【ベオグラードIPS=ベスナ・ペリッチ・ジモニッチ】
1月1日から、スロベニアが欧州連合(EU)の議長国になる。任期は半年。2004年にEUに加入した国々としては初めての議長国である。
スロベニア政府はすでに、議長職を務めるための予算として9300万ドルを計上している。数多くの国際会議を取り仕切ることが主な任務だ。それは、EUへの貢献であると同時に、スロベニアを売り込むチャンスでもある。
スロベニアは、今回議長国になるにあたって以下の5つの目標を立てた。
(1)リスボン条約(EU憲法草案に代わる条約)の推進
(2)「新リスボン戦略サイクル」の立ち上げ(研究開発・イノベーションへの投資、競争的ビジネス環境の発展、労働市場の改革、人口変動への対処など)
(3)気候変動への取り組み
(4)西バルカンにおける欧州戦略の強化
(5)欧州内における文化間対話の促進
スロベニアは、旧ユーゴスラビアが分裂してできた諸国の中でもっとも経済的に成功した国だといえる。1人あたりのGDPは2万2000ドルに達する。失業率は欧州の中でも最低の9%、インフレ率はわずか5%以下である。この経済的成功のゆえに、ユーロを通貨とすることも認められている[IPSJ注:2007年1月から]。
他方、国内においては、政府によるメディア抑圧が強まっている。
スロベニアが独立宣言をした直後の1992年2月、政府は、非スロベニア人数千人の市民権を一方的に抹消した。彼らは、戦闘の始まっていたクロアチアやボスニア・ヘルツェゴヴィナなどへ移住することを余儀なくされた。国内の人権団体「ヘルシンキ・モニター」のNeva Miklavcic Predan氏はこれを「行政措置としての民族浄化」と呼んでいるが、ヤネス・ヤンシャ首相は、海外メディアに対してこのような発言を続けるPredan氏を裁判所に訴えたのである。
ことはこの一件にとどまらない。政府は、2006年中に、直接的・間接的なさまざまな手段を通じて国内メディアの80%の編集者を交代させてしまった。
こうした強権発動に対して、約600人のジャーナリストが、2007年10月、報道の自由を求める嘆願書をヤンシャ首相に提出している。
EU議長国になるスロベニアの現状について伝える。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩