SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)|ブラジル|気候変動が再生可能エネルギー源にも影響

|ブラジル|気候変動が再生可能エネルギー源にも影響

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサヴァ

ブラジルはエネルギーの45%を再生可能エネルギー源に頼っている。これは先進諸国の3倍にも相当し、これは高く評価されることである。しかしこのために、ブラジルは気候変動に対する脆弱性が高い、と6月2日に発表された研究報告書は指摘した。

予測される2071~2100年の気候条件下では、サトウキビを除き、国内における再生可能エネルギー源によるエネルギー生産は減少する、とブラジル連邦リオデジャネイロ大学(UFRJ)の大学院 Institute of Engineering Graduate Studies and Research(COPPE)による研究のコーディネーターのひとりRoberto Schaeffer氏は述べている。

風力エネルギーの潜在発電量は、国内中部の強風の頻度が減るため、60%の減少が予測さる。バイオディーゼルの生産も、温暖化による北東部および中西部の油料作物生産の減少もしくは消滅により、深刻な影響を受けるだろう。

報告書はまた、降雨不足および異常降雨により、ブラジルの電力生産の85%を担っている水力発電所も影響を免れないとしている。

矛盾しているようだが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が予測する温室効果ガスの排出が高めのシナリオ(A2シナリオ)では、水力発電量は平均1%の減少が予測されるが、排出量が低めのシナリオ(B2シナリオ)では、それよりも高い2.2%の減少が予測される。

Schaeffer氏によれば、これは「控えめな予測」であり、貯水池の水位が低く、小規模ダムが発電能力を失い、また、短期間に集中して豪雨が発生し、ダムの決壊を回避するために水門を開け、貯水された水を放流する必要が生じると、予測はさらに悲観的なものとなる。

また、2071~2100年の気候変動の予測に基づくと、平均気温の上昇により、2030年頃までにブラジルの電力消費量は8%増加するとの推定も明らかにされた。

すでに国内最大の貧困地域である北東部に、もっとも深刻な影響が予測される。北東部の半乾燥地帯はさらに乾燥が進み、バイオディーゼル用の作物生産が困難となり、水力発電の水源であるサンフランシスコ川流域の発電力は今世紀末までに7.7%の減少が見込まれる。

COPPE/UFRJのエネルギー・プラニング・プログラムの8人の研究者が執筆した気候変動とエネルギー安定供給に関する今回の研究報告書は、将来計画に当たっては、現状ではなく、予測される気候の影響を考慮に入れなければならないことを実証することが目的である。

研究報告書のもうひとりの執筆者Alexandre Szklo氏は、「不確実度が増した」ことで、アマゾン密林の河川の未開拓の可能性や気候変動がその流量に与える影響など、発電に影響を及ぼすさまざまな要因についてさらに適切なデータが求められると指摘している。

Szklo氏は、気候変動にもかかわらず、代替エネルギー源を促進する政策を引き続き実施すべきと言う。風力エネルギーは潜在能力の60%を失う可能性があるが、しかし「格別に好ましい」風が沿岸や沿岸水域に集中すると思われるので、このセクターにおける「投資の実行可能性は増大する」と語る。

ブラジル鉱業エネルギー省の計画立案機関であるエネルギー研究公社(EPE)のトップMauricio Tolmasquin氏は、不確実度は増すが、水力発電量の1~2%の減少は「このセクターのリスクの許容範囲内」であるので、事態全般については「ある程度平静」に見て大丈夫だと述べている。

水力発電は今後も、ブラジルのエネルギー基盤のもっとも重要な部分を担うだろう。将来の技術はヒマシ油や大豆など北東部における油料作物の損失を補うことができ、人口密度が高く、エネルギー需要が集中しているブラジル海岸線沿いの強い風力は引き続き役立つだろうと、Tolmasquin氏は報告書発表の場で述べた。

また、COPPEのエネルギー計画プログラムのコーディネーターLuis Fernando Legey氏は、気候変動に対処するためには、すでに技術的に可能であるものの費用が法外である酵素加水分解によるバイオ燃料の生産など、将来の代替エネルギーについて「大胆な仮説」が必要と述べている。

世界の人口の増加を考えると、省エネには「消費習慣」を変えることも必要と、Legey氏は指摘している。

国家電力エネルギー庁のジェルソン・ケルマン長官は、ブラジル国内で気候変動のもっとも深刻な影響を受ける地域においては、高圧送電線が問題解決の鍵を握っているとの考えを明らかにした。

ブラジルには8万kmに及ぶ高圧送電線が敷設されており、電力網は完全に相互連結しているので、エネルギー不足の地域があれば、他の地域がそれを補うことができる。

2001年のエネルギー危機の際は、一部地域で停電が発生し、エネルギー配給が行われた。研究報告書の発表に出席したケルマン長官によれば、降雨に恵まれた南部は他の地域に電力を分け与える余裕があったが、しかし当時は電力網の整備が不十分だった。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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