【カイロIPS=アダム・モロー&カレド・ムッサ・アルオムラニ】
今週もベイルートで爆破事件があったが、レバノンは政治的膠着が続いている。2005年よりレバノンでは、西側の支持を受ける多数派の政府と、シーア派抵抗組織ヒズボラを先頭とする野党が対立している。野党にはキリスト教勢力も含む。
サアド・ハリーリ国会議員の「3月14日運動」は、2005年にシリアをレバノンから撤退させたが、ここにも多数の勢力が集まっている。過去3年間の要人暗殺は、シリア政府によるものと主張している。
一方、ヒズボラはシリアとイランから支援を受けている。米国とイスラエルからは「テロ組織」と呼ばれているが、アラブ世界では、イスラエルのレバノン侵攻に確固たる抵抗を示す勢力として、認知されている。
昨年11月、エミール・ラフード大統領の任期切れに当たり、与野党勢力の緊張が高まった。昨年末のフランスによる介入など、さまざまな仲介工作は、うまくいっていない。大統領不在のまま内戦になることも、危惧された。
今のところミシェル・スレイマン司令官を候補とすることで、仮合意している。ただし野党が拒否権の立法化を求めるなど対立点は多い。
1月6日、アラブ連盟は外務大臣レベルの会議を開き、事態打開を模索した。エジプトとサウジアラビアの提案により、スレイマンを大統領とする選挙を即時実行すること、国家統合政府を作ること、どちらの勢力にも拒否権を認めないこと、新しい選挙法を採択すること、という対策案が示された。シリアもイランもこれを歓迎した。
3日後、アラブ連盟事務総長アミール・ムッサはベイルートを訪問し、両勢力の代表を説得にかかった。しかし、両勢力とも、検討するとしただけで、正式な受け入れを保証しなかった。
13日エジプトのホスニ・ムバラク大統領は、「レバノンのすべての勢力は、国家崩壊を防ぐために、この提案を実行するべきだ。」と記者会見で述べた。こうした発言にもかかわらず、アラブ連盟を離れると、エジプトの外交的役割は低いと、見られている。
エジプトの反体制誌『アルカラマ』の元編集長、カンディル氏は「エジプトの役割は見物人でしかない。」と言う。「中東地域におけるエジプトの役割は低下し、サウジアラビアとイランの影響力が大きくなった。」と同氏は分析する。
エジプトの有力紙『アルゴムリヤ』編集長のアルハディド氏も、「エジプトのレバノンへの影響力は弱く、国内に支持者を持つシリア、フランス、イランが直接的役割を担っている。」と取材に答えた。
「ムスリム同胞団」の外交担当であるサアド・アルフセイニ議員によれば、「エジプトの役割低下は、エジプト政府が米国寄りであることに由来する。」とIPS記者に語った。「我々も、早急に大統領を選出するよう、要求することは賛成だが、レバノン南部を占領しているイスラエルに抵抗する必要があるので、ヒズボラの武装解除は受け入れられない。」と議員は述べた。
エジプトのレバノンへの影響力低下を、専門家に取材した。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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