【ジュネーブIPS=グスタボ・カプデビラ】
国連人権理事会の今年の第一会期は3月4日にジュネーブで始まっているが、開会以来、チベットの事件に対して見て見ぬふりをしてきた。だが25日に理事会が1993年のウィーン世界人権会議の決議について取り扱ったのをきっかけに、欧米の外交官と市民活動家はチベット問題を予告なしに取り上げた。
国際的NGO「脅威を受けている人々のための協会」のカイタ氏は、委員会が最近のチベットでの事件を話し合う特別会議を開くべきだと発言した。カイタ氏はダライ・ラマ事務所の人権専門家でもある。
もっとも白熱したのは米国のティチノール大使と中国の銭波代表のやりとりだった。ティチノール氏がチベットの首都ラサでの平和的抗議活動にともなった暴力、逮捕、死者について強い懸念を表明すると、銭氏は米国こそイラクなどでの大規模な人権侵害を反省すべきだと反論した。
人権理事会がチベット問題を話し合う場を提供しないと嘆くアムネスティ・インターナショナルのスカネラ代表の発言は、中国およびその支持国の動議によって中断させられた。スカネラ氏は理事会が中国に圧力をかけてチベット問題に対処すべきだと考えている。
チベット代表は人権理事会に現地調査団をチベットに派遣するよう要請した。ヒューマン・ライツ・ウォッチのリヴェロ代表は、中国の国内法と国際法に準じた、少数民族の言論、集会、結社の権利の尊重を求めた。
スイス代表は中国に過度の武力行使を抑えるよう促し、「チベットでは、中国およびその他の世界と同じように、すべての人々が市民的、文化的、経済的、政治的、社会的権利を行使できるべきである」と述べた。
一方、中国代表はチベットのデモの参加者が申し立てる抑圧は、ダライ・ラマとその追随者の陰謀だと抗議した。「チベット問題は中国の国内問題であり、国連の理事会の議題になるものではない」と銭氏はいう。チベット問題を取り上げることについて紛糾した国連人権理事会について報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩