【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】
オーストラリア政府は、先住民の子供を強制的に親から引き離す嘗ての政策を反省し5月26日を「National Sorry Day」(国家謝罪の日)と定めている。しかし、3歳で親から引き離されメルボルンの孤児院で育ったユウジン・ロベットは、「両親の願いにも拘らず、当局は我々が親の元に帰ることを認めようとしなかった。記念日の意義は認めるが、失った過去は戻ってこない」と語っている。
1997年に発表された同施策に関する報告書「アボリジニおよびトレス・ストレイト島の子供達の隔離に関する国家調査」によれば、欧州の占領が始まると間もなく先住民の子供の隔離が始まったというが、その数は明らかにされていない。
同報告書は、犠牲者に対する54項目の支援策を提案。政府は同年、家族支援、文化/言語の維持、全国家族ネットワークの設立などの費用として6千3百万豪ドル(5百7十万米ドル)を計上。2002-1006年に追加5千4百万豪ドル(4千5百万米ドル)の支援を約束した。しかし、犠牲者支援団体「Stolen Generations Victoria」(ビクトリア州失われた世代)のリン・オースチン会長は、「実施されているのは2項目のみ」と憤っている。
連邦政府のアボット保健大臣は、オーストラリア先住民の生活向上を歓迎しているが、オックスファム・オーストラリアおよびNational Aboriginal Community Controlled Health Organizationが4月に発表した共同報告書によれば、先住民の平均寿命は男性56歳、女性63歳と非先住民の76・6歳、82歳に比べ大きく劣っている。また、ニュージーランド、カナダ、米国の先住民と比べ男性の平均寿命は12年短い。社会/経済的悪条件、栄養不良、ヘルスケアに対するアクセスの欠如が原因で、慢性病も多い。幼児死亡率は、14.3パーセントで、非先住民の3倍に上る。
Stolen Generations Victoriaのメリッサ・ブリケル氏は、「ハワード首相は、遺憾の表明だけで謝罪を拒んでおり、国民の願いとは異なる態度を取っている」と批判している。オーストラリア政府のアボリジニ対策について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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