【サンチアゴIPS=マリア・セシリア・エスピノザ】
スウェーデン大使ハラルド・エデルスタムの人道救助活動を描いたスウェーデン・デンマーク・メキシコ・チリ合作の映画「黒はこべ」(The Black Pimpernel)の撮影が、チリ国内で1月から開始された。
1973年9月11日、アウグスト・ピノチェト率いる反乱軍の猛攻撃に、アジェンデ大統領は官邸で自ら命を絶った。その後、軍部は激しい反対派弾圧を開始。1万2,000人を収容した国立競技場は、大規模な拷問所と化した。騒乱の中、エデルスタムは、国立競技場に収容されたキューバ大使館員、ウルグアイ人等を含む1,300人を救出。犠牲者を自ら車で安全な場所へ移動させ、国際機関に引き渡したのである。
アムネスティ・インターナショナル・チリのラウレンティ会長は、「クーデター勃発から数ヶ月間の凄まじい暴力を、この映画を通じて多くの人に理解してもらいたい」と語っている。また、犠牲者の会Group of Relatives of the Detained-Disappeared (AFDD)のディアス氏は、「この映画は、残酷な出来事を信じようとしない若い世代の意識喚起に役立つ重要な歴史的記録である」と語っている。
撮影は、チリ文化芸術省、運輸省、外務省、サンチャゴ市、チリ国立スポーツ協会などの後援を得て、大統領官邸前、国立競技場など事件の現場となった36ヶ所で行われおり、スウェーデンの監督Ulf Hultbergは、国立競技場では「亡くなった人々の魂が我々と共にいるようであった」と語っている。
エデルスタム大使は1973年、チリ軍事政権により国外退去を命じられた。同氏は、ナチス・ドイツ時代にも、ヒトラーから国外追放を受けている。スウェーデンのシンドラー、エデルスタム大使を主人公とする新作映画「黒はこべ」について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
関連記事: