ニュースフィンランド、中東非大量破壊兵器地帯会議の主催国に

フィンランド、中東非大量破壊兵器地帯会議の主催国に

【国連IPS=エリザベス・ウィットマン】

フィンランドが、2012年に開かれる中東非大量破壊兵器地帯化に関する会議の主催国にようやく選ばれた。この会議の目的は、すべての中東諸国を参加させることにある。たとえばイランとイスラエルのように、長年にわたって意見が対立してきた国々があるからである。

国連の潘基文事務総長は、10月14日、フィンランドのヤッコ・ラーヤバ外務事務次官が会議のファシリテーター(取りまとめ役)となることを発表した。

 潘事務総長とロシア・英国・米国政府が共同で発表したこの会議は長く待ち望まれていたもので、エジプトが1990年にはじめてこのアイデアを提案してからすでに20年近くに及ぶ困難な道のりの中で、ひとつの前進となるものである。

軍備管理・軍縮関連の団体は、会議の開催自体と、主催国としてフィンランドが選ばれたことを歓迎しているが、主催国とファシリテーター役が指名されるまでにかなりの時間がかかってしまったことに懸念を示し、会議を開催するまでに残っている難題や、中東非大量破壊兵器地帯を最終的に創設することの難しさを指摘している。

英米安全保障情報評議会(BASIC)のプログラムディレクター、アン・ペンケス氏(ワシントン)は、IPSの取材に応じ、「ファシリテーターを指名できたことは明らかに前進です。しかし、それが10月半ばまでかかってしまったということは…このような難しい会議を2012年に開く実務作業が果たして可能なのかどうか、疑問を抱かざるを得ません。」と語った。

それでもなお、「もしイランとイスラエルが同じテーブルについて相互の安全保障問題について討論するならば、会議は非常に大きなステップとなるでしょう。」とペンケス氏は語った。

軍備管理協会のダリル・キンボール事務局長も、「会議開催の決定は非常によいことです。」と指摘したうえで、「大事なことは、会議を実際に開催し、地域のすべての主要国が建設的な議論に参加するよう努力することです。ただし、そうした成果が得られるという確証はありませんが。」と語った。

またキンボール事務局長は、「イランであろうとイスラエルであろうとシリアであろうと、核・生物・化学兵器問題について、これらの国の間での実際的な対話を始めるという点に注目しなければなりません。」と語った。

進展はやはり困難か?
 
1990年にエジプトがはじめて提案した後、中東非大量破壊兵器地帯が公的に主張されたのは、1995年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議においてである。しかし、諸国がその目標の具体的な達成手段についてようやく合意したのは、2010年のNPT運用検討会議であった。

合意されたひとつのステップは、2012年に会議を開催することであり、ロシア、英国、米国、国連がこれを主導することになった。

会議の主催国とファシリテーターが、なんとか決まったということは、少なくともこのような難題に関して諸国家をまとめる取り組みが進展したことを意味している。しかしだからといって、このこと自体が会議の成功を保証するものではない。

「主要政府が、中東地域をいかにして軍縮に向けた軌道に乗せていくかについて建設的な意見を携えてこの会議に臨むことがなによりも重要です。そうすることで、最初のいくつかのステップが出てくるでしょう。」とキンボール事務局長は語った。

「核兵器であれ生物兵器であれ、あるいは核実験禁止であれ、各国には、条約に署名しそれを履行するという点で、必ずとらねばならない手続きがあります。しかし、会議に向けた取り組みに関する外交的言辞は、疑いや前置き、前提条件に満ちています。」とキンボール事務局長は指摘した。

米国国連代表部のカーティス・クーパー副報道官は、「2012年の会議が建設的な議論の場となることを望んでいます。」とIPSの取材に応じて語った。クーパー副報道官によると、米国は「この目標達成の障害を取り除く実際的かつ建設的な措置」をとるよう諸国に促している、という。

またクーパー副報道官は、「大量破壊兵器なき中東は『達成可能な目標』ではありますが、一夜にして実現できるものではありません。」「この目標は、中東における包括的かつ持続可能な平和という文脈においてのみ、つまり、イランとシリアがそれぞれの国際合意の完全履行へと復帰することではじめて、達成できるものなのです。」と語った。

英国は、同じような声明の中で、中東非大量破壊兵器地帯の創設にコミットし続けるとしたうえで、「しかし、それは一夜にして成るものではないし、地域のすべての国家の努力や支持なくして可能なものでもない。」と述べている。

同声明は、会議について「困難になるであろうプロセスの最初の一歩であり」、「地域の国家が議論に参加する絶好の機会となる」としつつも、「そのためには地域のすべての国家と国際社会の完全なる参加が不可欠である。」と指摘している。

その他の問題

かりに、会議がどれだけ建設的なものになるかという疑いがそれほどでなかったとしても、会議の見通しに影響を与える現在の中東情勢に関する懸念はかなり深刻なものである。

ペンケス氏は、現在進行中の「アラブの春」や、イランによる駐米サウジ大使の暗殺疑惑などの「実際的な問題」が、プロセスを困難に陥れるかもしれない、と指摘した上で、「この種の会議は空白の中で開催できるものではなく、それに向けて多くの政治的に微妙な問題がうまく処理されねばなりません。」と語った。

ヘルシンキ・サノマット』によると、ラーヤバ外務事務次官は、2012年という広いスケジュールを示しただけだという。

この言葉の選び方、とくに「広く」という言葉は、「会議遅延の可能性を匂わせるものです」とペンケス氏は指摘した。

それとは別に、ラーヤバ外務事務次官が、中東問題に関する経験があるとみられていないこと自体は、「この状況では有利に働くかもしれない」とペンケス氏は見ている。「アウトサイダーとして、長年にわたって深く事態に関与したり利害を持ってしまっている人よりも、問題を鋭く指摘することができるかもしれません。」とペンケス氏は語った。

中東で唯一の核兵器国であるイスラエルは、同国が公式に所有を認めないまま核兵器を保有していることを会議で非難されるかもしれないとの懸念を示し、もしそうならば会議には参加しない、と主張している。

キンボール事務局長は、「会議の開催国が決まったとしても、会議を建設的なものにするのは依然として困難な課題です。」と強調した上で、「関係諸国は、会議の始まる前、そして会議後に行動を起こす準備をしなくてはなりません。そうしてはじめて新たなプロセスを始めることができるのです。」「この会議が、特定の国の外交官がただ集まって帰るだけのものに終わらせないことが大事なのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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