【カブールINPS/ AlJ=特派員】
アフガニスタン当局によると、同国北部の都市マザリシャリフで、米国で牧師がイスラム教の聖典コーランを焼いたとされる報道に怒ったデモ隊が暴徒化し、同市内の国連事務所を襲撃して少なくとも11名が死亡した。
今回の襲撃事件は、国連が標的となったものとしては、2001年に米国が主導した有志連合軍によるアフガニスタン侵攻以来、最悪のものとなった。
米国フロリダ州の牧師が聖典コーランを焼却したとする報道に怒った約2千人の民衆が、マザリシャリフの国連アフガン支援ミッション(UNAMA)事務所前で抗議集会を開いていたが、一部が暴徒化して事務所に乱入し、警備員に発砲、館内に放火した。
国連は、この襲撃で国連職員3名(ノルウェー、スウェーデン、ルーマニア人)とネパール人警備員ら4人が殺害されたと発表した。犠牲者の中にアフガニスタン人は含まれていなかった。しかしAP通信に国連職員が語ったところによると、7人の職員と4人のアフガニスタン人デモ参加者が死亡したとの報道もある。その他、20人のデモ参加者が負傷したとみられている。
これまでに、全職員がUNAMAマザリシャリフ事務所から退避している。
アフガニスタン警察は、詳細は不明としながら、犠牲者について、国連職員8名(内、2名は頭部を切断されていた)、アフガニスタン人デモ参加者4名と発表していた。
アルジャジーラのハシェム・アヘルバラ記者は、「デモに参加した群集は、昼の祈りの直後にUNAMAマザリシャリフ事務所前に集結した。同事務所は、アフガニスタンにおける国連の主要拠点の一つである。デモ参加者の中にはナイフで武装していたものもおり、事務所長は襲撃で重傷を負った。」と、カブールから報じた。
「抗議集会は、極めて暴力的な襲撃へと変質した。」とアヘルバラ記者は説明した。
北バルク州のアタ・モハンマド・ヌール知事は、反乱軍の兵士は抗議集会を国連襲撃の隠れ蓑として利用した、と語った。
「反乱軍兵士たちは、この状況を利用して国連事務所を襲撃したのです。」とヌール知事は語った。
またヌール知事は、犠牲者の中にネパール人のグルカ警備員が含まれており、彼らは民間の警備会社に所属していたことを明らかにした。
タリバンは、今回の犯行を認め、「今回の襲撃は来る大統領選挙に反対するキャンペーンの第一歩である」との声明を発表した。
アフガニスタン当局の発表によると、当初は約2000人の群集がマザリシャリフの国連事務所前に集結していたが、やがて一部の群集が国連事務所の警備員から武器を奪取し警察官に発砲し、国連事務所になだれ込んだとのことである。
潘基文国連事務総長の広報官ファルハン・ハク氏は、アルジャジーラ国連特派員の取材に応じ、事務総長は今回の襲撃に関する情報を収集しているが、「これは卑怯な攻撃であり、いかなる状況においても正当化できるものではない」と考えていると語った。
またハク報道官は、「ステファン・デ・マツラUNAMA代表が、早速状況確認のため事件当日にマザリシャリフに赴いている。」と付け加えた。
マザリシャリフの国連職員は、選挙支援、政策提言、人道的支援、復興・開発事業を含む幅広い活動に従事している。
「UNAMAのこうした活動の全ては、アフガニスタンの人々に可能な限りの支援を行うよう配慮されたものです。だからなおさら、UNAMA事務所が襲撃の対象となったことは決して正当化できることではないのです。」とハク報道官は語った。
昨年、米フロリダ州ゲーンズビルのキリスト教会「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」のテリー・ジョーンズ牧師は、9・11同時多発テロ記念日に聖典コーランを焼却すると発表して激しい論争を引き起こした。その後、ジョーンズ牧師は、米国政府高官からの圧力もあり、焼却イベントを「中止する」としていた。
ところが今年の3月20日、ジョーンズ牧師は、同教会のウェイン・サップ牧師が聖典コーランを焼却するのを見守った。
これまでアフガニスタンで国連職員を標的とした最悪の事件は、2009年10月に首都カブールで起こった国連宿泊施設に対する襲撃事件で、国連職員5人が死亡し、9人が負傷している。
その他の国々でも国連職員が標的となるテロ事件が発生しており、2007年12月にはアルジェの国連施設が爆弾テロによる攻撃を受け、17名の職員が殺害されている。
また2003年8月には、国連現地本部が入っていたバグダッドのホテルが爆破され、セルジオ・デ・メロ国連事務総長特別代表を含む少なくとも22名が殺害された。(原文へ)
翻訳=INPS Japan戸田千鶴
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