【ワシントンIPS=ガレス・ポーター】
国際戦略問題研究所顧問でイスラエルの国防政策の専門家エドワード・ルトワック氏は、イスラエルの
ヒズボラ攻撃は、対イラン攻撃に関する米政権の考えを転換させるためのものだったと指摘している。
同氏によれば、過去においてブッシュ政権の高官らは、イランの核施設空爆のオプションについて、ヒズボラによるイスラエル北部へのロケット弾の報復攻撃で数千に及ぶ犠牲者が出ると推定し、非公式に却下してきた。イスラエルの高官は、ヒズボラのロケット兵器を破壊し、イランからの再供給を阻むための対レバノン攻撃は対イラン攻撃という軍事オプションに対するそうした反対を排除する手段と考えている、とルトワック氏は言う。
イランがヒズボラに供給してきたミサイルは、イスラエルの対イラン攻撃の抑止を明確に意図するものである、というのがイランとヒズボラに関する専門家らの長年にわたる見方である。イスラエルのジャフィ戦略研究所のイランの専門家エフライム・カム氏は、イスラエル北部に対するヒズボラの脅威は、米国からの攻撃に対するイランの抑止力における重要な要素と2004年12月に書いている。
イスラエルは何カ月もかけて対ヒズボラ攻撃の計画を練ってきた。5月23日のブッシュ大統領との会談におけるオルメルト首相の目的は、イランのウラン濃縮計画の阻止に必要な場合には武力行使を行なうことに同意を迫ることであったのは明らかである。
オルメルト首相は、イランの核施設空爆のリスクを大幅に削減する策としてヒズボラのミサイル能力を低下させる計画を議論し、ブッシュ大統領が了解したものと思われる。米国では報道されなかったが、首相が会談後イスラエルのメディアに言った「とても、とても、とても満足」とのコメントもこれでうなずける。
さらに、イスラエルに停戦を求める動きに対しブッシュ大統領が同意していないことも、大統領がイスラエル政府にいかなる名目を使っても攻撃を始めるよう促したことを示唆している。イスラエルの計画は、チェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官にイランの核施設攻撃を主張する新たな手立てを与えたかもしれない。
イスラエルのヒズボラ攻撃について歴史家で安全保障政策のアナリストであるガレス・ポーターの論説を紹介する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan
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