【カサブランカIPS=アブデラヒム・エルオウアリ】
国家による暴力、とりわけ死刑は、「名誉殺人」の慣行を長年にわたって正当化しているひとつの要因といっていいだろう。【「名誉殺人」とは、夫のある女性が他の男性と性的関係を持った場合に、「家族の名誉」を守るためにその女性を殺害することをいう】
「世界や1国の問題を暴力で解決しようという文化は名誉殺人を正当化するものだ」と語るのは、「シリア女性監視団」のバッサム・カディさんだ。監視団、中東における名誉殺人をなくすための活動を続けている。
昨年12月、国連総会で死刑モラトリアム決議が採択されたが(賛成104・反対54・棄権29)、アラブ・ムスリム諸国のほとんどが反対に投票した。
少なくとも、サウジアラビアやイランでは、国家による公開処刑が続けられていることが確認されている。
他方、名誉殺人に関しては明確な統計はないという。ロンドンに拠点を置く「名誉殺人をなくす国際キャンペーン」のダイアナ・ナミさんによると、名誉殺人のほとんどは、出生・死亡届のない農村部で行われている。しかし、54ヶ国以上において少なくとも年間5000件、場合によっては1万件以上起こっているだろうとナミさんはみている。
前出のカディさんは、シリアでは年間少なくとも40件はあると話す。しかし、「監視団」のウェブサイトで行った名誉殺人反対オンライン署名には1万人以上が署名している。
名誉殺人はイスラムの教えによって正当化されているとの意見もあり、実際にイスラム法学者の中にはそうしたことを教える者もいる。しかし、米国の市場コンサルタントで2003年からヨルダンで名誉殺人のことについて調べているエレン・シーリーさんは、それよりもむしろ、イスラム以前のアラブの部族慣行に原因があるだろうとみている。
名誉殺人の1番の問題点は、それが女性差別に支えられているということだ。名誉殺人が続くことによって、女性は差別してもいいのだというメッセージが送り続けられることになるのである。
名誉殺人の問題について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan