【ニューヨークIPS=ナジャ・ドロスト】
先週、ソマリア暫定連邦政権のアリ・モハメッド・ゲディ氏が首相を辞任した。アブドゥラヒ・ユスフ大統領派との激しい権力闘争があったといわれている。
ネルソン国際公共問題研究所(米ジェームス・マディソン大学)のピーター・ファム所長は、「ハンプティ・ダンプティは壁から落ちたが、ハンプティ・ダンプティはもう元には戻せないということを国際社会は認識しなくてはならない」と語った【IPSJ注:「ハンプティ・ダンプティ」は子供向けの童話で、卵がその正体だとされる。すなわち、壊れやすい卵は、いったん壁から落ちると元に戻すことはできない】。
ゲディ首相辞任は必ずしも驚くべきニュースではない。2004年に発足した暫定連邦政権は、1991年にバレ政権が崩壊して以降14度目の全国政権確立の試みであった。
昨年6月には「イスラム法廷連合」が首都モガディシュを制圧したが、米国とエチオピアの押す勢力が法廷連合を12月に首都から追い出した。
しかし、米・エチオピアの介入で事態はより悪化した。暫定政権は、ユスフ大統領の属するダロッド族によって支配されており、ソマリアの人びとの多様性をまったく代表できていない。国連人道問題調整局によると、最近だけでも約9万人がモガディシュから脱出したという。しかも、国中を襲っている干ばつのために、援助機関は人道的危機に対応しきれずにいる。
他方、対抗勢力の側も「暫定政権憎し」の感情でつながっているだけであり、内部はバラバラなのが実情だ。9月にはエリトリアにおいて対抗勢力側の会議が開かれたが、コンセンサスに達することができなかった。
問題は、多くの人びとが、ソマリア全国統一政権の確立という思考に支配されていることだ。前出のファム氏は、「ソマリアの人びと自身の間に連帯が作り出されない限り、全国政権を承認しようとしても、政権を取った者の『ひとり勝ち状況』が生み出されるだけだ」と語る。
むしろ、氏族を中心としたいくつかの単位にソマリアを分割して統治した方が地域の実情に合っており、治安も保ちやすいのではないか。
ソマリア内戦にはエチオピア・エリトリアの代理戦争という側面があり、この外部介入をやめさせることも治安回復のひとつの条件となる。ファム氏は、まずはソマリアに対する武器禁輸措置をとるべきだと話す。
ソマリア内戦の構造について、ナジャ・ドロストが分析する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan
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