【ニューヨークIPS=ルーシー・コミサー】
バラク・オバマ大統領は、金融機関によるオフショア・センターを利用した税金逃れを摘発すると表明した。それならば世界有数の民間銀行グループ「ジュリアス・ベア・グループ(チューリッヒ)」の米国子会社から始めてはどうだろう。
ジュリアス・ベア・グループは3,000億ドルの資産を管理し、2007年の利益は11億ドル以上とされる。その米国における子会社が「ジュリアス・ベア・インベストメント・マネジメント(JBIM)ニューヨーク」である。
内部告発者のルドルフ・エルマー氏(53歳)によれば、1996年にケイマン諸島のダミー会社「ベア・セレクト・マネジメント(BSM)」を使った利益誘導戦略が立案された。JBIM ニューヨークがBSMに投資マネジメントを依頼する形でパフォーマンス・フィーを支払い、JBIM ニューヨークの利益を付け替える形で減額し、米国で支払うべき所得税を減らすというものだ。
エルマー氏は、ケイマンのダミー会社BSMの実態は「ジュリアス・ベア信託銀行(JBBT)」であり、BSMケイマン諸島の代表者、マックス・オブリスト氏はJBBTの業務を担っているという。
実際にグランドケイマンのBSMに電話するとジュリアス・ベア信託銀行の受付が出る。そしてオブリスト氏につながった。オブリスト氏は自ら「BSM取締役」と名乗り、質問に応じた。オブリスト氏は、JBIM ニューヨークに関するBSMの任務は、ケイマン諸島におけるモニタリング業務でだと説明。歩合制の成功報酬を得ると言う。
契約上ではBSMは投資マネジメントを行うはずになっている。しかし、オブリスト氏が説明するとおり、BSMはモニタリングを行っているだけだ。それにもかかわらず、ファンドマネジャーのように手数料を受け取っている。
通常、ファンドマネジャーは資産の1から2%、利益の10から20%の報酬を得る。JBIM ニューヨークは現在「アルティオ・グローバル・インベスターズ」と名称を変え、720億ドルの資産マネジメントを行っている。従って手数料は巨額になるはずだ。
オブリスト氏はBSMがダミー会社だという疑惑を否定。4、5年前にJBIM ニューヨークとの業務提携は終了したと言う。しかし、米国では納税に関する不正行為には時効がない。従って、JBIM ニューヨーク(現在のアルティオ)には申告漏れの責めを負う可能性が残されている。
ジュリアス・ベア・インベストメント・マネジメント・ニューヨークのオフショア・センターを利用した脱税疑惑について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩