【ダカールIPS=コフィガン・アディグブリ】
5月から8月にかけて、西アフリカのサヘル地域の農民たちはイナゴの襲来に戦々恐々となる。大挙襲来するイナゴは、主食の粟やソルガムの収穫を脅かし、穀物、放牧地の双方に甚大な被害をもたらすからである。
しかし今年は、地域全体を網羅する「イナゴ襲来と闘うアフリカプロジェクト」の始動により、イナゴ被害を最小限にとどめる取り組みが強化される見込みである。
プロジェクトはフランス語の頭文字からPALUCPと呼ばれており、マリ・ブルキナファソ・ガンビア・モーリタニア・ニジェール・セネガル・チャドの7ヶ国が参加している。世界銀行が60億CFAフラン(約1300万ドル)の出資をし、国連食糧農業機関(FAO)が技術援助を行っている。
重要な活動内容のひとつが密接な情報交換である。イナゴは国境を越えて飛来する場合も少なくないので、加盟国の技術者が各地のイナゴ襲来の情報を把握し、密接に情報交換をし合うことが効果的な対応策を講じる上で重要な鍵となる。また、イナゴ対策の技術を国境を越えて互いに知らせあうことも、PALUCPの重要な役目である(例えばブルキナファソでは、夜陰に乗じてイナゴを一網打尽にする方法が採られているが、他の国ではそうした手法は知られていない。)
農薬の貯蔵・管理も焦点となる。とくに、ある国で在庫が尽きたときに他国から融通してもらえるスキーム作りが急がれている。
中には、イナゴ被害のあまりのひどさに、状況を悲観している小農も少なくない。セネガルの農民イブラヒマ・ジャウさんは「イナゴの襲来は間近だ。もうそこまで迫っている」と気を揉んでいる。
PALUCPでは、イナゴ襲来期を控えた今年3月末、ダカールに加盟国の農務省と農業研究機関の代表者が集いワークショップを開催し、ジャウさんのような被災農民の不安の声に対して次のような提案を行った。1)イナゴ襲来に対して効果的に対処できる住民の意識啓発に取り組む市民社会の活動を強化する。2)イナゴ被災地の農家に対して、各国政府が、収穫期の間に農業資金と食糧を寄付し生産力の回復を図るとともに、小規模事業に対する貸し付けを行う。
イナゴ撲滅に取り組む西アフリカの動きを報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩
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