SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)国連未来サミットに向けて変革を求める青年達が結集

国連未来サミットに向けて変革を求める青年達が結集

【東京IPS Japan=浅霧勝浩】

Future Action Festival Poster. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Future Action Festival Poster. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

今年9月にニューヨークの国連本部で開催される「国連未来サミット」に先立ち、核兵器廃絶と気候危機の解決に向けて若者の理解と行動を促す青年・市民団体の共同イベント「未来アクションフェス」(同実行委員会主催)が3月24日、東京の国立競技場で開催された。会場には日本各地から約7万人が参加したほか、ライブ配信を通して延べ50万人以上が視聴した。

このイベントでは、今日の国際社会が直面している複合的な危機について、会場の大型画面に映し出されたクイズ形式で共に学ぶセッションがあった。また、国連広報センターの根本かおる所長が、核兵器や気候変動問題に取り組む若者代表らとともに問題意識を深堀するトークセッション、さらには広島原爆で奇跡的に焼け残った「被爆ピアノ」による演奏や、歌やダンスを通じて平和の尊さを伝えるパフォーマンスが披露されるなど、参加者一人ひとりが、自身の問題意識を広げたり、変革の担い手として明日から行動と連帯を育む勇気と希望を持てる空間を提供していた。

Mr. Jacob Koller played “Merry Christmas, Mr. Laurence” on the A-bombed Piano which miraculously survived the atomic bombing of Hiroshima in 1945. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan
Mr. Jacob Koller played “Merry Christmas, Mr. Laurence” on the A-bombed Piano which miraculously survived the atomic bombing of Hiroshima in 1945. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan

トークセッションに参加したジェンダーの視点から核兵器の廃絶を目指す団体「GeNuine」の共同創設者である徳田悠希さんは、「今回このイベントに先立って実施された『青年意識調査』では、『若い世代の声が反映されていないと思う』という回答が80%を超えていました。ここまでくると、個人の感覚ではなく制度やシステムに問題があって、そのせいで若い世代が諦めてこういった問題から離れていってしまう現状が明らかになったと思います。」と語った。

Yuki Tokuda, co-founder of GeNuine (Left) Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Yuki Tokuda, co-founder of GeNuine (Left) Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

「しかしここには『そうではないんだよ』という思いを持つ人々が7万人も集まっています。だから一緒に声を上げていけば制度だって変わるかもしれないし、変わった先に生きたい未来を選択するための席があるはずだという希望が持てます。明日から今回のイベントのことを忘れずに、できることをやっていきましょうというメッセージを伝えられたらいいなと思っています。」と語った。

このイベントでダンスパフォーマンスを披露した富永幸葵さんは、長年広島での被爆経験の「語り部」として生涯を全うした祖母の活動を身近に見てきた。「祖母は自身の被爆経験を語る際、必ず後半には、広島を離れて実際に核兵器を保有しているインドやパキスタンを訪れたり、紛争で貧困が蔓延し、地雷が埋められている地域に実際に足を運んで見に行ったエピソードなどを織り交ぜて、『今も広島で起こったことは終わっていません。あなたのできることで平和を伝えていってください。』と若い世代に呼びかけていました。」と語った。

Yuki Tominaga, third generation Hibakusha from Hiroshima, continues her grandmothers legacy while using her passion for dance as a medium to communicate about peace and Hiroshima bombing. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

「祖母の語る言葉には勝るものはないので遺志を継ぐなんてことはできないと思っていましたが、『あなたのできることで平和を伝えていったらいいんだよ。』と言ってくれて、それを契機に好きなダンスを通じて平和や広島の被爆経験のことを伝える活動に携わるようになりました。」「かつての私がそうであったように、とかく被爆証言や平和活動、平和イベントというのは、どこか暗くて悲しくて、楽しくないという印象があるかもしれませんが、私は若者が楽しく関心を持ちやすいダンスパフォーマンスを入口にして、平和と広島について語り合っていく、被爆者と若い世代の架け橋になりたい。」と富永さんは語った。

このイベントの実行委員会が、昨年11月20日から本年2月29日まで、日本在住の10代から40代の個人を対象に行った「青年意識調査」(119,925人が回答)の結果は、9割超が「社会をより良くするために貢献したい」と回答するなど、若者の声が反映されない現状を指摘しつつも、彼女たちのように、問題意識を行動へとつないでいける若者達の大きなポテンシャリティーを浮き彫りにした。また、質問には「社会について」「気候変動について」「核兵器について」「青年と社会構造、国連について」の項目が設けられていたが、8割以上が「核兵器は必要ない」と回答する一方で、「国連の必要性を感じている」との認識が示された。

A panel discussion with Kaoru Nemoto, director of the United Nations Information Center(3rd from left), and youth representatives delved into nuclear weapons and climate change. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Melissa Parke, Executive Director of ICAN. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

こうした「変革の世代」となりうる若者の大きなポテンシャルについては、国連や市民社会組織も注視しており、このイベントには、国連ユース担当のフェリペ・ポーリエ事務次長補やオーランド・ブルームユニセフ(国連児童基金)親善大使、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のメリッサ・パーク事務局長らがメッセージを寄せ、若者への期待が述べられた。

本年9月にニューヨークの国連本部で初めて開かれる「国連未来サミット」では、世界が直面する重大な課題への協力の強化と、SDGsのさらなる推進を実現するために、国や国際的な枠組みにおける若者の意思決定への参画が議論の柱の一つであり、若者が主体的に参加し、その声で国際社会を動かしていくことが期待されている。

実行委員会では、「国連未来サミット」における議論の促進に貢献するため、「青年意識調査」に寄せられた声を踏まえた主に4つの柱(①気候危機の打開、②核兵器なき世界の実現、③意思決定プロセスへの若者の参画、④国連改革)からなる「共同声明」を発表し、チリツィ・マルワラ国連大学学長・国連事務次長に手渡した。マルワラ事務次長は、未来サミットで「皆さんの声は持続可能な未来のために不可欠です。」と強調し、「若い皆さんこそが未来そのものなのです。平和な世界の実現に向けて共にもっと努力していきましょう。」と呼び掛けた。

Tshilisi Marwala, President of the UN University and UN Under-Secretary-General (Center) who endorsed the joint statement from the organizing committee, acknowledged the critical importance of young voices in shaping the Summit’s agenda and urged them to “be a beacon of hope and a driving force for change.Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

同イベントはアムネスティ・インターナショナル日本、創価学会インタナショナル(SGI)ユース、赤十字国際委員会(ICRC)、ピースボート、カクワカ広島、GeNuine等が協力団体として参画し、国連広報センター、平和首長会議、長崎平和推進協会等が後援。会場には協力団体や後援団体による展示ブースや記念撮影スポットが設置され、参加者が問題意識や知識を広げ、具体的な行動に踏み出す様々な入口を提供していた。(原文へ

Inter Press Service, The Nepali Times, London Post, Global Issues
Future Action Festival Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Yukie Asagiri and Kevin Lin of INPS Japan Media.

INPS Japan

This article is brought to you by INPS Japan, in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with UN ECOSOC.

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