【シエラレオネIPS=ランサナ・フォファナ】
シエラレオネのサミュエル・サム=スマナ副大統領は3月13日、与党全人民議会党(APC)が所有するラジオ局ライジング・サンFM88.8と最大野党シエラレオネ人民党(SLPP)が所有するラジオ局ラジオ・ユニティ94.9の無期限放送禁止を命じた。
これは、この2週間国内全土で両党の過激派組織間の衝突が激化する中で行われたもの。IPSの取材に応えたカルグボ情報通信相は、こうした衝突が「ようやく勝ち得た平和と安定を崩壊することを認めるわけにはいかない」と述べた。
多くの評論家によれば、15年間野党の地位に甘んじていたAPCが2007年の選挙で政権を勝ち取ったのもラジオで草の根の支持を集める一方でSLPPへの信頼を失墜させた「ラジオ戦争」に助けられたものであるという。今度はSLPPが政権奪回を狙って同じ戦略を展開している。
今回の放送禁止命令の前にも、市民の間からは与党支持者を中心に放送禁止命令を求める声が聞こえていた。ルワンダの大虐殺にラジオ局が果たした役割との類似点も指摘されている。
しかしシエラレオネ・ジャーナリスト協会(SLAJ)は、メディアの規制機関である独立メディア委員会(IMC)の調査を経ていない今回の弾圧を即時非難。ウマル・フォファナSLAJ会長は、同国の芽生えたばかりの民主主義にとって悪い兆しであり、言論の自由を封じる試みだと述べた。
市民社会も非難の声を上げており、市民社会団体連合のチャールズ・マムブ氏は、民主主義の進展を覆す不当で受け入れがたい動向として、決定の即時撤回を求めていくと述べている。
ただラジオ局閉鎖の動きを支持する声も多く聞こえる。政治アナリストのジョージ・トーマス氏は、内戦の再発を恐れる。「この2つのラジオ局が放送禁止とならなければ、国は再び混乱と内乱に陥る。ラジオ局が支持者に戦闘準備を呼びかけ、国の分裂に加担することは明らかだ」と話す。
国の分断に寄与してきたシエラレオネの「ラジオ戦争」を巡る動向について報告する。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩
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