【ベルリンIPS=フリオ・ゴドイ】
のどかな田園風景が映し出された後で、その映画の物語は急展開した。帰国したたくましい若者たちが空港で家族や友人の華やかな出迎えを受ける中、『Willkommen zu hause おかえりなさい』というこの映画の主人公は、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)を患っていた。
アフガニスタンでのタリバン民兵との戦闘から生還した主人公は、血なまぐさい戦闘の場面を忘れることができない。これは実話である。世界中で数千人の兵士が、そしてドイツでも多くのアフガニスタンからの帰還兵が、PTSDに悩んでいる。
この映画がTV放映された2月3日、ドイツ国防相は海外派遣後、特にアフガニスタンでの任務後にPTSD になるドイツ兵の数が2006年以降増えていることを認めた。PTSDとなったドイツ兵の公式な数は、2006年は55人、07年は130人、そして08年は245人。
だがこの数字には精神的疾患と診断されたものは含まれず、「臆病者とみられたくないと1人でPTSD を抱え込む兵士も数多い」とドイツ兵の組合Deutsche BundeswehrverbandのU.キルシュ氏は語った。除隊した後で精神的苦痛を訴える兵士も多く、実際のPTSD患者の数は公式の数字を大幅に上回るというのが大方の見方である。
最近までドイツ国防省はPTSD を問題視していなかったが、ドイツ公共放送連盟(ARD)ネットワークが映画を放映した1週間後、ドイツ連邦議会はPTSDの兵士に対する新たな支援策について論議した。ユング国防相はPTSDのドイツ兵は全体の1%以下と国際的な平均値の4,5%に比べて少なく、カウンセリングなど対応策も講じられていると述べた。
一方、連邦議会陸軍問題担当委員のR.ロベ氏は、軍の指導者が問題を卑小化していると非難し、PTSD治療センターの設立を求めた。陸軍病院のK.H.ビーゾルド精神分析医も米国のPTSDセンターについて言及し、問題の深刻性をDer Spiegel誌にコメントしている。ドイツ陸軍には42人の精神分析医のための予算があるが、半数は空席になっている。
世論調査ではドイツ国民の3分の2がアフガニスタンからの撤退を望んでいる。海外派遣された約7,200人のドイツ兵のうちおよそ4,000人がアフガニスタンに駐留している。オバマ新大統領の呼びかけで、その数はさらに増えるものと予想されている。
PTSDに悩むドイツのアフガニスタンからの帰還兵について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩