【カラチIPS=ビーナ・サルワール】
パキスタンのザルダリ大統領は、5ヶ月前に就任して以来、パキスタンにとっての最大の問題は「宗教的」過激派に起因していると繰り返し述べてきた。1980年代のアフガン戦争の中で育ってきたタリバンやアルカイダ、「聖戦士」などが念頭にある。
これまでのパキスタン指導部は、インドを最大の敵だとみなしてきた。「インドは我々の敵ではない」と語るザルダリ大統領はこれまでの考え方を大きく転換させた。
パキスタンのマリク内相は、昨年11月にインドのムンバイで発生し180人が死亡したテロ事件の一部がパキスタン国内で計画されたと発表して、周囲を驚かせた。内相は8人に対する刑事手続が開始されていることも明らかにした。
インドのジャーナリスト、シッダルトゥ・バラダラジャンは「インドで起こったテロにパキスタン領内にいる特定の個人や集団が積極的に関わっているとパキスタン政府が認めたのは史上初めてのことだ」と書いている(『ヒンドゥー』紙、09年2月13日)。
パキスタンの決断の背景には、米国からの圧力があったといわれている。米国にしてみれば、印パ対立のせいで「テロとの戦い」が遅らされることになってはたまらないからだ。
米国のパキスタン・アフガニスタン特別大使であるリチャード・ホルブルックは、最近インドを訪問した際、「60年間で初めて、インドとパキスタン、米国が共通の敵(つまりタリバン)に直面することになった」と述べている。
他方で、平和活動家は、また別の思惑から、パキスタン政府がムンバイ・テロへの自国民関与を認めたことを歓迎している。「パキスタン人権委員会」の北西辺境州支部長であるムサラット・ヒラリは「パキスタン政府はもっと早くこのことを認めるべきだった」と話す。
ヒラリさんらパキスタンの24人は、「人権を求める南アジアの会」の支援を得て、先ほどインドを訪問した。逆にパキスタン側が今後インドからの訪問団を受け入れる予定もあるという。
印パの安全保障環境について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリ=IPS Japan
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