【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチ】
セルビアは、2000年のミロシェビッチ体制崩壊後、同胞が犯した戦争犯罪の調査に大きな努力を払ってきた。しかし、セルビア人に対する戦争犯罪も明らかにされるべき時が来た。
これら調査の先頭に立つウラジミール・ヴクチェヴィッチ特別検察官は、1999年コソボ在住のセルビア人数百人が誘拐され、臓器獲得のためアルバニアへ送られたとされる事件の調査に当たっている。以下はヴクチェヴィッチ検察官に対するインタビューの概要である。
IPS:旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)のカーラ・デル・ポンテ主任検事が、昨年4月に出版した回想録の中で1999年のセルビア人誘拐事件について書いていますが、検察局の調査はどうなりましたか。
VV:欧州評議会のディック・マーティ特使に調査報告書を提出しました。同報告書は、国連コソボ暫定統治機構拉致被害者・科学捜査室のジョゼ・パブロ・バライバー室長が2004年6月に作成した基本報告で、アルバニア北部のブレル村で発見された証拠を上げています。8人の証言から忌まわしい犯罪が行われた場所として同村が特定されたのです。
IPS:この証拠はどうなったのですか。
VV: ICTY調査の対象とならなかった証拠の大量破棄が行われる中でそれらは失われてしまいましたが、写真は残っていました。人間のDNAが残っていたかもしれないプラスチック容器が検査されなかったのは残念です。
IPS:同調査の結果で、被害者の家族に安らぎがもたらされると思いますか。
VV:はい。行方不明になった人々に何が起こったのかを解明することが我々の第1任務です。アルバニアには3か所の共同墓地があるとの確たる証拠が上がっています。ここには遺体が埋められており、我々はアルバニア人ではないと見ています。
IPS:他の犯罪も明らかになりましたか。
VV:捜査の拡大と共に、麻薬、武器、人身取引などが組織犯罪の形で行われていたことが明らかになりました。我々は首謀者が誰であるかに興味を抱いています。
IPS:セルビアの国家主義者はあなた方の調査を批判していますが、海外、特に米国からの脅迫などありませんか。
VV:FBIが私を脅迫した男を突き止めました。戦争に関係した旧ユーゴスラビア人が難民申請により多数海外へ逃亡しました。米国との協力は非常にうまく行っていますが、今後は米国だけでなくカナダとも直接協力して行きたいと思っています。
我々が行ってきたことは、人々に「戦争に参加した者は愛国者ではない。犯罪者は犯罪者だ」と気付かせることになったと思います。真実究明は同地域の融和に貢献できると信じています。
旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷の調査を行うウラジミール・ヴクチェヴィッチ検察官に対するヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチのインタビューを報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩