催されているが、インド、イスラエル、ロシア、米国といった主要軍事大国が、全会一致を要する仕組みを利用して規制案を体系的に阻止してきた。
2025年9月には、42カ国が規制前進への用意を示す共同声明を発出し、長年の膠着状態を破る一歩となった。しかし、主要な反対国は依然として立場を崩していない。
この行き詰まりを打破すべく、国連総会が主導権を握った。2023年12月、総会は自律型兵器に関する初の決議である決議78/241を採択し、152カ国が賛成した。続く2024年12月には、決議79/62により加盟国間協議が義務付けられ、2025年5月にニューヨークで開催された。協議では、倫理的ジレンマ、人権への影響、安全保障上の脅威、技術的リスクが検討された。国連事務総長、赤十字国際委員会、そして多数の市民社会組織は、軍事AIの急速な進展を踏まえ、2026年までに交渉を妥結させるよう求めている。
2012年以来、70カ国以上、270以上の市民社会団体からなる「キラーロボット反対キャンペーン(Campaign to Stop Killer Robots)」が、自律型兵器規制を求めるこの取り組みを主導してきた。継続的な提言と調査を通じて、同キャンペーンは現在120カ国以上が支持する「二層アプローチ」を打ち出している。これは、人間を直接標的とするシステム、有意義な人間の制御を欠くシステム、影響を十分に予測できないシステムといった最も危険な兵器を禁止すると同時に、それ以外の兵器に対しても厳格な規制を課すものである。
禁止されないシステムについても、人間の監督、予測可能性、明確な責任の所在を条件とし、標的の種類、使用時間や場所の制限、義務的な試験、人間が介入可能な監視体制など、厳しい制約の下でのみ使用が認められる。
期限を守るために残された時間は1年しかない。10年に及ぶ議論が生み出せなかった条約を、国際社会は今後1年で取りまとめなければならない。月日が過ぎるごとに、自律型兵器はより高度化し、より広く配備され、軍事ドクトリンに深く組み込まれていく。
ひとたび、機械が人の生死を決めるという発想が常態化すれば、規制を導入することははるかに困難になる。各国は、人間を直接標的とする、あるいは有意義な人間の制御を欠く自律型兵器システムを禁止し、違反に対する明確な責任追及の仕組みを定める条約を、早急に交渉を開始すべきである。技術を「発明しなかったこと」にすることはできない。しかし、制御することは、まだ可能である。(原文へ)
イネス・M・ポウサデラは、CIVICUSの調査・分析部門責任者であり、「CIVICUS・レンズ」の共同ディレクター兼執筆者、「市民社会の現状報告書」の共著者である。また、ウルグアイのORT大学における比較政治学教授も務める。
INPS Japan/IPS
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