【パリIPS=マイケル・デイバート】
12月リスボンで開催されたEUアフリカサミットに続き、リビアの元首カダフィ大佐は今月初めフランス、スペインを公式訪問した。
1969年の軍事クーデターにより国王イドリス一世を追放したカダフィ大佐は、汎アラブ国家主義と国家統制経済を基盤とする独裁体制を築いた。その勢力拡大主義と国境を超えた政治的野心によりカダフィ政権が引き起こしたとされる1986年4月のベルリン・ディスコ爆破、1988年12月のパンナム航空機爆破といった一連の事件の後、リビアと欧米との関係は最悪となった。
しかし、2003年の米軍イラク侵攻とフセイン政権崩壊後、カダフィ大佐は、自国の大量破壊兵器計画の廃止を確認する国際調査団の受け入れを認めた。2004年3月にはブレアー英首相の訪問実現で国際的孤立に終止符を打ち、2006年5月には米国との国交正常化を果たしている。
フランスとの関係も、2007年7月にリビアがブルガリアの看護婦及びパレスチニア人医師の釈放を認めたことで雪解けを迎え、フランス政府が15パーセントを所有する大手航空宇宙企業EADSは、リビア政府と対戦車ミサイルの供給で合意した。
カダフィ大佐のパリ訪問後、サルコジ大統領は両国が147億ドル相当の契約を結んだ旨明らかにした。またスペインのザパテロ首相は、スペイン企業が今後リビアに170億ドルの投資を行うことで合意した旨明らかにしている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、カダフィ欧州訪問について、「欧州のリーダーは、リビア元首に対し、報道/組織の自由、拷問、政治犯の長期拘束などを緊急課題とすべきである」との声明を発した。
欧州政府の現実主義的政策について、一部専門家は、カダフィの悪政を見過ごし現実主義的経済政策に固執していると批判。ケンブリッジ大学北アフリカ研究センターのジョージ・ジョフ所長は、「サルコジ大統領の第一関心事は契約の獲得である。彼は、経済を主眼とする地中海連合を設立し支配的地位を確立しようとしている」と語っている。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan
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