【メキシコシティIPS=ディエゴ・セバージョス】
激しい外交抗議や社会的流動の歴史にもかかわらず、米国議会は移民削減を目的としてメキシコとの国境に1,226kmのフェンス建設を決定した。メキシコ政府は即座に両国の関係を損なうものとして抗議し、他の中南米諸国や米国内のラテン系アメリカ人社会も同様の反応を示すものと思われている。
ジョージ・W・ブッシュ大統領はこの法案を成立させる意向を以前から表明していた。アラバマ州選出のジェフ・セッションズ共和党上院議員は、「フェンスは効果が期待できる」という。この方策は将来的に大局的移民改革によって補完されると共和党議員は話す。
メキシコ国立自治大学の国際政治を専門とするセルジオ・ペラエズ教授は、「米国は複雑な移民問題を安全保障問題としか見ていない」とし、2007年に完成予定のフェンスは「選挙を見据えた手段であり、不法移民をなくすことはできないだろう」とIPSの取材に応じて語った。米国議会は30日から休会。議員は11月の議会選挙に備えることになる。
新たなフェンスは米国とメキシコ間の3,200kmの国境に沿って既存の112kmのフェンスに増築される。フェンスは二重で、カメラ、探知機、無人機が設置され、国境警備隊も13,300人から14,800人に増員される。
フェンスの強化により、大局的移民改革が据え置きとなった。その移民改革では現在米国に住んでいる1,100万人の不法移住者の合法化が期待されていた。反移民政策の強化は、多くが中南米からの米国移民を苦境に陥れる。中南米カリブ諸国からの移民の送金は2005年には総額で536億ドルにのぼり、母国の家族を養っている。
米国への不法移民は毎年50万人に及ぶが、150万人が逮捕されて送還されている。新たなフェンスと警備強化により、移民が国境を越える場所が限られ、さらに困難な越境で犠牲者が増えるものと思われる。昨年の犠牲者は472人だった。
現在米国には4,000万人の中南米出身者あるいはその子孫が住んでいる。中南米諸国は米国に外国人労働者の受け入れと不法移民の合法化を求めるために定期協議を開いている。フェンス建設反対の声が高まる中で可決された米国の不法移民を防止する法案について報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan
関連記事: