未分類国連が直面する人工知能(AI)をめぐる新たな試練

国連が直面する人工知能(AI)をめぐる新たな試練

【国連ATN=アハメド・ファティ】

私が国連事務総長に対し、選挙や紛争の行方を左右し得るほど強力な技術を、いまなお各国政府が制御できているのかと問うと、返答は異例なほど率直だった。国連にはそれを左右する梃子(レバレッジ)がない、と述べた。仕組みやプラットフォーム、プロセスはあるが、結果を強制する力はないという。

その瞬間が重要だったのは、意外性ゆえではなく、率直さゆえだった。人工知能が、本来は統制すべき政治・法制度を上回る速度で進歩している―多くの政府や機関が水面下で認めている現実を、言葉にしたのである。

続いたのは、包括的規制を訴える演説ではなく、限界を見据えた説明だった。事務総長は、国連がAI分野で現実的に何ができるのかを整理した。専門家を集め、科学パネルを設置し、評価報告を作成し、世界規模の対話を招集する。いずれも真剣な取り組みだが、強制力のある執行には至らない。統治の足場は築けても、規則を押し付ける権限はない。

このギャップこそが、世界のAI論争の核心にある。国連が目指しているのは、人工知能についての共通理解と共通言語の形成であり、罰則を伴う拘束的ルールブックではない。この選択は、制度の弱さというより政治現実を反映している。AIは国家安全保障、経済競争、戦略的権力と直結しており、各国は主導権を手放したがらない。その結果、国連は結論を決めるのではなく、議論を形づくる役割にとどまっている。

近年の国連のAI関連の取り組みでも、есть、この野心と権限の隔たりは明白だ。声明や決議は倫理、包摂、協力を強調する一方で、有力国や巨大企業を縛り得るコミットメントは意図的に避けてきた。そこから生まれるのは、リスクを可視化し、規範を形成することはできても、影響力のある主体が抵抗すれば変化を強制できない仕組みである。

実効的なガードレールが何であるべきかを問われると、事務総長は一つの中核概念に焦点を当てた。人間の主体性である。とりわけ生命が関わる場面では、人間が意思決定の主導権を握り続けなければならない。誰を、どこで、なぜ殺すのかを自律的に決める自律型兵器を退けた発言は、記者会見で示した最も鋭い倫理的な一線の一つだった。

テクノロジー企業の権力拡大に関する答えも、より控えめではあるが同様に示唆的だった。規制は最終的に政府の責任である――と彼は示した。競争や独占に関する既存法はデジタル時代に合わせて更新が必要かもしれないが、執行は国連事務局からは生まれない。仮に生まれるとしても、それは各国の首都からである。

こうしたやり取りの底には、権力そのものが変容しているというより大きな論点があった。今日の権力は、領土や軍事力、さらには経済規模だけで測られない。データ、そしてそれを収集・処理・運用するシステムを誰が掌握するかによって、ますます規定されつつある。この変化は、公的機関から民間アクターへと影響力を引き寄せ、世界の規則や制度が追いつけない速度で進行している。

それは規制上の懸念にとどまらない。正統性の問題を突きつける。社会全体を形づくる選択が、民主的監視の外側で設計されたアルゴリズムによって下される度合いが増すと、従来の説明責任の観念は揺らぎ始める。事務総長はこれを陰謀や道徳の崩壊として語ったのではなく、現行の制度が理解しきれておらず、まして是正には至っていない構造的な不均衡として捉えていた。

さらに、未解決の公平性の問題が重なる。多くの国々は、AI政策を形成したり、恩恵を十分に享受したりするための資源や能力を欠く。技能、インフラ、制度への着実な投資がなければ、国際的対話は、すでに最も強い力を持つ主体に支配されかねない。資源を欠いた統治は格差を埋めるのではなく、拡大させる。

総合すれば、このやり取りは、人工知能をめぐる国連の現在地を鮮明に示した。国連は、リスクが名指しされ、価値が言語化され、規範が論じられる場であり続ける。しかし、結果を強制する場ではない。事務総長はその現実を取り繕わず、だからこそその率直さが際立った。

残された問いは、招集し、警告し、助言するために設計されたシステムが、行動を実際に変える仕組みへと進化し得るのかという点である。現時点で国連のAIアプローチが映し出すのは、世界秩序に関するより広い真実だ。権力は法より速く動き、制度は追いつくのに苦闘している。(原文へ)

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