【ナイロビIPS=ナジュム・ムシュタク】
国際刑事裁判所(ICC)がスーダンのバシール大統領を戦争犯罪、人道に反する罪、大量虐殺で告訴したことは、ダルフールの人権活動家を大きく勇気づける一方で、スーダン政府の反発による事態の悪化も懸念されている。
国連安全保障理事会の常任理事国の意見は分かれ、バシール大統領が早々に裁判に引き出される可能性は低いものとみられる。だがスーダン議会はバシール大統領の取り巻きが占め、司法は公正な裁判を行えず、国際社会はダルフールを無視してきた状況の中、ダルフールの人々は苦しみが国際社会に認知されたことに意味を見出している。
2004年の国連の現地調査団はダルフールを世界最悪の人道的危機にあるとし、安全保障理事会はこの問題をICCに託していた。
人口3,500万のスーダンは北部と西部にイスラム教徒が多い。イスラム教徒の中のアラブ系とアフリカ系との土地と水をめぐる争いは長年の問題となっており、2003年のダルフールでの衝突に政府がジャンジャウィードというアラブ系民兵組織を派遣したことに端を発し、過去5年間で40万人の非アラブ系住民が死亡、250万人が家を失った。
ICCの検察官は政治的動機による大量虐殺を糾弾しているが、これまでICCが告発してきた戦犯はバシールに重用され、状況をさらに悪化させているという事実がある。また、安保理の拒否権を有する国でICCを支持しているのはフランスと英国だけだ。
国連は今回の告訴がスーダンでの平和維持活動や人道支援活動の安全性に影響することを懸念している。アラブ連盟もアフリカ連合もICCの決定を支持していない。
包括和平合意により政府寄りになったスーダン人民解放軍(SPLM)は、告訴よりも国際社会の協力と和平合意の実施が何より重要だと考えている。だがバシール大統領はダルフールの和平交渉に参加したことがない。今回の告訴が平和への圧力となり、「正義なくして平和はない」というICCの主張がマイナスの効果を及ぼさないよう願うしかない。
スーダン大統領のICCによる告訴について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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