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トランプ氏の対イラン戦争が砕いた湾岸の安定神話
米軍依存の限界と新たな安全保障秩序の模索
【ニューヨークIPS=アロン・ベン=メイル】
トランプ大統領による対イラン戦争は、湾岸地域の安全保障環境を根底から揺さぶった。米軍基地は抑止の拠点から攻撃対象へと変わり、経済は深刻な打撃を受け、ドバイやドーハ、リヤドといった都市が「安全なオアシス」であるとの神話も崩れ去った。湾岸諸国の指導者たちはいま、ワシントン依存の代償と、より不安定で脆弱な地域秩序の現実に直面している。
トランプ氏が東地中海と湾岸に大規模な米海空戦力を集結させるなか、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールなどの湾岸諸国は、自国の領土やエネルギー・インフラが報復の標的となる事態を恐れ、水面下で米国に対し、イランへの全面攻撃を控えるよう求めていた。
しかし、米国とイスラエルによる空爆作戦は、イランの能力を「弱体化させる」という以上に、明確で公に示された政治目標を欠いたまま、2026年2月28日に開始された。この軍事的エスカレーションと戦略目的の乖離こそが、いま湾岸諸国の指導者たちの怒りと、ワシントンへの深い不信の核心にある。
トランプ氏の戦略的誤算
トランプ氏が米・イスラエルによる対イラン共同攻撃に踏み切ったことは、政権の想定を上回る戦略的代償を招いた。エネルギー市場の混乱、海上輸送の停滞、地域の分断の深まり、そして反米感情の拡大である。
たとえイランの軍事能力が大きく損なわれたとしても、この戦争は米国の戦力投射の脆弱性を露呈させ、同盟国を動揺させるとともに、ロシアと中国による湾岸地域への外交的関与を促した。米国が長期的に支払う代償は、戦場での成果以上に、伝統的なアラブ同盟国の間で信頼と影響力を損なったことの大きさによって測られるだろう。
米軍基地は「資産」から「負債」へ
湾岸諸国にとって、カタール、バーレーン、クウェート、UAEに展開する米軍基地は、本来、イランを抑止し、体制の安全を保証する存在だった。ところが戦争の勃発によって、それらは真っ先に攻撃対象となった。イランはこれら施設への攻撃をワシントンに対する報復と位置づけたが、その多くが人口密集地や経済中枢に近接していたため、周辺の民間インフラにも深刻な被害が及んだ。
この経験は、外国軍基地の存在が攻撃を呼び込む一方で、期待された確実な防護はもたらさないという認識を、湾岸各国で強めている。
現実となった悪夢
湾岸諸国の指導者たちは長年、イランとの戦争が自国の安全保障と経済を深刻に損なうと警告してきた。その悪夢はいま現実となった。イランのミサイルや無人機は、石油施設、港湾、発電所、都市部を相次いで攻撃した。
湾岸諸国は、軍事作戦を開始したワシントンと、近隣アラブ諸国への被害を顧みずイランの「無力化」を追求したイスラエルに責任があるとみている。自らの警告は退けられ、その結果として、物理的破壊、経済的後退、輸出の混乱、国内不安の増大という不釣り合いに大きな代償を強いられたとの認識が広がっている。
崩れた「オアシス」神話
ドバイ、ドーハ、リヤドなどが、ビジネス、観光、投資に開かれた安全で安定した拠点であるとのイメージは、ミサイル警報、港湾や空港への攻撃、主要航路の閉鎖によって大きく傷ついた。
信頼を回復するには、目に見える復興に加え、民間防衛体制の強化、防空・ミサイル防衛能力の向上、そして再び突発的な戦争が起きるリスクを抑えるための信頼性ある外交が欠かせない。投資家や観光客が求めているのは、華やかな大型事業ではなく、この地域がイランをめぐる緊張を管理できることを示す確かな証左である。
トランプ氏、イランの報復能力を見誤る
トランプ氏は、圧倒的な軍事力を行使すればイランを短期間で屈服させ、政権交代を促しながら、戦火を域外にとどめられると主張していた。だが実際には、イランが湾岸諸国に広範な報復を加える可能性や、ホルムズ海峡の長期封鎖に踏み切る可能性を過小評価していたとみられる。
革命防衛隊(IRGC)による海峡の事実上の封鎖は、商船への攻撃や威嚇を通じて世界的なエネルギー市場を揺さぶり、米国の戦争計画の前提の脆さを露呈させた。湾岸諸国の指導者たちは、これをワシントンが二次的、三次的な影響を十分に見込んでいなかった証左と受け止めている。
報復を控える計算された判断
大きな被害を受けながらも、湾岸諸国はこれまでのところ、イランへの直接報復を避けている。さらなるエスカレーションは、自国の都市や重要インフラを、より苛烈な攻撃にさらすだけだとみているためだ。
表向きには自制と国際法を強調しているが、実際には、米国主導のこの戦争が終わった後も、地理的に隣接する強大なイランと共存せざるを得ないという現実を認めている。反撃を控えることで、戦後の緊張緩和の余地を残し、恒常的な公開対立に陥るのを避けようとしている。
ワシントンとの安全保障関係の見直し
戦略的な代替肢が限られている以上、湾岸の君主国が米国との関係を断ち切る可能性は高くない。だが今後は、これまで以上に条件付きで、取引色の強い安全保障関係を求めていく公算が大きい。自国防衛に関する米国のより明確な保証、地域ミサイル防衛の一層の統合、そしてイランの報復を招きかねない決定について、より大きな発言権を求めている。
同時に、湾岸諸国は中国、ロシア、欧州、アジアの主要エネルギー輸入国との関係を強化し、米国への排他的依存を緩和しながらも、米国の安全保障の傘そのものは維持しようとしている。
再発防止に向けた選択肢
将来の再燃を防ぐため、湾岸諸国はテヘランとの限定的な対話チャンネルや危機管理ホットラインの整備、中国やインドなど西側以外の国々も含めた海上安全保障枠組みの再構築を模索している。また、エネルギー・インフラや海上輸送路を危機の際にも攻撃対象外とするための新たな交戦ルールや、非公式な合意形成を目指す可能性もある。
国内的には、ミサイル防衛体制の見直し、重要施設の防護強化、ホルムズ海峡への依存を減らす輸出ルートの多様化も検討されている。いずれも万能ではないが、一定のリスク軽減にはつながり得る。
イランとの関係正常化は可能か
湾岸諸国とイランの全面的な関係正常化、さらには相互不可侵協定の可能性まで取り沙汰されている背景には、戦前から慎重な対話と経済的接触が進んでいた現実がある。しかし、それが実際の政策選択肢となるかどうかは、戦争の帰結、イラン国内政治、そして湾岸諸国の脅威認識に左右される。
たとえテヘラン体制が存続しても敵対姿勢を維持するなら、湾岸諸国は、抑止、限定的関与、外部大国との連携を組み合わせた「ヘッジ戦略」へと回帰する可能性が高い。他方で、より現実主義的なイラン指導部が現れれば、制度的な安全保障対話や段階的な信頼醸成措置が現実味を帯びる余地もある。
もはや戦前には戻れない
湾岸諸国が戦前の現状に戻ることはないだろう。今後は、米国のより限定的な安全保障の傘に加え、中国、ロシア、アジアの主要エネルギー輸入国との関係拡大を組み合わせた、より多角的な安全保障構造を模索していくとみられる。この変化は、湾岸安全保障におけるワシントンの中心的地位を徐々に低下させ、米軍の地域展開や、対イランでアラブ諸国が自動的にイスラエルを支持するという前提を揺さぶることになる。
イスラエルにとっては、より慎重でリスク回避的な湾岸諸国の姿勢が、公然たる戦略的連携の余地を狭める可能性がある。米国にとっても、根深い不信が残る以上、将来の危機に際して新たな連携を構築することは、これまで以上に難しくなるだろう。
トランプ氏の対イラン軍事介入は、単独の失策にとどまらない。それは、すでに脆弱化していた国際秩序に対する攻撃の、最新にして最も危険な表れである。自制を捨て、同盟国を脇に追いやり、短期的な政治的利益のために米国の力を用いた結果、米国の信頼性はさらに損なわれ、西側同盟は分断され、ロシアと中国には新たな戦略空間が開かれた。湾岸諸国は、その混乱の新たな犠牲者となったのである。
この戦争の先にあるのは、回復された現状ではない。より断片化し、不安定化した中東である。そのなかでイスラエルと米国は、これまで以上に誤算の許されない状況と、より狭くなった信頼できる協力相手の輪に直面していくことになる。(原文へ)
アロン・ベン=メイア博士は国際関係論の元教授で、最近までニューヨーク大学(NYU)グローバル・アフェアーズ・センターで国際交渉および中東研究を教えていた。
INPS Japan
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カザフスタン、非核化の成功例を国連で示す―なお難題として残る中東
【ニューヨーク国連本部INPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】
核の危険性に警鐘を鳴らす声が相次いだ国連会議で、カザフスタンは別のメッセージを示した。中央アジアは核に頼らない道を選び、その選択を守り続けてきた、というものだ。
このメッセージは4月28日、セミパラチンスク(セメイ)条約によって創設された「中央アジア非核兵器地帯」の20周年を記念するサイドイベントで示された。2026年NPT再検討会議の期間中に開かれたこのイベントでは、核リスクが再び高まるなか、非核兵器地帯がいまなお安全保障上の価値を持ち得るのかが検討された。
Open Nuclear Networkのオラミデ・サミュエル氏が司会を務めたこのサイドイベントは、カザフスタン国連常駐代表部、国連軍縮部、国連軍縮研究所(UNIDIR)、核脅威イニシアティブが共催した。会合でより根本的に問われたのは、安全保障環境が厳しさを増す時代に、地域として核を自制する枠組みが持ちこたえられるのか、ということだった。
カザフスタンにとって、その答えはセミパラチンスクから始まる。
カザフスタンのイェルラン・アシクバエフ第一外務副大臣は、この20周年を、中央アジア諸国が核抑止ではなく、透明性、協力、信頼に基づいて安全保障を追求するという「意図的な戦略的選択」を行ったことを改めて示す節目だと位置づけた。同氏は、この非核兵器地帯が、核兵器に頼らない安全保障は「可能であるだけでなく、持続可能でもある」ことを証明してきたと述べた。
セミパラチンスク条約は、ソ連時代の核実験が冷戦終結後も深い傷跡を残した地の名を冠している。カザフスタンにとって、この非核兵器地帯は、その歴史的な傷に向き合う一つの答えでもある。
国連軍縮部で大量破壊兵器部門を統括するクリス・キング氏は、非核兵器地帯を、地域の安全保障、不拡散、核リスク低減を支える「生きた枠組み」と位置づけた。一方で同氏は、その実効性にはなおばらつきがあり、核兵器国が一部の議定書に署名・批准していない例や、安全の保証に留保を付している例もあると警告した。
非核兵器地帯に関する新たな研究をまとめる、国連委嘱の有識者グループ議長で、ブラジルのマリア・セシリア・バルセロス・カヴァルカンテ・ヴィエイラ氏は、国連による最初の本格的な研究から50年が過ぎたとして、新たな評価の必要性を指摘した。問われているのは、より危険な世界において、非核兵器地帯がなお有効性を保ち得るのかという点である。
UNIDIR所長のロビン・ガイス氏は、非核兵器地帯は発展していくことを前提とした枠組みだと述べた。また、中央アジア非核兵器地帯について、安全保障を開発、環境保護、公衆衛生と結びつけた点で、独自の貢献を果たしてきたと指摘した。
核脅威イニシアティブ(Nuclear Threat Initiative: NTI)のマーク・メラメド氏は、非核兵器地帯はNPTの成功例の一つであり続けていると評価する一方、その成果が今後も維持されるとは限らないと警告した。
UNIDIRのサラ・オパトフスキー氏は、既存の非核兵器地帯を地図上で可視化し、比較できるデジタル・プラットフォーム「Nuclear-Weapon-Free Zones Hub」を紹介した。
各国代表も討議に加わった。
2026年NPT再検討会議の中国代表団長である孫暁波氏は、中国政府は地域主導と自由意思に基づく非核兵器地帯を支持しており、核兵器国が参加可能なすべての議定書に署名・批准していると述べた。
キルギスのアイダ・カスマリエワ国連常駐代表は、中央アジア非核兵器地帯条約について、大胆な夢を現実に変えたものだと評価した。セミパラチンスク条約の寄託国として発言した同氏は、5つの核兵器国のうち4か国が、中央アジア諸国に安全の保証を与える議定書を批准済みだとし、残る1か国にも手続きを完了するよう求めた。
2026年NPT再検討会議のロシア代表団長、ミハイル・コンドラテンコフ氏は、ロシア政府が非核兵器地帯を支持していると述べるとともに、核兵器その他の大量破壊兵器のない中東地帯の実現に向けた取り組みにロシアも関与していると説明した。
その後、イベントの焦点は20周年の記念から、その経験を他地域にどう生かすかへと移った。
セミパラチンスク条約の20年にわたる経験から、今後の非核兵器地帯交渉、とりわけ停滞する「大量破壊兵器のない中東地帯」構想に、どのような教訓を生かせるのか。この問いに対し、パネリストたちは単純な答えを示さなかった。
ヴィエイラ氏は、中東は特殊な事例だと指摘した。国連決議と結びついているだけでなく、核兵器に限らず大量破壊兵器全般を対象としているためである。アシクバエフ氏は、カザフスタンの歩みは、セミパラチンスクの悲劇、ネバダ・セミパラチンスク反核運動、1991年の実験場閉鎖、そして不拡散をめぐる地域協力によって形づくられてきたと述べた。
キング氏は、非核兵器地帯はいずれも、それぞれ固有の状況の中から生まれたと指摘した。ラテンアメリカのトラテロルコ条約はキューバ危機後に成立し、南太平洋と中央アジアでは核実験の経験が形成を後押しした。成功した非核兵器地帯は通常、各国が共通の危険や記憶を認識し、それを政策へと転換できるほどの共通理解を持ったときに実現している。
この点は、中東を考えるうえで重要である。同地域には、現在も続く戦争、根深い不信、イスラエルの未申告の核能力、イランの核問題、競合する安全保障ドクトリン、さらに紛争に深く関与する域外大国が存在する。中東で構想されている地帯は、核兵器にとどまらず、すべての大量破壊兵器の廃絶を目指すものであり、その分、複雑さは増している
中央アジアの教訓は重い。しかし、それをそのまま他地域に当てはめることはできない。セミパラチンスクの経験が成果を上げたのは、核被害に対する共通理解を軸に、記憶、政治的意思、地域の主体性が重なり合ったからである。
カザフスタンは、核の自制を築き、維持できることを示した。一方、中東はなお、はるかに難しい試金石であり続けている。人々が同じ危険を共有しながら、互いを信頼していないとき、何が起こるのか―その問いが突きつけられている。(原文へ)
Original...
「核兵器は単なる戦争の道具ではない。大量の苦しみをもたらす兵器である」
【ニューヨークIPS=ナウリーン・ホセイン】
「私たちが希望を選択するのは、絶望が、私たちには受け入れられない一種の降伏だからです。」核軍縮をめぐる世界の分断が深まる中、核軍縮をなお追求すべきかが問われる状況を踏まえ、フィリピン国連大使のエンリケ・マナロ氏は、市民社会の代表者や外交関係者にそう語った。|英語版|中国語|
4月30日、2026年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に合わせて開かれたサイドイベントで、マナロ大使をはじめとする登壇者らは、外交対話に希望の視点を取り入れ、核兵器の人道的影響を踏まえて核軍縮の必要性を訴えることで、NPTをめぐる機運を再び高める方策について議論した。
このイベントは、創価学会インタナショナル(SGI)、核時代平和財団、フィリピン、キリバス両国の国連常駐代表部の共催で開かれた。
核兵器の人道的影響に焦点を当てた今回のイベントは、核兵器をめぐる議論の中で、これまで十分に取り上げられてこなかった視点を浮き彫りにした。今週の一般討論では、国連加盟国が、平和と安全保障に向けた共通のビジョンの下で多国間協力が何を成し得るかを示す長年の証左として、NPTを守り維持することの重要性を訴えてきた。
各国は、NPTが国際的な軍縮体制の礎であることを改めて強調している。しかし、現在の地政学的環境に加え、国際制度の構造的な弱体化が、同条約の根幹をなす原則を揺るがしている。だからこそ、加盟国がNPTへのコミットメントを再確認し、国際の平和と安全の維持に向けた決意を示すことが、これまで以上に重要となっている。
しかし現時点では、一部のNPT締約国が自らの義務をどこまで果たしているのかが、議論の焦点となっている。非核兵器国の代表らは、核兵器国が不拡散上の義務を十分に果たしておらず、核戦力の拡大さえ検討していると指摘した。そうした動きはNPT違反にあたる。
核爆発がもたらす影響は、複数の登壇者が指摘したように、爆心地を越えて広範囲に及ぶ。被災した地域社会には、家屋の破壊、負傷、生涯にわたる健康被害など、壊滅的な影響が直後からもたらされる。
放射線被ばくは、世代を超えて影響を及ぼす災厄である。第2世代、第3世代の人々も、その影響による慢性的な健康問題に苦しんでいる。
胎内被爆者であり、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の代表理事を務める松浦秀人氏は、その現実を証言した。松浦氏は1945年、広島に原爆が投下された時、母の胎内にいた。胎内で受けた被ばくは、その後の人生にも深い影響を及ぼした。
日本被団協の代表理事として、松浦氏は「ノーモア・ヒバクシャ」の理念のもと、平和と核軍縮のメッセージ発信に尽力してきた。松浦氏は、原爆投下とその直後を生き抜いた母親の体験を紹介した。投下から数日のうちに熱傷や放射線障害で命を落とした人々に触れるとともに、生き延びた人々も極めて過酷な状況に置かれていたと語った。
時がたつにつれ、人々は深刻な健康問題を訴えるようになったが、自分たちを苦しめる病の原因を理解できなかった。広島・長崎への原爆投下から80年を経た今も、被爆者とその子孫は、がんや白血病など、被ばく後、長い年月を経て発症する病気に苦しみ続けている。同時に、彼らは何よりも平和の大切さを訴えるため、国際社会に向けて自らの体験を語り続けている。
「あらためて私は訴えます。核兵器と人類と共存できません。」と松浦氏は述べた。「すべての国が一日でも早く核兵器禁止条約に参加しましょう。そして、核兵器の当面の禁止と将来的な廃絶を実現しましょう。そのために皆さんと力を合わせるために、私はやってきました。」
キリバスのような太平洋島嶼国も、核実験が地域社会に及ぼした影響を物語る事例である。太平洋で核実験が行われたのは、大陸から比較的離れていることを理由としたものだったが、島嶼国とその住民も放射線被ばくの影響を免れなかった。
文化・伝統上、神聖とされる場所を含む一部地域は、今日に至るまで居住できないままである。キリバス国連常駐代表部のジョセフィン・モーテ副代表・参事官は、核実験の被害を踏まえ、被害を受けた人々や地域に対する正義の重要性を強調した。
核兵器の影響を論じるうえで、社会と環境にもたらされる混乱や破壊的影響を見過ごすことはできない。
松浦氏と、核戦争防止国際医師会議スウェーデン支部(IPPNWスウェーデン)のヨセフィン・リンド事務局長はいずれも、放射線被ばくが妊婦と胎児・子どもたちに及ぼした影響に言及した。
ルンド氏は、原爆投下後、医療体制が崩壊したと指摘した。ほぼすべての病院が破壊され、医療従事者の3分の2以上が死亡したため、生存者は十分な治療を受けられなかった。
さらに、汚染されていない食料や水の確保は極めて困難となり、インフラの破壊と衛生環境の悪化は、疾病が急速に広がる土壌となった。こうした事実は、人間が核戦争の影響に対して「極めて脆弱」であることを示していると、ルンド氏は述べた。
「核兵器は単なる戦争の道具ではありません。それは大量の苦しみをもたらす兵器です。その影響は時間的にも空間的にも制御できません。民間人を傷つけ、医療体制を破壊し、環境を汚染し、人類に長く消えない傷痕を残します。」とルンド氏は語った。
核兵器の脅威は、現代におけるもう一つの存亡に関わる脅威である気候変動とも密接に結びついている。紛争や通常兵器の使用でさえ、環境に壊滅的な被害をもたらし得る。
さらに、核兵器と気候変動はいずれも、核時代平和財団のアウトリーチ・コーディネーター、アンデュイン・デボス氏が「脅威を増幅させる要因」と呼ぶものだ。その影響は「平和と健康を維持するために必要な条件を損ない」、「不安定化を招く要因を深める」と同氏は述べた。
気候変動は、大規模な移住・避難や希少資源をめぐる競争を引き起こし、不安定化や紛争を招く要因となり得る。一方、核兵器が存在し続け、軍縮努力が進展しないことは、NPT体制を脅かしている。デボス氏はさらに、「優先順位の危機」にも警鐘を鳴らした。核戦力の拡大を含む軍事活動への世界的支出は近年増加しているが、そうした資源は本来、軍縮活動や化石燃料依存からの転換に投じることができるはずだと指摘した。
それでもデボス氏をはじめとする登壇者らは、こうした困難な状況の中でも、このサイドイベントのような場から人々は励ましと希望を得ることができると強調した。この場では多様な視点が共有される一方、核軍縮こそが平和への道であるという共通の信念が参加者を結びつけていた。国連加盟国の半数以上が、NPTや核兵器禁止条約(TPNW)などの国際条約の締約国であるという事実にも、希望を見いだすことができる。
SGI平和センター事務局長の相島智彦氏は、平和教育が軍縮を促進し、核抑止論を退けるうえで重要な役割を果たすと強調した。
核爆発の現実を人々に伝えることで、核抑止論は戦略としての説得力を失い、むしろ「徹底して非人道的な」手段であることが明らかになる。
相島氏は、国連本部でのNPT再検討会議に戻る外交官らに対し、議論を続ける中で、市民社会と被爆者の警告に耳を傾けるよう呼びかけた。
「核兵器の人道的な影響を、皆様の政策の指針にしてください。共に、抑止という幻想を退けましょう。人間の安全保障を選びましょう。そして、希望を選びましょう。」
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血と巨利―米・イラン衝突の背後にある戦争ビジネス
「戦争はペテンである。それはおそらく最も古く、間違いなく最も利益を生み、そして確実に最も残虐な営みである。国際的な規模を持つのはこれだけである。利益はドルで計算され、損失は命で計算される唯一のものなのだ」―スメドレー・バトラー少将
【メルボルンLondpon Post=マジッド・カーン】
現代の地政学の核心には、主流メディアの見出しにはほとんど現れない冷厳な損得計算がある。すなわち、武力紛争は限られた勢力に莫大な利益をもたらすという現実である。米国とイランが互いに威嚇を交わし、代理戦争を展開し、あるいは全面戦争寸前まで緊張を高めるたびに、金融市場は動き、契約が結ばれ、使い尽くされた兵器や弾薬の備蓄は公費で補充されていく。
米国の防衛産業は世界最大であり、防衛支出は近年、一貫して年8000億ドルを超えている。ロッキード・マーティン、レイセオン・テクノロジーズ、ノースロップ・グラマン、ボーイング・ディフェンス、ゼネラル・ダイナミクスといった企業は、合わせて毎年数千億ドル規模の収益を上げている。その相当部分は、中東への展開、湾岸同盟国への武器売却、そして継続中の紛争で費消される弾薬の補充と結びついている。米国とイランの緊張が高まるたび、これら企業の株価は決まって上昇する。これは偶然ではない。戦争への備えと戦争そのものが、景気循環と見分けのつかないものとして組み込まれた体制の下で、市場原理が作動しているのである。
2020年のカセム・ソレイマニ暗殺は、その構図を端的に示した。攻撃から数時間のうちに、防衛関連株は急騰した。無人機攻撃で使用されたヘルファイア・ミサイルを製造するレイセオンの株価は大きく上昇し、暗殺を実行したMQ-9リーパー・ドローンを製造するロッキード・マーティンも同様に値を上げた。これらの企業はワシントンで積極的にロビー活動を展開し、民主・共和両党に多額の政治献金を行い、さらに批判者が「回転ドア」と呼ぶペンタゴンと民間部門の人材循環を通じて、元軍・情報当局者を多数雇用している。その結果、紛争は解決されるよりも維持されやすい構造となる。解決は契約の減少を意味するからである。
見出しを飾る大手防衛企業だけでなく、イランとの緊張は民間軍事・警備産業にも巨額の利益をもたらしてきた。基地警備、情報分析、兵站、湾岸同盟国や米軍への訓練支援を担う企業は、地域展開の拡大とともに大きく成長してきた。物議を醸したブラックウォーターの創設者エリック・プリンスは、かつて民間軍事部門の規模を年間1000億ドル超と見積もったことがある。米国の石油・エネルギー企業もまた、イランの弱体化から利益を得る立場にある。対イラン制裁によってイラン産原油の輸出が抑え込まれることで、世界の原油価格は米国のシェール生産業者にとってより有利な水準に保たれるからである。複数の政権の下で維持・強化されてきた制裁体制そのものが、イランを罰しつつ、同時に米国のエネルギー企業を利する一種の経済戦争として機能している。
米・イラン対立の経済を論じるうえで、湾岸協力会議(GCC)諸国、特にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を抜きに語ることはできない。両国は、この地域における米国の武器供給網の主要な仲介役を果たしている。1979年の革命によってイランが米国とサウジアラビア双方の敵対国となって以来、湾岸君主国は米国製兵器システムに巨額の資金を注ぎ込んできた。サウジアラビアは長年にわたり一貫して米国製兵器の最大の購入国であり、過去10年間だけでも1000億ドルを超える米国製兵器を購入している。イランの核開発能力や、イエメンのフーシ派、レバノンのヒズボラ、イラクのシーア派民兵組織などを通じた地域的影響力に対する実存的な恐怖が、湾岸諸国を米国製兵器の有力な顧客にしているのである。
この武器取引は、米国の経済的・地政学的利益を同時に満たしている。米国の防衛関連雇用を支え、ペトロダラーを米国経済へ還流させ、世界貿易におけるドルの役割を強め、さらにこの地域での米国軍事技術の優位を維持する。歴代政権は、人権や地域の安定をどれほど唱えようとも、その経済的・戦略的論理が圧倒的であるがゆえに、湾岸諸国との巨額の武器取引を承認してきた。オバマ政権がイラン核合意を成立させた際でさえ、湾岸諸国の不安はむしろ武器購入を加速させた。彼らは、それをイランに対する米国の外交的軟化への「保険」と受け止めたのである。逆説的ではあるが、平和交渉は直接的な衝突と同じほど武器購入を引き起こし得る。
UAEは、この戦争経済の中で独自の位置を占めている。金融ハブであるドバイは、長年にわたり、米国の制裁に違反してイランに流入する物資の積み替え拠点として機能してきた。その一方で、UAEは、トランプ政権下で交渉され、その後も長く外交上の争点となったF-35戦闘機取引を含め、米国およびフランスの先進兵器の主要購入国としての地位も築いてきた。UAEは、イランとの水面下の関係を維持しながら、表向きにはワシントンと歩調を合わせるという、米・イラン間の緊張をめぐる巧みな均衡戦略をとっている。この戦略的曖昧さは外交上の不整合ではない。より大きな対立がどのように展開しようとも、自国の影響力と商業的機会を最大化するための、計算された経済・安全保障上の立ち回りなのである。
イスラエルは、米・イラン対立の戦争経済の中で特異な位置を占めている。イランから最も直接的な脅威を受ける敵対国として、イスラエルはイランの核兵器の脅威をてこに、10年間の覚書に基づく年間約38億ドルという巨額の米国軍事援助を確保してきた。エルビット・システムズ、ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ、イスラエル航空宇宙産業などを中核とするイスラエル自身の防衛産業もまた、イランの脅威を前面に押し出すことで、世界的な輸出拡大を実現してきた。イスラエルのドローン技術、ミサイル防衛システム、サイバー能力―その多くはイランの脅威への直接的な対応として開発された―は、欧州、アジア、アフリカで強い需要を集めている。言い換えれば、イランの脅威はイスラエル防衛産業にとって強力な輸出促進要因となってきたのである。
戦争の利益を得るのは、防衛請負企業や武器商人だけではない。金融部門もまた、その受益者である。エネルギー市場を専門とする商品トレーダーやヘッジファンドは、米・イラン間の緊張が原油価格にもたらす変動から莫大な利益を上げてきた。世界の石油供給のおよそ20%が通過するホルムズ海峡で海上の事件が起きるたびに、原油を買い持ちしているトレーダーに利益をもたらす価格急騰がただちに生じる。2019年にサウジアラビアの石油インフラが攻撃され、広くイランまたはその代理勢力の関与が指摘された際には、史上最大級の1日当たりの原油価格上昇が起きた。適切なポジションを取っていた金融機関にとって、こうした出来事は災厄ではなく利益を得る好機なのである。
サイバーセキュリティもまた、米・イランの敵対関係を背景に拡大してきた産業である。イランは、国家として世界有数のサイバー能力を持つ主体の一つと見なされている。イランの核遠心分離機を標的としたスタックスネット攻撃―その背後には米国とイスラエルの関与が広く指摘されている―への報復の一環として、イランは米国の銀行、重要インフラ、政府システムに対するサイバー作戦を展開してきた。これにより、米国企業や政府機関による防御的サイバーセキュリティ支出は数十億ドル規模で押し上げられた。クラウドストライク、パロアルトネットワークス、さらに多数の小規模サイバー企業は、イランの能力を強調する脅威評価を追い風に、政府契約や民間需要を獲得し、米・イラン対立のサイバー領域から直接利益を得てきた。
そして再建産業は、おそらく最も辛抱強い戦争利得者として、その機会を待っている。米国の軍事介入、あるいはそれに連なる紛争がイラク、シリア、リビアに破壊をもたらすたびに、米国および同盟諸国の建設・インフラ企業は、国際援助機関、多国間銀行、さらには破壊された当事国自身が資金を拠出する復興契約を獲得できる立場を確保してきた。ベクテル、フルアー、そして多くの子会社・提携企業は、第二次世界大戦後のドイツや日本にまでさかのぼる戦後復興の長い実績を持つ。もし米国とイランの直接衝突がイランのインフラを壊滅させ、あるいは軍事行動の後に体制転換が起きるなら、人口9000万人、膨大な石油埋蔵量と強固な産業基盤を持つイランの復興は、21世紀最大級の経済機会の一つとなるだろう。国を壊すビジネスと、それを立て直すビジネスは、結局のところ、同じ手によって進められることが少なくない。(原文へ)
INPS Japan/London Post
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