【マナマIPS=バヘール・カーマル】
オスロで開催された政府間会合「核兵器の人道的影響に関する会議」に合わせて同地で約一週間に亘って活動を展開してきた反核活動家らが、3月10日、バーレーンの首都マナマに移動して、核兵器廃絶に向けたさらなる行動をとった。
活動家らは、3月10日にマナマで開催された共同記者会見において、「核兵器は、あらゆる戦争の道具の中でもっとも非人道的で破壊的な存在であるにもかかわらず、ますます相互依存を深めるこの世界において暴力の頂点に位置づけられています。」と語った。
本展示会の主催者らは「原爆の脅威は過去のものではなく、今現在私たちが直面している大きな危機に他なりません。」と語った。
この展示会「暴力の文化から平和の文化へ:核兵器なき世界に向けて」は、バーレーン戦略国際エネルギー研究センター(DERASAT)、創価学会インタナショナル(SGI)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、国連広報センター、国際通信社Inter Press Serviceが共催し、バーレーン外務省及び日本国外務省からの支援を得て、マナマで3月12日から23日まで開催される。
SGIの寺崎広嗣平和運動局長はIPSの取材に対して、「アラブ国家で初めて開催されるこの展示は、核兵器なき世界に生きるという人間の希望を現実のものとするさらなるステップとなるものです。」と語った。
世界で1200万人以上の会員を擁し、国際の平和と安全を推進しているSGIの日本組織の副会長でもある寺崎氏は、「あらゆるものの中で非人道性の最たるものである核兵器の存在そのものが、大きな危機を暗示しているのです。」と語った。
核兵器の保有は安全と安心を保証するものであるという核兵器保有国が用いる議論(いわゆる「核抑止のドクトリン」)について寺崎氏は、「世界はこの神話を今こそ乗り越えて進むべきです。」と語った。
「セキュリティ(=安心)」とは、住居、清潔な空気、飲み水、食べ物など、人間としての基本的なニーズを満たすことから始まります、と寺崎氏は言う。SGIの展示によれば、人間が安全で安心と感じられるためには、単に暴力から保護されているというだけではなく、人々が働き、自らの健康を気遣える環境が確保されている必要がある。
寺崎氏は、核兵器は「通常」兵器とは2つの点で異なっていると考えている。
「一つ目は、その圧倒的な破壊力です。広島に1945年に落とされた原爆は、 TNT火薬換算で13キロトンだったと考えられています。」
「その年の末までに14万人が命を落としました。」
「それ以降、広島に投下された爆弾の何千倍という威力を持つ50メガトン以上の核兵器が開発されてきました。」
「通常兵器は、少なくともある程度は、軍事目標と民間目標を区別することができます。しかし、核兵器は無差別に殺戮し、大規模にすべての生命を破壊するのです。」と寺崎氏は語った。
「さらに2つ目の点として強調すべきは、核兵器が残す放射能の問題です。爆発による火災が収まり、静寂が戻ったのちでも、放射能は何か月にも亘って残存し、白血病などの病気を引き起こします。そして爆弾投下後に爆心地に立ち入っただけの人でもその影響を受けるのです。またこれらの病気は、しばしば、被爆者の子孫にも受け継がれてしまうのです。」
SGIは、今回バーレーンで中東地域初の反核展示会を開催するまでに、世界29か国・230か所で展示会を開催してきた。展示に使用されている言語も今回のアラビア語版も含めて8か国語に及んでいる。 (SGIの核兵器廃絶運動のあゆみ)
バーレーン展示会の主要な目標のひとつは、中東の非核兵器地帯化に関する議論に貢献することである。
バーレーンのガニム・ビンファドル・アル・ブアイネン外務担当国務大臣(副外務大臣)は展示会の開幕に合わせて開かれた11日の記者会見で、「我々が今日お届けするものは、イスラムの真の精神を真摯に表現したものに他なりません。」と語った。
またブアイネン氏は、「イスラムの純粋な意味は『平和』です。しかし残念ながら、今日イスラムのイメージや原則は歪められてしまっています……」と語った。
さらにブアイネン氏は北朝鮮が先月行った3回目の核実験にも言及し、「国際の平和と安全に対する最大の脅威は、世界規模や地域レベルでの軍拡競争、とりわけ核軍拡競争です。」と指摘した。また、イランの核計画にも触れ、「これまでのところ平和的な性格を維持している」と現状認識を述べたうえで、「しかし、この計画はもし軍事的な核計画に発展することがあれば、湾岸地域の安全保障上のリスクだけではなく、環境や野生動物、海洋生物に対して長期的な影響をもたらすことになるだろう。」と付け加えた。
角茂樹・駐バーレーン特命全権日本大使は、同記者会見において、「日本は、第二次世界大戦中の核攻撃によって核兵器がもたらす悲惨な人道的帰結に苦しんだ唯一の国です。」と指摘したうえで、日本が引き続き核兵器の廃絶を目指していることを再確認した。
バーレーンにおける反核展示会の開催に重要な役割を果たしたICANのバーレーン在住の地域活動家ナセル・ブルデスターニ氏は、いわゆる「人道外交」の取り組みを進める必要を強調した。
「生物兵器は1975年、化学兵器は1997年、地雷は1999年、そしてクラスター弾は2010年に禁止されました。今こそ核兵器を廃絶すべき時です。」とブルデスターニ氏は語った。
この歴史的展示会に先立って、オスロで核兵器に反対する2つの重要なイベントが開催された。ひとつは、約500人の活動家、専門家、科学者、医者らが集まったICANが主催した「市民社会フォーラム」(3月2日~3日)である。これに、127か国の政府代表、国連諸機関に加え、国際赤十字委員会や市民団体など約550人が参加した「政府間会合」(3月4日~5日)が続いた。
オスロ会議で目立ったのは、国連安保理の5常任理事国の欠席であった。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、2012年初頭の時点で、8つの国が約4400発の核兵器を作戦配備している。
「これらのうち約2000発はいつでも発射可能な高度の警戒態勢下に置かれている。作戦配備されたものに加えて、予備弾頭(活性状態、不活性状態を含む)や解体予定のものなど、すべての核弾頭を数えると、米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエルの合計で約1万9000発の核兵器が保有されている。」とSIPRIは述べている。
一方、SGI会長で著名な仏教指導者である池田大作氏は、2013年の平和提言の中で、2030年までに世界的な軍縮を達成するというより大きな目標に向けた出発点となる3つの提案からなる「平和と共生の地球社会の建設に向けた2030年へのビジョン」を展望している。
池田会長は、この平和提言の中で、NGO(非政府組織)と有志国による「核兵器禁止条約のための行動グループ」を今年末までに発足させ、毎年1,050億ドルをも費やす核兵器を禁止する条約づくりのプロセスを開始させること求めている。
ICANは、報告書『核兵器に投資するな』( Don’t Bank on the Bomb)で、30か国・300以上の銀行、年金基金、保険会社、資産管理会社が核兵器を製造している企業に巨額の投資を行い、米国、英国、フランス、インドの核兵器の製造、維持、近代化に20の企業が関わっている、と指摘している。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.