【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・ヴァレンテ】
エイズ予防キャンペーンは、感染者の大半を占める若者を対象とする傾向があるが、ラテンアメリカの専門家は、性生活の活発化傾向にある年配者のリスクが見落とされていると警告する。
7月に発表された国連エイズ合同計画(UNAIDS)の2008年報告書によれば、ラテンアメリカ/カリビアンのHIV感染者は190万人で、前年に比べ16万人増加したという。但し、同統計には50歳以上は含まれていない。
しかし、ブラジル保健省によれば、2000年から2007年の間に50歳から59歳の女性感染者数は2倍に増加。60歳から69歳の女性については88パーセント、70歳以上は190パーセント増加しているという。男性も、女性程ではないが増加の傾向にある。NGO「ブラジル学際エイズ協会」(ABIA)のヴェリアノ・テルト会長は、「これが新たな感染か、過去の感染がたまたま発見されたのかは分からない」としているが、アフリカ系女性組織「マリア・ムリェール」のマリア・ルイザ・ペレイラ氏は、年配女性のエイズ感染は急増していると語る。「既婚カップルの性行為は安全と思われているが、婚外性交もあり得る。しかし、既婚女性が夫にコンドーム使用を説得するのは難しい。また、年をとると妊娠のリスクが減ることからコンドームを使用しなくなり、女性の感染リスクは一層高くなる」と同氏は言う。
メキシコのHIV/エイズ予防管理センター(CENSIDA)によれば、同国のHIV陽性者の11.7パーセントは45歳以上という。老人学の専門家アグスティン・ポランコ氏は、バイアグラの出現で老齢者の性生活が活発になっており、今後さらに感染者数が増加するだろうと語っている。
ブエノスアイレス州ルハン大学のリリアナ・ガストロン氏は、「閉経後は膣組織が弱くなり、体内へのビールス侵入リスクは一層高まる」という。
最近アルゼンチンで開催された「退職者および年金生活者のための社会サービス研究所」主催の専門家会議で、ガストロン氏は年配女性の感染リスクについて説明したが、参加者の反応は驚きばかりで現象把握は不十分であったという。ガストロン氏は、「国際機関でさえ、老齢者は中性化し、特定の年齢に達すると性的欲求は無くなるとの先入観を持っている。バイアグラの出現で老人の性行為も増えている。禁欲主義を唱える訳ではないが、バイアグラを処方する際に、予防カウンセリングをする必要があるだろう」と語っている。
メキシコの「HIV/エイズ感染者戦線」は、年配者のための特別キャンペーンの必要を訴えている。
見落とされている年配者のエイズ感染リスクについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
関連記事: