【ジューバIPS=スカイ・ウィ-ラー】
南スーダン自治政府のサルバ・キール首相は「開放闘争は終わったのになぜわれわれは未だに殺し合いを続けているのか」と族長たちに問う。その答えの1つは牛である。2005年の南北包括和平合意以来、南スーダンでは別の部族どうしが牛を襲撃して奪い取るという悪循環の中で何千もの過疎地の住人が命を落としている。
乾期には他の部族の牛を襲撃するニュースが南スーダンの首都ジューバに毎週のように流れる。1年に1回か2回は50人から100人が一回の銃撃戦で虐殺される。「もし死傷者の数を合計すれば多くの研究機関はこれを戦争と呼ぶだろう」とSmall Arms SurveyのJames Bevanは言う。
こうした不安定な状態が過疎地の発展を妨害しており、子供は学校に行けず、NGOは病院を閉鎖する。国連によると牛の襲撃によって避難を余儀なくされた住人の数は何万にものぼり、それまで育ててきた穀物を失い、内戦中のように食糧配給に頼るしかなくなる。国連が2月中旬に出した報告によると25,613人がここ数ヶ月に起きた部族間での闘争により避難を余儀なくされた。
南スーダンの人にとって牛は富と社会的地位の象徴であり、食料資源であり文化の中心でもある。牛はまた結婚の際に新郎から新婦への婚礼資金としても使われる。襲撃によって牛を奪われた村の若者は、牛がなくては正式に結婚をすることもできず、村を出て行くことも多い。
和平合意の後に半自治政府を持つようになった南スーダンでは家畜の牛を他の部族に襲撃されるという恐怖が武装解除をいっそう困難にしており、最も心配されたことだが平和はまだ訪れていない。ある地域が武装解除をしても、周りの地域が武装解除をしていなければ、武装解除した地域の牛が危険にさらされることになる。銃は穴だらけの国境を越えてエチオピア、ケニア、ウガンダからすぐに入手することができる。
2011年には南スーダンの人が待ち望んだスーダンから独立についての住民投票が行われる予定だ。それまでにあと2年もないが、部族間の争いの増加が南スーダンという国がいったいどんな国になるのかとういう不安を生み出しつつある。
警察や、元反乱軍の兵士も問題を解決するのではなくむしろ権力を乱用しており、民間人に対する人権侵害の問題は責任を問われるべきだ、とヒューマンライツウォッチも報告の中で述べている。
2005年の南北包括和平合意以降も、部族間で家畜を巡る武装闘争が絶えない南スーダンの現状を報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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