【イェケパ(リベリア)IPS=レベッカ・マレイ】
リベリアの奥地ニンバ郡の粗末なバーで、疲れ切った3人の鉄道工夫がビールを啜っていた。闇の中で、バイクの騒音と近くにある発電機の音が鳴り響く。これが、ブキャナン港から鉱山町イェケパまで250キロ強の鉄道改修に当たる労働者の1日10時間の過酷労働の後の楽しみだ。彼らは、鉄鋼業界最大手のアルセロールミッタル(ArcelorMittal)の契約会社であるブラジルのオーデブレヒト社に雇われている。
彼らは、熱帯の高温の中で週6日から7日、ハンマーを振り降ろして働き、夜はテントのべニアの床で寝ている。食事は1日カップ1杯の米とスープ。井戸の水を飲み、病院へ行けば、その費用は給料から差し引かれる。
オーデブレヒトのウェブサイトには、月給の他に毎日1キロの米と1米ドル相当の食費が与えられると書かれているが、労働者は、手取り月収は平均80ドルで、インフレ高騰の折これではまともな生活は不可能と語っている。
アルセロールミッタルの鉄鋼採掘所の中心地イェケパは、1950年代から1989年のチャールス・テイラー軍侵攻までLAMCO(Liberian American Swedish Chemicals Company)の鉄鋼石採掘地として栄えてきた。町の郊外にはアールデコ調のプールや略奪され骨だけになった白亜の建物などが残っている。
アルセロールミッタルは、エレン・ジョンソン・サーリーフ政権の要請に応じ、旧LAMCO施設復活に期間25年、総額15億ドルの投資を約束。3年前リベリアに進出した。リベリア政府は、純益の30パーセント、4.5パーセントの鉱山使用料、グランドバッサ等の開発計画のため年間3百万ドルを受け取ることになった。また、鉄道、港湾施設は企業ではなく国の資産とし、国が運営、監督などに当たるとした。
サーリーフ政権は、鉄鉱石、ゴム、材木などの資源開発投資を各国に呼び掛けてきたが、世界経済の崩壊で大きな痛手を蒙っている。アルセロールミッタルは今四半期263億ドルの赤字を計上。イェケパからはいまだ鉄鉱石は輸出されていない。アルセロールミッタルのマシューズCEOは、「2009年末には鉄鉱石の輸出ができると見ていたが、2010年に持ち越される模様だ。2か月に雇用を凍結したが、既存のリベリア人労働者はできるだけ確保する計画だ」と語っている。
しかし、労働者は僅か6ヶ月の契約で働いており、経営者は契約満了と共に首切りを行うかも知れない。組合オーガナイザーのダリウス・ダーン氏は、労働大臣に対し労働者の署名を提出したが、アルセロールミッタルおよび下請会社の組合組織は難航するだろうと語っている。
リベリアの海外投資促進計画に対する世界金融危機の影響について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩