【国連IPS=ハイダー・リズヴィ】
シンハラ人主導の政府軍と中央支配脱却を望むタミール民兵との新たな戦闘に巻き込まれたスリランカ北部住民の窮状に、国際人道団体から国連の介入を求める声が上がっている。
昨年12月から再び始まった戦闘で、24万の民間人が戦闘地域に封じ込まれ、既に3万の避難民がシェルターを必要としている。
最近北部戦闘地域を訪れたヒューマンライツ・ウォッチ(HRW)のアンナ・ニスタット氏は2月27日、タミール兵士が支配する地域からの避難を余儀なくされた多くの民間人が政府の軍事基地に拘束されており、国連安保理の緊急対応が必要であるとの声明を発した。
この数時間後には、3日間のスリランカ視察から戻った国連の人権担当トップ、ジョン・ホルムズ氏が安保理に対し民間人の窮状について説明した。
国連は、民間人の緊急救援資金として1千万ドルを手当しているが、ホルムズ氏は、事態は非常に深刻だと語った。同氏は、スリランカ訪問中、反政府軍に対し民間人の移動の自由を認めるよう、また政府に対しては紛争の秩序ある平和的解決を迫ったというが、急場しのぎの粗末な屋外施設で数週間を過ごした国内難民の殆どは、精神的にも肉体的にも憔悴しきっていたと説明した。
HRWを始めとする人権団体は、安保理に対し、国際人権法に基づき直ちにスリランカ問題に対処するよう求めている。
ニースタット氏は、「タミールの虐待から逃れた人々が、再び政府軍の暴力を恐れることがあってはならない。しかし、国際機関の対処がこの様に遅いのには、恐れる理由があるのだろう」と言う。
最近多くのジャーナリストが殺害されていることを考えれば、彼女の発言は正しいかも知れない。アムネスティ・インターナショナルによれば、2006年以降スリランカで少なくとも10人のメディア関係者が殺害されており、その多くはコロンボの軍、その他法執行機関が関係しているという。(国境なき記者団による昨年の報道自由指数では、スリランカは173カ国中165位にランクされている)
地域報道によれば、インド政府が平和解決へ向けスリランカ政府に圧力をかけているというが、成果のほどは定かではない。スリランカ問題に詳しい外交筋は、安保理は目下のところ平和維持軍派遣の方向へ動いていないと語っている。
スリランカ紛争激化と安保理の対応の遅れについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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