【ペデルナレスIPS=エリザベス・エアメス・ローブリング】
ヒスパニオラ島にあるハイチとドミニカ共和国の格差は、特に国境地帯で明らかだ。ドミニカ南西部の砂漠地帯ペデルナレスは確かに貧しいが、そこには停電もなく、水道も舗装された道路も完備している。しかし、川を渡った配置のアンス・ア・ピトルは、舗装道路どころかわずかな井戸と、ソラー・パネルを設置した床屋、発電機を装備した小さなホテルがあるだけだ。ドミニカ側の岸壁には大型の船外モーター付きボートが並んでいるが、ハイチ側のモーター付き漁船は1隻のみ。残る10数隻は帆船だ。
水道や電気、ガスコンロ、豊富な食料を享受する者がそうでない者を下に見るのはよくあることだ。開発機関「プラン・インターナショナル」の文化交流プログラム・コーディネーターを務めるジゼルダ・リベラト氏は、「小さい時からハイチに対する悪いイメージを教え込まれているのだからドミニカ人を責める訳にはいかない。我々は、ハイチの人間は野蛮人で人肉を食べるという様な酷い話を聞かされてきた。ドミニカ人の多くはハイチの高等教育を受けた人と会う機会もない。我々はドミニカのジャーナリストとハイチのジャーナリストを会わせたかった」と語った。
この様な背景から、espaninslar.orgを運営する6人のドミニカ人ジャーナリストがプラン・インターナショナルの支援を得て、11月14日から16日までハイチ・ジャーナリストとの会議を開催した。同会議には両国から新聞、ラジオ、テレビ報道に携わるそれぞれ25人のジャーナリストが参加。相互理解の向上、政府に対する国境地帯政策立案の呼びかけ、人権犯罪の取り締まりなどで合意した。また、両国ジャーナリストのネットワーク設立のため8人の代表を選出した。
会議の席上、カリブ諸国連合の元事務総長で社会学者のルーベン・シリー氏は、参加者にコロンブスの発見から現在までの島の歴史を説明。何故ドミニカ人はアフリカの伝統を意識しないのかとの質問に対し、トルヒーヨ政権(1930年~61年)が教科書から奴隷に関する項目をすべて削除し、ドミニカ人はスペイン植民地支配者および先住民の子孫であると教育したからだと説明。ハイチ人ジャーナリストからどよめきが起こった。
ドミニカ共和国の駐ハイチ大使ホセ・セルエレ氏は、「独裁者のトルヒーヨは、ハイチ問題を政治利用したが、人種差別はドミニカ人の心の中ではなく学校教育にある。しかし、ドミニカ市民および政府は同問題の解決に努力している。フェルナンデス大統領は人種差別に反対しており、宗教、肌の色による差別を認めることはない。我々は同じ島に住み、共通の歴史およびエコシステムを共有しているのだから、相互理解を深め、愛する島の保全に努めなければならない」と語った。
ドミニカ共和国とハイチの相互理解のため開催された両国ジャーナリスト会議について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩
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