SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)地球を救うために、私たちは牛と車とどちらを残すべきか

地球を救うために、私たちは牛と車とどちらを残すべきか

【ブラワヨIDN=ブサニ・バファナ】

家畜は、地球温暖化の要因の一つとされる強力な温室効果ガス「メタン」の主要な発生源として、しばしば悪者扱いされてきた。

地球を守るために畜産のあり方を転換すべきだという声は世界的に広がり、植物性食品中心の食生活へ移行するため、肉を食卓から外そうという主張もある。

ただし、乳や肉はすべて同じではない。畜産は生産システムごとに環境負荷が異なるため、より丁寧な区別が必要だ—。COP26気候会議を前に公表されたPASTRES研究プログラムの報告書は、そう訴える。

エラ・ハウザーとイアン・スクーンズによる報告書『家畜は常に地球に悪いのか(Are livestock always bad for the planet)』は、排出削減を含む気候変動対策、食料システム、土地利用をめぐる重要な意思決定——食生活の転換、植林計画、自然再生(リワイルディング)など——が、不完全または誤解を招く証拠に基づいて行われる恐れがあると指摘する。

報告書は、乾燥地や山岳地で営まれる環境負荷の小さい牧畜(広域放牧型)が、工場型畜産のような高集約的手法と一括りにされ、そうした生産に依存して暮らす世界中の何百万人もの人々が、食の未来をめぐる議論から置き去りにされていると警鐘を鳴らす。

動物由来食品は低所得層の栄養にとって重要であり、作物生産が難しい乾燥地や山岳地では、なおさら欠かせない。肉や乳の消費を変えるのであれば、最も気候負荷が大きい食生活に焦点を当てるべきで、それは「消費エリート」——多くの場合、富裕国の富裕層——に集中していると著者らは述べる。

INPS Japan/IDNは、報告書の共著者である農業生態学者イアン・スクーンズ氏に話を聞いた。スクーンズ氏は英サセックス大学開発研究所(IDS)のプロフェッサリアル・フェローで、欧州研究会議(ERC)資金によるPASTRESプロジェクトの主任研究者である。以下、発言の抜粋。

問:家畜は常に地球に悪いのか。

短い答えは「ノー」だ。私たちは生産システムの違いを区別しなければならない。環境や人に優しいものもあれば、明らかにそうではないものもある。食の未来と気候をめぐる議論は、はるかに洗練されたものになる必要がある。広域放牧型の家畜システムは、環境面でも生計面でも幅広い恩恵をもたらし得るし、より気候に優しい未来への道筋を示すこともできる。

問:家畜排出に関する世界的研究は、アフリカの寄与が小さい富裕国に偏っていると言うが、なぜか。また、この見方をどう変えるべきか。

私たちが持つ家畜由来排出に関する証拠の多くは、高投入の工業化畜産システムから得られたものだ。アフリカの実情に即した研究は圧倒的に不足している。
たとえ工業型のほうが、改良飼料によって製品1単位当たりのメタン排出が低いとしても、飼料の輸入、インフラ整備、輸送などを含めれば、気候への影響は決して小さくない。

一方、アフリカ各地に見られる広域放牧型の畜産は、評価モデルが想定するよりも環境負荷が低い場合がある。移動放牧システムでは、土壌への炭素貯留によって、家畜が炭素収支の均衡を保ち得ることを示す研究もある。
こうした牧畜は、もともと野生動物が優勢だった生態系を置き換える形で営まれてきたが、野生動物もまた温室効果ガスを排出する。そのため、牧畜システムは既存の排出水準(ベースライン)に対して追加的な排出を生まない可能性があり、一律に気候被害の原因とみなすべきではない。

要するに、すべての家畜生産を同一視するのではなく、生産システムの違いを明確に区別する必要がある。

問:牛は気候変動と闘う鍵になり得るのか。「車をなくして牛を残すべきか」。

牛と車を単純に比較するのは適切ではない。いずれも温室効果ガスを排出し、気候に影響を与えるが、その性質は異なる。
車は化石燃料に依存し、長期にわたり大気中に残留する二酸化炭素(CO2)を排出する。一方、牛は消化過程でメタンを放出するが、メタンは約10年で分解される。ただし、その温暖化効果は短期的には非常に大きい。

したがって、農業由来と輸送由来の排出の双方に対処する必要があるが、同じ方法で扱うべきではない。畜産分野では特に、高排出の工業型システムと、牧畜のように影響が小さい広域放牧型システムを区別することが重要だ。
肉や乳といった製品そのものを禁止するのではなく、生産のプロセスを変えることに焦点を当てるべきである。

問:家畜はアフリカの生計に不可欠で、社会・経済・文化の一部でもある。研究は畜産の将来にどんな示唆を与えるのか。

多くの地域で家畜生産は生計の中心であり、重要な所得源であると同時に、栄養に不可欠な高密度たんぱく質の供給源でもある。肉や乳は、とりわけ周縁地域や成長期の子どもの栄養にとって重要だ。
家畜は耕作に適さない土地を利用でき、ほかに食料を得る代替手段がない地域でも人々の暮らしを支えている。

さらに、移動を伴う広域放牧型の畜産は、生物多様性の維持、山火事の抑制、条件次第では炭素貯留にも寄与し得る。こうした現実を踏まえれば、「家畜生産や肉・乳の消費を減らすべきだ」と一括りに論じるのは妥当ではない。
ここでも、生産システムと地域の文脈を踏まえた、より精緻な議論が求められる。

問:牧畜民を、食の未来や気候変動の議論にどう参加させるべきか。

現状では、牧畜民はこうした議論からほぼ完全に排除されている。世界的な議論は西側の関心を中心に組み立てられ、富裕層の高消費型食生活における肉・乳の削減や、人と地球に大きな害をもたらす工場型畜産の縮小が主な焦点となっている。これ自体は重要な課題である。

しかし、すべての畜産が有害だと考えるのは誤りだ。産業型畜産に代わる選択肢として、アフリカであれ欧州であれ、牧畜民は「気候に配慮しつつ、質の高い食料を生産できる別の道がある」ことを示していく必要がある。
だが、そうした声は十分に届いていない。反・畜産の言説や、一部の西側諸国における急進的な食生活転換論にかき消されているのが現状である。(原文へ

INPS Japan

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