【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジシン 】
シェンゲン自由往来圏の拡大は西欧と東欧の再結合を実現するものとして期待されているが、圏外の東側では負担を強いられると感じており、圏内の西側では変化を歓迎しない国もある。シェンゲン協定に調印した国の人々は、圏内の国境を自由に往来できる。
中東欧諸国が12月21日に加盟し、キプロス、アイルランド、英国を除くすべての欧州連合(EU)諸国がシェンゲン協定に調印した。文化的経済的結びつきが強まり、観光業が活性化される一方で、西側は犯罪や不法移民の増加を心配し、東側はEUからの疎外を不満に思っている。
新たな加盟国は、不法移民を防ぐためにシェンゲン圏以外の国境の警備を強化している。EU加盟を望んでいるウクライナは、西側との新たな壁が東に移るとシェンゲン圏の拡大に批判的だった。今後ウクライナでは、国境を接するポーランド、スロバキア、ハンガリーのビザを取得するために35ユーロ、書類提出、10日間が必要になる。
国境近辺に住む人々は1日に何度も国境を往復して生活しているため、審査手続きの強化に抗議し、ウクライナとポーランドとの国境地帯では大規模なデモが行われた。シェンゲン圏への加盟前にポーランド当局はウクライナ国境の往来に支障はないとしており、ポーランドは新たな協定作りを急いでいる。
ウクライナの安い労働力がEUに流れ込むのを阻止しなければならないが、国境の取り締まりが一般市民の生活に不都合となっても困る。
シェンゲン圏拡大に関与する諸国は、密輸や不法移民を取り締まるため、圏内の国境警察隊の縮小に伴い、国境地域や建設現場での書類審査を厳しくした。国境を接する4カ国が新たにシェンゲン圏となったオーストリアは、政府が1年後にシェンゲンによる影響を調査するまで定期的審査を続ける計画である。
ドイツ警察は東欧の安全基準の低さを挙げてシェンゲン拡大に反対だった。シェンゲン圏拡大に伴う影響について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩