【スヴァIPS=シャイレンドラ・シン】
クーデターが頻発するフィジーは、2006年12月の軍事クーデターを契機に断絶した国際社会との関係を修復し、必須の財政支援再開の道を開くことができるか。成否は、太平洋諸島フォーラムの賢人会議(EPG)が作成する現地調査報告書にかかっている。
賢人会議は1月29日に作業を開始した。くしくも同日、アメリカの数百万ドル規模の支援中止の公表があり、地元紙は軍による人権侵害の記事を掲載した。
有力団体「市民憲法フォーラム(Citizens Constitutional Forum)」のダクブラ(Jone Dakuvula)企画担当代表はIPSの取材に応じ、支援を中断した英連邦、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP)、EU、アメリカは関係正常化の開始に向け、賢人会議の評価を参考にするだろうと述べ、「賢人会議の活動の重要性」を指摘した。一方、同国の基幹産業である砂糖産業向け3億5,000万ドル規模のEUによる支援パッケージにはまだ疑問符がついているとも語った。
賢人会議を派遣したのは、オーストラリア、ニュージーランドを含む16カ国で構成する太平洋諸島フォーラム(PIF)の行政機関であるPIF事務局。PIFは太平洋地域における基幹的政治経済組織。賢人会議を構成する4人の委員は、バヌアツのキルマン副首相・外相、サモアのルイガ天然資源環境相、パプアニューギニアのアメット元最高裁判所長官、コズグローブ元オーストラリア軍長官。
賢人会議の使命は「フィジーが憲法と法律に則って民主的政権を回復する道を開くことであり、フィジーがこれを達成するために、PIF事務局ならびに加盟国はどのような役割を果たすことが最も有益であるか考慮することである。」委員はイロイロ大統領、暫定首相のバイニマラマ司令官と面会した。
賢人会議のキルマン委員長は面会後も多くを語らず、週末の訪問終了までに声明を発表すると記者団に語った。バイニマラマ司令官は、面会は「有意義だった」とラジオを通じて語った。
賢人会議の一行は週末までに、フィジーで影響力を持つ部族代表の大酋長会議、さらに政党、市民団体、その他関係者と面会する。さらに追放されたガラセ前首相の出身地ラウ諸島のマバナ島に飛び、同氏と面会する予定。軍はガラセ前首相を巧妙に同島に追いやり、首都スヴァに帰還することを許可していない。一行の訪問には米政府の後ろ盾があり、米政府は声明の中で、太平洋諸島フォーラムが迅速な民主主義の回復を促す努力をしていることを支持すると表明。さらに、軍政はフィジーの政治経済的発展ならびにアメリカとの関係を著しく阻害するものであり、米政府はフィジーに民主政治を回復するために賢人会議、太平洋諸島フォーラムと緊密に連携する用意があると述べている。
これに先立ち、米政府はフィジーのミレニアム・チャレンジ・アカウントへの支援停止を発表している。同じメラネシア諸国のバヌアツは最近、同プログラムで6,500万ドルの支援を受領している。
バイニマラマ司令官は28日国営テレビのインタビューで、暫定政府は3年から5年の任期を全うすると答えたが、ダクブラ氏は賢人会議が通常1年半から2年のうちに選挙の実施を求めると言及。さらに人権の尊重、報道と言論の自由、総選挙と民主的政権に向けた現実的スケジュールも強く求められると述べた。
南太平洋大学の作家、学者のソム・プラカシュ(Som Prakash)氏はIPSの取材に応じ、軍が迅速に民主主義に回帰すれば、フィジーは国際社会の承認と尊厳を取り戻し、国内的にも反体制運動の危機が遠のくことになると語った。
さらに、発展途上国のフィジーは多額の資金を失うわけにはかない、EUの砂糖産業復興資金を失えば大変なことになる。「砂糖はフィジーの生命線。砂糖の収入は国内に留まり分配される。国外に流出してしまう観光業収入とはわけが違う」と指摘した。
軍による人権侵害が訴えられていることで、事態が複雑になる可能性がある。『フィジー・デイリーポスト』紙は29日、民主化回復活動家に対する軍の人権侵害を報じたオーストラリアの『エイジ』紙記事を1面に引用。
記事は、女性活動家が襲われ、性的屈辱を受けたと報じている。EUは協議を開始、人権侵害が確認されれば、新たな制裁に発展する可能性もある。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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