【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】
バラク・オバマ大統領率いる米新政権に対し、キューバでは両国関係の緊張緩和への期待が高まっている。しかし、一部学者の間では懐疑論も聞かれる。
ハバナ大学のルイス・レネ・フェルナンデス氏は「日が経つにつれ、対キューバ政策に関するオバマの考えについてだんだん楽観できなくなっている」とIPSの取材に対し述べた。
「米国の専門家は対キューバ封鎖解除の必要を説いているが、新政権はキューバへの航行の自由化以外に両国関係改善の意向は少ないのではないか。最近のオバマや国務長官に就任するヒラリー・クリントンの発言が今後の政策を示唆するものとすれば、大きな変革が期待できる根拠は見えない」と話す。
フェルナンデス氏は、新大統領が、エネルギーや環境の分野での協力、貿易の自由化、テロ支援国家のリストからの除外などの意志を今なお持っているとすれば、前進となるだろうとしながらも、次のように指摘する。
ヒラリー・クリントン国務長官が1月13日の上院公聴会で、新政権の誕生はキューバにとって政治犯の釈放、経済自由化、国民に対する抑圧的制限の解除など変化の機会となる、と述べたが、これは「政治的近視眼」を露呈するもの。アフガニスタンとイラク侵攻、秘密刑務所、囚人の不法な引渡し、グアンタナモ収容施設などにおける拷問等々、問題の根源は米国自体にある。
新政権がブッシュ政権の施策によって色あせた米国のイメージを改善したいのであれば、米国にこそ、旅行や送金の制限解除以上の具体的措置を採る「機会」がある。
対キューバ関係の改善は、ラテンアメリカ、カリブ海地域、アフリカ、アジアなどの第三世界において、さらには先進諸国や米国自身の幅広い社会層において、米政権にとって極めてプラスの影響をもたらすだろう。また、麻薬密売、テロ、再生可能エネルギー、環境などの共通の重要問題に協力する機会を生み出すだろう。貿易・投資は増大し、雇用が創出され、旅行者数も増加することが期待される。
米新政権により対キューバ封鎖解除の施策が短期間にとられるとの期待は楽観的すぎるが、しかしそうした施策はキューバよりも米国自身に政治的・経済的利益をもたらすとする分析について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩