【ワシントンIPS=マリナ・リトヴィンスキ】
超党派で外交と安全保障の政策提言をする”The Partnership for a Secure America (PSA)”は、米ロ関係進展のための政策を発表した。大量殺人兵器の拡散防止、エネルギー問題、テロとの戦い、薬物取引などで協力をしていくというものである。
『米ロ、機会の窓(US and Russia: A Window of Opportunity)』と題された声明は、30人の著名人が署名している。そこにはピカリング元大使、マクファーレン元補佐官など、元上院議員9人、元下院議員2人、元国防長官2人、元安全保障補佐官2人、元ロシア大使4人が、含まれる。内容はすでにオバマ政権の政策に反映され、7日バイデン副大統領は、関係の“リセット”を唱えている。
しかし両国の関係は、順調とはいえない。スタンフォード大学のマクファール教授らは、冷戦以来最悪と評価する。例えばつい最近キルギスが、米空軍の基地を閉鎖した。ロシアが20億ドルの借款と引き換えに圧力を加えたと考えられており、同様の動きがウズベキスタンについて2005年にあった。
ブルッキングス研究所のパイファー氏によると、「2002年のモスクワサミットが両国関係のピークだった。ブッシュとプーチンの間で、戦略攻撃能力削減に関する条約(Strategic Offensive Reductions Treaty)が取り交わされ、戦力にとどまらず、エネルギーや人的交流についてもより広い協力関係が展望された。両首脳は「新時代」「質的に新しい関係」を謳った。
しかしその後、ブッシュはイラクに足をとられ、プーチンは欧州との関係構築に手を塞がれた。さらには、2003年グルジアにおけるバラ革命、2004年ウクライナにおけるオレンジ革命が、米国が後押ししたとしてロシアに脅威を感じさせたし、ロシアの強硬な東欧政策は米国を不安にさせた。
PSAのロジャンスキー理事は、「歴史を戻すわけにいかない。」と述べる。同理事はモスクワで多くの政治家と会見したのち、ロシア側も外交関係の再構築に、「当方同様に前向き」であったと語る。
PSAは、相互信頼を取り戻すステップとして、NATOロシア理事会(NATO-Russia Council)の重要性を強調する。アフガニスタンの平和と安定を図ることから、集団的な安全保障戦略にロシアを取り込む目論みである。さらにWTO(世界貿易機関)へのロシア加盟の後押し、北大西洋石油・ガス問題などエネルギーと気候変動についての対話推進、イランのウラン濃縮停止へのロシアの主導力などが提案された。
「アフガニスタン、核不拡散からテロ対策、薬物取引まで、米国の抱える国際問題の多くを解決するのに、ロシアとの関係が重要となる。両国が競うのでなく協調することが肝要である。」とマクファーレン氏は述べている。
米ロ関係再構築へむけたPSAの積極的な政策提言を報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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